魔槍使いの半英霊   作:保志白金

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反撃の魔槍使い3

「モードチェンジ!『龍牙の僧侶(ウェルシュ・ブラスター・ビショップ)』!」

 

「さすがに……あれは、不味いな……」

 

 曹操は急激な変化を遂げた一誠の赤い鎧を見てそのように言葉を漏らした。

 

「……ハハッ、たしかにこいつは凄い。アザゼルさんの言った通り、一誠は可能性の塊だ」

 

 一誠はリアスを召喚した後、なんとあり得ないことに彼女の乳を「ポチッと」つついて、纏っていた鎧を進化させたのである。今の鎧の形状は両肩に大口径のキャノン砲を搭載させているといった、なんともSFチックなものだ。そして、両肩のキャノン砲には膨大なエネルギーが充填されていき、

 

「吹っ飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!ドラゴン

ブラスタァァァァァァッ!」

 

 ついに、その一撃は一誠の気合いと共に曹操に向かって放射されていった。

 

「これを貰うわけにはいかないな!」

 

 曹操は一誠の一撃がとてつもない威力を有しているとすぐさま判断して、受けるという選択は取らなかった。ーー無論、曹操のその導きだした答えに間違いなど一切無い。

 

 曹操に当たらなかった高密度のエネルギー弾は空を切り、そのまま何もない空間で大爆発を起こした。しかし、ただ単に大爆発を起こしただけではない。創られた風景の一部が消し飛び、空間そのものが歪みだしていたのだ。

 

「曹操ォォォォォォッ!」

 

 一誠は目の前にいる敵の名を叫び、背中のキャノンをパージさせる。

 

「モードチェンジ!『龍星の騎士(ウェルシュ・ソニックブースト・ナイト)』!」

 

 一誠が起こした変化はそれだけに留まらず、今度は全身の装甲を限界ギリギリまでパージし、スピードを極限まで追求したフォルムと化していた。

 

(一誠が奴の相手をしている内に、俺が一番とるべき行動は……)

 

 レンは神速で飛んでいく一誠を横目で確認しつつ、九尾を視界に捉えて好戦的な構えを見せて、ウェンディゴとゲオルクが気づいた時には既にその場から跳びだしていた。

 

「一誠が作り出した最大の好機。絶対に逃すわけにはいかない」

 

 ウェンディゴは動き回っているレンを狙って九つの尻尾は追尾させていく。対するレンは反撃するわけでもなく、彼等の動きを掻き乱すためだけに速度をさらに上げ、目論みを画策しているように何かを考えて動いているようだった。

 

「……チョロチョロと鬱陶しいですわね!」

 

「フフッ、それはどうも。手数の多さで戦う俺にとっては最高の誉め言葉だね」

 

「大した余裕ですわね。もう少し身の程をわきまえたらいかが?」

 

「それを言うなら、アンタ達こそ他人を見下したその態度を改めるべきだろう?だからこそ、こんなほころびが生じる」

 

 レンは何か探していたものを発見したのか、九尾を捕らえている魔方陣の一部をゲイ・ボルグで突き刺した。すると、魔方陣は滅茶苦茶な色に点滅し始めて、大きな湾曲も生じだすのだった。

 

「これは……まさか!」

 

「複合式で組まれた術式の繋ぎ目(脆い一点)を突かせてもらった。そもそも、別々の術式をまとめるという考え自体、無理があるはずだろう?まぁ、これに関しても俺達に解除する手段が無いと断定していたのだろうけど、その考えに至った時点でアンタ達は間違いに気付くべきだったな」

 

「クッ、まだだ。まだーー」

 

 ゲオルクはすぐに魔方陣を修復させるべく、手を高速で動かしていくが、

 

「ーー終わりじゃない、か?残念だろうけど、これで決まりだよ」

 

 レンはゲオルクが次に発するつもりでいた言葉を先に口に出し、別の箇所にゲイ・ボルグを突いて、地面に描かれていた巨大な魔方陣を破壊することに成功した。

 

「この……ッ!わたくしの言うことを聞きなさい!」

 

 制御の補助を担っていた魔方陣を失ったことによって、九尾は暴走状態となってしまい、既に手遅れの状況となっている。そのため、ウェンディゴは焦ったような声を出して手綱を強く引くが、それは全く意味の無いこと。二人はまんまとレンにしてやられたのである。

 

 また、別の方向では、巨大な腕甲を新たに作り出した一誠が曹操のことを豪快に殴り飛ばしていた。曹操は聖槍を盾代わりとして前に出していたため、致命傷を負うことは避けたが、大きなダメージを受けたことには変わりない。ーー現に顔から血を噴き出させながらフラフラと立っていることがそれを物語っている。

 

「……ッ!曹操!」

 

「……実験ができないことは悔しいが退却時だ。俺達が思った以上に魔槍使いは強すぎる。……それにこれ以上の損害を出すわけにはいかないからな」

 

 心配そうに声をかけるゲオルクに、曹操は自嘲してから遠回しに撤退を指示を出した。このフィールドに残っている英雄派の三人は、一ヶ所に集結するとゲオルクが転移するための魔方陣を展開し始める。

 

「今日の宴はここまでだ。グレモリー眷属、赤龍帝、魔槍使い。再び(まみ)えるとしよう」

 

(……誰が逃がすかよッ!好き勝手やりやがって!)

