(トレーナーさんの)賢さが不足しているようですね 作:龍角散ガム
始まりは、一人のウマ娘を指導したことでした。
そのウマ娘はメイクデビューを果たせず、トレセン学園を去ることが決まっていました。
けれど彼女には、一つだけ願いがありました。
たった一度でいい。
とあるウマ娘に勝ちたい。
その願いを知った『あなた』は、彼女を指導することを決めます。
トレセン学園を去るまでの二週間。
『あなた』は彼女の走りを知り、彼女がライバル視するウマ娘について徹底的に調べ上げました。
そして、彼女が学園を去る前日。
彼女と“とあるウマ娘”は模擬レースを行います。
結果は、惨敗でした。
当然です。
たった二週間で、そのウマ娘へ勝てるほど甘い世界ではありません。
それでも彼女は満足そうに笑っていました。
「……メイクデビューもできなかった私でも、あの子の隣に立てましたから」
そう言い残し、彼女はトレセン学園を去っていったのです。
そして。
その様子を見ていた“とあるウマ娘”もまた、『あなた』へ興味を抱きました。
「——貴方は、どうしてあそこまで彼女に肩入れしたのかしら?」
もう学園を去ることが決まっているウマ娘を指導したところで、何の得にもならない。
彼女はそう言いたかったのでしょう。
ですが、『あなた』にとって、そのウマ娘が学園を去るかどうかなど関係ありませんでした。
もっと言えば、レースのグレードにすら興味はありません。
ウマ娘同士が己の信念を懸け、夢へ向かって走る姿。
それさえ見られれば、『あなた』は満足だったのです。
だから『あなた』は深く説明せず、たった一言だけ返しました。
“面白いから”
その言葉を聞いたメジロラモーヌは、一瞬呆然と目を見開き——。
すぐに、ふっと笑みを零しました。
「——私も、愛していますわ」
これが、『あなた』とメジロラモーヌの出会いでした。
流されるままメジロラモーヌの担当トレーナーとなった『あなた』でしたが、ラモーヌを通じて、また別のウマ娘と知り合うことになります。
それが、メジロアルダンです。
メジロアルダンは、生まれつき身体が弱いウマ娘でした。
その脚は、“ガラスの脚”と呼ばれるほど脆いもの。
何度も入院を繰り返しながら、それでも彼女は走ることを諦めませんでした。
姉のように走りたい。
その想いを胸に抱き続けていたのです。
そんな彼女を見て、『あなた』は医学の勉強を始めました。
どうすれば、ガラスの脚を割れないガラスへ変えられるのか。
メジロラモーヌを指導しながらも、『あなた』はメジロアルダンのために動き続けます。
そして、その努力はついに実を結びました。
“割れないガラスの脚”へと進化したメジロアルダンは、日本ダービーを始め、数々の重賞レースを制覇していったのです。
そんな彼女は、穏やかな笑みを浮かべながら『あなた』へ言いました。
「貴方は、私の中に輝きを見出してくださいました。貴方との出会い、共に歩んできた軌跡。そして、これから先の未来——その全てが、私の誇りなのです」
これが、二人目の担当ウマ娘。
メジロアルダンとの出会いでした。
ですが、これだけでは終わりません。
メジロラモーヌ、メジロアルダンを通じて、『あなた』は数々のウマ娘たちと出会い、そして運命を共にしていくことになります。
気がつけば、『あなた』にはこんな異名がついていました。
“メジロハンター”。
もちろん、『あなた』にそんなつもりはありません。
別に、メジロ家のウマ娘ばかりを狙っていたわけではないのです。
ですが、なぜだか自然とメジロ家との縁が増えていき——。
気づけば、担当ウマ娘が全員メジロ家になっていたのでした。
「さぁ、語りましょう。貴方と私の愛を——♡♡♡」
「私の全てを、貴方へ捧げます——♡♡♡」
「あたしをここまで育ててくれたトレーナーさんは、もうメジロです——♡♡♡」
「私と貴方は、一心同体です——♡♡♡」
「トレーナーと一緒なら、私はどこまででも——♡♡♡」
「明日も、明後日も、その先もずっと……アタシを見ていてね——♡♡♡」
「これから紡がれるメジロ家の栄光を、トレーナーさまと共に——♡♡♡」
今日も、そして、これからも、『あなた』の周りにはメジロ家のウマ娘たちが集まり続けます。
もう、『あなた』に逃げ場はないのです。
たづな「エ◯ゲー主人公体質に生まれた時点で詰みです。諦めましょう」
おばあさま「Welcome to the Mejiro-family, son」