学マスアイドルを曇らせたい! 作:曇らせP
R-17.5相当の描写があります。
「リーリヤとの……合同プロデュース!?」
Pっちのその提案は、あたしを一番やる気にさせる方法で、一番無茶苦茶な方法だった。
H.I.Fで負けてから、あたしは更にダンスを磨こうと奮起していた。得意なダンスで負けたのが悔しかったのもあるけど……ダンス以外に、何をやればいいのかわからない。Pっちはダンスを頑張りたいあたしを尊重してくれるから、それに甘えちゃってるところもある……なんて言ったら、Pっちが可哀想か。
「ワン、ツー……わあぁぁっ!?」
ダンスレッスン中、足がもつれたリーリヤが倒れる。その様子を見ていたPっちは、そのことが分かっていたかのようにサッとリーリヤの元まで駆け寄り、その体を支えた。
「大丈夫ですか?」
「は、はい……ありがとうございます」
「1つの動きに集中すると、全体が疎かになりがちです。まずはしっかり基礎から固めていきましょう」
「……はい!」
「ねぇねぇPっち、あたしは〜?」
「清夏さんには、現状特に言うことはありません。もしよければ、葛城さんに助言をお願いします」
「助言〜〜? ん〜助言かぁ〜〜……」
言われて、あたしは逡巡する。
思い返すと、これまであたしは感覚だけでパフォーマンスを会得し、披露していた。教えられたらなんとなくできちゃうけど、どうやったのかを説明しろと言われたら、言い淀んでしまう。自分の感覚を上手く言語化できず、オノマトペでしか伝えられないのだ。
「こう……グワーって動いてバーってするの!」
「こ、こう……?」
「そこはもうちょっとシュッと!」
「????????」
リーリヤは、終始困惑している様子だった。
レッスンの後、あたしは一足先に部屋に戻っていた。Pっちとリーリヤはまだ確認したいことがあると、レッスン室に残っている。なんだか除け者みたいで気分が悪いけど、リーリヤのために何かしてあげられるかと言えば微妙。それなら、Pっちとリーリヤの1対1にしてあげた方がリーリヤのためになるだろうという判断だ。
あたしとリーリヤの合同レッスンが始まってから数日。あたしたちはお互いの得意分野を教え合うことで、アイドルとして着実にレベルアップしていっている。1人だと疲れるだけの辛いメニューも、リーリヤと一緒なら楽しんでやれる。きっとこの結果もPっちの計算通りなのだろう。そう考えるとちょっと癪だけど、そんなに嫌な気はしない。だって、あたしのことをよく理解してくれている証拠だから。
それよりも嫌なことがあるとすれば……
「今日のPっち、なーんかリーリヤとの距離近かったんだよな〜……」
Pっちが、あたしじゃなくリーリヤにばっかり構っていることだ。
Pっちは、『現状では清夏さんのパフォーマンスの方が上。葛城さんは追い着こうと必死に努力し、それを見た清夏さんもまた努力したくなる』と言っていた。正直、これは当たっている。リーリヤがもう少し練習したいって言うならそれに付き合ってあげたい。教えてほしい部分があるならできる限り教えてあげたい。
そんな感じで、頑張っているリーリヤを見ていると、あたしも頑張らなきゃって気持ちになる。だけど、それはあたしとリーリヤの2人だけで完結する場合の話だ。そこにPっちが入ってくるとなると話は変わる。
前提として、あたしとリーリヤの合同プロデュースをしているのはPっち、即ちあたしのプロデューサーだ。とするならば、ちょっとくらいあたしを贔屓してくれたってバチは当たらないはず。
……あたしは、Pっちに対して独占欲のようなものを感じているんだと思う。アイドルの夢を諦めかけていたあたしをここまで導いてくれて、あたしの本音も正面から受け止めてくれて……こんなの、意識するなっていう方が無理だ。だから、Pっちとリーリヤの距離の近さを見ているとモヤモヤする。
「……って、何考えてんだろあたし……これじゃあ、あたしがPっちのこと……」
そこまでぼやいて、その続きを口にすることが恥ずかしくなった。
合同レッスンが始まってから1ヶ月。あたしとリーリヤは見違えるほどに成長することができた。それもこれも、Pっちのおかげだ。実はあれから、毎晩Pっちと通話をしていた。『レッスンの内容を振り返って総括がほしい』って話してたんだけど、これは半分嘘。本当は、ただPっちの声が聞きたかった。構ってほしかった。ちゃんと目をかけられてるっていう安心感が欲しかった。Pっちは、それにちゃんと応えてくれた。あたしは……まだ、心のどこかでPっちに不安を感じているのかもしれない。あたしのプロデュースをやめたくならないか、とか……リーリヤの担当プロデューサーになっちゃわないか、とか…………
「……あたしが信じきれてないんだから、Pっちがあたしのこと信じてくれてるわけないか……」
Pっちがリーリヤに近づくたびに、2人のことを監視していた。リーリヤがPっちに笑いかけるたびに、2人をからかっていた。どんどん、自分がおかしくなっていってるのがわかった。
あたしは……どうしちゃったんだろう。これから、どうなりたいんだろう。
その日のレッスンは、すごく調子が良かった。きっと、Pっちがいっぱい褒めてくれたからだ。だからこそ…………Pっちがリーリヤにかかりっきりになっていることに、イライラした。初めての感情だ。嫉妬、憤怒、困惑。色んな感情が鬩ぎ合っている。今までのあたしなら、こんなことあり得なかった。
確かにリーリヤは頑張ってる。でも、あたしだって同じくらい頑張ってる。なのに、Pっちはあたしじゃなくてリーリヤの方ばっかり見てる。あたしを褒めてればそれでいいと思ってるの? あたしより、リーリヤの方が可愛く見えるの?
