BLEACH No name   作:鈴夢

14 / 18
MOVE ON

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

 

 

行け

 

お前の代わりに戦ってくる

 

その言葉が

 

止まっていた私を

 

前へ進ませた

 

 

 

┈┈┈┈┈┈┈

 

 

 

 

MOVE ON

 

 

 

 

┈┈┈┈┈┈┈

 

 

 

 

 

 

浦原商店地下訓練場。

広大な空間に、金属同士が激しくぶつかり合う鋭い音が響いた。

 

一護は歯を食いしばりながら斬月を構える。

 

重い。

腕が痺れる。

 

目の前の細身の女から放たれているとは思えないほど、一撃一撃が重かった。

 

現世でのらりくらり、コンビニで働いている人間とは到底思えない。

 

いや、最初から思ってはいなかったが。

 

「遅い。」

 

静かな声。

次の瞬間には視界から姿が消えていた。

 

「っ!」

 

反射的に斬月を横へ振る。

かろうじて受け止めることはできた。

 

しかし受け止めただけだった。

 

腕に伝わった衝撃に身体ごと押し込まれ、一護は数メートル後退する。

 

靴底が地面を削りながら止まった。

 

「避けただけ。」

「避けられりゃ十分だろ!」

 

思わず叫ぶ。

しかし馨は本当に不思議そうな顔をした。

 

「君、数日後には尸魂界の死神達と戦うんだよね?」

「……」

「避けられて満足してる場合?」

 

ぐうの音も出なかった。

 

その隙だった。

馨が軽く指を立てる。

 

嫌な予感がした。

 

とてつもなく嫌な予感が。

 

「"破道の三十三"――」

「待て待て待て待て!」

「"蒼火墜"」

 

青白い炎が奔流となって放たれた。

 

一護の顔色が変わる。

反射的に横へ飛ぶ。

 

背後で爆発が起こり、熱風が背中を叩いた。

 

「おいおいおいおい!」

 

転がりながら叫ぶ。

 

「そりゃねぇだろ!!」

「ほら。」

 

馨は平然と言った。

 

「死ぬよ?」

「ルキア助けに行く前にお前が俺を殺す気か!!」

「大丈夫。」

「何が!?」

「まだ死んでない。」

「結果論だろ!」

 

訓練場の隅で浦原が肩を震わせていた。

その隣では鉄斎も腕を組んだまま微妙に顔を逸らしている。

 

笑いを堪えているのが丸わかりだった。

 

「いやぁ。」

 

浦原が扇子で口元を隠す。

 

「順調っすねぇ。」

「どこがだよ!!」

 

一護の怒声が響く。

しかし馨はもう次の工程へ進んでいた。

 

「さて。」

「さてじゃねぇ!」

「"縛道の"――」

「聞けーーー!!」

 

馨は聞いていない。

本当に聞いていない。

恐ろしいことに完全に無視している。

 

「"六十一"」

「おい!」

「"六杖光牢"」

 

光が走った。

気付いた時には一護の身体は空中で固定されていた。

 

両腕も胴も動かない。

 

「は?」

 

一護が固まる。

 

「え?」

 

もう一度動こうとする。

動かない。

 

「え?」

 

さらに力を込める。

やっぱり動かない。

 

「えええええ!?」

 

そのまま顔面から地面へ倒れた。

 

「痛ぇぇぇ!!」

「はい、死亡。」

「してねぇ!!」

「敵なら死んでた。」

「そんな簡単に死ぬか!」

「隊長格なら死ぬ。」

「死なねぇだろ!!」

 

浦原がついに吹き出した。

 

「ぶあっはっはっはっは!!!」

「……ッ……」

 

鉄斎も肩を揺らしている。

 

「馨サン。」

 

浦原が楽しそうに声を掛ける。

 

「だいぶ楽しそうっすね。」

 

その言葉に、馨は少しだけきょとんとした。

 

そして視線を一護へ向ける。

縛道に拘束されたまま暴れているオレンジ色の頭。

 

文句を言いながらも立ち上がる姿。

何度叩きのめされても向かってくる目。

 

ほんの少しだけ。

本当にほんの少しだけ。

 

馨の口元が緩んだ。

 

「そう?」

「ええ。」

 

浦原は笑う。

 

「ここ数十年で一番。」

 

その言葉に馨は何も答えなかった。

 

ただ静かに斬魄刀を構え直す。

 

そして。

 

「じゃあ続き。」

 

一護の顔色が変わる。

 

「待て。」

「ん?」

「待て。」

「大丈夫。」

「何がだ!」

「まだ死んでない。」

「だからその理論やめろぉぉぉぉ!!」

 

地下訓練場に響く悲鳴を聞きながら、浦原と鉄斎はしばらく笑い続けていた。

 

 

┈┈┈┈┈┈

 

 

それから二日間。

 

浦原商店の地下訓練場では、ほとんど休みらしい休みもないまま特訓が続いた。

 

初日は散々だった。

一護は馨の動きにまるでついていけない。

 

目で捉えたと思った時にはもう遅く、気付けば背後に回り込まれている。

 

斬月を振れば弾かれ、隙を晒せば容赦なく足元を払われる。

 

鬼道が飛んでくれば避けきれず、縛道が飛んでくればそのまま地面へ転がされた。

 

「くそっ!」

 

何度目かわからない叫び声が地下に響く。

 

汗だくになりながら立ち上がる。

 

息は荒い。

身体中が痛い。

それでも。

 

「もう一回だ!」

 

その声だけは弱らなかった。

馨はそんな一護を見つめる。

 

普通なら折れている。

普通なら諦めている。

だが目の前の少年は違った。

 

何度倒されても立ち上がる。

何度弾き飛ばされても向かってくる。

 

まるで自分の限界を知らないように。

そのたびに、馨の視線がほんのわずかに長く一護を追う。

 

本人は気付いていない。

気付こうともしていない。

ただ、目を逸らす理由も見つからなかった。

 

「来なよ。」

 

静かな声。

 

一護は地面を蹴った。

その日だけで何百回刀を交えただろう。

 

夕方には避けられなかった攻撃を、夜には避けられるようになっていた。

 

初日には見えていなかった動きが、少しずつ見えるようになっていく。

 

そして二日目。

 

変化は誰の目にも明らかだった。

 

鋭い金属音が響く。

斬月と無名が正面からぶつかり合う。

 

一護は押し負けない。

むしろ踏み込んでいた。

 

「どうした!」

 

一護が笑う。

額から汗を流しながら。

 

「こんなもんじゃねぇだろ!」

 

馨の目が僅かに見開かれる。

 

直後。

一護の刀が鋭く振り抜かれた。

 

昨日なら見えていなかった角度。

昨日なら反応できなかった踏み込み。

 

確実に成長している。

ほんの二日。

 

それでも、驚くほど。

 

「まだまだ!!」

 

一護が叫ぶ。

少年らしい、真っ直ぐな笑顔だった。

 

その姿を見て。

馨も少しだけ笑う。

 

「そう。」

 

短い返事。

けれどその声は、初日よりもどこか柔らかかった。

 

