三月も終盤となり、高校入学が着々と近づいてくる今日この頃、俺は現代の摩天楼、魔境、陰謀と欲望が渦巻く…本当に渦巻いてるかはわからないけど、とにかく我らがニッポンポンの首都、東京に足を踏み入れていた」
「いや、さっきから一人で何言ってんの?陰謀とか欲望とか…てかニッポンポンって何よ?」
おっと、口に出てしまっていたようだ。
声が聞こえた方に振り返ってみると、そこには我らがヒロイン、酒寄彩葉が困惑した様子でこちらに顔を向けていた。
うん、困惑した顔も可愛い。お姉さんキュンキュンしちゃう。
『肉体年齢は彩葉と一緒だし精神年齢はヤッチョと同じ8000歳のおばあちゃんだよ〜』
イマジナリーヤッチョには黙ってもろて。
「いや、なんでもないよ。東京来たの久しぶりだから、ちょっとだけテンションが上がっちゃっただけだよ」
「そ、そっか…でも、その気持ちわかるかも。これからは1人でやっていくんだって思うと、テンション上がるし」
「1人って、もしかして彩葉、ボクのこと忘れてる?」
「忘れてないし。でも、いつまでもリンネに頼りすぎるのは申し訳ないよ。やりたいことがあるんでしょ?私なんかに構わないでそれに集中しなよ。あ、でもリンネは遠慮せず私を頼ってくれていいから」
まずいね。彩葉、覚悟ガンギマリだ。一切の曇りなき眼でそんなことを言ってしまっている。このままだと本編通りの超無理限界ギリのめちゃ頑張り彩葉が爆誕してしまう。それだけはなんとかして阻止しなければ。いや、阻止はダメだな。完璧に阻止してしまうと本編の彩葉の努力が無駄だったみたいになってしまう。それはダメだ。まあ、超無理限界ギリはよろしくないので、せめてめちゃ頑張り彩葉まで彩葉の状態をよくしなければ。仕方ないが、あの作戦を使うしかないか。
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「…彩葉、ボクのこと、嫌い?頼りない?」
私は、悲しそうな目をしたリンネにそう言われた。嫌いなわけがない。幼い頃からずっと仲が良かった。頼りにならないわけがない。お父さんが死んじゃってからは、塞ぎ込んだ私の側にずっと一緒にいてくれた。
「ぇっあっいやっ嫌いだなんて、そんなわけない!それに、昔から勉強教えてくれたり、遊んだらしてくれたから、すごい頼りになるよ?でも、リンネにもやりたいことがあるなら、それに力を入れたほうがいいんじゃないってだけでそれに…」
私は焦ってリンネに弁明する。きっと今の私は挙動不審になってしまっている。
「彩葉は優しいよ。みんな彩葉を頼ってた。それに彩葉は全力で応えてた。いつも自分のことは二の次だったじゃん。ボクは彩葉に自分を犠牲にしてほしくないんだ。だから、もっとボクのこと頼って…!」
「うっ…」
リンネの目が涙で滲む。綺麗な紫の瞳をアメジストのように輝かせて、上目遣いでこちらを見つめてくる。
リンネは私を心配してくれている。リンネは滅多に泣かないから、相当だ。
罪悪感を感じてしまうが、甘えるわけにはいかないのだ。一度甘えてしまったら、ズルズルと沈んでいってしまう。そうなってしまったら、私は
お母さんに…
「彩葉、お願い。ボクのこと、もっと頼って?」
「……わかった」
と思っていたけれど、親友の“お願い”には耐えられず、いとも簡単に陥落してしまう私なのであった。
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「……わかった」
よっしゃーーーっ‼︎これで超無理限界ギリは回避したーーーっ‼︎
諸君らに伝えておこう。今の俺は、タレ目だ。
彩葉は…というか、酒寄家だが、タレ目に超絶弱いのだ。朝久さんはタレ目だし、乃依くんちゃんもタレ目だし、我らがプリンセス、かぐやもタレ目なんだよね。そして彩葉は意外と押しに弱いのだ。タレ目で特攻をかけながら、“お願い”でゴリ押せば、簡単に了承を得られてしまうってワケ。
まあ、まだ油断はできない。結局彩葉は紅葉さんに認めてもらうために、身を粉にしながら生活するはずだ。まあ、その時には“お願い”をチラつかせて無理矢理頼らせるだけなんだけどね。フフフ…
「じゃ、約束ね。お互いがお互いを頼る!せっかくまたお隣さんになれたんだからさ!」
俺は彩葉に向かって小指を差し出す。
「指切りって、子どもじゃないんだから」
「残念、15歳はまだまだ子どもだよ」
「…そうかも」
そう言って笑う彩葉も、こちらに向かって小指を差し出す。
「彩葉。一緒に、頑張ろう!」
「…うん。ありがとう、リンネ!」
俺と彩葉は約束を交わした。友のため、未来のため。そして、俺自身のために。
尚、このやりとりは東京駅のど真ん中で行っていたので、何人かのギャラリーから拍手が飛んできて、彩葉と一緒に顔を真っ赤にしたのは秘密だ。
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「ありがとうございましたー」
引っ越しを終え、業者の人たちが去っていく。俺と彩葉はそれを見送り、これから日常を過ごす新たな我が家に足を踏み入れようとしていた。
「じゃ、彩葉。ボク荷解きするから、また後でね」
「うん、また後で」
俺と彩葉は、一旦別れる。実質同居といっても、やっぱり部屋は違うのだ。隣がまだ空いていたのは幸運だった。あの壁ドンニキには悪いが、これも戦いなんでな。別のアパートに住んでくれ。
さて、壁ドンニキにごめんなさいをしたところで、そろそろ真面目に荷解きを始めよう。まずはコイツ、クソデカPC(超ハイスペック)〜!
