【悲報】昭和のおばちゃん、宇宙世紀に転生したと思ったら、最推しの姉だった【あんまり過ぎる】 作:佐世保の中年ライダー
何も映していなかった黒いモニター画面に、昭和のアニメ独特のプィ〜ンって感じの音と共に一瞬光が走り、黒かった画面に映像が映し出される(と言うか、昭和当時のアニメの、今見るも表現が古臭かったテクノロジーが、現在私が居るこの世界だと令和日本よりも遥かに超未来感があるんだけど、それでもこう言ったところにレトロ感が残っているのが何と無く安心する)それは私とカミーユはすでに見知ったお馴染み感のある、背後の棚には組かけの機械類や工具類が揃えられてて、如何にもメカ好き少年ですが何かって感じの砦の様な趣きのある一室と、その部屋の主である“天パっ”た一人の男の子。
『やあ、アイカナ。しばらくぶり』
モニターの向こう。アニメとは違いゲーミングチェア的な椅子に腰掛け軽く手を上げて挨拶をしてくれる。少し神経質そうにも見える表情だけど口角が柔らかく曲がっているところから、決して不機嫌では無い事が見て取れる。誰あろう。そう、機動戦士ガンダム初代主人公アムロ・レイ少年。御年十三歳の中学二年生(年齢的には中二病を発症しててもおかしくない)その人である。
「うん。ちょっとぶりだね、アムロお兄ちゃん!でも、相変わらず家の中じゃランニングシャツなんだね。もしかして下もパンツ一丁な感じ?」
何だか、アニメでお馴染みの第一話のアムロを彷彿とさせるランニング姿なアムロ君。もう結構長く交流を続けてる関係なんだけど、二年くらい前から自分の部屋に居る時のアムロ君はだいたいランニング姿がデフォルトになっているんだよね。まあ椅子に腰掛けてる状態だから下半身事情は分からないけどね。
『全く、アイカナには敵わないな』
アララッ、アムロ君ってば私の誂いの言葉に視線を外して右手の人差し指で頬を掻き出したよ。それに結局自白してるし。なんだか、意図せずして図星を指したみたいになったけど、アムロ=ランニングにパンイチな印象を決定付けた、アニメが悪いんであって私は悪く無い。以上Q.E.D 証明完了。
「あはは、なんかアムロお兄ちゃんの日常生活って想像しやすいんだよね」
実際はそうやってモニターを通して私とアムロ君が話してると、私の背後にワラワラと部員達が集まって来る。
「アイカナ、自分ばっかり話してないで俺達にもアムロさんを紹介してくれよ」
「そうだよカナちゃん。早く、紹介プリーズ」
「うん。愛加那ちゃん、早く!」
そう言って三人は私にアムロ君を紹介してくれって要求して来る。そりゃあね、昨年から始まった、ホビーロボットバトルの地球県全域シミュレーションバトル部門の初代ディフェンディングチャンピオンとして一躍有名になったからね。ちなみに私は準優勝。
ホビーロボットバトルをやってるなら、やっぱり初代チャンピオンとお近付きになりたいと思うのも致し方無しだね。そんなアムロ君と話をしたくてウズウズしてる三人に混じって、ゲーミングチェアに腰掛けてる私の隣にちっちゃな身体でテクテクとやって来たのは、ご存知私の最推し!