次の瞬間には踏み込んでいた。

 

容赦はしない。

手加減もしない。

斬魄刀がぶつかる。

弾かれる。

踏み込む。

またぶつかる。

 

一護は何度も食らいつく。

まるで負ける気など最初からないと言わんばかりに。

 

時折、鍔迫り合いの距離で視線がぶつかる。

 

互いに何かを言うわけではない。

だが沈黙のまま離れるには、その時間は少しだけ長くなっていた。

 

浦原と鉄斎は少し離れた場所からその様子を見ていた。

 

「成長早いっすねぇ。」

 

浦原が感心したように呟く。

鉄斎も静かに頷いた。

 

「黒崎殿もですが。」

「ええ。」

 

浦原が目を細める。

 

視線の先。そこには。

何十年と近く、誰とも距離を取って生きてきた女がいた。

 

刀を受け止めるたび。

一護の言葉を聞くたび。

ほんのわずかに表情が緩む。

 

本人は隠しているつもりなのだろう。

だが、長く見てきた浦原にはわかった。

 

「馨サンもっす。」

 

刀を交えるたび。

二人の距離は縮まっていく。

 

師弟とも違う。

仲間とも少し違う。

言葉にしようとすると、どこか形が崩れてしまうような関係。

 

だから誰も口にはしない。

ただ、倒れても立ち上がる一護を見れば、馨は待つようになった。

 

馨が無言で構えれば、一護は迷わず前へ出るようになった。

 

そこに説明はない。

約束もない。

それでも確かに通じるものがあった。

 

刀がぶつかる。

視線が交わる。

 

一護は笑う。

馨は一瞬だけ目を細め、それから静かに刀を構え直した。

 

そのわずかな間が、なぜか心地よかった。

 

地下訓練場には、もう最初の日のような重苦しさは残っていなかった。

 

 

 

 

 

 

最後の一騎打ち

 

何度目になるのかも分からない斬撃が交差する。

息はとうに限界だった。

 

腕は重い。

足も震えている。

それでも一護は刀を握り続けた。

 

目の前の女は、一度として手を抜かなかった。

 

転ばされて。

叩き落とされて。

鬼道で吹き飛ばされて。

何度立ち上がったかも分からない。

 

 

それでも、負けたくなかった。

ただ強くなりたかった。

 

ルキアを助けるために。

そして――""この人に認められたかった""

 

「まだだ!!」

 

叫びながら踏み込む。

馨の刃が迫る。

いつもなら終わっていた。

 

だが。

 

「――っ!?」

 

その瞬間、一護の体が自然に動いた。

斬月を滑らせるように受け流し、半歩だけ内側へ入り込む。

 

馨の瞳がわずかに見開かれた。

初めてだった。

 

彼女の動きが一瞬だけ遅れた。

 

「((……ここだ!!))」

 

その隙を逃さない。

全身の力を振り絞る。

腕が千切れそうだった。

 

肺が焼けるように痛かった。

 

それでも構わない。

 

一歩。

 

さらに一歩。

 

そして。

黒い刀身が真っ直ぐ伸びる。

 

切っ先が。

静かに馨の喉元へと止まった。

 

「っ……はぁ……はぁ」

「……」

 

世界が止まったような静寂。

 

一護自身が、一番信じられなかった。

 

「はぁ……」

 

肩が上下する。

汗が顎から滴り落ちる。

 

視界は霞み。

足も今にも崩れそうだった。

それでも刀だけは下ろさない。

 

「はぁ……はぁ……っ」

 

荒い呼吸の中。

一護は口元を歪めた。

 

子供のように。

勝ち誇るように。

 

「……とったぞ」

 

その声は震えていた。

 

だが確かに届いていた。

 

馨はしばらく何も言わなかった。

 

喉元に向けられた刃を見つめる。

 

そして。

ゆっくりと顔を上げた。

 

その表情を見た一護は思わず目を見開く。

 

「……ははっ!」

「え……」

 

笑っていた。

心の底から。

 

本当に嬉しそうに。

 

「ふっ」

 

小さく笑う。

それはいつもの冷静な笑みではない。

 

どこか誇らしく。

どこか安心したような。

 

温かい笑顔だった。

 

「――""お見事""」

 

たった一言。

それだけだった。

 

けれど。

その言葉には何十回もの叱責も。

何百回もの斬り結びも。

この数日の全てが詰まっていた。

 

一護の手から力が抜ける。

斬月が地面へと落ちた。

同時に膝も崩れる。

 

「うおっ……!」

 

情けない声を上げながら倒れ込む一護。

 

限界だった。

本当に死ぬかと思った。

 

だが。

地面に寝転がったまま天井を見上げる。

 

不思議と笑いが込み上げる。

 

「っはは……」

 

馨も刀を納める。

そして座り込んだ一護の隣へ歩いてきた。

しゃがみこみ、その顔を覗き込む。

 

「強くなったね」

 

静かな声だった。

 

一護は照れ臭そうに顔を逸らす。

 

「まだだろ」

「うん」

 

即答だった。

 

「まだまだ弱い」

「てめぇな……」

 

思わず睨む。

だが馨は笑ったままだった。

 

その瞳の奥には。

確かな誇りが宿っていた。

 

海燕を失ってから長い年月。

誰かを育てることも。

誰かの成長を喜ぶことも。

もう二度とないと思っていた。

 

けれど今。

目の前にはいる。

何度倒しても立ち上がり。

何度叩き潰しても前を向く。

 

あの人によく似た少年が。

 

だから馨は一護を見つめながら小さく呟いた。

 

「――きっと大丈夫」

 

その声は一護には聞こえなかった。

 

けれどその横顔は。

どこか泣きそうなほど優しかった。

 

そこにあったのは。

迫り来る戦いへ向けて互いを高め合う二人の姿と。まだ名前のないまま、静かに育ち始めた感情の気配だった。

 

 

 

┈┈┈┈┈┈

┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

 

 

 

 

一護達が尸魂界へ向かう前夜。

浦原商店の居間には、静かな夜の空気が流れていた。

 

古びた柱時計の針が規則正しく時を刻み、どこか遠くから虫の鳴く声が聞こえてくる。

 

居間の隅には一組の布団。

 

その上に腰を下ろした馨は、風呂上がりの髪を丁寧に梳いていた。

 

湯気の名残を含んだ黒髪が肩から胸元へ流れ落ちる。

 

手にした櫛が通るたび、艶やかな髪がさらさらと揺れた。

 

身に着けているのは浦原から借りた寝巻きだった。

 

元々男物なのだろう。

袖も裾も少し長く、細い身体にはわずかに大きい。

 

肩がずれれば首筋が覗きそうになるほどだった。馨は無意識に襟元を引き寄せながら、小さく息を吐く。

 

脳裏に浮かぶのは、ここ数日の光景だった。

 

地下訓練場。

何度も転がされながら立ち上がる少年。

 

刀を打ち合わせるたびに強くなる瞳。

 

傷だらけになりながらも楽しそうに笑う顔。

 

『まだまだ!!』

 

