「はうぅ、死にそうなくらい恥ずかしかったです……」
ロスヴァイセは顔を手で覆い隠し、今にも泣きだしそうな声で言った。彼女がどれだけ恥ずかしい思いをしたのかは、手で隠せていない耳を真っ赤にしていることが全てを物語っている。
レンの部屋の前に立っていたロスヴァイセは、あれから部屋に強引に押し入って、レンをそのまま床に押し倒した。そして、仰向けになっているレンに乗っかりながら、胸の方に手を持っていこうとしていたところで、レンは彼女の拘束を振りほどき逆に彼女の両腕を押さえ込んだ。
ーーそれで、しばらく時間が経過した後、ロスヴァイセは元に戻っていた。
(敵の術……という訳では無かったみたいだし、とりあえずひと安心だな)
レンは先程のロスヴァイセから鬼気迫る何かを感じ取り、それは『
「アハハ、俺は別に気にしてないから大丈夫!」
「う~、笑い事じゃないですよ!それに、レン君が気にならなくとも私が気にします!」
レンは声を出して笑いながら、ロスヴァイセに向けてサムズアップをするが、彼女は頬を膨らませて可愛らしく怒っていた。
「まぁまぁ。ほら水でも飲んで落ち着きなって」
「あ、ありがとうございます」
まだ頭に血が上っているロスヴァイセに、レンはごく自然な流れでミネラルウォーターが入っているペットボトルを差し出す。そのペットボトルのキャップはレンによって既に一回開けられており、水かさも僅かに少なくなっていたのだが、そのようなことにロスヴァイセは全く気付いていなかった。
「さてと時間もあまり無いことだし、そろそろ出発しようか」
「……それもそうですね。そうと決まれば、早く行きましょう!」
ロスヴァイセはさっきまでの嫌な記憶を吹っ切るように元気な声で答えたのだった。ーーが、
「出発前はあんなに張り切ってたのに、結局、店をそんなに回ることできませんでした。こうなったのも全部私のせいですよね」
「まぁまぁ、明日もあるんだし元気出せって」
まさかの事態に時間をとられてしまった二人は結局、この周辺を少しの時間しか散策することができずに、満足できないまま(主にロスヴァイセ)戻ってきてしまったのだ。
「それはそうですけど、せっかくの時間が……」
「アザゼルさんもあんな風に言ってただろ?明日こそ俺達も楽しめばいいじゃないか。もちろん許容範囲内でだけど」
さっきからいつまでも後ろ向きでいるロスヴァイセに、レンは優しく声をかけた。そして、ロスヴァイセはその状態からようやく回復すると、ふと何かを思い出し突然口を開いた。
「今から生徒会の皆さんを呼んできます」
「ん?仕事か何かあったっけ?」
「えぇ、非常に大切な仕事が食後にありますから、話し合わないと」
その時のロスヴァイセの表情はかなり真面目だったので、レンも身を構えるが、
「教師としても、一人の女としても、イッセー君の女湯の覗きはなんとしてでも見過ごすわけにはいきません!」
「……なんだ、そんなことか」
それが無駄だったということにレンは早速気が付くのだった。肩を竦めて呆れ気味に苦笑しているレンに、ロスヴァイセは語気を強めて語りだす。
「そんなこととはなんですか!彼は性欲の権化と他の生徒から呼ばれていますし、なによりも一歩間違えたら犯罪なんですよ!」
「それは俺もわかってるけどさ、あくまでそれは俺達が駒王学園に来る前の話だろ?それにアザゼルさんから聞いた話だと、リアスさんとその眷属の子達と一緒に住んでるってことだし、いくらなんでも自分から危険な真似はしないんじゃないかい?」
「いえ、彼にそのような考えは無いでしょうね。とにかく、今から匙君達を呼んできますからレン君は待機してるように」
ロスヴァイセはレンの考えを甘いと言わんばかりにバッサリと否定すると、生徒会の人手を借りるため、部屋を出ていった。
「あの一誠が……ね。そんなバカな真似はしないと思うんだけどな」
一誠との接点が一番少なかったレンにとってはあまり想像できないことだった。それはなぜかというと、レンはそういった方面のことにどちらかと言えば、あまり関心が無い方に分類されるので、自分と比較して割と助平である、とその程度の認識だったことが一番の要因だった。
部屋の中でレンが一人きりになって数分後。ロスヴァイセは匙元士郎、由良翼紗、巡巴柄、花戒桃、草下憐耶を引き連れて部屋に戻ってきた。そして、彼らにどんな用件でここに呼んだのかをロスヴァイセは事細かに説明した。
「……で、俺達が呼ばれた理由って、つまり要約するとその兵藤の覗きを阻止するための作戦会議、ってことですか?」
「まぁ一言でまとめればそうなんだ。それで同じ男として訊くけどさ、元士郎はどう思う?一誠がそんなリスクの高いことをすると思うか?」
「俺もそれは無いと思いたいんです。……けど、アイツのことです。間違いなく覗きに来るでしょう」
匙は呆れたような声で、かつ諭すように自分が思っていることを告げた。
「……やっぱりそうなのか。しかし、戦ってる時の一誠の姿を思い返すと、どうしてもーー」
「たしかに戦ってる時はねぇ~」
「泥臭いしかっこいいところをたまに見せるけど」
「日常生活に戻ると、途端に変わっちゃいますから」
「むしろ、レン先生がその光景に出くわさなかったことが奇跡的というか……」
いまだに信じきれていないレンに今度は生徒会の女子生徒達ーー巴柄、翼紗、憐耶、桃が口々に一誠のことを語っていき、
「これで理解しましたか?彼はレン君が想像してるよりも遥かにエッチなんです!」
最終的には、ロスヴァイセが一誠のことをそのように断言した。非常に下らないことについてこんなに真面目に話しているロスヴァイセに、レンは自分の知らなかった一誠の一面を渋々納得しながら訊ねるのだった。
「……で、具体的に何をするつもりなんだ?」
「いいですか?まずはーー」
◼◼◼
全員が夕食を終えて、ついに入浴する時間帯にさしかかった頃、レンは非常階段の踊り場に退屈そうに欠伸をしながら座っていた。
「……しかし、あんな使用用途の限定された技まで自分で開発してるとは。おまけに二つも」
『
ガチャリ
レンが他愛のないことを考えていると、不意に扉が開けられたような物音が上の方から静かに鳴った。
「ふふっ、俺の考えは既に悟られていたってわけですか……」
その物音が鳴ってからしばらくすると、上の階から一誠がひきつった笑みをしながら下りてきた。
「……アハハ、まさか本当に来るなんてな。でも、一応仕事だから、ここからは一歩も通さないよ」
レンは二本の氷属性の魔槍を創り出すと、それらを持って構えた。魔槍の矛先には鞘のようなものが巻かれており、刃は露出させていない。
「レンさん。……たとえ、アンタが大きな壁として立ちはだかろうが、俺は絶対に女風呂を覗きます!」
『Boost』
一誠も一歩ずつ、一歩ずつと階段を下りながら、左腕に赤い籠手を出現させて戦う態勢をとっていた。そして、レンの間合いに入るギリギリで足を止め、数秒間にらみ合ってから、
「とおっ!」
レンと一誠の戦闘が開始された。ここはホテルであることに加えて、極端に狭い場所であるため、一誠が得意とする一撃必殺クラスの攻撃は不可能。なので、一誠は左手から小さなドラゴン・ショットを投げつけてレンに攻撃を加えていくのだった。
微妙ですがここで切りました。
若干タイトル詐欺だったかもですね(笑)