魔槍使いの半英霊   作:保志白金

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魔法少女の戦闘介入

(目当てのものも無事に買えましたし、そろそろレン君達と合流しましょう。……ふふっ、レン君喜んでくれるかなぁ?)

 

 ロスヴァイセは小さな紙袋を両手と胸で大事そうに抱えながら、早歩きで嵐山の街中を抜けようとしていた。その時のロスヴァイセの表情は完全に緩みきっていて、とても嬉しそうな笑顔をしていた。

 

「ロスヴァイセお姉さん、すごく嬉しそうですね♪どうかしましたか?」

 

「ふぇっ!?」

 

 しかし、後ろから突然誰かに顔を覗き込まれ、さらに声までかけられてしまい、ロスヴァイセは声を裏返すほどに驚いた。紙袋を背後に急いで隠しながら振り向くと、そこには赤い髪の少女がニコニコ顔で立っているのだった。

 

「フ、フレイさん!?あ、あなたがどうしてここに?」

 

「だって、ず~っと留守番なんてつまらないんですもん。だから、飛んで来ちゃいました!」

 

 ロスヴァイセはフレイの出現に色々な意味で酷く混乱している。色々な意味とは、彼女が大胆な行動をとったということはもちろんのこと、ロスヴァイセにとってできれば誰にも会いたくないタイミングで声をかけてきたことなど、他を挙げていけばキリが無いほどにその要素はたくさんあった。

 

「それで、今急いで後ろに隠した紙袋の中には、何が入ってるんですか?」

 

 そして、フレイは中身をなんとなくで察している上でわざとらしく首を傾げて、ロスヴァイセに訊ねると、

 

「うぅっ……こ、これは、その……」

 

 ロスヴァイセは口をモゴモゴとさせて、ハッキリ答えようとはしていなかった。フレイはそんな様子のロスヴァイセを見て、意地の悪い笑みを浮かべながら手をポンと叩いた。

 

「あ、なるほど。もしかして、私のために買ってくれたお土産なんですね」

 

「違います!」

 

「えぇ~、じゃあ……なんなんですか?」

 

「これは…………レン君にあげる予定のプレゼントです!」

 

 フレイの誘導尋問に乗せられて、ロスヴァイセはフレイに教えたくなかったにも関わらず、結局言うはめになってしまった。

 

(フフフ、やっぱりそうでしたか。前も思ったけどやっぱり、ロスヴァイセお姉さんの反応はかわいいなぁ)

 

 フレイはイタズラがうまくいったと言わんばかりに顔をニヤつかせ、顔を真っ赤にしているロスヴァイセを楽しげに観察していた。

 

「コホン……ところで、フレイさんはなぜレン君の元ではなく、私のところに来たんですか?」

 

 狼狽していたロスヴァイセにとっては、気持ちを落ち着かせようとただなんとなくでこの話をフレイに振ってみたのだが、それを聞いたフレイは途端に表情を曇らせた。

 

「……実はレンさんにマーキングしたはずの魔法を感じ取れなくなってしまって」

 

「それはつまり……」

 

「はい、この空間とは別の空間に何かしらの方法で転移した、ということでしょうね」

 

 ロスヴァイセは自分の予想とフレイの考えが同じだと知り、あごに手をあてて考え始めた。

 

(う~ん、アザゼル先生と一緒にもう一度裏京都へ向かったのでしょうか?しかし、いったい何の用事で?)

 

「そう……ですね。とりあえず、レン君とアザゼル先生がいるはずの場所に向かってみましょう」

 

「うん、りょーかい!」

 

 唯一心当たりのある場所を彼女は頭に思い浮かべながら、ロスヴァイセは元々の待ち合わせの場所に向かって早足で歩き出した。

 

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

 

「ハァァァッ!」

 

「おっと、危ない危ない」

 

 レンと曹操による槍使い同士の攻防戦は未だに膠着状態が続いており、どちらも互いの猛攻を全て避けきる、もしくは全て捌ききっていて、共に傷をひとつも負っていなかった。

 

 レン以外の仲間の現状はというと、一誠は後ろにいるアーシアの盾になりながら、アンチ・モンスターにただひたすらドラゴン・ショットを連続で撃ち込んでいて、逆にアザゼルは最前線に出て黒い鎧を身に纏い、光の槍で次々にアンチ・モンスターを屠っている。木場とゼノヴィアとイリナの剣士三人組は禁手化(バランス・ブレイク)する前の三本腕の状態のジークフリートと戦闘を行っていた。

 

 そして、レンは曹操と槍戟を打ち合っている中で、ひとつ重要なことに気が付いていた。

 

(この空間ではゲイ・ボルグの能力を解放できないみたいだ。……まぁ、使えたところで奴に届くかどうかが非常に怪しいんだけどな)

 

 この敵方が創ったこのフィールドでは、ゲイ・ボルグの「必中」が封じられている状態にあった。このような手の込んだ真似をしたのは曹操ではなく、『絶 霧(ディメンション・ロスト)』の現所有者であるゲオルクだった。

 

「おや、ところでキミは例の『禁 手(バランス・ブレイカー)』を使わないのかな?」

 

 曹操は知ったような口振りで煽るように訊くが、レンはそれに動じること無く冷静に言い放った。

 

「ああ、使わないさ。本気でかかってこない相手に自分の手の内をさらすほど、俺はお人好しじゃない」

 

(大体の能力はどうせウェンディゴから聞いているんだろうが、実際に見て見極める、きっとそれがコイツの狙いだろう)

 

 レンは表面上では笑っていながらも、心の中では淡々と曹操の心理を自分なりに分析し、油断は微塵もしていなかった。

 

「あらら、これでも割りと本気なんだけどね」

 