そう叫びながら斬月を振るう一護の姿を思い出し、馨の口元が自然と緩んだ。

 

最初は本当に危なっかしかった。

 

力任せ。

考えなし。

霊圧の扱いも粗削り。

 

それなのに。

たった数日で、あの少年は目に見えて変わっていた。

 

自分の癖を理解し始めている。

相手を見る余裕も生まれている。

 

何より——

強くなりたいという想いが、真っ直ぐだった。

 

海燕とは違う。

けれど、どこか似ている。

そんなことを思った瞬間、自分でも気づかぬうちに少しだけ笑みが深くなる。

 

その時だった。

 

 

 

 

「――""馨サン""」

 

静かな声が襖の向こうから聞こえた。

 

馨は現実へ引き戻される。

櫛を持つ手を止めた。

 

聞き慣れた声。

 

「入ってもいいっスか?」

 

浦原喜助。

馨は一瞬だけ視線を落とした。

 

それからはだけかけていた寝巻きの襟を整える。

 

背筋を伸ばし、居住まいを正した。

 

「……どうぞ」

 

襖が静かに開く。

現れた姿に、馨はわずかに目を細めた。

 

寝巻き姿の浦原だった。

 

しかし、いつものような胡散臭い笑みも。

扇子も、飄々とした空気もない。

 

そこにいたのは、かつて護廷十三隊十二番隊隊長として君臨していた男の面影だった。

 

鋭く、それでいて静かな眼差し。

多くを見てきた人間だけが持つ重み。

馨はふと、遠い昔の尸魂界を思い出した。

 

浦原がまだ隊長だった頃。

自分が十三番隊三席だった頃。

 

失われた時間が一瞬だけ重なる。

浦原は部屋へ入ると、静かに襖を閉めた。

 

その直後。

馨の耳が微かな気配を拾う。

 

襖の向こう。

廊下の先。

聞き慣れた霊圧。

 

夜一だ。

黒猫の姿のまま外で待っているのだろう。

 

わざわざ姿を見せないあたりが、いかにも彼女らしい。

 

おそらく心配しているのだ。

自分のことを。

 

その事実に胸の奥がわずかに温かくなる。

 

浦原は何も言わず、馨の向かいへ腰を下ろした。

 

胡座をかく。

馨もまた正座のまま向き合う。

 

二人の間に流れる沈黙。

長い付き合いだからこそ生まれる沈黙だった。

 

言葉がなくても。

相手が何を考えているのか、少し分かってしまう。

 

柱時計の音だけが部屋に響く。

 

やがて浦原が口を開いた。

 

遠回しな前置きはなかった。

 

まっすぐだった。

 

「……本当に」

 

低い声。

 

「馨サンは行かないんスか?」

 

その問いに、馨はすぐには答えなかった。

 

視線を落とす。

布団の上に置かれた自分の手を見る。

 

細い指先がわずかに力を込める。

 

行けば何が待っているのか、そんなことは分かっている。

 

逃げ出した場所。

仲間を失った場所。

愛した人を失った場所。

自分を罪人にした場所。

 

そして——

""真実が眠っている場所""

 

自分の出生も、事件の真実も。

全て……行けばわかる事実。

 

「……」

 

 

長い沈黙の末。

馨はゆっくりと顔を上げた。

 

浦原を真っ直ぐ見つめる。その瞳は静かだった。

 

けれどどこか、揺れていた。

 

「……"はい"」

 

小さな声だった。

 

それでも。

はっきりとした拒絶だった。

 

「私は、行きません」

 

部屋の空気が少しだけ重くなる。

 

浦原は何も言わない。

ただ静かに馨を見つめ続けていた。

 

 

「……あなたが同行してくれれば、ボクも安心なんですけどね」

 

浦原は静かに言った。

いつものような軽い調子ではない。

冗談めかした響きもない。

純粋な本音だった。

 

「夜一サンと、馨サン」

 

浦原の目が真っ直ぐ馨を見る。

 

「二人が彼らと一緒に尸魂界へ向かえば、朽木サンを救える可能性は圧倒的に上がる」

 

一度言葉を切る。

 

「いや――」

 

小さく息を吐いた。

 

「たぶん、百パーセントっス」

 

断言だった。

それほどまでに浦原は二人を評価している。

 

夜一の機動力。

そして馨の実力。

 

隊長格と渡り合える鬼道。

長年の経験。

尸魂界内部への知識。

 

何より、あの場所を知っている。

 

護廷十三隊を知っている。

 

 

それでも。

馨は何も言わなかった。

 

ただ背筋を伸ばしたまま座っている。

 

黒髪が肩を流れ落ちる、視線も逸らさない。

 

けれど、その沈黙が答えだった。

 

浦原は眉尻を下げた。

呆れたように笑う。

 

「頑固っすねぇ……本当に」

 

半ば諦めにも似た声だった。

 

百年近く、誰よりも近くで見てきた。

 

だから分かる。

一度決めた馨は動かない。

無理に背中を押しても意味がない。

押せば押すほど、逆に頑なになる。

 

昔からそうだった。

十三番隊の頃から。

 

海燕が何度頭を抱えていたことか。

 

 

┈┈┈

┈┈┈

 

 

昼下がりの十三番隊。

執務室の障子が勢いよく開く。

 

「浦原隊長ー!」

 

書類を読んでいた浦原喜助が、ぴくりと肩を震わせる。

 

「おやおや。志波副隊長じゃないっすか。どうしたんす?」

「聞いてくださいよ!」

 

海燕は机に両手をつき、ぐったりと項垂れた。

 

「また馨ですよ!」

「ああ、馨サン。」

 

名前を聞いただけで、浦原はどこか納得したように頷く。

 

「今度は何したんす?」

「何したっていうか、何もしねえんですよ!」

「……はい?」

「予算です!」

 

海燕はびしっと指を突き付けた。

 

「隊舎の備品申請出したんですよ! ほら、十三番隊って縁側多いじゃないですか!」

「そうっすねえ。」

「座布団が古くなってたんで、新しいの買おうと思ったんですよ!」

「なるほど。」

「そしたら馨が!」

 

海燕は声色を変える。

 

「『まだ使えます』」

「はは。」

「ほつれてるぞ?、『縫えば使えます』」

「ふふっ」

「穴空いてるぞ!?、『裏返せば見えません』」

 

浦原はついに吹き出した。

海燕が誇張して馨の真似をすることに大ウケしたのだ。

 

「ははははっ!」

「笑い事じゃねえんですよ!」

 

海燕は机をばんばん叩く。

 

「副隊長の権限で通そうとしたら、いつの間にか申請書が差し替えられてて!」

「差し替え?」

「"補修用の糸代"になってたんですよ!」

 

浦原は腹を抱えて笑い始めた。

 

「それはまた、馨サンらしいっすねえ。」

「らしいじゃねえんですよ!」

 

海燕は頭を抱える。

 

「しかも本人悪気ゼロなんです!」

「まあ、あの子そういうとこありますからねえ。」

「隊士たちが使う茶碗も欠けてるんですよ?」

「ええ。」

「買い替えようとしたら。」

 

