魔槍使いの半英霊   作:保志白金

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魔槍使いと英雄派の刺客1

 作戦の予定としては、京都駅からバスに乗り二条城までそのまま行く手筈だった。ところが、バス停で待っているその時間を霧使いに狙われてしまい、嵐山での戦闘同様にレン達は疑似フィールドへと転移されてしまった。

 

「ここは……」

 

 さらに、戦力を転移の際に分断されてしまい、この場にいるのはレンとフレイの二人である。そして現在、二人の目の前には大きなタワーがそびえ立っている。ここがどこなのかよくわかっていないフレイに対して、レンはこのタワーに見覚えがあったようで、その名前を呟くように言った。

 

「京都タワー、みたいだな」

 

 当然、フレイはその名称を聞いただけでは地理的感覚を掴めるはずもなく、首を傾げながらレンに問いかける。

 

「えっと、ここから目的地は近いんですか?」

 

「そうだな。……少なくとも京都駅よりは二条城に近かったはずだ」

 

 レンはそう言いながら持ち歩いていた京都の地図を広げて、確認した。

 

「よし、とりあえず二条城に向かおう。みんなも向かっているはずだから、きっと合流できるだろう」

 

「はい、それもそうですね」

 

 レンとフレイは早速進みだそうとするのだが、

 

「~~♪」

 

 不意にレンのケータイの着信音が鳴り響き、レンは足を止める。

 

「祐斗か、どうした?」

 

『すみません、今どの辺りにいるのか確認をしたかったので。僕は匙君と一緒に京都御所にいて、イッセー君は九重さんと共に京都駅の地下にいるそうです』

 

 レンはまだ手に持っていた地図を再度広げて、木場と一誠の今いる場所の確認をした。

 

「そうか。俺は今フレイと一緒で京都タワー前にいる。……それと、俺達はそのまま二条城に向かえばいいか?」

 

『はい、二条城で合流しましょう。イッセー君ともそれで話がついてますので』

 

「わかった、それじゃあ二条城で落ち合おう」

 

 レンはそれで木場との連絡を終えて、止めた足を再び動かし始めた。

 

(さて、いつでも戦えるように準備でもしておくとするか)

 

 そして、異空間にしまっていたゲイ・ボルグを抜き出して、警戒心をより強めていた。それを見てフレイも自身の体を戦闘に最適化させようとするのだが、レンは手を前に出してそれを制した。

 

「なぜ……止めるんです?」

 

「フレイ、俺からひとつだけ言っておく。(ハート)はどれだけ熱くしても構わないが、頭は常に冷ましておくこと。わかったな?」

 

 レンは前回のような同じ轍を踏ませないために、当然のことではあるが念を押してフレイにそう言った。しかし、フレイは心に余裕が全く無かった前と違っていた。たしかに、目は遠くの敵を見据えて鋭いままではあるが、肩に余計な力が入っていない。

 

「わかってますよ。私だってきちっと学習するんですから」

 

 彼女のその様子を見て、ひと安心したレンだったが、いつの間にか二人を包囲するように大量の転移魔方陣が出現していることに気がついた。

 

「じゃあ俺達もひと暴れするとしようか。あっちも俺達を取り囲んで、戦う準備はできているみたいだしな」

 

 転移を終えた英雄派の構成員達の手には、剣や槍、弓、杖といったように多種多様な武器をそれぞれ前に構えている。

 

「どれほどの強さなのかはわかりませんが、最初から全力で行かせてもらいます!」

 

 フレイは巨大なハヤブサの姿へと即座に変え、両翼を一度大きく下に扇いで、急加速で飛び上がった。それから空中でバックフリップを行い方向転換をすると、そのまま下にいる敵を目掛けて炎を纏って飛び込んでいった。

 

(この様子だと、神器使いは一人もいない……のか?なら、一気に推しきるだけだが)

 

 フレイの攻撃の後に続くように、レンも両手に槍を持ち、神速とも言える驚異的な速度で敵の軍勢を次々に討ち果たしていく。

 

「くそっ、なんなんだこいつらは!?強さが桁外れ過ぎるぞ!」

 

