織姫一派の取締   作:海城播磨

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※注意

この物語はヒューマンバグ大学様の二次創作であり、またフィクションです。

本作に登場する人物、企業、宗派、団体は実在のものとは一切関わりがありません。

苦手な方、違和感を覚えた方は無理をせずブラウザバックをお願いいたします。




親子として、師弟関係としての正攻法

少しだけ右に傾いた太陽が、喫茶BAR『宝船』を照らし出す。

朝日にあてられて起床した星彦は今日も最高に____絶不調だ。

 

「……チッ、今朝は一段と響きやがる」

 

織姫星彦は、こめかみに走る鋭い痛みに顔をしかめた。歪み切った司法に絶望した過去から数年たった今でも 、断続的な頭痛となって彼を苛んでいる。

 

_______________

 

マスターの天蔵が丁寧に淹れた珈琲の香ばしさと、焼き立てのトーストの匂い。 その穏やかな空気を切り裂くように、軽やかな鈴の音が店内に響いた。

 

カランカラン――。

 

「おはようございます、我が麗しの主君。本日の体調はいかがでしょうか?」

 

そこに立っていたのは、朝露に濡れた花束を抱えた、一人の青年だった。 整った顔立ちに、一切の隙を感じさせない立ち振る舞い。

 

織姫一派武闘派の一人:【ギルハーツ・フォン・ローゼンクロイツ】である。

ちなみに、ギルハーツが個人名だ。なのであとは名字になるわけだが、海外には「~家の」という意味を表す前置詞の名字があったりしており、家名が最後につく。つまり「ローゼンクロイツ家のギルハーツ」ということになるわけだ。

 

イギリス、ドイツ、フランス、そして日本の血が混ざり合った、国際色豊かな背景を持つこの男。 現在は「日本の秘密警察」という重責を担いながらも、こうして喫茶店の手伝いをこなす風変わりな紳士だ。

 

星彦はキセルを咥えようとした手を止め、フンと鼻を鳴らした。

 

星「……いつもと変わんねぇよ。朝早くからガーデニングか。本日もご苦労なこった」

 

ギル「いえ、これはボクの趣味のようなものですから。ねぎらいのお言葉をありがとうございます」

 

ギルハーツは優雅に一礼すると、慣れた手つきで花瓶の水を替え始めた。

星彦はキセルの煙を吐き出しながら、少し目を細めた。

 

星「……そういや、正式に『先生』になったそうじゃねぇか。ドイツの大学を卒業したってマスターから聞いたぞ」

 

ギル「はい。長い学期休暇のたびに日本へ戻り、実習と任務を並行する日々でしたが……。ようやく正式に医師免許を取得し、こうして星彦さんの傍でお仕えできるようになりました」

 

ギルハーツは二十歳で一派に加入して以来、ドイツと日本を往復する過酷な生活を送っていた。 ドイツで最先端の医学を学びながら、海外の不穏な動向を調査し、日本に戻れば織姫一派の武闘派として刃を振るう。

 

「治す技術」と「壊す技術」――。 その相反する二つを極めた事こそが、彼の名字でもある「[[rb:ローゼンクロイツ > 薔薇十字]]」の名を冠する[[rb:所以 > ゆえん]]でもあった。

 

星「フン……。医者が一派にいれば、俺も少しは無茶ができるってことか」

 

ギル「あんまり無茶はなさらないでくださいね。医師免許を取ったからと言っても、ボクはまだ日本での医師での活動は公にはできません。許可が出るまでと言わず許可が出てボクが日本でも医師として活躍できるようになったとしても、無茶だけはやめてくださいね。」

 

現在ギルハーツは受験資格の可否を厚労省が精査している途中段階で、まだ正式に日本国内での医師としての行為は許可されていないのだ。

外国で医師免許を取得して日本で医師として活動するには、日本の医師国家試験に合格しないといけない。そのためにはまず厚生労働省の『外国医師免許審査』を通過して日本語能力が十分にあること(目安はN1相当以上)、そして在留資格、いわゆるビザが適法されていることで試験に挑めるというわけだ。なお、必要に応じては予備試験・実地修練を受ける可能性もある。

 

 

星「善処するようにはする。だが保証は出来ねーぞ」

 

ギル「それでこそ星彦さんですね。でも日向さんの前で言うと怒られてしまいますよ。」

 

星「構やしねーよ。なんにせよ、織姫一派が正式に集まって活動できるようになったんだ。怪我なんて気にしちゃー何も出来ねーだろ。」

 

今までの織姫一派の活動は個々での小さなものをすることが精いっぱいだったのだ。結成して三年が経ちようやく始動できるようになった今、勢いをつけて前に進んでいくしか【司法】という根そこに勝てる道筋はない。