「ハッ、『禁手化(バランス・ブレイク)』していない癖によくもまぁそんな嘘を吐けるもんだな」

 

「フフ、たしかにキミは強い。仮に『禁 手(バランス・ブレイカー)』を使ったとしても、キミなら俺を楽しませてくれるだろう。……だが、今は使うべき時ではない。ただそれだけのことさ」

 

 曹操はそう言うと、空いている左手をまるで誰かに合図を送るかのように大きく上げると、今まで動かなかったレオナルド、ジークフリート以外の構成員が、それに応じるような形で戦う姿勢を見せ始めた。

 

「さて、それじゃあ第二局面の開始と行こうか」

 

 そして、曹操が上げていた左手を振り下ろそうとした正にその時だった。

 

「……今度はなんだ?」

 

 レンや一誠達と曹操達ーー英雄派の間に魔方陣がひとつ光を放ちながら突如として出現する。それは一誠も木場も知らなければ、レンも全く知らなかった。唯一知ったような素振りを見せていたのはアザゼルだった。

 

 光がおさまり、そこに立っていた者はーーとんがり帽子にマントを軽く羽織っているという、まさしく魔女っ娘という言葉がピタリと合う金髪の女の子だった。

 

(彼女は……たしか)

 

 そう。そして、レンはその女の子に見覚えがあった。ーーレンがヴァーリとはじめて顔を合わせたあの日に。

 

「はじめまして。私はヴァーリチームに属する魔法使いのルフェイ。ルフェイ・ペンドラゴンです。以後、お見知りおきを」

 

 ルフェイは体を一誠達の方に向け、一度深々と頭を下げてから、満面の笑顔で微笑みかけてきた。それから、彼女は一誠に熱い視線を送りつつ、どんどん近寄って来て来る。そして、一誠の目の前についにたどり着くと手を突き出しながらこの場にいる誰もが予想だにしなかった爆弾発言をするのだった。

 

「あ、あの……私、『乳龍帝おっぱいドラゴン』のファンなのです!差し支えない用でしたら、あ、握手をお願いします!」

 

「……あ、ありがとう」

 

 緊迫したこの状況の中、ルフェイにそのようなことを言われた一誠は、かなり困惑しながらも、とりあえず一言だけそう呟き握手に応じる。すると、彼女は「やったぁ!」と声を上げるほどに喜んでいる。

 

 両陣営共に呆気にとられて当惑しきっている中、レンは一歩前に踏み出してルフェイにひとつ訊く。

 

「キミは敵かい?それとも味方なのか?」

 

「え~と、そうですね……。立場上どちらとも言えませんが、今はあなた方に危害を加えるつもりはありませんので、ご心配なく」

 

 ルフェイはレンの問いにそう答えると、次に曹操達のいる方に視線を移し、指で文字のようなものを書く仕草をし始めた。

 

「うふふ、覚悟してください♪うちのチームに監視者を送った罰ですよ~」

 

 その動作は五秒もかからずに終わり、さらに終えたと同時に、この空間の大地にとてつもなく大きい短周期の振動が襲った。

 

『ゴオオオオオオォォォォッ!』

 

 その振動が弱まったかと思うと、今度は地面が隆起して、巨大な岩の塊のような巨人らしき何かが雄叫びをあげながら姿を現した。ちなみに、その巨人の体長は十メートルを余裕に越している。

 

「さぁゴッくん、あの人達をやっつけちゃってください!」

 

 ルフェイから号令がかけられると、彼女にゴッくんと呼ばれていた岩石の巨人は、その巨体を揺るがし英雄派の構成員が集中している所に向かって鉄槌を振り下ろした。

 

 その破壊力満点の一撃によって、大量に召喚されていたはずのアンチ・モンスターは葬り去られ、人間の身である構成員達はその場から跳び退くことを余儀なくされた。

 

「アハハ!まさか、監視していたことがバレていたとは!」

 

 英雄派のほとんどの構成員達がその一撃に狼狽えているのに対して、曹操は愉快に高笑いして、この状況を未だに楽しんでいるようだった。

 

「伸びろ!」

 

 聖槍の刃先が瞬時に伸びて、その切っ先は岩石の巨人の肩に突き刺さり、その巨体を意図も容易く転倒させた。

 

 そしてそのまま、曹操はまだ戦おうと聖槍を前に構えようとするが、黒っぽいローブを制服の上から羽織った眼鏡をかけている青年が曹操の横に並び立って、耳打ちをしだした。それから、眼鏡の青年は手元から霧を発生させて、この場にいる英雄派全員をその霧で覆い始める。

 

「少々、想定外のことが起きすぎたみたいだ。だが、祭りの始まりとしては上々……と言ったところか。聞け、赤龍帝、それに魔槍使い!我々は今夜この京都という特異な力場と九尾の御大将を使い、二条城でひとつ大きな実験をする!ぜひとも制止するために我らの祭りに参加してくれ!」

 

 曹操は一誠やレン達に向かって声高らかに宣言すると、薄く広がっていた霧がやがて濃くなって、全員の視界を遮断するまでに包み込んだ。

 

「『我は戦いの終わりを告げる。我は人なり』」

 

 ひとまず戦いが終わったことにいち早く気が付いたレンは元の空間に戻ることを見越して、体を元の状態に戻しつつ、両手に持っていた槍をそれぞれ消した。それにつられるような形で、一誠は鎧を解除させ、木場、ゼノヴィア、イリナは剣を納めていた。

 

(……『禍の団(カオス・ブリゲード)』の英雄派。思い通りになど絶対にさせるものかッ!)

 

 元いた場所に戻ってきたレンはさっき曹操が言っていたことを思い出していた。ーーそれは静かに、かつ牙を研ぎ澄ますように、熱い熱い闘志を燃やしながら。

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