海燕はまた馨の真似をする。

 

「『金継ぎという文化があります』」

「ははは!」

「文化じゃねえんだよ!って言ったら真顔で。『大切に物を使うのは良いことです』って!」

 

浦原はついに机に突っ伏した。

 

「駄目だ……面白すぎるっす……」

「俺は全然面白くねえ!」

 

海燕は椅子へどさりと腰を落とした。

 

「十三番隊の財政担当みたいになってるんですよ、あいつ。」

「でも実際、無駄遣いは減ったんじゃないっすか?」

「それはそうなんですけどね……。」

 

海燕は渋い顔をする。

 

「隊士たちの評判もいいんですよ。」

「ほう?」

「節約した予算で隊士用の薬品とか、訓練道具とか増やしてるらしくて。」

「なるほど。」

「自分の部屋なんか、机と布団しかねえのに。」

 

浦原は少しだけ笑みを和らげた。

 

「馨サンは、自分のためにお金使わないっすからね。」

「なんなんですかね、あれ。」

「性分じゃないっすか?」

 

海燕は盛大にため息を吐く。

 

「たまには自分のために使えって言ってるんですけどね。」

「聞かなそうっすねえ。」

「聞かねえ。」

 

即答だった。

二人は顔を見合わせる。

 

そして。

 

「""頑固っすねえ""」

「頑固だな。」

 

声がぴたりと重なった。

 

その瞬間。執務室の外から静かな声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

「"""志波副隊長"""」

 

海燕の顔が固まる。

障子の向こうに、見慣れた霊圧。

 

「…げっ!!…いつからいた?」

「座布団のお話くらいからです。」

「全部じゃねえか!」

 

障子が開く。

馨はいつもの無表情のまま立っていた。

 

「ちなみに、あの座布団は今も問題なく使えています。」

 

「そういう話じゃねえ!」

 

「あと茶碗も。」

 

「聞いてねえ!」

 

「それと。」

 

馨は一枚の紙を差し出した。

 

「来月分の予算案です。」

 

海燕は嫌な予感しかしなかった。

恐る恐る目を落とす。

 

数秒後。

 

「なんで予算増えてるんだ?」

「隊士の皆さん用の甘味代です。」

「……は?」

「最近頑張っているので。」

 

浦原が吹き出す。

海燕は目を丸くする。

 

馨は少しだけ首を傾げた。

 

「必要経費です。」

 

その瞬間。

海燕は思わず笑ってしまった。

 

「ははっ……お前なあ……。」

 

頑固で。

融通が利かなくて。

変なところで節約家で。

 

でも。

誰よりも隊士たちのことを考えている。

 

そんな三席に、海燕はいつも頭を抱えるのだった。

 

 

 

┈┈┈┈

┈┈┈┈

 

 

 

 

 

 

そんな懐かしい記憶が一瞬だけ脳裏を過ぎる。

 

だが。

その時だった。

 

「……怖いんです」

 

馨がぽつりと呟いた。

浦原の表情が止まる。

 

馨自身も、自分の口から出た言葉に少し驚いたようだった。

 

長い睫毛が伏せられる。

視線が畳へ落ちた。

 

「まだ」

 

か細い声。

 

「怖いんです」

 

部屋が静まり返る。

柱時計の音だけが響く。

馨は両手を握りしめていた。

白い指先に力が入る。

 

「尸魂界が」

 

違う。

首を横に振る。

 

「違いますね……」

 

小さく自嘲した。

 

「本当は」

 

息が震える。

 

「""私自身が、怖いんです""」

 

浦原は何も言わない。

ただ聞いていた。

 

「もし行って、もし真実を知って、もし全部が終わったとして」

 

そこで言葉が止まる。

瞳が揺れる。今まで見せたことのない弱さだった。

 

誰よりも冷静で。

誰よりも落ち着いていて。

どんな状況でも感情を抑えてきた彼女が。

 

今だけは迷子のような顔をしていた。

 

「私は……」

 

唇が微かに震える。

 

「本当に、護れますか」

 

その問いは浦原へ向けたものではなかった。

 

自分自身への問いだった。

 

百年前、護れなかった。

海燕を。

仲間を。

自分を信じてくれた人達を。

 

結果として何もかも失った。

 

今度も同じだったら。

 

また誰かを失ったら。

 

また手の届かない場所で誰かが傷ついたら。

 

そんな恐怖が、今も胸の奥に残っている。

 

 

浦原はしばらく黙っていた。

それから静かに口を開く。

 

「……それでも」

 

低い声だった。

 

「これは、アナタが真実を知るチャンスでもある」

 

馨の肩がわずかに揺れる。

浦原は続けた。

 

「長い年月、逃げ続けた真実っス」

 

責める言葉ではない。

ただ事実だった。

 

「アナタが本当に罪人だったのか。海燕サンに何が起きたのか、誰が何を隠したのか」

「……」

「""誰がアナタを陥れたのか""」

 

一つ一つ。

 

静かに。

確実に。

胸へ沈めるように。

 

「そして」

 

浦原の金色の瞳が細められる。

 

「それを覆せる最後のチャンスかもしれない」

 

その言葉に。

馨は息を飲んだ。

 

最後。

その響きだけが胸に重く落ちる。

 

長すぎる時間だった。

失ったものを数えるには十分すぎるほど。

 

もし本当に。

もし今を逃したら。

二度と真実へ辿り着けないのかもしれない。

 

部屋の外では。

黒猫の姿の夜一が静かに耳を伏せていた。

 

襖越しに聞こえる二人の会話。

彼女もまた何も言わない。

 

ただ静かに。

友の答えを待っていた。

 

 

 

「「…………」」

 

 

長い沈黙が続いた。

柱時計の針だけが、静かに時を刻んでいる。

 

馨は膝の上で握った手を見つめていた。

そして、ゆっくりと顔を上げる。

 

黒い瞳が真っ直ぐ浦原を捉えた。

 

「……喜助さん」

 

その呼び方に、浦原はわずかに眉を動かした。

 

昔からだ。

真剣な話をする時だけ、馨は彼をそう呼ぶ。

 

「あなたは……"どこまで知っている"んですか?」

 

静かな声だった。

しかし、その奥には五十年分の重みがあった。

 

「私は本当に冤罪だったのか」

 

馨の視線が揺れる。

 

「海燕さんに起きたことも、隊士達の虚化も」

「……」

「私が見たものも」

「……」

「皆が見たものも」

 

一度言葉が途切れる。

長い睫毛が伏せられた。

 

「……もう、記憶が曖昧なんです」

 

自嘲するような笑み。

それは酷く寂しそうだった。

 

「自分でも驚くくらいに……思い出せなくなってきている」

 

悲しい声

 

「海燕さんの声も、雨の音も……皆の顔も」

 

瞳が揺れる

 

「少しずつ……少しずつ」

 

細い指先が寝巻きの布を握る。

 

「抜け落ちていくんです」

「……」

 

浦原は何も言わなかった。

言葉を挟めなかった。

 

