魔槍使いの半英霊   作:保志白金

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魔槍使いと乳龍帝2

「一誠、この程度の威力じゃ牽制にもならないぞ!」

 

 対して、スピード主体で戦うレンにとって、この空間はあまり不利に働くものでは無かった。レンは小さなドラゴン・ショットを全て魔槍で打ち消して、冷気を吹き付け一誠の足を床ごと氷付けにしようと反撃に出る。一誠もそれにいち早く反応し、その場からすぐさま跳び退いた。

 

「へぇ、さすがだな」

 

「それはどうも。俺はこんなところで立ち止まってられませんから!」

 

『Boost』

 

 その時の一誠の顔はまさに真剣そのもので、着地すると再びレンに向かって走り出していく。

 

「……だったら、さらにスピードを上げようか!」

 

 冷気による間接攻撃を一誠にかわされたレンは、二本の魔槍をクルクルと振り回してから鋭い突きを両脇腹目掛けて連続で放っていく。

 

「くっ、やっぱ速ぇ!」

 

(前見た時も思ったけど、レンさんって木場以上のスピードあるんじゃないか?……いや、絶対ある!)

 

 一誠はレンの実力に舌を巻きながらなんとか魔槍の一撃一撃を腕で防いでいく。しかし、何発目かの内でついに一誠はまともに食らってしまい、後方へと大きく吹き飛んでいった。それでも一誠は受け身をうまくとり、階段に叩きつけられることだけは避けていた。

 

「ゲホッ、ゲホッ!」

 

「隙ありだな!」

 

 突きを腹に受けたことによって怯んでいる一誠へレンはさらに追撃を仕掛けようと、自分自身を加速させた。

 

『Boost』

 

 レンは一誠との距離を瞬時に詰めて、頭頂部を狙って魔槍を一気に振り下ろした。それは戦いに慣れている者でも視認することすら困難なはずの攻撃なのだが、

 

「アスカロン!」

 

『Blade!』

 

 一誠は籠手からアスカロンを出現させて、間一髪というところでなんとかそれを受け止めた。

 

(まだ、倍加が足らねぇ。……せめてあと一回は倍加させないと、この人を突破することは、できない!)

 

 一誠は自分が何度倍加させたかを確認しながら、この次にどう動いたら良いのか思考を巡らせている。

 

「どうした一誠。ずっとこの状態でいるつもりなのかい?」

 

「それはどういう……ッ!」

 

 レンが煽るような物言いをしてきたので、一誠は現状を確かめるために目の前のことに集中し直すと、すぐにレンの言いたいことを理解した。

 

「俺が持っているこの魔槍は氷属性なんだ。つまり、それにずっと接触していると……」

 

 アスカロンの剣先から赤い籠手が覆っている前腕部に至るまでの箇所をレンは既に凍らせていたのである。それに対して、一誠もレンに好き勝手やらせるはずもなく、空気を大きく吸い込み口から炎を勢い良く吐き出していく。それによって凍り付いていた一誠の左腕は自由を取り戻すことに成功した。

 

「何!?」

 

 さすがのレンも口から吐き出される炎のブレスは想定していなかったようで、驚きを隠せていなかった。

 

『Boost』

 

「よっしゃあ!行くぜ、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』!」

 

『Explosion!』

 

 そして、レンが驚いている隙にいままで溜めていた倍加の力を一誠は一気に解放して、全能力を急激に引き上げた。

 

「刺し違えてでも絶対にアンタを倒す!そして、俺は女子の裸を拝みに行くんだぁぁッ!」

 

「ハハッ、凄まじい執念だな。……あ、なるほど。アザゼルさんが乳龍帝と呼んでいた理由はここにあったのか」

 

 一誠のその貪欲さにレンは呆れを通り越して、感心する域にまで達していた。一誠は初めにアスカロンを格納させてから、真上に跳んで、そこからさらに頭上の階段を蹴って推力を上げ、相当な勢いのある体当たりをレンにしていく。レンはその攻撃による衝撃を二本の魔槍で受けつつ、寸分狂わぬ絶妙なタイミングで後ろに下がり威力を半分以下にまで減衰させた。

 

「けどな一誠、仮に俺を突破できたとしてもだ。俺の後ろにはロスヴァイセとシトリー眷属の女子生徒が4人いる。それに加え最後の砦として、お前の動きをよく知る元士郎も控えている。……これを聞いてもキミはまだ戦い続けるか?」

 

「……ッ!少しは見逃してくれても良くないっすか!?」

 

