レビル中将を独房から連れ出しボディガードがしながらレビル中将を案内していた。
「ひとつ、ものを尋ねてもいいかな?」
「お答えできることなら」
「君は、どこの部隊の兵士だ?単独でジオンに潜入するとは」
レイブンが連邦軍の兵士だと理解してレビル中将は、質問した。
「・・・・・昔は、レイブンクロウ隊に所属していましたが今は、ゴップ閣下の下で働いています」
「レイブンクロウ隊・・・・・確か、ドクター・ミノフスキーの亡命作戦に失敗し全滅した特殊部隊だったか?ということは、君が最近、ゴップ提督のお気に入りになったワタリガラスか?」
「ノーコメントでお願いします」
そう言ってレイブン達はなんとか特別収容所から脱出をした。特別収容所にあった軍用車を盗み脱出に成功し予定通りにダイクン派の亡命者達が用意したコムサイに乗り込んだ。
「閣下が乗った!早く出せ!」
レイブンがそう言うとコムサイのメインブースターが起動し宇宙港から宇宙空間に飛び出した。いい年になったレビル中将も久しぶりに全力で走り息を切らしもたれかかるように席に座っていた。
「このコムサイは、合流地点で待機しているサラミスに向かっています。予定通りならもうすでにサラミスが待機し閣下を待っているはずです」
「そうか」
すると。
「レイブン。まもなく、サラミスに合流するぞ」
「閣下、すぐにノーマルスーツの着用をお願いします」
「分かった」
レビル中将は、ジオンのノーマルスーツに着替えるとレイブンも同じように着替えた。ダイクン派の彼らもノーマルスーツに着替えていた。コムサイがサラミスに合流するとレイブン達は、コムサイを出てサラミスに乗り換えた。
「ご無事でしたか閣下!」
サラミスの艦長がそう言ってレビル中将の手を握った。
「閣下、こちらを。佐官用の制服になりますがどうぞ」
制服を受け取り着替えるとレビル中将は、用意された部屋に案内され休んでいた。レイブンもボディガードとしてレビル中将の隣に控えていた。
「レイブン」
「なんでしょうか閣下」
「ゴップ提督を経由して君の報告書は読ませてもらった。君の言う通りだった。モビルスーツは、これまでの戦争の常識を大きく変えてしまう兵器だった」
「・・・・・」
「レイブン、君は、どう考えている?連邦は、勝てると思うか?」
「長期戦になれば連邦軍が有利になるのは確かでしょう。ただ、向こうには、モビルスーツというアドバンテージがあります。そこをなんとかしない限り形はどうであれ連邦軍が勝利するのは難しいでしょう」
レイブンがそう答えるとレビル中将は満足そうな顔をした。
「ゴップ提督もいい人材を拾ったものだ。可能ならゴップ提督から引き抜きたいがゴップ提督は、拒否するだろうな」
レビル将軍がそう言った瞬間、レイブンは、顔を歪ませ嫌そうな顔をした。
「嫌そうだな」
「嫌に決まってますよ。私は、ゴップが嫌いですから」
それを聞くとレビル中将は、意外そうな顔をした。
「意外だな。てっきりゴップ提督に忠誠を誓ったとばかり思っていたが」
「あんな奴に忠誠なんか誓いませんよ。確かに拾ってもらった恩はありますがね。・・・・・・あぁ、思い出しただけでも腹が立つ」
そう言ってレイブン軽くイラついていた。
行くあてがなかったレイブンは、退院後、ゴップの下で働くことになった。
「まずは、あの時、君が何を見たのか教えてくれるか?レイブン」
「これって事情聴取というより尋問じゃないのか?」
レイブンの前には、本来なら尋問官がいるはずだがなぜかゴップが座っておりその隣には、秘書官らしき男がレイブンの言葉をメモしていた。
「そもそもなんでゴップ大将が自ら尋問してるんだ?」
「君の情報は、これまでの何よりも価値があるものだからね。他の奴らに任せるのが心配なのだよ」
ゴップがそう言ってレイブンは、とりあえずモビルスーツのことを答えた。
「ミノフスキー粒子とモビルスーツ。この2つを合わせて使えば戦艦じゃ撃墜も難しいし戦闘機で戦闘したとしてもかなりの高性能機じゃねーと撃墜は不可能だ」
「セイバーフィッシュでも無理だと?」
「さーな。だけど、撃墜できる保証はできない」
レイブンがそう答えるとゴップは少し考え。
「君、レイブンを部屋に案内してやりなさい」
「部屋?」
「君が見て来たものを全て報告書に書いてもらおう。頼んだぞレイブン」
「おい、待て。見たものは全部アンタに報告しただろ?ちょっ、オイ!」
「それでしばらく軟禁されて報告書書いてたんだよ。ゴップの秘書官が俺の言ったことメモしてたのにやらなくていいことやらされて時間無駄にされて本当に殺してやろうかと思ったぜ」
(この男、意外と器が小さいな)
レビル中将がそんなことを考えていると。
「「!?」」
突然、警報が鳴った。艦内電話でブリッジに電話をかけると。
「なにがあった!?」
「レイブン少尉!た、大変です!目の前にムサイが!」
「どういうことだ!?ここには、戦闘艦は配備されてないんじゃなかったのか!?」
「亡命希望者達も知らなかったみたいで」
レイブンは、電話を切ると。
「閣下、トラブルが発生した為ブリッジに向かいます。閣下は、ここで待機していてください」
そう言ってレイブンが部屋から出ると部屋を守っていた見張りに指示を出した。
「もしものときは、閣下を脱出艇に乗せて脱出しルナツーに迎え。間に合うかどうかは知らないけど何もしないよりマシだ」