馨はさらに続ける。

 

「本当に黒幕はいたんですか?」

 

その問いはまるで祈りだった。

 

「喜助さんは知っているんですか?……私に何が起きたのか」

「……」

「本当は誰が悪かったのか」

「……」

「全部」

 

部屋の空気が張り詰める。

浦原はしばらく黙っていた。

 

そして――

静かに目を逸らした。

 

その仕草を見た瞬間。

馨の胸が小さく痛んだ。

 

否定しない。

ということは。

 

「……言えないんですか」

 

浦原は小さく息を吐いた。

 

「言えないっスね」

 

苦笑にも似た声だった。

 

「少なくとも今は」

 

馨は黙る。

浦原もすぐには続けない。

 

やがて彼は膝の上で指を組みながら口を開いた。

 

「ボクはね、昔から変わらないんス」

 

視線を落としたまま言う。

 

「確信していることと証明できることは、別物だと思ってる」

 

その言葉は隊長時代から変わらない信念だった。

 

「怪しいと思うことはある、辻褄が合わないこともある、予想もある」

 

浦原自体も、追放された身

その時に見た"事実"

 

平子達が虚化する光景を

 

その背後で"暗躍するあの男"

 

「……仮説もある」

「……」

「でも」

 

そこで浦原は顔を上げた。

 

「証明できないことを事実として話すのは嫌なんスよ」

 

静かな声だった。

 

「それは研究者としても、元隊長としても……嫌なんス」

 

馨はじっと聞いていた。

浦原は続ける。

 

「もしボクが今、アナタに何かを伝えたとして、それが間違っていたらどうするんスか」

「……」

「アナタの人生を、また誰かの思い込みで振り回すことになる」

 

その言葉に馨は何も返せない。

 

あまりにも重かった。

あまりにも現実だった。

 

浦原は視線を細める。

 

「それに」

 

一瞬だけ言葉を迷った。

 

「アナタは優しい人だから」

 

馨が目を瞬く。

だが浦原は首を横に振った。

 

「いや……違うっスね。……"アナタは優しすぎる"」

 

静かに言った。

 

「だから危ない」

 

その言葉に馨の表情が僅かに曇る。

浦原は真っ直ぐ彼女を見る。

今度は目を逸らさない。

 

「もし本当に、もし仮に。アナタを陥れた誰かが存在したとして。その事実を今のアナタに伝えたら」

 

浦原の声が低くなる。

 

「アナタは正気でいられる自信がありますか?」

 

馨は息を止めた。

 

答えられない。

答えが分かってしまったからだ。

 

海燕の死。

失われた仲間達。

五十年間の逃亡。

失った人生。

 

もしそれら全てが誰かの悪意だったとしたら。

 

もし全てが仕組まれたものだったとしたら。

 

自分は――。

 

「……」

 

言葉にならない。

浦原はその沈黙を見ていた。

だからこそ言わなかった。

 

何十年も。

ずっと。

 

「アナタは強い」

 

その言葉は賞賛ではなかった。

――警告だった。

 

「強すぎるんス」

「……」

「隊長格とも渡り合える」

「……」

「鬼道の才能もある」

「……」

「アナタの斬魄刀も……言わずもがな危険です。」

「……」

「そして、戦う理由を見つけた時の執念も知ってる」

 

遠い昔。

 

十三番隊にいた頃から。

浦原は知っている。

 

この女性が一度覚悟を決めた時、誰にも止められないことを。

 

「もしアナタが憎しみだけで動いたら」

 

浦原は静かに言った。

 

「尸魂界そのものを敵に回すことだって出来る」

「……ッ……」

 

冗談ではない。

本気だった。

だからこそ。

 

「ボクは触れなかった。この数十年間、一度も。真実らしきものに」

「……」

「わざと」

 

襖の向こうで。

 

夜一が静かに目を閉じる。

彼女も知っていた。

 

浦原がどれほど慎重にこの話題を避け続けてきたのか。

 

どれほど馨を守ろうとしていたのか。

 

浦原は小さく笑った。

けれど、その笑みはどこか疲れて見えた。

 

「だから、確証がないことは言えない」

「……」

「言わない……"それがボクの答え"っス」

 

そう言った後。

 

浦原は真っ直ぐ馨を見つめる。

その瞳だけは、ひどく真剣だった。

 

「でも」

 

静かに。

はっきりと。

 

「だからこそ、アナタ自身が確かめるべきなんじゃないっスか」

 

その一言が。

数十年間閉ざされていた扉を、ゆっくりと軋ませるように響いた。

 

 

 

 

浦原の言葉は、どこまでも彼らしかった。

 

優しい。

けれど残酷だった。

 

救いのようでいて、決して逃げ道は与えない。

 

昔からそうだった。

誰かのために手を差し伸べるくせに、その手で現実から目を逸らすことだけは許さない。

 

それが浦原喜助という男だった。

 

馨は小さく息を吐いた。

そして苦笑する。

 

「……本当に」

 

掠れた声が漏れる。

 

「昔から変わりませんね」

 

浦原が肩をすくめる。

 

「そうっスか?」

「そうですよ」

 

少しだけ笑う。

その笑顔は懐かしさを含んでいた。

 

隊長だった頃。

研究室で難しい顔をしていた姿。

何かを企んでいる時の顔。

ひよ里に怒鳴られていた姿。

海燕とくだらない話をしていた姿。

 

思い出そうと思えばいくらでも浮かぶ。

 

それなのに。

今だけは。

そのどれもが遠かった。

 

馨は俯く。

膝の上で握った両手が震えていた。

自分でも気付かないほど小さく。

 

けれど確かに。

震えていた。

悔しかった。

 

悔しくてたまらなかった。

 

長い年月、何も知らないまま生きてきた。

 

逃げたかったわけじゃない。

忘れたかったわけでもない。

それでも前を向けなかった。

真実を知るのが怖かった。

 

知った先に何も残らないのが怖かった。

 

もし本当に自分が罪人だったら。

もし本当に誰かに利用されていたのだとしても。

 

どちらに転んでも苦しい。

 

胸の奥で様々な感情が渦を巻く。

 

怒り。

悲しみ。

後悔。

恐怖。

悔しさ。

懐かしさ。

 

全部が一度に押し寄せてくる。

 

息が苦しい。

視界が滲む。

 

唇を噛み締める。

涙だけは流すまいと必死に堪えていた。

 

その時だった。

 

ふわり、と。

温かな感触が肩を包む。

 

「……ッ……、」

 

馨は目を見開いた。

気付けば浦原がすぐ傍まで来ていた。

 

大きな手が背中へ回される。

 

そっと。

本当にそっと。

 

壊れ物に触れるような力加減で。

抱きしめられていた。

 

馨の身体が僅かに強張る。

浦原は何も言わない。

ただ背中を支えている。

まるで泣き疲れた子供をあやすように。

 

静かに。

優しく。

逃げ場を作るように。

 

その温もりに触れた瞬間。

張り詰めていたものが少しだけ緩んだ。

 

「……喜助さん…?」

 

小さな声。

浦原は肩越しに笑う。

 