『やっぱりパソコンのスペックはね、高ければ高い方がいいってヤッチョは思うんだよね〜』
とか言いながらヤチヨが送りつけてきたやつだ。親に誤魔化すの大変だったなぁ。まあ、このPCのおかげでライバー活動は滞りなく行えているからヤチヨには感謝してるけどね。
PCを設置してしまえば、あとはもうすぐだ。服をクローゼットにぶち込み、机と椅子を設置してはい終了。まさに疾風迅雷やね。
「彩葉、荷解きどう?手伝おうか?」
「いや、もう終わるとこ。あとはヤチヨの神棚を…そ〜っと…ふぅ、これでよし。これで終わったよ」
「神棚って…信仰してるねぇ…」
「だってヤチヨよ?もし仮にヤチヨ教があったら私は熱心な信者になってた…」
そう言って彩葉は棚の上に置かれたヤチヨの神棚に向かって拝み出す。こりゃ信者だわ。もしかしたら原作よりもハマってるんじゃないかな。
まあ、そうさせたのは多分俺なんだろうけどね。
「とりあえずヤチヨ教は置いておいて。荷解きも思ったより早く終わったし、買い物でも行かない?色々買わなきゃいけないやつもあるし」
「確かに。まだ昼過ぎくらいだし、そうしよっか」
今の俺たちにはある弱点がある。それは、生活必需品があまりにも少なすぎることだ。フライパンにトイレットペーパー。その中でも食料なんて引っ越し初日の俺たちが持ってるはずがないのだ。だからそれらを早急に揃える必要がある。本当は明日の予定だったけど、まぁ、いいか。
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「あ!彩葉、ここのトイレットペーパーめっちゃ安い!ダブルでこの値段はコスパ最強じゃない?」
「え、下手なシングルよりも遥かに安い!そんなの買うしかないじゃないのよ!」
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「お、このフライパン結構振り心地いいじゃん。これ買おうかな」
「彩葉、これ見て…」
「ん?どうした…って高ァ‼︎無理無理無理無理!」
「戦略的撤退ですな…」
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「こちらが濃厚味噌バター無双ラーメンコーントッピングです!うっひょ〜!」
「リンネ、それ買うの?」
「いや、スープの中に虫が入ってたり麺の中に髪の毛が入ってそうなだからやめとく」
「えぇ…」
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「あ、パンケーキミックスだ。」
『ヨヨヨ…ヤチヨもパンケーキ食べたいのです…』
「…彩葉の神棚にでもお供えしてやるか」
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「百均便利すぎ…あの時にこういう店があればなぁ…」
「リンネ、なんか言った?」
「いえ、何も?便利だなぁって」
「確かに。安上に種類多いし。これから、お世話になります…」
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「あ〜、買った買った。もうお財布スッカスカ」
「私も…これからバイト頑張らんと」
俺たちは、パンパンに膨らんだ袋を両手に抱えて新たな我が家に帰還した。そして…
「それでは、これから一人暮らしお互い頼り合い、助け合いながら頑張っていきましょうパーティーを開催しまーす!乾杯ーッ!!」
「おー…いや名前長っ」
パーティーをしていた。俺の部屋で開かれたそれは、机の上には豪華な食事がいくつも並び、ちょっとお高いぶどうジュースでお互いのコップを鳴らす。
「これ、総額いくらだった?」
「みんな5〜600円くらいだったよ。そりゃ毎日買うには高いけどさ。今日は大切な日なんだし、寂しくはしたくないじゃん?」
恐る恐ると言った様子で尋ねてくる彩葉。まあ、無理もない。机の上には定番のフライドポテトは勿論のこと、パエリアにピザ、小籠包まである。正直JK目前の女の子2人で食べ切ることができるか怪しい量だ。でも、せっかくだし、今日くらいは美味しいもの食べたいよね!
