思い付いたらどうしても書きたくなってしまいました。
薄く輝く
「まったく、不愉快な気配だな」
彼はふと殺気に近い何かに気づき、その嫌な臭いのする方角へと足を進めた。
そして、しばらく歩みを進めて、その光景を見て彼は足を止めた。そこには殺気発った大量の群衆が何者かを取り囲むようにしていた。
「お~お~。こりゃ酷ぇなぁ。あんたらが善人か悪人かは知らんが、イジメやリンチはよくねぇぜ。ほらどいたどいた」
彼は殺気に満ち溢れている群衆へ話しかけるが、彼らはその男の方へ振り向くと敵意を剥き出しにして襲いかかってきた。その群れには神父服を着た普通の人間もいれば、よく見ると、黒い鳥のような翼を生やした人に似た人ならざる者ーーいわゆる堕天使もその中にはいた。
「ったく、殺るしかねぇか!」
男は心の中でため息をつきながら、もう一本の槍をどこからか取り出した。それは赤い血のような色をした黄金色のものよりも少々長い槍である。
「フゥッ、セアァ!」
二本の槍を巧みに操り、自分に敵意を向けてきた者達の心臓を刺し貫いたり、身体を斬り裂きながら次々になぎ倒していった。
「クソッ、貴様何者だ!」
「んだよ、これから死んでいく者達やまともに戦う気もない者達に名乗る必要もないだろ?ま、因果応報ってことだな。弱いものイジメをしていたお前達が悪い」
彼はそう言い切り、鬼神のような力を烏合の衆に見せつけた。
「ふぅ、一通り片付いたか」
彼の周りには複数の死体が転がっている。襲いかかってきた者だけを始末していったので、頭数はそこまで多くはなかった。ほとんどの者達はこの槍使いに勝てないと判断して逃げ出してしまったのだ。
「…………お兄さんは誰?」
「ん?」
彼は突如声をかけられ、後ろを振り向いた。そこにはまだ10歳にも満たないであろう蒼髪の男の子が地べたに座り込んでいた。おそらく、さっきまで襲われかけていたのはこの子なのだろう。
「これは……」
後ろを見たとき、彼は驚いた。その男の子の周りの地面には、形も色も異なった無数の槍が突き刺さっているのだ。……否、その表現は正しくない。正確に言えば、槍の刃先は全て空を向いていて、まるで、地面から生えているかのようにそれらはその場に存在している。
「……おっと、俺の素性を訊かれてるんだったな。俺は通りすがりの
ランサーは笑みを含めながら男の子にそう言うが、男の子はそれに対して、笑い返しはしなかった。
「笑う元気も無い……か。ボウズ、こいつはお前の仕業かい?」
地面にある大量の槍を指さしながらランサーは訊ねる。すると、男の子は何を訊かれているのかわからないという顔をして首を傾げた。ランサーはそれを見て、ため息をつき後頭部をポリポリと掻いた。
「じゃあボウズ、お前はーー」
ランサーは突然、持っていた赤い槍を頭上でクルクル回したかと思うと、
「生きたいか?」
男の子の首に矛先を向けた。しかし、男の子はなんの反応も見せずにただただキョトンとしているだけだった。それを見て、ランサーは槍をまたさっきと同じように肩へ乗っけて、
「アッハッハッハ。冗談だよ冗談。こういうことを言ってみたい衝動に駆られてな。驚かして悪かった」
そう言って、からからと笑っていた。
「…………教えて」
「ん、なんだい?」
さっきまでなんの反応も見せなかった男の子が突然、自分から声を発した。
「それの使い方教えて、槍使いさん」
男の子は肩に乗ってある赤い槍を指差しはっきりとした声で言った。おまけに、その槍をじっと見ている目はキラキラと輝いていた。
「……はぁ?」
その言葉はあまりにも予想外の一言だったのか、それを聞いてすっとんきょうな声を出し、一拍間を空けた後、彼はまた笑った。
「ハハハハ。お前、面白い奴だな。よし、いいだろう、お前に俺の『とっておき』を教えてやるよ」
「とっておき?」
男の子は嬉しそうな顔をしながらも、その単語に対して疑問符を浮かべていた。
「おうさ。だからついてきな」
そう言って、ランサーは踵を返して歩き出したが、ふとあることを思い出し、
「あー、忘れった。お前、名前なんていうんだ?」
ランサーは男の子に問いかけるが、その問いに男の子は元気のいい声で答えたのだった。
「レン」
そして、その言葉と同時に大量発生していた槍は光の粒子となって消え去った。ーー真紅の禍々しいオーラを纏った槍をただ一本だけ残して。
これが魔槍使いの少年とその師匠の出会いだった。