「大丈夫ッスよ」

 

その声は驚くほど柔らかかった。

 

「ボクは」

 

一拍置く。

 

「アナタの弱さも知ってる」

 

背中を支える手が少しだけ強くなる。

 

「強さも知ってる」

 

昔から見てきた。

誰よりも近くで。

 

十三番隊三席だった頃から。

海燕の隣にいた頃から。

 

罪人になった日から。

現世へ逃げてきた日から。

誰も知らない時間を、彼だけは見てきた。

 

「きっと」

 

浦原は小さく笑う。

 

「誰よりも」

 

そしてわざとらしく声色を変えた。

 

「夜一サンよりも」

 

その瞬間。

襖の向こうから。

 

――ゴッ。

 

何かが壁にぶつかる音がした。

 

「……」

「……」

 

二人が同時に襖を見る。

 

沈黙。

その直後。

襖の向こうから聞こえる低い唸り声。

 

どう考えても怒っている。

浦原は吹き出しそうになるのを堪えながら肩を震わせた。

 

「ほら、聞こえてるっス」

「……ふっ……」

 

馨は思わず笑ってしまう。

心の底から零れた笑みだった。

 

浦原はそれを見て安心したように目を細める。

 

そして静かに続ける。

 

「だから、一人で抱えなくていいんスよ」

 

その言葉だけは。

 

冗談も。打算も。

誤魔化しもなかった。

 

純粋な本心だった。

 

「アナタが前を向くなら、ボクも夜一サンも手を貸します。」

「……」

「何度でも、何十年かかったって付き合うっスから」

 

その言葉に。

馨は目を閉じた。

肩越しに伝わる温もり。

 

襖の向こうで見守っている友。

失ったと思っていたもの。

もう戻らないと思っていたもの。

 

それらが今だけは、確かにここにあった。

 

そして初めて。

馨は小さく、本当に小さく。

 

その身体から力を抜いた。

 

 

┈┈┈┈

┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

 

 

 

翌日。

浦原商店の地下空間には、普段とは違う緊張感が漂っていた。

 

天井に設置された照明が白く床を照らしている。

 

その中央、穿界門の準備が進められていた。

 

技術開発局にも劣らない巨大な装置の前で、鉄斎が最終確認を行っている。

 

低い駆動音。

霊子の流れる音。

静かな空間の中で、それだけが響いていた。

 

誰もが分かっている。

ここから先は遊びではない。

本物の戦いだ。

 

命を懸けた旅になる。

だからこそ、騒がしいはずの面々も今日はどこか静かだった。

 

一護は腕を組みながら穿界門を見上げている。

 

石田は眼鏡を押し上げながら最終確認。

 

茶渡は変わらず無言。

 

織姫だけが不安と期待の入り混じった表情で辺りを見回していた。

 

その少し後ろ。

馨は静かに立っていた。

 

いつもの現世の姿で。

斬魄刀も腰にはない。

 

戦う者の姿ではなく。

 

"送り出す者の姿"だった。

 

誰も口にはしない。

だが全員知っている。

 

馨は来ない。

共に尸魂界へ向かわない。

 

それでも。

誰一人として責める者はいなかった。

 

この数日で知ったからだ。

彼女がどれほど苦しみながら生きてきたのかを。

 

どれほどの過去を背負っているのかを。

 

だから。

誰もその決断を否定しなかった。

 

馨は一人一人の顔を見る。

そして柔らかく微笑んだ。

 

「織姫」

「は、はい!」

 

急に名前を呼ばれた織姫がぴしっと背筋を伸ばす。

 

その反応に思わず周囲の空気が少し和らいだ。

 

「無茶はしないこと」

 

優しい声だった。

 

「危ないと思ったら下がる」

「はい!」

「仲間を信じる」

「はい!」

「自分一人で抱え込まない」

 

まるで姉のような言葉。

織姫は何度も頷く。

 

「は、はい!頑張ります!」

「うん」

 

馨は微笑む。

 

「でも頑張りすぎないでね」

 

その言葉に織姫の目が少し潤んだ。

 

 

次に視線が移る。

 

「石田」

「なんだ」

 

眼鏡を押し上げる石田。

相変わらず落ち着いている。

 

馨は数秒だけ彼を見ていた。

 

そして。

 

「……その服装」

「?」

「目立つから気を付けなよ?」

 

沈黙。

 

一秒。

 

二秒。

 

石田が固まる。

 

「は?」

「いや、だから」

 

馨は真面目な顔で続ける。

 

「どう見ても怪しいでしょ?白すぎるし」

「な!」

「マントみたいなの付いてるし、敵地潜入向きではないと思う」

 

「「……」」

 

地下が静まり返る。

 

次の瞬間。

 

「ぶっ」

 

一護が吹き出した。

 

「ぶあっっはっはっはっ!!言われてやんの石田!」

 

「うるさい黒崎!」

 

石田が顔を真っ赤にする。

 

「これは滅却師の正装だ!機能性もある!」

 

「へぇ」

 

馨は首を傾げた。

 

「でも目立つよね?」

「ぐっ……!」

 

完全に言い返せない。

周囲から笑いが漏れる。

張り詰めていた空気が少しだけ柔らかくなった。

 

そして。

馨は茶渡へ視線を向けた。

 

「茶渡」

「ん」

 

短い返事。

変わらない。

だがそれで十分だった。

 

馨は少しだけ目を細める。

 

「一護をお願いね」

「……ああ」

 

茶渡は静かに頷く。

それだけで十分信頼が伝わる。

 

だが、その直後。

 

「なんでだよ!」

 

一護が即座に反応した。

 

「なんで俺だけ心配されてんだよ!」

「お前が一番無茶するからだろ」

 

石田。

 

「黒崎くんですし」

 

織姫。

 

「ん」

 

茶渡。

 

「皆してひでぇ!」

 

地下に笑い声が響く。

馨も思わず吹き出した。

 

本当に。

不思議な子達だった。

 

こんな状況なのに。

こんなに笑える。

 

だからこそ。

きっと大丈夫なのかもしれない。

 

そんな気がした。

 

 

やがて、馨の視線が最後の一人へ向く。

 

夜一。

 

人の姿となった彼女が腕を組みながら立っている。

 

長い付き合いだ。

言葉など必要ない。

 

それでも。

馨はゆっくり頭を下げた。

 

深く。

静かに。

 

「……夜一さん」

 

夜一は片眉を上げる。

 

「なんじゃ」

「……よろしくお願いします」

 

その一言だった。

様々な想いが込められている。

 

守ってほしい。

見届けてほしい。

彼らを導いてほしい。

 

そして――

もし自分が行けなかったとしても。

 

自分の代わりに。

 

夜一は数秒だけ黙っていた。

やがて小さく笑う。

 

昔と変わらない。

自信に満ちた笑みだった。

 

「任せておけ」

 

短い言葉。

それだけで十分だった。

 

馨は小さく息を吐く。

胸の奥の重石が少し軽くなる。

 

その時、鉄斎の声が響いた。

 

「準備が整いました」

 