 一誠は「普通そこまでするかよ!?」とでも言わんばかりの顔をして、まるで目を飛び出させるほどの勢いで目を見開いている。

 

「まぁ、自分で言うのもおかしいかもしれないけど俺って個人の趣味にとやかく言うような性格じゃないんだよ。……でも、こればかりはしょうがない。もういっそのこと諦めたらどうかな?」

 

 レンは諭すように一誠へ優しく告げるが、まだ足掻き足りないようで、一誠は着ていたジャージの上着を前方へ放り投げて、レンの視界を一時的に奪った。それは1秒にも満たない目眩まし。ーーそれだけで十分であると一誠は勝手に思い込んでいた。

 

「……それは選択ミスだな、一誠。相手が自分を見えないということは、逆を返せば自分も相手を見えないってことだ。……まさか考えていなかったのか?」

 

 レンはそう言い終えると同時に一誠の背後へ回り込んで、その場で押さえ込みに入った。単純なスピード勝負なら、たとえ力を解放させた一誠でもレンとはタッチの差で及ばなかったのであった。

 

「チキショウ、目的地は目と鼻の先だってのにぃ……」

 

『Reset』

 

 レンによって身動きを封じられた一誠は心の底から悔しそうな顔をして嘆いている。そんな様子でいる一誠にレンは小声で耳打ちをした。

 

「……ハァ、ロスヴァイセや他のみんなには黙っててやるから、今からでも部屋に戻るんだ」

 

「……ッ!マジっすか!?」

 

 レンの慈悲深い行動に一誠は涙を流しながら反応を見せる。レンは一誠の拘束を解いて、「ただし」と言葉を付け足してから、さらに続けた。

 

「また懲りずに来たなら、手加減なしで速攻で決めるから覚悟しとけよ?」

 

 その時のレンの表情は笑っていた。目が笑っていない、ということもないように一誠からは見えた。当然怒っているという素振りも見られない。

 

「り、了解しました!」

 

 しかし、それに逆らったらさっきのように穏便には済まされないだろう、と一誠は思ったのだった。

 

「お、ちょうどいいところにいたな」

 

 そして、二人がそうこうしている内に、なぜかアザゼルが二人のもとに近付いて来た。

 

「アザゼルさん、どうかしたんですか?」

 

 一誠は訝しげな表情を浮かべていて、それに気付いたレンがアザゼルに訊ねると、

 

「ああ、そんなところだ。魔王少女様が俺とお前達をお呼びなんだとよ」

 

 口元を緩ませて返答してきた。

 

「魔王……少女?」

 

 一誠はどこか納得したような顔で頷いているが、彼女と一度も会ったことのないレンは、いまひとつピンと来ていない。

 

「ん、そういやレンだけが今回初顔合わせか。……今から会うのは現魔王の一人なんだが、何があろうと一切突っ込むな。わかったな?」

 

 結局、レンの頭から疑問符がこの場で全て取り除かれることが叶うことはなかった。

 

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

 

 レンとロスヴァイセとイリナ、そしてグレモリー眷属の二年生達はアザゼルに先導され、街の一角のとある料亭の中へと入っていった。さらに、店の人にどこかの個室へと案内されると、そこには着物姿の少女(?)とシトリー眷属の二年生が座っていた。

 

「ハロー!赤龍帝ちゃん、リアスちゃんの眷属の皆、この間以来ね☆」

 

 その少女はかなりテンションが高めであり、レンが一歩後退りし、戸惑うほどだった。

 

「それでそちらの蒼い髪の男の子が、つい先日現れたランサー君ってことね。……へぇ~、なかなかカッコいいじゃない☆」

 

「…………ありがとう、ございます。俺は北欧から来たレンという者です。……で、あなたはいったいどちら様なんですか?」

 

 そして、困惑しながらも自己紹介をして彼女の素性を訪ねた。もっとも、悪魔の魔王の中で女性という者は一人のみしか該当しないが、それでも改めて訊かずにはいられなかった。

 

「はじめまして!私は魔王セラフォルー・レヴィアタンです☆『レヴィアたん』って呼んでね☆」

 

 すると、彼女はアイドルのような仕草をして自分のことを喋り、最後にはレンへウインクまで送ってきた。

 

(ハハッ、これ何かの冗談だよな……)

 

 初対面同士の自己紹介が終えると、セラフォルーからこの場に集まった者達へ緊急の報告があった。……が、主に最初のことが影響してしまい、レンの頭の中にその報告の内容量は半分程度しか入っていないのだった。

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