 

 それから、曹操はそんな捨て台詞を吐いてこの場から逃げようとするが、一誠は左手に力を集中させていく。さっき散々過小評価をしていた曹操に一矢報いるそのために。

 

「一誠、俺が先に仕掛ける。その後のタイミングを逃すなよ」

 

 そんな一誠の行動を察したレンは一誠の一撃を曹操に入れるため、そんなことを言って、自らがサポートする側に回った。

 

「手ぶらで帰るのも寂しいだろう、こいつを京都の土産として受け取るといい!」

 

 レンはゲイ・ボルグを片手に、曹操との距離を一気に詰める。

 

「だったら、俺からもそのお返しをしなければな。……飛べ輪宝(チャッカラタナ)!」

 

 曹操もレンに負けじと背後からひとつの球体を出現させて、それは独りでにレンに向かって襲いかかってきた。レンの元へたどり着く前のその間に、球状だったはずのそれは先端を尖らせていく。まるで槍のような形へと変えて。

 

 レンは自律駆動してくる槍をゲイ・ボルグでうまく捌きながら、曹操の後ろに回る。しかし、曹操はレンの動きを先読みしており、レンが背後をとった時には、曹操は一瞬だけ一誠の位置を把握してから顔を後ろに向けていて、万全の態勢を敷いていた。

 

(曹操も感付いているがチャンスはここしかない。撃て一誠)

 

 レンは警戒するようにして後ろへ下がると同時に、一誠に向けて目で合図を送り、攻撃するように促していた。そして、一誠の籠手からは高密度に圧縮させた一撃を撃ち出される。ーーそれがたとえ、敵に意図が悟られていながらも。

 

「赤龍帝、キミの攻撃をしようとする姿勢は前の手で見て取れていた。なかなかの速度を保っているようだが、それには当たらない」

 

 曹操はことごとく一誠の攻撃をかわして、次に来るであろうレンがいる方へと体を向ける。……が想定していたものとは違った動きをレンがしたことで、曹操は目を見開かせていた。

 

「弾速はさっきの一発で見極めている。あとは軌道さえ見誤らなければなんとでもできるさ。……一誠、後のもう一押しは頼むぞ!」

 

 曹操はレン本人が突っ込んでくるだろうと予想していたのだが、それとは裏腹にレンは一誠の放ったエネルギーの弾丸をゲイ・ボルグの真芯で捉えて打ち返したのである。おまけにレンが打ち返した弾丸の速度は、一誠が放った直後のそれよりも上がっており、曹操の胸を目掛けてただ真っ直ぐに突き進んでいく。

 

 それでも、曹操は弾速の変化に対応してギリギリのところで避けようと、弾丸の軌道上から僅かに脱していて、当たらない位置にいた。ーーそれはあくまでも真っ直ぐ進んでいけばという前提があっての話。もし、弾の軌道を変えることができたのなら……。

 

「今だ、曲がれぇぇぇぇッ!」

 

 すぐに撤退するという気の緩みもあってか、曹操はもろにそれを食らった。渾身の一撃は一誠の叫びに応えて軌道を曲げ、曹操の右顔面を確実に捉えたのだ。

 

「……目が…………おのれ、魔槍使い!

赤龍帝ぇぇぇぇぇぇッ!」

 

 曹操は怨念じみた声をあげてから、聖槍を天に向けて掲げ呪文のような何かを唱え始める。構えを解いていたレンは曹操のそれを見た途端に一誠達の元へとすぐさま戻っていき、改めて魔槍を構え直した。

 

「ーー槍よッ!神を射貫く聖槍よッ!我が内に眠る覇王の理想を吸い上げーー」

 

「……ッ!こんなところで見せるのはいくらなんでも早すぎます。まだ使ってはいけませんわ!」

 

「彼女の言う通りだ、曹操。……それにもう時間だ。退却するよ」

 

 二人の説得によって、曹操は聖槍を収めて昂っていた感情も元の精神状態となり、落ち着きを取り戻していた。

 

「わかっている。ここいらで俺達は撤退させてもらおう。……さらばだ」

 

 曹操は身構えているレンと一誠そのようなことを言い残して、この場から消え去っていった。




次回で修学旅行には蹴りがつく予定です。

その次からはほのぼの(?)とした日常系エピソードを挟んでから原作11巻の内容に入っていきます。
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