南米のマスドライバー施設。そこには、ミンシュェンと荷物持ちをしているレイブンの姿があった。
「ったく、護衛なら他にもいるだろ?なんで俺なんだミンシュェン?しかも荷物持ちまでさせやがって」
「レイブンの羽休めの目的もあるんだよ〜。旅費もゴップ閣下が出してくれるんだからありがたく思わないと〜」
「それにお前、なんだその格好?」
ミンシュェンの服装はいつものスーツ姿ではなくまるで中華民族衣装のような服装だった。
「これが我《ぼく》の普段着さ〜。忘れたの?というかもしかして知らなかった〜?我《ぼく》の出身は中国だよ〜」
「そんなことはどうでもいい。サイド6へは、仕事で向かうんだろ?スーツじゃなくていいのか?」
「まぁまぁいいからいいから。君の羽休めでもあるんだから。ほら、もうすぐ出発だよ〜」
ミンシュェンは、そう言ってレイブンの背中を押しながらシャトルに乗り込むとシャトルは無事、宇宙へ飛び出した。
「民間のシャトルだから連邦軍の関係者が乗っていたとしてもジオンは攻撃できない。だからと言って、連邦も護衛できない。ある意味で言えば安全かもしれないが」
そう言ってると連邦軍とジオン軍の小競り合いをしている光が見えた。
「戦闘の光。連邦軍の残存艦隊とジオンの補給艦隊が小競り合いをしてるみたいだね〜」
「位置的には、オーストラリアに補給物資を落とそうとしていてそれを阻止しようとしてるのか?どちらにしてもこれだけ距離があるから大丈夫そうだな」
「レイブン、もしかしてだけど〜ジオンがこのシャトルを襲うって考えてる〜?」
「前例があるからな」
レイブンがそう返すとミンシュェンは、複雑そうな顔をして目を逸らした。
「たしかに、ジオンのコロニー落としは、凄まじかったね〜。サイド2のアイランド・イフィッシュの住民を虐殺するくらいだし〜条約も守られてるかどうか分からないよね〜」
「だけど、俺が1番気にしてるのは連邦軍の方だ」
「えっ?」
「連邦軍は、戦況を立て直しつつある。モビルスーツの開発も理由の一つだが1番の理由は兵士達のジオンへの復讐心だ」
「一部の基地や部隊が捕虜への虐待や戦争犯罪行為している兵士もいるって話を聞いたことがあるね〜」
そう言ってミンシュェンは、スチュワーデスからジュースを1つ購入するとそれを飲み始めた。
「流れ弾が飛んで来たとしたら連邦軍は、それをプロダガンダにするんだろうね〜。政治的に必要な犠牲って奴だね〜」
それを聞いてレイブンは、軽く舌打ちをした。
サイド6に到着するとレイブン達は、スペースシャトルから降りて背伸びをした。
「まずは、アナハイムに向かって例の計画の説明だったっけ?」
レイブンがそう訊ねると。
「いやいや、レイブン。せっかく中立コロニーの平和な場所に来たんだよ〜?まずは、腹ごしらえしないと〜」
そう言ってミンシュェンとレイブンが向かった場所は焼肉屋のチェーン店だった。
ミンシュェンは、肉をタレにつけてご飯に乗せてかっこんでおりレイブンは、葉巻を吸いながらそれを眺めていた。
「どうしたの〜レイブン?早く食べないとなくなるよ〜」
「・・・・・なんで焼肉屋なんだよ?」
レイブンは、そう訊ねたから葉巻を吸って紫煙を吐いた。
「てっきり中華の店に行くと思ってたんだけどなんでこの店にしたんだ?この店、地球にだってあるだろ?」
「いいでしょ〜、この店、我《ぼく》好きなんだよ〜」
レイブンは、ため息を吐くと葉巻を置きキムチを一口食べた。
「で、アナハイムの連中を堕とす作戦はあるのか?俺は政治に関してはからっきしなんだ」
そう言って、レイブンは育てていたカルビを取りタレをつけて食べた。
「レイブン、この我《ぼく》を誰だと思ってるのかな〜?連邦軍の政治家ミンシュェン ワンだよ〜。あ、すいませ〜ん。ホルモン2人前でお願いします〜」
そう言って、ミンシュェンはハラミを食べた。