「そっか…ありがと」
「お礼なんていいよ。さ、冷めないうちに食べよ」
「……うん」
俺たちはささやかながらも楽しいひと時を過ごし、最初の夜を明かした。
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「……んぅ………もう朝か」
目が覚める。知らない天井だ。だが、これから数年を共に過ごす天井だ。これからよろしく。
ベランダに体を移す。空から季節にしては眩しい光を浴びて、だんだんと目が覚めてくる。ああ、小鳥の囀りで耳が癒される。隣を見ると、彩葉が俺と同じように朝日を浴びていた。
「おはよう、彩葉」
「うわっ!…おはよう、リンネ。もう、朝から驚かさないでよ…」
「彩葉がいたから挨拶しただけだよ。勝手にびっくりしたのはそっちじゃん」
「うーん、何も言えない…」
彩葉を驚かせてしまったようだ。挨拶しただけなのに…まあ、目が覚めたようでなによりだ。
「今日から、一緒に頑張ろう!」
「そうね。頑張ろう、リンネ!」
俺たちは、今から始まるんだ。
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時が経つのは一瞬で、あっという間に一年が過ぎ、俺と彩葉は2年生へと進級していた。
「彩葉〜、準備できてる?」
「もうすぐ終わるー。ちょっと待っててー」
「りょーかい」
この一年間で、俺と彩葉の実質的な同棲は完全に日常になっていた。準備が早く終わった方がもう片方に呼びかけ、一緒に学校へと向かう。放課後はバイトとかの関係で帰りはバラバラになるけれど。
「リンネ、おまたせ。ごめん、昨日結構夜更かししてたからちょっと寝ぼけちゃってて。じゃ、行こ」
「うん、行こうか」
彩葉も準備が完了したみたいなので、共にアパートを出発する。
「あ、今日夜までバイト入ってるから遅くなる」
「了解。じゃあ、今日はボクが先に家に着くね」
今日の予定をお互いに確認しながら学校へと足を進めているうちに、すぐに学校に到着する。徒歩で行けるっていいよね。
「あ、彩葉にリンネ。おはよ〜」
「2人ともおはよ。今日も仲良いね」
教室に入ると、俺たちに向かって話しかけてくる少女が2人。
諫山真実と綾紬芦花だ。この2人とは入学式の日に話しかけられて以来、4人でずっと一緒にいる。色々と無理しがちな彩葉の身を案じて、よく遊びに誘ってくれる。おかげで彩葉も過労でぶっ倒れるようなことはこの一年の中で一度もない。勿論俺もある程度手助けをしてはいるが、この2人ほどは彩葉を癒すことはできないだろう。ちょっと悔しい。
「ではここを、今日は六日だから…酒寄さん」
「はっはい!ここでの『久しくなりぬ』は動詞『なる』の連用形と、完了の助動詞『ぬ』の組み合わせです」
「はい、その通りです!」
『おぉ〜』
パチパチパチとクラスメイトからの拍手喝采を受けている彩葉だが、ありゃ直前まで気絶してたな。内心『あっぶねーーっ!!』とでも思ってるんだろう。全く、昨日も結構遅くまだやってたみたいだし、また休ませないとな。
「では次はここを…竜ヶ崎さん」
「えっあっはい!ここの『なりにけり』は動詞『なる』の連用形と完了の助動詞『ぬ』と過去の助動詞『けり』が組み合わさったものです」
「その通り、完璧ですね」
『おぉ〜』
あっぶねーーっ!!彩葉と俺、結構番号離れてるはずなんだけどな…油断大敵やね。あ、彩葉笑ってやがる。そっちだって気絶してたくせに。
ちょっとイラっときたので次の休み時間に彩葉にぐりぐりした。
放課後。
彩葉はバイト戦士となってバイト先に向かっていった。
なので今日は芦花・真実と一緒に帰宅だ。
「古典のときのリンネ、すごかったけど面白かったね〜」
「先生に呼ばれた時ちょっとびっくりしてたもんね」
「うぅ…油断大敵なのです…」
「あ、それヤチヨの真似でしょ〜?」
「リンネも好きだね、ヤチヨ」
「勿論好きだよ。なにせ彩葉にヤチヨを勧めたのはボクなんだから。まあ、彩葉ほど筋金入りってわけじゃないけどね」
俺がそう言ったら、2人はめっちゃびっくりしていた。
そんな以外なのかな。
「ただいま」