「アムロ兄ちゃん。こんにちは」
声変わりなんかまだまだずっと先な、中性的な可愛い声で画面の向こうのアムロ君に手を振って挨拶をする。この世で唯一、私のハートを萌え萌えキュンとさせてくれる、半ズボンが似合うショタっ子に成長した、私の最愛の弟カミーユきゅん。
『やあカミーユ!そうか、カミーユも今年から小学生だったんだね。入学おめでとう』
「ありがとうアムロ兄ちゃん!」
カミーユの挨拶にアムロ君が小学校入学の祝辞を贈ってくれると、にぱっと満面の笑みを湛えてカミーユはお礼を告げる。偉いねカミーユ、ちゃんとお礼を言える良い子に育ってくれて
『カミーユオメデトウ。カミーユオメデトウ』
私がそんな推しの成長を噛み締めているとモニターの向こうでは、丸い物体がヒョッコリと現れてた。まん丸い躯体の北半球部の2つの耳?をパカっと開いて両手を伸ばしてチョット可愛い感じの合成音声でアムロ君の真似をしてカミーユにオメデトウと祝辞を贈ってくれた。
「あっ、ハロ!ハロもありがとう」
はう〜っ。ハロ大好きなカミーユがハロからの祝福に大喜びしてるわ!もう、あまりにも尊すぎる光景ですわよ。
と言うかハロってば、いつの間にか佐世保で会った時には無かった手が付いていたけど、これってアニメ版のハロにバージョンアップされたって事なのかな?まあ良いやな。あれから何年も経ってるんだし、メカ好きアムロ君ならそれくらいやってても可怪しくない。
そんな事より外野も煩いし、手っ取り早く、ちゃちゃっとみんなを紹介して早く本題に入ろう。
みんなの紹介も終えて、いよいよ今日の本題へと入るよ。
「アムロお兄ちゃん、もう行ける?」
私は自分の傍らに置いてあった我が愛機を、両手でヨッコイショってな感じで取り上げて、モニターの向こうのアムロ君に示して見せながら問いかける。
『ああ、行けるよアイカナ』
アムロ君もまた、私に合わせて自分の愛機を掲げて見せた。それは白に近いグレーと濃いブルーのツートンカラーの機体色。色合い的にはνガンダムに近いかな。それにスリムな体躯は、如何にも機動性を重視してる事が伺える。まあ前回の大会で対戦して、実際そうだったんだけど。
『ところでアイカナ、その機体だけど、大会に参加した時の物とは違うみたいだけど、新しく造ったのかい?』
対する私の機体は、ずんぐりむっくりな感じの体躯に機体色はカーキグリーンと見た目はすっごい地味。ザクとかの量産機カラー。しかもぶっちゃけて言うと、細部まできちんと覚えていないけど見た目はまんまボトムズのスコープドッグ。勿論左肩は赤く塗ってる!
前世の兄がボトムズプラモ好きで、TAKARA(現タカラトミー)のボトムズシリーズのプラモ(ダグラムも)めっちゃ作ってたから、私も結構覚えてたんだ。まあ当時地元放送局ではボトムズ放映されて無いんだけど、と言うか高橋良輔監督の作品ほぼ全部放送されてないんだけどね。ホント昭和の時代のアニメ放送地域格差は恨めしい。
「ううん。外装と関節とか一部を交換しただけで、フレームとか基本的な所は前のまんまだよ」
アムロ君の問に、私は愛機の肩関節ををいじりながら答える。私の機体は、ホビーロボットバトル規約の上限80センチよりも小さい、全長60センチに抑えている。大きさ的には昭和の少年の垂涎の的、ジャンボマシンダーサイズだね。それとボトムズファンにはお馴染みの、アームパンチの機構は付けてない。あれは多分規約の内蔵武器不可に抵触するしね。
『そうなのか。ずいぶんと渋いカラーリングだね』
「えへへ、そうでしょ!結構気に入ってるんだ」
なんか、アムロ君が若干引き気味な気もするけど、私が好きなんだからコレで良いのだ!頭部の三種のターレットスコープを愛でながら、私はニンマリと笑う。
『じゃ、じゃあ始めようか』
ありゃ、なんか本格的に引かれた気がするけど気の所為だね。それよりも、始めようかと誘われたからには私もそれに応えなきゃだね。
「うん。そうだね」
私は傍らにある、ホビーロボットバトルシミュレーション筐体のデータトレース装置に愛機をセットする。モニターの向こうのアムロ君も同様に自分の愛機をセットしている。そして、私達二人はほぼ同時にセットを完了。
『設定はアイカナが決めてくれて構わないよ』
レディファーストって訳じゃ無いんだろうけど、アムロ君は選択権を私に譲ってくれた。此処は有難くご厚意に甘えよう。
