予定には無い部分もかなり混じってます
ガサリと、珀護の目の前にある草むらが揺れた。珀護は、精神的に疲れ果てている体に鞭を打ち、そちらを向き構える。
ゴクリと、珀護の喉が鳴った。
「誰だ!」珀護は叫んだ。
「? 珀護様ですか?」
珀護が叫ぶと、すぐさまそこにた人物は姿を現した。
珀護は出てきた人物を見て驚きをあらわにする。
「女?」
出てきた人物は女であった。年のころは珀護と、同じ位であろうか。
黒く長い髪に、整った顔立ち、胸は控えめで変わりに、太ももがかなり色っぽい。
どうやら、女は珀護のことを知っているようであったが、珀護は女のことを知らなかった。
女は、珀護に近付いて来る。
珀護は得体の知れないこの女に恐怖を覚え、さらに身を固めた。
「ご無事で何よりです、珀護様!!」
「な、何をしているんだ君は!」
女は、珀護と少し距離を取った場所で、いきなり騎士が姫にするように膝を屈した。
その事に珀護は慌てるばかりだった。
そんな珀護をよそに、女は身の上を話し始めた。
「突然こんな事をしてしまい申し訳ありません。私の名は陽菜と申します。私は呂布の軍に所属していまして、その時から貴方様のことをご存知申し上げた次第です。
件の、戦の後私は軍から逃れ、この森を住処としていたのでございます。そんな折に何やらいきなり気配が現れ、驚き、来てみると、貴方様がいたのでございます」
「そうか、それで何故、私に話しかけたのだ」
「はい、私は、貴方様を一目見たときから、運命という物を感じたのでございます。しかし、当時は呂布の部下。下手なことは出来ませぬ。けれどどういう巡り合わせか、お天道様は、
私を貴方様に合わせなさってくれた。その事に感謝をし、できれば貴方様の力になりたいと思ったからです」
女―――陽菜が話す内容を珀護は目を瞑り頷きながら聞いていた。
「そうか、聞きたいことがあるんだが、ここはどこに当たるのだろうか?」
「ここは、漢のはずれのはずれ。いわゆる五胡という者が住む土地の近くでございます」
うぅむ。と、珀護は思い悩む。その顔はかなり難しい顔をしていた。
「珀護様。そういえば、あの後どうなったのでしょうか?」
「あぁ、」珀護の顔が暗くなり沈む。「皆は死んでしまった。董卓とカクは全てから逃げたようだ。私は、董卓が夢を諦めたと聞き、様々な理由から絶望し諦めた所、何か不思議な力が
働き、気付けばここにいたんだ」
陽菜は、珀護の感情の変化に気付き焦ったが、ここは変わらず接することにした。
「それは、それは、不思議な事ですね」そして、陽菜はあからさまに話題を変える。「そういえば、これから珀護様はどうなさるのですか?」
それを聞かれた珀護は更に表情を暗くしたが、陽菜が聞いたそれには訳があった。
「よければ、ここで私と一緒に……どうですか? ここなら戦争なんてほとんど無いし、確かに、猪等危険な動物はいますけど……」陽菜は頬を赤くし、言葉尻を小さくしながら珀護に
提案する。
その提案からしばらく珀護は間をおいて言った。
「いや、俺は、皆の意思を継ぎたいと思う。だから、先は厳しいかもしれないが、あいつらを倒し、私が帝となる」
そう言った珀護の瞳には決意の灯火がともっていた。
「そうですか。申し訳ありません、過ぎた提案でした。私も力一杯その夢の手助けをしたいと思います」
「ありがとう」
珀護は陽菜の目を見て言った。
何故か陽菜に対して珀護は、壁という物を作ろうとはしなかった。
夜。
その日は陽菜がこの山の寝床に案内し、就寝となった。
眠る、珀護の頭に話しかける声があった。
「ふむ、帝になるか。随分お恐れたことを言うもんだ」
「お前は誰だ?」
珀護は、ここが夢だと認識しながらどこからとも無く話しかけられる声に答えた。
「私の事など、どうでもいいだろう。実は私もな、あの蜀という国に殺したい相手がいるのだ。
しかし、私が一人で殺しに行こうとしたものならばたちまちに回りにいる女共に殺されてしまうだろう。
そこで、どうだ。私はとある薬を持っている。力を数十倍にもあげる薬だ。まぁ、副作用として激痛が走るが。
あのとある人物を殺してくれるなら、コレをお前にやろう。どうだね?」
姿無き声はいつの間にか、その音がする部分に、光として収縮し一つの固まりとなった。
「術師か?」珀護は怪しいものを見る目で尋ねる。
「まぁ、そう言えない事も無い存在だ」
「お前自身でこの薬を使えば良いのではないのか?」
その問いを聞いた固まりは笑い始めた。
「おいおい、それで良いのかよ? お前の夢に一歩近づけるんだぞ。それにお前らを裏切ったあの馬鹿を楽にブチ殺せるんだぜ!!」
「裏切った!?」珀護は思わぬ言葉が飛び出し驚いた
「そういうことだろう? あの馬鹿は、お前をはじめ、死んでいった云百人の思い全てを裏切っているんだぜ。ちなみに、俺がこの薬を使わないのは、痛いのが嫌いだからだ」
珀護はそう聞いて考える。
そうだ、自分達は疑わなかった。董卓の夢がぶれない事を、その夢を目指して俺たちは命をかけたんだ。
胡伯子の言葉が、思い出される「皆が笑顔になれる国を……」夢なかば、倒れていった家族達、その無念を隠れ家の一員として晴らさないわけには行かない。
迷いは無かった。
「良いだろう、薬をよこせ」
「良い返事だ」
そう言って固まりから光をはなつ手の形状をしたものがぬっと出てくる。
珀護は手を差し出すとその手から黒い何かが珀護の手に落ちてきた。
受取った珀護はそれを見る。どうやら、黒い丸薬のようだが。
「それは、妙丸と呼ばれている。一つ飲めば、たちまちにすさまじい力を得られるだろう」
「ほぉ。そういえば、お前の殺したい男とは誰なのだ?」
そう珀護が聞いたとき、光は機嫌をあげた。光にもし口があったならニヤリとしていただろう。
「あぁ、天の御使いとか呼ばれてる一刀という奴だぜ。お前も一回あっているはずだ」
珀護は目を瞑り、過去の記憶を呼び覚ます。
そして、その中で一人だけ引っ掛かる人物がいた。妙な服を着ていた奴だ。
「あいつか」
「おそらく、そうだ」
「ふん、相手にすらならない」
珀護は言い放った。
「そりゃ、頼もしい。では、健闘を祈る」
光がそう言うと、その発光は更に強くなり、珀護は意識を失った。