ドギマギ結月とふわふわ茜   作:竹@竹林にて。

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(天候が)荒れた日の深夜のゆかあかです。
ほのぼの系(だと思う)のでご安心ください。


荒れた日に

 轟轟と吹く風と窓を叩く雨音は一向に止む気配を見せない。台風の時節でもないのに天気は荒れ模様で、スマートフォンに手を伸ばして画面を見れば既に二時を回っておりもう布団に入ってから二時間近く眠れていないことを表していた。

 ふう、と溜息をついて起き上がる。これは眠れないだろうと諦めて椅子の背もたれに掛けてあったカーディガンを羽織って寝室を後にした。明日も大学だが、講義は午後からだしサークルもこの天気では休みだろうから多分大丈夫だ。同居人たちを起こさないように他の寝室の前を忍び足で通り過ぎリビングルームへと向かう。暗い廊下をスマホの明かりを頼りにして進んでいると、私と同じく眠れないのだろうか、リビングには既に明かりが灯っており扉の周囲を煌煌と照らしていた。

 

「こんばんわー…」

「ん、ゆかりさん?ゆかりさんも眠れなかったんや」

「あ、茜さんだったんですか」

 

 声を抑えてリビングに入ると、備え付けのキッチンで何か飲み物を入れている茜さんの姿があった。ずず、とマグカップに口をつけこちらに視線を向けてくるその様子に、手を上げて応える。

 

「ゆかりさんもコーヒー飲む?用意したるよ」

「いいんですか?じゃあ、お願いしていいですかね」

 

 りょうかーい、と返事が来た。恐らく、夜間のバイト帰りであろう彼女にやらせるのも申し訳ないが折角の申し出だ、ここは甘えるとしよう。

 

「茜さんは今の時間までバイトですか?お疲れ様です」

「バイトは兎も角帰りの大荒れの天気が酷かったんやって…。もう、傘も何の役に立たへんもん」

「それは災難でしたね…」

 

 苦笑して不満げな茜さん答えれば、ほんまにな、と意味浅な回答がコーヒーと共に返ってきた。ありがとうございます、と受け取って口付ければほんのり甘い。好みを分かってくれるのがとても嬉しい。

 

「ゆかりさんは寝なくて大丈夫なん?明日大学じゃないん?」

「幸い講義は午後からのだけなんで。この天気だと寝付けなさそうですし」

 

 そやね、とコーヒーを啜りながら返事すると、マグカップをテーブルに置いて茜さんは壁際に備え付けられたテレビに近づいた。すぐ傍にあるブルーレイの棚に手を伸ばしながら視線をこちらに向ける。

 

「適当に映画見るつもりなんやけど、ゆかりさんはそれでええ?動画サイトでもええけど」

「あー、茜さんに任せます。特に何したいとか思いつかないんで」

「よし、決まり」

 

 そう笑って、茜さんはブルーレイの棚からひとつ取り出して慣れた手つきでテーブルにセットする。マグカップを包み込むように持ってソファに身を預ける私の横に、ディスクをセットした茜さんが身体を沈めた。「んじゃ、スタート」と笑いながらアカネさんはリモコンの再生ボタンを押した。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「ふわぁあ…、ゆかりさんまだ見てるん?」

「再生した以上は、最後まで見ないと…」

 

 正直、映画自体は退屈な日常もので、わくわくと見ていた私達も途中から言葉少なに流し見していた。茜さんに至っては、もう寝るだけなのだろう、缶チューハイとスマートフォンに視線を移し欠伸交じりにたまに視線を移すだけになってしまった。私もそれでよかったのだけれど、一応再生した身としては最後まで見るのが筋じゃないかと眠気と戦いながら映画に視線を向ける。我ながら難儀な性格だなぁ、と少し呆れてしまう。

 

「ゆかりさんは律儀やなぁ…。そういうところ好きやけども」

「ぶっ」

 

 突然のカミングアウトに映画に向けていた意識も飛んで行ってしまった。急に何を言い出すのか、と二本目に口づける茜さんに視線を向けるも視線はスマートフォンのまま、特に取り乱したりもしていない落ち着いた様子でちびちびと缶を舐めるだけ。

 

「す、好きって言っても、友達としてとか人としてとかでしょう?」

「ん-…、多分恋愛も交じってる」

「ぐぬ」

 

 深夜のカミングアウトは止まることを知らない。急な告白にどぎまぎする私の内心も特段気にしていない様子で、茜さんはチューハイの残りをくい、と流し込んだ。

 

「映画の途中で言うことやないかもしれんけど、酔った勢いで言うわ。うち、多分ゆかりさんのこと好きー」

「そ、そうですか」

 

 にへら、と笑う彼女の様子に、もう映画の内容なんて入ってこない。元よりちゃんと見ているかどうか分からないものではあったけれども。

 

「んー、それじゃあ、言いたいことも言ったしー…。そろそろ寝よ」

「うん、え、えぇ?」

 

 どぎまぎする私を尻目に、缶チューハイの空を持ってキッチンに向かう茜さんに、思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。遠ざかる背中に、つい声を掛けて。

 

「あ、あの、告白したはいいんですけれど…。それだけですか?例えば、その、つ、付き合いたいとか…」

「んー…、ゆかりさんに任せるかなー?うちの都合だけじゃあどうしようもない話やし、突然言われても困るやろ?」

 

 それに。そう言って、立ち上がった私の正面にふらふらと歩いてきて。

 

「うち、ゆかりさんに好きって言えただけでも結構満足やもん。付き合うとかキスとか、そんな贅沢、ゆかりさんがやりたいときにやってくれればええよお」

 

 ほなおやすみ。ブルーレイ切るのだけよろしく。それだけ言って、満足そうに茜さんはリビングを後にした。

 その後で、退屈な映画をBGMに、残された私は加速度的に上がっていく頬の熱を、極薄な中身の映画で案外うまく訪れていた眠気が吹き飛んだ頭の中を、どうやって落ち着けようかと悶えていた。

 

 すっかり眠気も吹き飛んだ、そんな平日五時前のリビングにて。

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