「本当?ありがとう。じゃあ機体のサイズは7メートルクラスで戦場は市街地戦が良いかな」
つらつらと私は希望を伝える。
『了解。それで行こうか』
アムロ君も了承してくれて、私たちはバトルシミュレーションマシーンに武器の選択その他含めてのデータを入力設定する。入力はほんの数十秒で完了し、シミュレータも私達の機体のデータを読み込み完了して準備は滞り無く終了。
『行くよアイカナ』
アムロ君がヘルメットを片手に私に呼び掛ける。シミュレーションバトルはバーチャルリアリティ空間で行われる関係上、このヘルメットの様な装置を頭部に装着しなきゃならないんだけど、これってほぼソードア◯ト・オンラ◯ンのナーヴギアと同じだね。プラモ◯四郎のプラモシミュレーションマシーンも同じだけど。
「うん。行くよアムロお兄ちゃん。プラモシミュレーション・ゴーだよ!」
私は思いっ切りノリノリで言いながらメットを装着して、ゲーミングチェアに身を預ける。そして私の意識は、現実世界から
現実世界から仮想空間へは僅かな時間を経て意識が遷移する。部室のホビーロボットバトル・シミュレーションマシーンのモニターの前に座していた筈の私は、今は精神だけが覚醒してる状態で、コンピュータプログラムに依って形成された仮想の機体のコックピットのシートに、仮初に与えられた肉体でパイロットスーツ(ガンダム的に言えばノーマルスーツ)を着装した姿で座している。
もう、このコックピットに着座すすのも慣れたもので、私はチュートリアルもすっ飛ばして機体の操作を始める。機体のエンジンはアイドリング状態で後はその時状況を把握する為にカメラを起動してモニターを表示するだけ。
「ポチッとな!」
そう声を発してボタンを押すと、ピィーンって感じの小さな音を響かせてメインモニターがオンになって、外の景色を映し出してくれる。この音は開発の段階で私がリクエストして入れてもらった物なんだ。やっぱり昭和のオタクとしては、コレは入れておきたかったこだわりね。
「おっ、点いた!」
メインモニターに現れた外の風景は、片側三車線の計六車線の道路と10階建て以上の高層ビルが立ち並ぶ繁華街。その道路は破壊された車両や、アスファルトが所々砲撃でも受けたのか捲れ上がってたり、火の手が上がっているところもチラホラ。
それと倒壊しているビルや半壊しているビルも随所に見られる。如何にも此処で戦闘が行なわれていましたよって感じだね。
「索敵、反応は無いか。う〜ん、どうしょっかな」
今の所レーダーにも熱源感知器にも外部音響感知にも反応は無し。アムロ君の機体は光学カメラにも映ってないし、近場には居ないなのかな。それともまだ機体を起動状態にしていないのかも。因みにこのコックピットの仕様はATとは違って、一年戦争時の連邦系のモビルスーツのコックピットのレイアウトに近い仕様になってる。
『いや、そんな事は無いかな。なんてったって未来の宇宙世紀最強パイロットだしね』
一話でいきなりガンダムに乗って、初見でビームサーベル使って相手のコックピットを一撃で穿くとか、どんだけの操縦センスを持ってるんだっての。兜◯児君だってマジンガ◯Zを、ちゃんと操縦出来る様になる迄には結構な尺を割いてたのにね。やっぱ可怪しい。
「そんな人を相手に、さてどう戦い抜くかな!?」
実際のところ、去年の大会で敗けてる私としては、アムロ君のセンスをモロに味わってるし、今回は前回よりも良いとこ見せたいな。そんな事を考えながら私は、モニターに映る外部の映像を視ながら考える。
「あっ、コレだ!」
ピンと来た私。モニターに映ってる、前方およそ30メートル先左側に建つビル。ざっと見20階建て位の高層ビルが、幸いにも戦闘による被害に遭って無い様でほぼ無傷のままだった。
「よぉ〜し、行くよ」
私は操縦桿を握り、足元のフットペダルを軽く踏む。すると機体はゆっくりと歩行を開始する。低速である事もだけど設定上のオプションとして、機体各所とコックピット自体が衝撃吸収機構が備わってて、歩行による振動は全くと言って良いほどに感じない。多分今後製造される実際のモビルスーツもそんな感じになるんだろうな。
そうして、人間の歩みなら少し時間が掛かる距離だけど、7メートルクラスの人型ロボットの歩みなら十歩にも満たない歩数で目的のビルの前に到着して、私は機体のモニターをそのビルの上方へと見上げる形で捉え、機体の腕を伸ばして指先でガラスを割ってビルの部屋の縁に手を掛けて、屋上目指して登り始める。