 

天「ふふ、お二人とも長話の続きは朝食まで取っておきませんか?久しぶりの一派全員での朝食なんですから、積もる話は全員で致しましょう」

 

珈琲のドリップが終わった天蔵が二人を呼びに来たようだ。

となると、日向の朝食とこれからのランチのための下準備も終わりそうだということになる。

 

星「もうそんな時間か…。マスター、俺は珈琲いつものを頼む。」

 

天「かしこまりました。ギルハーツさんはいかがなさいますか?」

 

ギル「ボクは紅茶をお願いいたします。やはりマスターさんのいれる紅茶が一番おいしいと感じていましたから」

 

星彦たちは匂いにつられるがまま、移住スペースのダイニングへと移動した。

 

__________________

 

朝食を食べ終わった星彦は,日課のごとく新聞を読んだ。

 

星「あ?なんだこの記事」

 

叶「どうかしたの?」

 

星「これだ。最近こういう嘘だらけの記事がネットだけでもなく公共にも広がりだしたよな。新聞然り週刊誌然りテレビニュース然りと、これだから若者が離れていくんだろうが。」

 

星彦が指をさして示したのは、とある有名俳優が一般人と不貞行為を行っていたという記事だ。写されている写真には、件の俳優が隣の女性に肩を組んでホテルに入っていく様子が写されている。

 

叶「この俳優さんってこの前結婚報道されてたし、その前からかなり人気のイケメンさんだよね。奥さんは一般人って情報だけど、先日奥さんらしき写真がネットでばらまかれたばっかりだったよね。」

 

星「写ってんだろ隣に。その女の人が俳優の奥さんだ。あと、そこに写ってる場所にホテルなんてねーよ」

 

叶「え…?!奥さんの話は初耳だけど…、場所まで分かったの⁉」

 

星「…お前も気づいてんだろ。その写真が合成で出来てるってことによぉ」

 

――そう、この写真は悪質で高度な合成写真なのだ。一見したらただの写真だろうが、近くに写る電柱の不自然なゆがみや光の屈折の仕方、それに加えて映っている人物のアウトラインの不自然なゆがみ。

 

――近年、AI技術の発展により、真偽の判別がつかない捏造写真が急増している。一度拡散されたデマは、たとえ後で否定されたとしても、被害者の社会的信用を永遠に奪い去る。それはもはや、肉体を殺す以上の『魂の殺人』であった。

 

電柱に書かれている番地をよ~く観察してみると、『竜桜町二丁目』と書かれていた。

 

叶「竜桜町には高級タワーマンションが多数あるからね。それに二丁目は一丁目や三丁目とは違って住宅地しかないから、ホテルなんてないし。それにこのホテル自体が竜桜町みたいな土地代が高いところに構えるなんてことは考えられないからね。」

 

莉「竜桜町は皆がいなかった時に大きくなってた『羅威刃』がいるところだよ。今はトップだった人がいなくなっちゃったみたいだけど、まだ組織は残ってるみたい」

 

いつの間にか話を聞いていたらしい莉寿が話に入ってきた。

 

叶「莉寿ちゃん…、なんでそんな物騒なこと知ってんの…?」

 

莉「情報戦略は大事だっておじいちゃんに教わったから」

 

叶「マスターさん‼その情報は教育に悪いですって!!!」

 

叶恵は片付けと開店準備中であろう天蔵に向かって大きな声で物申した。天蔵の方は、多分聞こえているだろうし笑っているのだろう。

 

莉「ここ村雨町も一時期どこかの組が拠点を構えてた時があった。でも、いつの間にかなくなってた。案外この町は周りに比べて治安はマシ。」

 

星「莉寿はこの写真を見てどう思った?本物だと思うか?」

 

莉「話聞いてたから合成だって知ってる。でも見てもすぐに偽物だってわかると思うよ。小学生のお遊びじゃないんだから、こんなので世の中の人をだまそうなんて世をなめすぎ。」

 

と齢十歳の現役小学生の辛辣なコメントが返ってきたのである。

 

星「今日も絶好調だな」

 

莉「別に普通。でもネットでは信じてる人が多いんじゃないかな。ちょっとだけ熱いような気がする」

 

その言葉を聞いて即座に叶恵はスマホで調べてみると、案の定俳優のアカウントは炎上していた。

 

叶「うわぁ…案の定じゃん…。とりあえず写真元の解像度上げてフェイクだって示した方がいいよね。あと新聞社でこの写真撮った人と作った人を調べないと…」

 

と叶恵はいとも簡単に言ってハッキングをし始めた。

こうなった時の叶恵は真実を見つけるまでは止まらない。

 

莉「この俳優さんの奥さんって人、星彦さんのグループで働いてる人なんでしょ?しかも役職持ちの」

 