……あたしのプロデュース、やめたくなっちゃったの?
…………………………
あたし、もう無理だよ。
「リーリヤ、まだ練習してるの?」
「あ、清夏ちゃん……うん、もうちょっと練習したいところがあって……」
「……リーリヤは、もう十分できてるよ」
「そ、そんなことないよ! 私なんて、清夏ちゃんに比べたらまだまだ……」
「………………」
「……清夏ちゃん?」
リーリヤに近づく。
「清夏ちゃん、どうし───────っ!!?」
あたしはリーリヤを押し倒した。そのまま馬乗りになって、リーリヤの首を絞める。
「げぇっ……! 清夏、ちゃ……な……で……」
「お願い、リーリヤ。
「どう……いう…………」
「Pっちは、あたしのプロデューサーなんだよ!? リーリヤのプロデューサーじゃない!! なのに、リーリヤばっかりPっちと話してて、ずっと一緒にPっちとレッスンしてて……そんなのずるいよ!!!」
涙を溢しながら、あたしはありったけの憎悪と嫉妬を込めて、リーリヤの首を絞める力を強めた。
内に秘めていた想いを吐き出して、少し冷静になって…………そこでようやく、リーリヤが白目を剥いたまま泡を吹いていることに気づいた。僅かに抵抗していた腕はだらりと弛緩していて、ピクリとも動かない。
あたしは、リーリヤを縊り殺してしまった。
「はは……あはは……」
涙が止まらない。けど、不思議と『悲しい』という感情は湧いてこなかった。
達成感。解放感。あるいは…………快感。
もう動かなくなったリーリヤは、肌の白さも相まって、まるで人形のように儚く美しかった。
「清夏さん、葛城さん、まだ練習しているんですか?」
その声に、あたしは肩をピクッと震わせた。振り返った視線の先には……驚愕に打ち震え、目を見開いたPっちがいた。
「清夏……さん……?」
「あ、Pっち」
あたしの口を突いて出たのは、存外何でもないような声色だった。他人事みたいな表情で、平然とした態度のあたし。理解を拒んでいるようなPっちの表情が、ちょっと面白かった。
一瞬ハッとした表情を見せると、Pっちはリーリヤの遺体を見据えたままこっちに走ってくる。
「葛城さん! 葛城さん!? 聞こえていますか!? 反応してください!!」
Pっちは、リーリヤに必死に語りかけている。リーリヤはもう動かないのに、なんでそんな無駄なことをするんだろう?
……面白くない。
あたしはPっちの肩を突き飛ばすと、Pっちにも馬乗りになって首を絞めた。
やっぱり、リーリヤと違って首太いなぁ。
「っ!? ぐっ……清夏、さん……何を……」
「ふふ……わかる? Pっち。これは……あたしの『愛』だよ」
膂力で女性が男性に勝てるわけない。そう思っていたけど、Pっちは簡単に押さえ込むことができた。強く抵抗したらあたしを傷つけるかもしれない、とか考えてるのかな。Pっち優しいじゃん。
ほどなくして、Pっちはぐったりと脱力した。Pっちも、手にかけてしまった。自分がしたことなのに、あたしは無実の被害者みたいに苦しくなっていた。その苦しみから目を背けるために、リーリヤの遺体の方を見る。それも辛くなって、Pっちの遺体に目を向ける。そんなことを繰り返すうちに、あたしは壊れてしまった。
「ふふっ……ふふふふふ…………あははははははははははははははっ!!!」
狂ったように哄笑を上げながら2人の遺体を見ているうちに、抑えきれない衝動が込み上げてくるのを感じた。あたしはそれに抗うことなく従い、自らの服を全て脱ぎ捨てた。そしてPっちの下も脱がせて、衝動のままに交わる。
「ははっ……あははははははははっ!! ねぇ、リーリヤ見てる!!? あたし、Pっちとシてるんだよ!? リーリヤのじゃなく、あたしのPっちと!! あたしの!! あたしの!!! あたしの!!!! あたしの!!!!!!!」
もう、泣いてるのか笑ってるのかわからない。
最後に口付けしたPっちの唇は、ひどく冷たかった。