「大企業とは言え所詮は、命をかけた外交をしたことがないただの企業連中にこの我《ぼく》が堕とせないと思うの?この我《ぼく》が駆け引きの勝負に負けるとでも?」
「そんなこと言ってねーだろ」
レイブンは、呆れたようにカルビを口に入れた。
「でも今回は、さすがに裏技を使うつもりだけどね〜」
「裏技?」
レイブンが首を傾げるとミンシュェンはレイブンに対してニヤリと笑いそして人差し指を立てた。
そして、ミンシュェンは、スーツに着替えてアナハイムに向かった。一旦、護衛から離れたレイブンは、指定された時間が来るまでの間暇になっているので適当にそこらをブラブラしているとミンシュェンに伝えた。ミンシュェンは、会議室に入ると艦船建造部本部長とアナハイムの役員がいた。
「はじめまして皆さま。私は連邦で外交官を務めていますミンシュェン・ワンと申します」
ミンシュェンは、自己紹介をして役員の方々と握手をした。
「それでは、皆さまにティアンム中将閣下が発案したビンソン計画を説明します」
ミンシュェンは、さっそくビンソン計画の説明を始めた。
「ルナツーに残っているマゼランとサラミスの改造と注文していた全ての戦艦にモビルスーツを搭載できるように改造をしてもらい・・・・・」
ミンシュェンは、ビンソン計画の説明をしなんとか作業員を出させようと交渉を始めた。
役員の方々は、ジオンに睨まれたくないのかサイド6の政治家達に圧力をかけられたのか作業員を出すことに渋っていた。
「では、アナハイム・エレクトロニクス社は、ジオニック社の軍門に下るんですね?」
ミンシュェンは、ニヤリと嗤いながら言った。それに対して役員達は、キレてコーヒーが入ったコップなどを投げ始めた。
「現在の連邦軍の戦局をちゃんと見ていただきたい!」
ミンシュェンは、机を強く叩き大声で叫び役員達を黙らせた。
「地上での戦いは、レ・・・・・・・ジオンの無理な領土拡大でジオンは疲弊し戦争の流れは連邦軍に流れつつあります!しかし、たとえ地上でジオンに勝利したとしても宇宙は、ジオンが支配し連邦軍は地球という名の檻に閉じ込められ実質的に敗北します!」
「連邦軍が負けるということはアナハイム・エレクトロニクス社もジオニック社の軍門に下るという意味になります!そうなる前に、モビルスーツとの連携を想定した戦艦を!ビンソン計画を協力していただきたいのです!!」
「金が必要ならここに!」
そう言ってアタッシュケースの中に入っていた大金を彼らに見せた。
「ここに50億あります!これは、連邦からの前金です!仕事を引き受け達成した暁にはもう50億用意すると財務省と話がついています!どうか、アナハイム・エレクトロニクス社の力を連邦軍にお貸しください!!」
ミンシュェンは必死に訴え頭を下げた。そして、金に目が眩んだのかミンシュェンの訴えが効いたのか交渉は、成立しアナハイム・エレクトロニクス社は、ビンソン計画を全面的に協力することになった。
「うまくいったのか?」
合流したレイブンが訊ねるとミンシュェンは、ゲスイ笑みで答えた。
「バッチリ〜、交渉は成立。これから納品される戦艦とルナツーにある戦艦はモビルスーツが搭載できるように改造されることになったよ〜」
ミンシュェンは、クヒヒヒッと、嗤いながら答えた。
「結局、どうやって連中を堕としたんだ?」
「簡単だよ〜。お金さ〜」
それを聞いてレイブンは、ゴミを見るような目をした。
「買収したのか?」
「縁起悪いこと言わないでよ〜。我《ぼく》は、彼らにちゃんとした誠意を見せてその上で仕事の前金を支払ったんだ。これは、賄賂じゃないよ〜。開発に必要な資金を投資したのさ〜」
ミンシュェンは、背伸びをすると。
「帰りの便は、明日の早朝だよね〜?レイブン、奢るから中華料理に付き合ってよ〜。レイブンを護衛として連れて来たのもレイブンに羽休めさせるためなんだから〜」
レイブンは、ため息を吐いて。
「いただこう」
そう言ってミンシュェンについて行った。