魔槍使いの半英霊   作:保志白金

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今回は文章量少なめです。
それと、禁手の形態はMr.凸凹さんの案を使わせてもらいます。


紅の魔槍

 時はレンが学校を卒業する直前の冬のある日に遡る。レンはいつものようにランサーと模擬戦闘をしていた。互いに『鉄血転化』を発動させて。

 

「オラオラァッ!」

 

「ハァァァァッ!」

 

 何度も何度も金属がぶつかり合う音が轟音のように鳴り響き、二人が立っている地面は抉れ反って茶色の土が見えていた。それだけの激しい戦闘を繰り広げることができるほど、レンの実力はランサーの本気に限りなく近付いていたのだった。

 

「ハッ、脇が甘えぇ!」

 

 ランサーの強烈な凪ぎ払いが放たれる。

 

「ガッ!」

 

 その時のレンでは、その攻撃を受けきることが精一杯でそれを真正面から受け止めて、後ろに大きく吹き飛ばされてしまった。ランサーは手加減など、一切なしにそのまま驚異的な加速で追撃する体勢に入った。

 

「いけぇ!スピア・バァース」

 

 レンはさっき飛ばされた勢いそのまま、足を引きずらせながら、能力を一気に解放させる。すると、空中からは雨のように魔槍がランサーに向かって降りかかっていく。

 

「相変わらずあきらめが悪いな。まぁ、それがお前の良いところだが」

 

 そんなことをランサーは言いつつ、魔槍の雨を前進しながらかわしていく。

 

「まだだぁ!」

 

 レンが再び叫ぶと、今度は地面から剣山のように魔槍が伸び、ランサーに襲いかかる。上と下からの同時攻撃。射程幅も20メートルは余裕にある。それらは互いに交わり合うと、まるで、生きた蛇のようにうねらせて、ランサーに向かっていく。

 

「うおっ、マジか」

 

 後ろに逃げ道は存在するが、ランサーは全速力でこちらに向かってきているので、急には止まれないだろう。ーーとレンはそう考えたのだ。ところが、

 

「ふぃー。いままでで一番惜しかったな」

 

 それでも、ランサーは横に跳んで、ギリギリのところで避けたのである。

 

「ハァハァ……」

 

 肩で大きく息をしているレン。ほとんどの体力を今の全力攻撃に費やしたレンに、ランサーと互角に戦う力はもう残っていないだろう。

 

 しかし、紅く染まった瞳は未だに生気を失っていない。心は折れていなかったのだ。

 

「まだ……だ」

 

 最後の力を振り絞り、やっとの思いで魔槍を一本創り出すと、両手で強く握りしめた。そして、ランサーに向かって最後(渾身)の一撃を突き出した。

 

「ウォォォォォッ!」

 

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

 

「……う~ん、あれ?」

 

 レンはいつの間にか地面に仰向けになって、気を失っていた。もっとも、彼がどの段階から意識を手放していたのかはわからない。

 

「ようやく起きやがったか。ったく、最後の最後にぶっ倒れやがって」

 

「アハハハ……」

 

 ランサーはやれやれと言わんばかりに溜め息をついていた。

 

「ま、そんぐらい死ぬ気でやってようやく俺に一発入れることができたわけだ」

 

「えっ?」

 

 ランサーがさらっと流し気味に言った言葉にレンは変な声を出した。よく見ると、ランサーの左頬には修行前に無かった一筋の切り傷ができていた。

 

 レンが酷く驚くのも当たり前である。初めてこの修行でランサーに、形はどうであれ勝つことができたのだから。

 

 そして、ランサーはいつもよりも真剣な表情をつくると、改めてレンに面と向かって話し始める。

 

「それでな、この際だから、お前にこいつを返す」

 

 そう言って、ランサーは鮮やかな紅い色をした槍を前に差し出す。その槍はランサーがいつも振るっている魔槍に姿形が似ているが、それよりも柄の部分が長く、刃先も心なしか鋭い。レンにとっては見た覚えも触った覚えもない槍だったので、レンは困惑気味に訊ねる。

 

「これが俺の所有物……なんですか?」

 

「突然の話で信じられないのはわかるが、そうだ」

 

 ランサーはその問いに肯定すると、言葉を続ける。

 

「俺と出会ったあの時から神器と共にお前の所有していた……いや、お前に憑いていたと表現した方が近いのかもしれねぇ。こいつはレンだけを主と認めているらしくてな、俺には扱おうにも扱えなかった」

 

 つまり、ランサーのこの話からすると、この紅い槍はレン専用らしいのだ。レンはこの話をを最後まで聞くと、ランサーが前に出していた紅い槍を受け取った。

 

「これは……!」

 

 レンは手に取った瞬間、驚きの声をあげた。これに関しての記憶がなにもかも一切なかったはずなのに、触っただけでどこか懐かしく感じたからであった。レンにとって、いままで創ってきたどの魔槍よりも手に馴染んでいるのだった。

 

「その魔槍には俺なんかじゃ推し測ることができない程の潜在能力を秘めている。俺の持つ二本よりも強力な得物なのかもしれん」

 

「そ、そうですか……」

 

 実際に実物を持ってみても、ランサーの話を聞いても、レンは未だにピンときてない様子で、微妙そうな顔をしていた。ランサーはその様子を察しながらも続ける。

 

「だからこそ、こいつを使うときは一回考えろ。なんのためにこの魔槍を振るうのかを、だ」

 

「なんのために……ですか?」

 

「そうだ。どんなに強大な力を持とうが、何も考えずに使い方を間違えてしまえば、そこで自分を見失うだろうさ」

 

 この時ランサーが語ったことを、レンは恐らく理解していなかっただろう。この魔槍を使う場面も想像できていなかっただろうし、躊躇うこと無く振るう覚悟すら固まっていなかっただろう。

 

「まぁ、ちょっと危険な要素があったからこそ、いままで俺が預かってきたがもう大丈夫だろう。お前に完全に返す。今のお前ならその力に振り回されることなく、使いこなせるはずだ」

 

 ランサーはそんなことを最後に言って、この話を締めくくった。

 

「さて、腹も減ったことだし飯にすっか。いつまでも寝てないで、お前も準備手伝えよ」

 

 そして、真面目な話が終わったかと思うと、すぐに別なことにベクトルを切り替えたのだった。

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