「テンテケテケテケテ〜ンテン♪って、気分はクレイジークラ◯マーだね」
そんな事をほざきながら、私は機体の指先と足先をビルの窓を蹴破りながら引っ掛けて登る。下手にバーニアスラスターとか吹かしたら、相手はセンスのかたまりのアムロ君だし見つかってしまうかも知れないからね。補足しておくと、ホビーロボットバトルのリアル対戦ではリング上でプロレスバトルみたいな戦闘だし、小さなロボットでバーニアとか付いていないんだけど、このシミュレーションバトルではバックパックとかで装着する事も出来るんだ。でも私は今回バックパックは着けてない。その代わりに背部に武器とかのマウントラックを着けて、マシンガンとか近接格闘用のロッドとか積んでるけど。
「到着!」
そうこう言ってる内に私はビルの屋上まで登って、機体を四つん這い状態にし身を低くして早速索敵を始める。あいにく降着姿勢は再現して無いから仕方無い。
だけど、流石に高層ビルだけあって7メートルクラスの機体を置いても多少らスペース的に余裕がある。まあ実際のビルならこんな大きな機体が屋上に登ったら、重量でビルが崩れるだろうけど。
「スパロボ的に言えば、地形効果で防御と命中が20%上昇ってところかな。あっと、でもアレって飛行できるユニットだけの効果だっけ、ってどうでもいいや。それよりもアムロ君は何処かな?」
私は愛機の頭部のターレットスコープを左右にグリグリ動かして索敵する。スコープが動く毎にモニターの映像が変化する。
「う〜ん。居ないなぁ」
少なくとも現状の体勢から見て取れる範囲にはアムロ君の機体は見当たらない。だったらと、私は屋上で機体の方向を左側に向ける。そして改めてその馬で索敵を開始するんだけど、やっぱこの位置でも発見できないよ。
「一体何処に?」
アムロ君の機体は一向に姿も見えず、熱源反応にも捉えられない。何だろうか、何やら嫌な予感がするんだけど。私は頬にヒヤリとした、嫌な汗が滴るのを感じる。バーチャル空間なのにね。そんな事を考えてたらちょっとした衝撃がコックピットを揺らした。
「うわっ!?」
ズガガガッて感じの衝撃に襲われ、私は今しがた感じた嫌な予感が現実になった事を知った。
「攻撃を受けたんだ」
ディスプレイに表示されたダメージ値と被弾箇所を確認する。被弾したのは左肩の赤く塗装した肩アーマーで、しかも背部から攻撃を受けた事が解った。私はビルの屋上で機体をうつ伏せにして下方を索敵していたんだから、導き出される答えは。
「上からの攻撃!」
然程ダメージは入っていないことから武器はマシンガンで、距離もそこそこ離れている。やられたアムロ君のほうがやっぱり一枚以上上手だった。私が高層ビルの屋上から攻撃しようと考えた様にアムロ君もそう考えたんだろうね。しかもきっと私がこんな戦法を取るだろうと読んだ上で、私が陣取ったビルよりも高層のビルに登って。
「プラモシミュレーションと違って現実の機体にダメージは入んないけど、戦闘的には不味いよコレ」
これ以上のダメージを被らない為に、私は直ぐ様機体を動かして攻撃された方向から死角になる方向に降ろして、身を隠す。と言っても、ビルから飛び降りるんじゃ無くて、ビルの縁に手を掛けてぶら下がる体勢で。そして、ターレットスコープを動かして確認する。
「あんな所にいた!」
モニターに表示された数字から彼我の距離は300メートル程で、私が陣取ったこのビルよりも高い高層ビルの屋上に、マシンガンを手にしているアムロ君の機体の姿をカメラが捉えた。ふう、助かった。あのまま屋上にいたら追撃を食らってたよ。
そして、私が身を隠した事でアムロ君もその場から離れる事を選択したみたい。マシンガンを私と同様に、背部のラックに懸架してビルから降り始め、モニターから姿を消した。
「先手を取られたからしょうがない。こりぁやっぱり近接戦勝負かな」
アムロ君が移動した事を確認して私もビルから機体を下ろし、アムロ君のいた方向に移動する事にする。此処から改めて仕切り直しって事だね。見てろよ宇宙世紀最強パイロット。私だって、ただじゃヤラれないからね!
一話からあんな操縦が出来たアムロ君。富野監督がその理屈付けの為にニュータイプの概念を導入したのも納得ですね。