レイブンがブリッジに上がると艦長と幹部達が戸惑っていた。
「状況は、どうなってるんだ!?」
「レイブン。あの、目の前のムサイには、【赤い彗星】が乗っていると」
「赤い彗星?・・・・シャアか」
レイブンがそう言った瞬間、警告射撃が来た。ビームがブリッジギリギリを通過し激しく船体が揺れた。
「この、反撃を」
艦長が反撃を指示しようとした。
「待て!ここにはレビル中将が乗ってるんだぞ!反撃してレビル中将を失うようなことになったらどうするつもりだ!?」
「じゃー、どうするんだ!?」
「停船命令を受けるしかないだろ。ここに交渉が得意な奴はいるのか?」
そう訊くと誰も答えなかった。
「最悪だ」
最悪な状況にレイブンは頭を抱えた。とりあえず停船するとムサイからザクと赤いザクが現れた。
「赤いザク・・・・・俺の知ってるザクよりも明らかに別物になってるな。それにあの赤いのはあの時の」
ミノフスキー博士の亡命作戦の時に艤装船にトドメを刺した赤い旧ザクをレイブンは、思い出していた。
そしてブリッジにマスクをつけた若い士官が入って来た。
(コイツが赤い彗星)
「現在《いま》が戦争状態であることは御存知だな」
シャアは、そう言ってゆっくりとしかし、覇気のある声で歩き出した。
「貴艦は、いてはならないところにいた。本来なら警告なしに撃沈するところだ」
(まずいな。ここでレビルを失ったら作戦が台無しだぞ)
「しかし、貴艦は、ジオンの内庭というようなところに入り込んでいた。なぜだ!どうやって!なんのために!」
シャアが1人で入って来たのを見て1人の幹部がこっそりとハンドガンに手が伸びていた。それをレイブンは、目にしていた。
(バカ!よせ!外には、ザクがいるんだぞ!?余計なことをするな!)
「偵察や破壊工作のためではあるまい!なら、なんのためだ!?」
「いや、偵察のためだ」
レイブンは、そう答えた。
「ほう、あくまでしらをきるつもりか」
「軍の上層部は、まだ負けを認めたわけではない。すぐに宇宙軍を再編成し直しそして反撃の準備期間を手に入れるために偵察をしていただけだ。(頼むからこれで誤魔化されてくれ!そしてお前、余計なことをするなよ!)」
そう願うがレイブンの願いは虚しく消えてしまった。幹部がハンドガンを抜き銃口をシャアに向けたのだ。
「バカ!」
レイブンは、その幹部の腹を蹴り飛ばした。それに合わせてシャアも体をそらしライフルで反撃をした。幸いなことにレイブンが蹴り飛ばしてくれたおかげで幹部のハンドガンは、破壊されたが無傷ですんだ。
「ほぉ、いい判断だ」
幹部は、激しく咳き込み吐きそうな顔をしていた。
「シャア、コイツらがやったことは俺が代わりに詫びる。だが、俺達は、あくまで偵察任務をしていただけだ。アンタの命令通り俺達はこの宙域から出て行くそれでいいだろ?」
「あぁ、構わない。だが、それは本当の事を答えてからだ」
そう言ってるとブリッジの前にザクがザクマシンガンを構えていた。
「さぁ、答えろ!答えなければさらに船も乗員も傷つく!」
(くっ!やるしかねーのか?こんな最悪な状況で!)
レイブンは、諦めてシャアをみちづれに戦おうかと考えたその時。
「!?」
レビル中将がブリッジに入って来たのだ。
(レビル!!なんで入って来てんだよ!)
シャアもレビルがいた事に驚いたのか体が固まっていた。
(クソ!作戦は失敗かよ!)
レイブンは、目を瞑り諦めた時だった。シャアは、姿勢を正し敬礼をした。
「失礼ながらお訊ねします。あなたは、レビル閣下でいらっしゃいますか!?」
「・・・・いかにも私がレビルだが」
「そうと知ったらどうする?任務に忠実なジオン軍士官よ」
レビル中将の質問にシャアは、答えた。
「閣下のご乗艦とは、知りませんでした。航行を妨げた御無礼をお許しください」
「!?」
シャアの答えにレイブンもレビル中将も耳を疑った。
(どういうことだ!?捕虜になってたレビルを見逃すつもりなのか!?)
「どうぞ、以後の船旅をお楽しみください!」
そう言ってなぜかシャアは、レビル達を見逃した。シャアがブリッジから出て行こうとするとシャアは、レイブンの方を向き。
「君」
シャアに指を刺して呼ばれ突然のことにレイブンは、驚きながらも返事をすると。
「君の名を教えてほしいのだが」
「俺のか?・・・・・・レイブンだ」
「レイブン・・・・・君の名は覚えておこう。どこかの戦場でまた会おう」
そう言って、シャアは、ブリッジから出て行った。レイブンは、思いっきり息を吐き呼吸が荒くなっていた。
「シャア、なぜ俺達を見逃したんだ?」
レイブンは、ポケットから葉巻を取り出すとそれに火をつけゆっくりと紫煙を吐き出した。
シャアは、ザクに乗りレビル達を見送った。
「よいのですか?シャア少佐」
ムサイ級ファルメルの艦長、ドレンが訊ねた。
「いいんだドレン。あの艦は、私には過ぎた宝船だった。あやうく最高の政治ショーを台無しにするところだったよ」
シャアの言葉にドレンは、首を傾げた。
「しかし、あのレイブンと呼ばれた兵士。本名かコードネームかは、知らないが亡命者の協力もあったとはいえたった1人でジオンに潜入しレビルを救出するとは・・・・・・連邦にも勇敢な兵士が居たみたいだな。もし、どこかの戦場で彼と出会うことがあったら戦ってみるのが楽しみだな」
そう呟いてシャアは、ファルメルに戻るのだった。