「そう?これでも師匠よりは弱いんだけど。まぁ俺は師匠と違って見逃してやるほど甘く無い」

 

『……あなた達が犯してきた罪は重い。地獄の底で後悔しながら懺悔してください』

 

 その圧倒的な実力の差に構成員の一人は戦慄するが、それに構うことなくレンとフレイは一人も逃がさない勢いで戦闘不能にしていくのだった。

 

「やはり、曹操の言った通りになってしまったな。「神器使いでなければ相手にもならない」……ククク、たしかにその通りだ」

 

 しかし、そんな中で不気味な笑い声をあげながら、後方でじっくりと二人を観察している男が一人いた。

 

「その口振りからして、アンタ神器使いだな?」

 

「ああそうさ。そんでもって、俺の神器は……こいつだ」

 

 その男は何も無かったところから、突然両腕に鋭く長い爪の生えた、光沢が全体に見られる青と白がメインカラーの腕甲を発現させた。その腕甲の形状は、熊の手を大きくしたような形をしている。

 

「俺の持つ最強の矛、『狂獣の爪(デスト・クロー)』さ。……しかし、アンタらの実力を見る限りじゃあ、これだけだと足りないだろうよ。だからな……」

 

禁手化(バランス・ブレイク)する……か?」

 

「ハッ、さすがは例の魔槍使い。わかってるじゃあねえか!ーーいくぜ、『禁手化(バランス・ブレイク)』!」

 

 大きな地鳴りと共に、重厚で非常に堅牢そうな鎧が男の全身を覆い尽くしていく。さらに、禁手による変化はそれだけに留まらず、ついに男の肉体にまで影響を及ぼし、背中から新たに二本の腕がメキメキと心地の悪い音をたてながら生えていった。ちなみに、新たに生えた両腕にも、元々発現させてある腕甲と同形状のものが装着されている。

 

「これが禁 手(バランス・ブレイカー)状態、『狂獣の四つ腕(デスト・カルテット・ブロウ)』。

さあ、魔槍使いさんよぉぶっ殺してやるぜ!」

 

 その狂気的な声にレンは顔をしかめさせて、露骨に嫌そうな態度を示すが、すぐにフレイへオーソドックスな指示を飛ばす。

 

「……フレイ、二人がかりで一気に片を付けるぞ、できるだけ速攻で消耗は最小限にだ。いいな?」

 

『了解です!』

 

 レンとフレイは各自散開して、異なる方向から同時に攻めていこうと試みる。

 

「二人まとめて来るか。……いいぜ、むしろその方が好都合だ!」

 

 四本腕になった男は空を見上げるように体を仰け反らせて、遠吠えのように大きく叫び声をあげだした。

 

「ウォォォォッ!」

 

 はじめこそは普通の人間の声だったが、時間が経つにつれてその叫び声は、徐々に徐々に人間味が無くなっていった。

 

「◼◼◼◻◻◻●●●ッッッ!!!!」

 

 叫ぶのをやめたかと思うと、何かの力の余波が巻き起こり、それによって軽い砂煙が発生した。

 

「アイツの能力は……なんだ?」

 

 砂煙が晴れると、その中央には四本の腕をダラリと下ろして脱力させて、まるで二人からの攻撃を待っている敵がいた。レンは少し離れた位置にいるフレイに目で合図を送ると、フレイもそれに応じて独自に動き出した。

 

『舞い踊れ、羽根の弾丸(フェザー・ブレット)!』

 

 フレイは翼を大きく広げて、自分の羽根を縦横無尽に不規則な動きで飛ばし始める。

 

「穿て、『魔槍創造(スピア・バース)』!」

 

 そして、レンは畳み掛けるようにして、フレイの攻撃に自分の魔槍を重ねて連続で撃ち放っていく。

 

 鋭い羽根の刃と魔槍の嵐が四つ腕の男に降りかかるが、避ける素振りを一向に見せなかった。

 

(避けようとしないのなら、全て弾きとばすつもりなのか?しかし、いくら腕が四本あるにしても、この局面を無傷で切り抜けるのは無理のはずだ)

