「董卓様! お下がりください。そいつらは、敵勢力の頭の一つです!」
珀護は、それと董卓、カクの間に自分の身を滑り込ませ、持っていた短い剣を構える。
相手は、4人。どこからどう見ても分の悪い戦いに間違いは無かった。
しかし、珀護には負ける気は毛頭なかった。ただ、董卓の敵を打ち倒す。という事しか頭に無かった。
敵方のうち二人が前へと進みでて武器を構える。
「桃香様、お下がりください」
「桃香おねぇちゃんは下がるのだぁ!!」
二人の間に緊張が走る。
しばらく経ち、4人のうち唯一の男であった。人物が声を発した。
「董卓って君達の事を言うのかい?」大変驚いているようだった。
そして男は、桃香と呼ばれた人物の耳を借りなにやら話しだした。
珀護と、張飛、関羽の間には並々ならぬ緊張感がにじみ出ていた。
その緊張感に、董卓とカクは当てられ冷や汗がその身体からにじみ出ていた。
「ちょっと、待ってください!!」
そして、董卓とカクがお互いの身体を支えあうまで緊張が高まってきた頃。
男の話しを聞いていた劉備(字の文では以後劉備で統一)は、表情を変え、今にも飛び掛りそうな両者を制止した。
「どうしてなのだ。おねぇちゃん!」
「そうです。桃香様、こやつらは敵なのですぞ。情けは無用! それは、向こうも分かっているはずです」
張飛と、関羽は制止した劉備に不満の声をあげる。
「そうだけど、ちょっとまって! ご主人様が、なにか気になる事があるらしいの」
劉備がそう言うと、今まで後方にいた男が位置を少し前にずらした。
「始めまして、俺の名前は北郷一刀という。そこで、聞きたいのだが君達はうわさにあるような事を本当にしたのかい?」
「してないわ!! あの事は全部チョウゼンが……」
カクは必死に訴える。その目はかなり真剣だ。その目をしばらく見ていた一刀は後ろに振り向いた。
「どうだい? あの目がウソを付いている目に見える? 俺には見えない」そして、一刀は董卓、カク珀護の方を向く。「それで、提案なんだけど、君達。僕らと一緒に来ないかい?」
一刀はいつも劉備たちに向けるような笑みを顔に携えて言った。
カクはその申し出に、頷こうとした。瞬間。
「ふざけるなぁぁぁぁああああああ!!」珀護が咆えた。「お前らなんぞに、董卓様はやるもんか!! 董卓様は、この大地で帝になるんだ!!」そう言って珀護は、前へと出てきた事
により完全に無防備となっている一刀に切りかかろうとした。
「ご主人様あぶない!!」
「お兄ちゃんあぶないのだぁ!!」
しかし、ここは女性がチートの世界。
普通なら、対応が不可能な位置にいたはずなのに、いつのまにか一刀の付近まで走りよっていて、関羽が一刀を横に押しのけ、珀護の一撃を受ける。
そして、丁度同じタイミングで張飛が珀護に切りかかる。
珀護は目でその張飛を捉えていたが、体が反応しなかった。それに、目の前には関羽がいるのである。ましてや、関羽を押えている刀を動かして良いはずも無かった。
故に、必然的にその、凶器は確実に珀護を捕らえ、その身体を切り裂き、絶命へといたらせるはずだった。
しかし、珀護に刃物が食い込む瞬間何らかの光のファクターが発生し、そこから弾き飛ばされ、意識を失っただけで、死ぬことは無かった。
数日後。
珀護が目を覚ましたのはどこかの城の一室のようだった。
しばらく、現状がつかめずボーっとしていた珀護であったが、何があったか思い出すと。
「董卓様!!」そう言って飛び跳ね。張飛から食らったであろう傷口が痛み胸を押さえうずくまるのだった。
「これは?」傷口を押えたことで何か感触が違う事に気がついた珀護は、立ち上がった。
自身の身体をみると、ズボンははいているが、上半身は何も着ておらず、粗末なりに、傷口の対応がなされていた。
珀護は、ありえない期待を持って腰の辺りを触るが、武器はやはり持っていなかった。
周りを見渡しても石で作られた壁と、一つ扉。そして窓が幾つかあるだけで何も無かった。
その時、扉が開いた。
「珀護さぁ~ん?」
そこから、出てきた人物とその格好に珀護は息をのんだ。
「あっ、よかった。珀護さん、起きられたんですね。皆を呼んできます」
その人物は、起き上がっていた珀護を認めると、嬉しそうに来た道を引き返していった。
