魔槍使いの半英霊   作:保志白金

2 / 57
タグにあるFateやチャイカからは基本的に武器や技を登場させます。


魔槍使いの少年期1

 あの不思議な出会いから時は流れて、既に一年以上は経っていた。レンはあの時魅せられた槍捌きを教えてもらうため、北欧ーーアイルランドのはずれの小さな山にある小屋でランサーと共に生活している。そして、毎日のように槍術の修行に明け暮れていた。

 

「師匠、朝です。起きてくださいよ」

 

 レンは未だに寝ている師匠を起こそうと声をかけるが、

 

「んあぁ~?飯の準備ができたら起きてやっから何でもいい、とっとと狩ってこ~い」

 

 そんなことを言って、起きる素振りをまったく見せなかった。

 

「師匠はいつもいつもこれなんだから。……行ってきます」

 

 レンは深いため息をつきながらも腰を上げ、小屋から外へと出ていった。そして、森林の中へと入っていった。

 

「今日は何がいるかな?」

 

 レンは手頃な槍を片手に『創造』させて、獲物を探している。

 

 彼の特殊な力は己の身に神器(セイクリッド・ギア)というものが宿っているからであった。その神器の能力は任意の魔槍を創り出せるーー『魔槍創造(スピア・バース)』という『魔剣創造(ソード・バース)』の亜種タイプの神器。

 

 出会ったあの日に、レンはランサーにこのことを聞かされて、初めて自分の能力であるということを認識したのである。

 

「うん。これなら今の俺でも振り回せる。それに前に創ったものよりも投げやすそうだな」

 

 ランサーとの修行に加えて、神器を使いこなすための特訓も同時に行っている。その成果は時間が経つにつれて、レン自身が実感できるぐらいに現れていた。

 

 小屋を出発して、しばらく時間が経過した頃、生き物の気配を感じ取り、レンは歩みを止めた。

 

「……ッ!よし、今日は猪鍋がいいな」

 

 レンの目の前には体長約1メートルほどのイノシシがのそのそとレンの前を横切るように歩いている。レンは槍を投げるように逆手で持ち直し、息を極力殺して構えると、獲物であるイノシシに照準を定めた。

 

「……フゥゥ~」

 

 そして、自分を落ち着かせるように静かに息を吐き、

 

ヒュッ!

 

 槍を投げた。投げられた槍はイノシシの急所を的確に捉え、一発で仕留めた。それを見ていたレンは小さくガッツポーズをして喜んだ。

 

「よっし。こんなでかい獲物、初めて一発で仕留めた!」

 

 それから、レンは新たに創造した小さめの槍を使い、その場でイノシシをさばき始めた。食べられなさそうな部位は土に埋めて、肉を袋に詰めて小屋へ向かって帰っていった。

 

 

 

「はぁ~、これまたどえらいもんを狩ってきたもんだな」

 

「ふふん、どうですか師匠。というわけで今日は鍋にしましょうよ」

 

 レンは得意気な顔をして、ランサーに料理を遠回しに催促する。

 

「わかったわかった。美味いもんつくってやっから少し待っとけ」

 

 彼らの一日はこうしていつもと変わらずに始まった。

 

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

 

 場所は変わって小屋の外。二人はそれぞれの槍を構えて、互いに向かい合っている。

 

「それでは、いきます!」

 

 気合い十分なレンに対して、ランサーは首をポキポキ鳴らして大きな欠伸をしながらそれに応えた。

 

「ういうい。どっからでもかかってきな」

 

「ハァァッ、セイッ!」

 

 レンは槍で突きのラッシュを放つが、ランサーはそれらを容易に受け流していく。まるで水のようにスルスルと。

 

「いつも言ってるだろ?お前は単純過ぎるんだよ」

 

 ランサーはそう言いながら黄金色の槍で凪ぎ払った。その鋭い攻撃をレンは新しく槍を創り、二本の槍で受け止める。そして、ほぼゼロ距離のままランサーを攻め立てた。しかし、ランサーはレンの動きを読めていたかのように、絶妙なタイミングでカウンターを返してきた。たまらずレンは後ろに飛び退くと、右手に持っていた槍を投擲した。

 

「お前にしてはなかなかの投擲だ。……が、まだまだだな」

 

 一直線かつかなりの速度で飛んでいった魔槍であったが、ランサーはこれもまた難なくかわしていった。

 

「どうした、もう終わりか?」

 

「まだまだ。これからじゃないですか!」

 

 

 

 

 

「はぁはぁはぁ」

 

 修行が始まってかれこれ30分近くは経っていた。レンは肩で息をしながら疲れた様子を見せているのに対して、ランサーはまだ余裕の表情を浮かべている。

 

「さて、今日もそろそろ終わりにすっか」

 

 ちなみに、この修行はどちらかの攻撃が一発でも体に当たればそこで終わりーーという決まりで、いつも行われている。ランサーは自分からの全力攻撃をなるべくひかえているので、毎回、ある程度の時間までならなんとかレンが粘れているのである。

 

 そして、ランサーがようやく自分から動き出そうとしたその時だった。

 

「フゥーッ。……我は鋼なり、鋼故に怯まず、鋼故に惑わず、一度敵に逢うては一切合切の躊躇無く。これを討ち滅ぼす凶器なりーー『鉄血転化(てっけつてんか)』!」

 

 レンは大きく一息吐いた後、何かの呪文を唱えるかのように言葉を繋げるとレンに変化が起きた。身体の全身から赤いオーラを発して、蒼い色だった髪や瞳は赤くなった。さらに、両頬には十字傷のような紋様が浮かび上がっていた。

 

「うおっ、マジかよ。お前いつの間にか『鉄血転化』を使えるようになったのか!」

 

 先程とはうって変わって、機動力が段違いに跳ね上がったレンが二本の槍を両手で振り回しランサーを追いかける。

 

「ハァァァァッ!」

 

「おっと、さすがにこれはまずいかもな」

 

 ランサーもさっきまでは余裕だったはずなのだが、その表情は笑いながらもやや焦りの色を見せていた。レンはランサーの右手に握られた魔槍を上に弾き飛ばして、空いている腹部に一撃を振り払った。それでもランサーはレンの攻撃を防いだ。異空間から左手で取り出した赤い魔槍で。

 

「まさか、俺が二本目を使うことになるとは……な!」

 

 赤い魔槍をそのまま横に凪いで、レンを吹き飛ばすランサー。そこから即座に立ち直って、レンは再びランサーへ突っ込んでいく。

 

「今日こそ勝ちます!」

 

「へっ、お前にはまだ早いね。師匠ってもんはそう簡単に負けないって決まってんだ!」

 

 

 

 

 それから、さらに30分経った段階で勝敗が分かれた。結局レンの負けで今日の修行も終わった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。