 

 レンはもちろんのこと、フレイも敵の出方にどこか違和感を覚えたが、放った攻撃をもう止めることはできない。レン達の魔槍達はついに敵の体を捉えようとしていた。だが、レン達の攻撃が当たることは無かった。一発も鎧にキズを付けることすらなかったのである。

 

 四つ腕の男は飛んできた魔槍四本をそれぞれの腕で掴みとると、それらの魔槍を器用に回転させて、続けて飛んできた攻撃を全て叩き落としていた。

 

 不規則な動きで飛んでいたフレイの攻撃は、弾が小さいということもあり、防御をすり抜けて鎧に当たりはしたものの、パワー不足で貫通するまでには至らなかった。

 

「…………●●●ッッ!!」

 

 驚くべき行動はそれだけで終わらなかった。自分の身を守るために一時的に掴んだ魔槍を今度はこともあろうに投擲したのである。その内の二本はフレイとレンに向けて放ったのだが、残りの二本は、近くにいたまだ生き残っている英雄派の仲間に向けて投げられていた。

 

「まさか、敵味方の区別すらついていないのか?……チッ」

 

 四つ腕の男は隙を作らずにそのままレンに接近し、その巨大な腕を振るいながら、野獣のように本能のおもむくまま攻め立てていく。レンもその野性的な動きに対応して、四方向から同時に襲い掛かってくる爪をゲイ・ボルグで容易に捌いていくが、

 

「なんつう馬鹿力……だよッ!」

 

 テクニックタイプのレンでは、強烈な衝撃を受け止めきることはできず、後方へ大きく吹き飛ばされてしまった。しかし、後ろにあったコンクリートの壁に叩きつけられることだけはなんとか避けており、特に焦ることなく状況の分析をし始める。

 

(この野性的な動きに、攻撃を受けるリスクも顧みずに突っ込んでくる理性を失いかけている行動。……しかし、狂っていながらも俺の高速で飛ばした魔槍を掴みとり、それで防御すらも行った。考えられるとしたら……)

 

『……レンさん、相手は暴走状態にあるのでしょうか?』

 

 フレイはレンに近寄りながら、ひとつ質問を投げ掛ける。

 

「たしかにそれも考えられる。……が、そう簡単に神器のリミッターは外せないはずなんだ」

 

 二人が話していても、相手は待ってくれるはずもなく、今度は地面の岩盤を無理矢理抉り取って、それを豪快に投げ飛ばした。レンはそれを受けることは愚策だと気付き、横に軽やかに跳んで避けた。

 

『それでは、今のあの状態はいったい……』

 

「俺が今考えられる仮説としてあげられるのは、神器の能力そのものが「自身を狂化させる」という能力であること。それなら、理性を失っているにも拘わらず、あの器用な動きをすることにも合点がいく」

 

 レンは持論をフレイに述べながら、ゲイ・ボルグを四つ腕の男に向かって投げ飛ばした。放たれたゲイ・ボルグを男はかわそうとするが、レンは軌道を曲げて、元から生えていた右腕を刺し貫いた。青と白の鎧を纏った腕は、真っ赤な鮮血と共に宙へ舞った。

 

「◻◻◻ッ!」

 

 男は苦悶に満ちたような叫び声をあげるが、それでも戦闘不能に至ることはなく、再度レン達に向かって接近してくる。

 

「右腕一本失おうが、戦うことをやめない、か。ここまで狂っているとは厄介だな」

 

『レンさん、ここからどうしますか?』

 

「なに、どうもこうも焦ることは無い。やることは、こいつを倒して二条城に素早くたどり着く、ただそれだけのことだ。……馬鹿力が取り柄の狂戦士に手間取ってる暇は無いんでね」

 

 レンはついさっき投げたゲイ・ボルグを手元に戻すと、突進してくる男を睨み付け、身を低く屈めていつでも駆け出すことのできる構えをとった。




今回の戦闘シーンはZeroのギルガメッシュ対ランスロットの初戦を思い出しながら書きました。
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