その人物とは珀護の上司である董卓であった。その董卓が、如何わしい服を着て物腰を低くしていたのである。
珀護の受けたショックはいかほどであろうか。
その光景を見た珀護は、あのような服を着せられ、物腰を低くしているとは、もしかしたら、ここのやつら。あのときのヤツラに屈したのではないかと、考えた。
さらに、その結果を作り出してしまったのも、あの時の自分のふがいなさだという事も。
そして、その結果に対して董卓が嫌がってそうには見えず、むしろ率先してやっているようにも見えた……。
しばらくして、劉備、関羽、そして新しくみる超雲、一刀、そして董卓、カクの計6人がその場へとやってきた。
その間に逃げ出す事もできた珀護であったが、あまりにもショックが大きすぎて、何も行動する事が出来なかった。
「珀護さん。一刀です。お体はいかがですか? 申し訳ありません。」一刀は頭を下げる。「月から貴方のことは聞きました。笑顔を作れる国を目指している。と、ならば、僕達と一緒
に来ませんか? 僕達も、笑顔を作れる国を目指しているんです」
珀護は、一刀の話しを一切聞いていなかった。
ヘンテコな格好をさせられている董卓や、カクを見ていた。
「と、董卓様?」恐れるように、珀護は聞いた。「貴方はもう笑顔の国をお目指しになられないのですか?」その瞳には涙が浮かんでいた。
「えぇ、私には荷が重かったようです。けれど、私は一刀様のお話を聞いて感動しました。この方なら任せられる。そう思ったんです。それに、彼女にも合うことができたことですし…
…」
そう言って、董卓は扉を見る。
すると、静かに扉は開きそこからは、呂布と陳宮の二人が出てきた。
「珀護……」と、呂布。陳宮は黙ったままだ。
その光景をみて珀護は、今まで自分が信じてきたものが全て無くなった気がしていた。
自分の足元にある地面が崩れ、そこから生まれた闇に飲み込まれているようだった。
「ふざけるなぁ!! お前は、お前は、董卓じゃない!! 偽者だ!! 本当の董卓を返してくれぇ!!」
関羽と、超雲は身体をいつでも動かせるように身構える。
「うわあぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!!」
しばらく珀護は、喚き続けると。糸が切れたようにその場に座り込み、先ほどの数十秒でかなりやつれたようになってしまった顔を地面につけた。
「申し訳ありません。私は、胡伯子の尊敬する董卓様に仕えたかったのです。貴女ではありません。しかし、もうあの時の董卓様がいなくなってしまったということも理解しています。
だからお願いです。限りなく董卓様のご尊顔に似ている貴女。私を殺してください。お願いします」
董卓はその言葉に驚きを隠せなかった。
そして、少し前なら彼の思いを組み殺せただろうが、出来なかった。
「なら、私がころしてやろう」そう言って関羽が動いたのだが「なりません!!」と、董卓は叫んだ。
「お願いです。死にたいなんて思わないでください。私は知っています。新鋭隊の皆が貴方を生かした事を。その命を粗末にしないでください」
董卓に似た何かの言葉が頭の中で反響する。
思い出すのは、幼い頃の楽しかった日々。
最後の別れとなったであろう瞬間。
「あ、」
そして、思い出す。自分は生かされたのだと。
「あぁ、」
そして、思い知る。董卓はいなくなってしまったのだと。
「あぁあ、」
そして、そして、胡伯子の思いを受け継ぎ、成し遂げることができなくなってしまった事を理解した。
「あぁぁぁああああ、」悲観の感情をこめた静かな叫びを発する。
「俺は、俺は、」
珀護は、胡伯子達みんなが命がけで守ったこの命を散らす事など。出来るはずもなかった。
「どうすれば、いいのですか」縋る。「俺は、胡伯子のために」縋る。「そのほかはどうでもよくて、胡伯子が董卓様を支えてくれと言ったから」縋る。「しかし、もうどうしようもな
い! 董卓様はいない!!」どうしようもなく、縋る。「ましてや、この命絶つことなど到底できない!!」
瞬間、珀護の頭の中に黒いファクターが生まれた。
「はっ!」
茫然自失としていた珀護は気付き回りを見渡すと、そこは先ほどまでいたはずの、城の一室ではなく。
ただっ広い大地が広がっているだけの場所だった。
これで、もう一区切り