部屋に帰宅する。勿論誰も返事しない。
『おかえり〜』
なんてことはなく。何故か電源がついているパソコンのモニターの中から、さも当然かの如くヤチヨがお出迎えしてきた。
「ああ、ヤチヨ来てたんだ。連絡一つくらいくれてもいいじゃんか」
俺は全く驚かない。なにせよくあることだからだ。バイトなどで隣の部屋に彩葉がいない時間に、俺とヤチヨはこの一年間この部屋で言葉を交わしている。なんかFUSHIだけじゃ寂しいとかで。勿論最初はビビったよ?でも、まあ、慣れたよね。
『まあまあ、そんな固いこと言わないでさ。今日は学校どうだった?楽しかった?』
「いつも通り。まあ、楽しかったよ。芦花に真実、彩葉だっているしさ」
『そっちはみんないていいな〜ヤッチョもみんなとお話ししたいな〜』
「今はまだその時じゃないだけだ。いずれみんなで遊べる日を実現させてみせるさ。だから、俺を信じて待ってて」
『ほんと?リンネありがと〜っ!ヤッチョ楽しみにしてるね!あと、時間大丈夫そ?そろそろ配信の時間じゃない?』
「あっやばい!ヤチヨと話すのに夢中になってたらもうそんな時間か!じゃあヤチヨ、また今度話そう。じゃあね」
『うん、リンネもがんばってね〜っそれじゃ、さらば〜い!』
そう言ってヤチヨは画面から姿を消した。全く、俺だってもっとヤチヨと話したいっての。本人には口が裂けても言えないけれどね。絶対調子乗るから。
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「ヤオヨロー。八月リンだ。今日も配信やってくぞー」
『ヤオヨロー』
『ヤオヨロー』
『相変わらず自分の挨拶持たないのな』
『ヤオヨロー¥1500』
『邪馬台さんこんにちは』
『今日はヤチヨいないんだ』
「俺の挨拶はこれでいいんだよ。ヤチヨには許可貰ってっから。あと邪馬台じゃないし。あの時はまだデビューしてないからテキトーに言ってただけだから。ライバーとしての俺は
彩葉のいない時間は、俺のライバー活動の時間だ。俺のチャンネルはヤチヨとのコラボ配信を中心として、ゲーム実況にお悩み相談、雑談などといった活動をしている。ヤチヨパワーもあってか、活動を始めて僅か一年でヤチヨと肩を並べるトップライバーになった。おかげでふじゅ〜が溜まる溜まる。貴重な収入源です。ありがとう。
「ヤチヨは今日はいないよ。今日の企画だが、恒例の俺に黒星をつけようの会ってことで俺1人対リスナー3人のKASSEN対決を……」
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「はい、今日も全勝ということで、黒星をつけられることは叶いませんでした」
『なんで勝てるんだよ』
『あんな挙動されたら勝てんて』
『リンちゃん強すぎ。惚れた。¥30000』
「はっはっは。敗北を知りたい。さて、キリもいいしこれで配信終わろうと思う。今日も見てくれてありがとう。じゃ、またな」
『さらばーい』
『さらばーい』
『さらばーい』
ーーーー
「……ふぅ」
ちょっと疲れた。配信活動も楽ではない。ずっと同じ内容ってわけにもいかないのだ。例えば毎日雑談配信ばかりだと、あまりよろしくない。所々でゲーム実況だったり、コラボなどで味変する必要があるのだ。リスナーが飽きちゃうからね。尚俺はヤチヨとのコラボ配信がメインだから、どっちにしても再生数は結構取れるし、入ってくるふじゅ〜も莫大だ。正直、彩葉に申し訳なくなるくらい稼いでいる。正直彩葉を養うくらいわけないのだが、万が一それをしてしまうと、彩葉の今までの努力が無駄になってしまうから、一応彩葉には黙っている。あと、後々大金が必要になってくるしね。
さて、そろそろ彩葉が帰ってくる時間だ。ご飯を用意して…ん?
俺は、理解した。ここから、真に物語が始まるのだと。
外に出る。階段を降りて、それを見つめる。
「…り、リンネ。ど、どうしよう」
俺の目に映っているのは、二つのみ。
困惑や不安、その他諸々の感情を顔に浮かばせた彩葉と、
「たぁい♪」
安心しきった顔で彩葉に抱かれている、赤ん坊の姿が。
始まるんだ。ハッピーエンドを目指す物語が。