地下空間が再び静まる。

穿界門がゆっくりと起動を始める。

 

巨大な扉の向こうに広がるのは断界。

 

そしてその先にある尸魂界。

 

運命が動き出す場所。

一護達は前を向く。

 

誰も振り返らない。

それでも、背中越しに伝わる。

 

送り出してくれる人達の存在が。

馨は静かにその姿を見つめていた。

 

まるで祈るように。

誰よりも優しい眼差しで。

 

 

 

鉄斎の術式が完成する。

轟音と共に穿界門が開いた。

 

巨大な光の柱。

揺らぐ霊子の奔流。

その先には断界が広がっている。

 

一歩踏み出せば、もう後戻りはできない。

 

地下空間に緊張が走る。

 

一護たちは門の前へ並ぶ。

夜一が先頭へ立つ。

石田が眼鏡を押し上げる。

茶渡が拳を握る。

織姫が小さく深呼吸する。

 

そして。

いよいよ飛び込もうとした、その瞬間だった。

 

「――あ」

 

一護が足を止める。

 

夜一が振り返る。

 

「なんじゃ?」

 

だが一護は答えない。

そのまま振り返った。

 

真っ直ぐ。

地下の奥に立つ馨を見る。

 

突然名前を呼ばれたわけでもない。

視線だけだった。

 

それなのに。

馨は思わず息を呑む。

 

一護の顔は不思議なほど真剣だった。

 

いつもの生意気な顔でもない。

怒っている顔でもない、笑っている顔でもない。

 

ただ真っ直ぐだった。

 

「"馨"」

 

静かな声だった。

 

地下空間が静まり返る。

誰も口を挟まない。

一護は数歩だけ馨へ向き直る。

 

そして頭を掻いた。

少し照れ臭そうに。

何を言うか迷っているように。

 

だが次の瞬間には、いつもの一護らしく笑った。

 

「お前さ」

 

その笑顔に。

馨の胸が少しだけ締め付けられる。

 

「なんかずっと一人で抱え込みすぎなんだよ」

 

馨が目を見開く。

 

一護は構わず続けた。

 

「過去がどうとか、真実がどうとか、怖いとか……そんなの全部分かんねぇけど」

 

言葉は不器用だった。

綺麗じゃない。

 

でも。

だからこそ真っ直ぐだった。

 

「"俺は行く"」

 

一護は穿界門へ親指を向ける。

 

「お前の代わりに、お前の分まで、戦ってくる」

 

馨の瞳が揺れる。

 

一護は笑った。

まるで当然のことを言うように。

 

「だから怖がるな」

 

その言葉に。

馨の肩が僅かに震える。

 

一護はさらに続ける。

 

「""任せろ""」

 

断言だった。

何の迷いもない。

 

「ルキアは俺が助ける。絶対に助ける。誰にも文句言わせねぇ」

「ッ……」

「絶対だ」

 

その言葉は宣言だった。

誰に向けたものでもない。

 

ただ。

馨に向けた誓いだった。

 

「だから」

 

一護は真っ直ぐ彼女を見る。

 

オレンジ色の髪の下。

真っ直ぐな瞳。

 

どこか。

遠い昔に見た誰かと重なるほどに。

 

真っ直ぐな目。

 

「信じてくれ」

 

馨の息が止まる。

海燕ではない。

分かっている。

全く違う人間だ。

 

声も違う。

生き方も違う。

背負うものも違う。

 

それなのに。

どうしてだろう。

 

その瞬間だけ。

あの日の海燕が重なった。

 

『大丈夫だ』

 

そう言って笑った男の姿が。

 

胸の奥に蘇る。

馨は何も言えなかった。

 

言葉が出てこない。

 

代わりに小さく笑った。

 

本当に小さく。

泣きそうなほど優しい笑みだった。

 

「……はい」

 

それだけだった。

 

だが。

一護は満足そうに笑う。

 

「よし」

 

いつもの顔だ。

いつもの黒崎一護だ。

 

「じゃあ行ってくる」

 

まるで近所へ出かけるみたいな言い方だった。

 

石田が呆れる。

 

「少しは緊張感を持て」

「うるせぇ」

 

織姫が慌てて続く。

 

「ま、待ってよ!黒崎くーん!」

 

茶渡も歩き出す。

 

夜一が肩を竦める。

 

「やれやれ」

 

そして。

五人は駆け出した。

 

光の中へ。

断界へ。

尸魂界へ。

 

未来へ。

 

一瞬でその背中が遠ざかる。

最後に見えたのは。

 

――振り返ることなく前を向く一護の姿だった。

 

 

 

光が弾ける。

穿界門が閉じていく。

 

静寂。

地下空間から音が消える。

 

残されたのは。

 

浦原。

鉄斎。

ジン太。

雨。

そして馨。

 

馨はしばらく動かなかった。

閉じた門を見つめ続けていた。

 

胸の奥に残る言葉。

 

『お前の分まで戦ってくる』

『怖がるな』

『信じてくれ』

 

ゆっくりと。

本当にゆっくりと。

馨の手が胸元へ添えられる。

 

鼓動が聞こえる。

少しだけ。

ほんの少しだけ。

 

止まっていた時間が動き出したような気がした。

 

そして誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。

 

「……気を付けて」

 

その祈りだけが。

静かな地下空間へ溶けていった。

 

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

┈┈┈┈┈┈┈┈┈

┈┈┈┈┈┈┈┈

┈┈┈┈┈┈┈

┈┈┈┈┈┈

┈┈┈┈┈

 

 

 

 

 

┈┈┈ ┈┈┈

┈┈ ┈┈┈┈ ┈┈┈┈

 

 

――尸魂界

瀞霊廷――

 

十三番隊隊舎

 

 

┈┈┈┈┈

 

 

 

 

 

昼下がりの柔らかな陽射しが縁側へ差し込み、庭の木々を優しく照らしていた。

 

風が吹くたび、葉が揺れる。

遠くでは隊士たちの訓練する声が微かに聞こえる。

 

だが、この場所だけはどこか穏やかな時間が流れていた。

 

縁側に並んで座る二人の隊長。

 

浮竹十四郎。

そして京楽春水。

 

浮竹の手には湯気の立つ湯呑み。

京楽の手には昼間から飲む酒瓶と盃。

 

昔から変わらない光景だった。

 

ただ一つ違うのは。

二人とも、どこか浮かない顔をしていることだった。

 

 

「……」

 

京楽は盃を傾けながら空を見上げる。

 

雲ひとつない青空。

あまりにも平和な景色だった。

だからこそ、余計に嫌になる。

 

「……あと少しだねぇ」

 

ぽつりと呟く。

浮竹は視線を向けなかった。

 

それでも誰の話か分かる。

 

「ルキアちゃん」

 

京楽は酒を一口飲む。

 

「あと数日、それだけで処刑だなんて」

 

小さく笑う。

だがその笑みは乾いていた。

 

「まったく……歳を取ると嫌なもんばかり見せられる」

 

浮竹は何も言わない。

湯呑みを握る指先だけが僅かに力を帯びる。

 

京楽は横目で友を見る。

そして静かに続けた。

 

「思い出すよ」

 

風が吹く。

 

「"馨ちゃんのこと"」

 

その瞬間。

浮竹の手が止まった。

 

湯呑みを持つ指に力が入る。

拳が震える。

五十年経った今でも。

 

その名前は特別だった。

 

沈黙が落ちる。

京楽もそれ以上すぐには言わなかった。

 

やがて酒を揺らしながら口を開く。

 

「六番隊から回ってきた報告書、読んだよ」

 

浮竹が視線を向ける。

京楽は苦笑した。

 

「朽木白哉、阿散井恋次。朽木ルキアを現世から連れ帰った時の報告」

 

一枚の紙を思い出す。

淡々と書かれた事実。

 

任務内容。

戦闘記録。

 

そして。

そこに紛れるように書かれていた名前。

 

「現場に別の死神が介入」

 

「阿散井副隊長の蛇尾丸を素手で制止」

 

「朽木隊長と短時間接触」

 

「その後戦闘行為なし」

 

京楽は盃を口元へ運ぶ。

 

「最初は見間違いかと思ったよ」

 

小さく笑う。

 

「だってさ……死んだことになってる人の名前が書いてあったんだから」

 

浮竹は目を閉じる。

 

知っている。

何度も読んだ。

 

何度も。

何度も。

 

信じられなくて。

 

「""生きててよかった""」

 

京楽が呟く。

その声だけは本物だった。

 

「本当に……生きててよかった」

 

浮竹は静かに俯く。

胸の奥が少し熱くなる。

 

 

長かった。

本当に長かった。

 

生きている。

その事実だけで救われるものがある。

 

京楽はふと思い出したように笑った。

 

「ああ、そうそう。七緒ちゃんにも話したんだよ」

 

浮竹が顔を上げる。

 

「七緒に?」

「うん」

 

京楽は頷く。

 

「こっそりね?馨ちゃんが生きてたって」

 

少し懐かしそうに目を細める。

 

「居なくなってから酷かったんだから、七緒ちゃん」

 

浮竹も覚えていた。

まだ小さかった伊勢七緒。

 

隊舎へ遊びに来るたび。

馨の後ろをちょこちょこ付いて歩いていた。

 

本を読んでもらうのが好きだった。

鬼道を教えてもらうのが好きだった。

髪を結ってもらうのが好きだった。

 

姉のように慕っていた。

 

「泣いてたよ」

 

京楽が笑う。

 

「大泣き。馨ちゃんは優しいお姉さんだったからねぇ」

 

風が吹く。

庭の木々が揺れる。

浮竹は静かに胸元へ手を伸ばした。

 

懐から小さなケースを取り出す。

年季の入った古い革のケース。

 

丁寧に保管されてきたことが分かる。

 

京楽が視線を向ける。

浮竹はゆっくりそれを開いた。

 

中に入っていたのは一枚の写真。

 

古い。少し色褪せている。

それでも大切に残されていた。

 

志波海燕。

そして無類井馨。

 

二人が並んで笑っている。

祝言の日だった。

 

幸せそのもののような笑顔。

まだ何も失っていない頃。

まだ未来を信じていた頃。

 

浮竹は親指で写真の端をなぞる。

 

「……」

 

何も言わない。

言葉にできない。

 

京楽も黙っていた。

ただ横目でその写真を見る。

 

そして微かに笑った。

寂しそうに。

優しく。

 

「綺麗な写真だねぇ」

 

浮竹の口元が僅かに緩む。

 

「……ああ」

 

小さな返事。

それだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

""その時だった""

 

不意に。

世界が軋んだ。

 

瀞霊廷上空に巨大な衝撃が走った。

 

空が揺れる。

霊子で形成された瀞霊廷の結界が大きく波打った。

 

まるで湖面へ巨大な岩を投げ込んだかのように。

 

空間そのものが震える。

 

「――ッ!?」

 

浮竹が目を見開く。

 

次の瞬間。

 

遥か上空。

青空の彼方で。

巨大な光が炸裂した。

 

轟音。

凄まじい霊圧。

 

結界へ正面から突っ込む莫大な力。

瀞霊廷全域へ警報のような緊張が走る。

隊士たちが一斉に空を見上げる。

 

「あれは……!」

「侵入者だ!」

「結界が破られるぞ!」

 

悲鳴にも似た声が各所から上がる。

 

空では巨大な光球が結界へ激突していた。

 

霊子の殻。

志波家秘伝――花鶴大砲。

 

普通なら侵入不可能な瀞霊廷へ。

 

正面から。

力尽くで。

 

文字通り突っ込んできている。

その光景を見上げながら。

 

浮竹は唖然とした。

 

「なんという無茶を……」

 

結界へ挑むなど正気ではない。

普通なら考えもしない。

 

だが。

その無茶苦茶さにどこか見覚えがあった。

 

京楽も同じだった。

帽子を押さえながら空を見上げる。

 

そして。

思わず吹き出した。

 

「はは」

 

肩を揺らす。

 

「大胆だねぇ」

 

さらに大きな衝撃。

結界が悲鳴を上げる。

 

「最近の若い子は」

 

京楽は楽しそうに笑う。

 

「瀞霊廷に侵入する時も正門を使わないらしい」

 

浮竹が呆れたように振り返る。

 

「笑い事じゃないだろう」

「いやいや」

 

京楽は肩を竦めた。

 

「だってさ」

 

そして空を指差す。

 

そこでは今まさに。

巨大な光球が結界を突き破ろうとしていた。

 

「普通は隠れて入るじゃない?それを真正面から大砲で撃ち込んでくるんだよ?発想がもう賊軍なんだよねぇ」

 

浮竹は頭を抱えたくなった。

 

だが。

その時。

結界の一部が弾け飛ぶ。

 

眩い光。

霊子の奔流。

 

そして。

 

突入。

 

巨大な光球が瀞霊廷内部へ侵入した。

 

各隊から驚愕の霊圧が立ち昇る。

 

隊長格たちも異変に気付き始める。

 

静かだった尸魂界が一瞬で騒然となった。

 

京楽は目を細める。

 

光の向こう。

 

微かに感じる霊圧。

 

若い。

 

荒削り。

 

けれど妙に真っ直ぐな力。

 

「へぇ」

 

小さく笑う。

 

「面白い子たちが来たもんだ」

 

浮竹も空を見上げる。

 

侵入者。

""旅禍""

 

本来なら即座に排除すべき存在。

 

それなのに。

胸の奥で何かが引っ掛かっていた。

 

ルキア。

 

馨。

 

五十年前。

 

そして今。

 

止まっていた歯車が回り始める音がする。

 

京楽は帽子のつばを持ち上げる。

 

口元には笑み。

 

だが目だけは鋭かった。

 

「さて」

 

ゆっくりと振り返る。

 

隊長として。

護廷十三隊として。

迎え撃つ時だ。

 

「本格的に始まったねぇ」

 

その言葉と共に。

尸魂界を揺るがす戦いの幕が上がった。

 

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。