星「あぁ。うちの秘書が優秀な人材だって、海外で仕事中の俺にテレビ通話で紹介したほどだ。グループの長だからって結婚式の招待状までもらったが、断っちまった。変わりに行ってもらった秘書から聞いた話、俳優の方が奥さんにぞっこんだったらしく、ずっと嬉し泣きで奥さんの親族よりも泣いてたらしいぞ。」

 

――本来、情報を伝えるべきメディアが、私利私欲のために『嘘』を売る。 それはもはや、報道ではなく「魂の詐欺」であった。

情報を抜く力が欠如した大衆は、捏造された真実に踊らされ、顔の見えない凶器で標的を追い詰めていく。 これまで、どれほどの無実な人間が、この「文字の刃」によって命を絶ってきたことか。

 

星「俺の大事な部下でもあるんだ。部下に最悪が舞い降りる前には、原因の掃除と行こうか。」

 

星彦がキセルを灰皿に叩きつける。

カンッという音が響くとともに叶恵のハッキング作業も終わったようだ。

 

叶「この記事を書いてる会社には、裏で『情報操作屋』っていう半グレのお金稼ぎの商売を利用してるみたいだね。言わずもがな、指示は社長の風間 影臣。今までもこういう嘘のでっち上げで得た利益は全て社長の懐に入ってて、高級タワマンの最上階で、今日も女をとっかえひっかえで豪遊三昧。コイツの狙うゴシップの対象は、片方が一般人の時にしか狙わない確信犯だね。一般人なら顔は出回ってないし、芸能人ほど情報があるわけでもないからでっち上げやすいんだとか。」

 

星「そんな野郎の会社がよくもまあ潰れねえな。」

 

叶「情報会社の中だと中小企業で、しかもブラックって有名。自殺者も出てるけれど、今までそんな情報は世に流れていない。それこそその情報の隠蔽をしてるんだろうね。勿論お金で。今までに被害にあった芸能人の方から起訴されかけたこともあったらしいけど、小賢しいことに嘘のはったりで逆に慰謝料を請求して大金を稼いでるみたいだね。情報隠蔽もひそかに請け負ってるみたいで、そっちの利益もかなりのものらしい。」

 

星「関連会社全部の名前とかかわった人物の名前。それと関わってる半グレの名前。」

 

叶「半グレの組織名は『架異靱(かいじん)』。元は羅威刃の傘下の半グレ集団だったみたいだけど、トップの城ケ崎って人がいなくなって以降に早々に抜け出した腰抜け集団だね。羅威刃ならこいつらの組織も裏切ったってことで潰しそうではあるけど、どうにもこいつらもその風間に守られてるみたいで姿をうまく隠してる。」

 

星「取引現場の詳細は?」

 

叶「ぬかりないよ。さすがに夜だと逆にってことで、早朝に堂々と会社で取引の話をするみたいだね。自分の会社だから好き放題できるし、朝からそんな取引があるなんて誰も予想しないだろうってさ。残念でした。監視カメラをハックしちゃえばこっちのもの。」

 

星「うっしでかした。十分後に乗り込みに行くぞ。仕度しとけ」

 

叶「え⁉僕が今日やるの?!」

 

星「お前の訓練の成果を見せて見ろ。勿論、殺さないようにな。」

 

織姫一派の鉄則:【極力殺さず、生かして捕らえるべし】。

 

世に蔓延る暗殺組織や極道の「始末」とは一線を画す。

いくら救いようのない外道であっても、罪の意識すら持たせずに安々と死なせては、被害者の無念は晴れず、腐敗した世もまた変わることはない。

 

何より、一派の目的は復讐ではなく、【司法の正常化】である。

生きて、その醜い罪を法廷という白日の下に晒させ、二度と再起不能なまでの社会的制裁を加える。

それが、星彦の掲げる「真の執行」であった。

 

____________________

 

早朝。竜桜町の、ひときわ目立つビル。

まだ朝日が昇りきらない時間帯か、ビル全体に人一人いないような不気味な雰囲気が漂っている。

そんな中、最上階の社長室だけが煌々と明かりを灯していた。

 

社長室では、今回の捏造記事の元凶である『風間影臣』が、半グレ組織『架異靱(かいじん)』のボスとその側近らしき男と下衆なやり取りを交わしていた。

 

「社長、今回は最高のネタでしたね! 例の俳優、完全に終わりましたぜ。奥さんも、もう顔も上げられねぇんじゃねぇですか? ヒヒヒ……」

「くっくっく……やはり一般人が絡むゴシップは安上がりで効果的だ。慰謝料請求でさらに一儲けできるとはな。お前たちにも、また特別に小遣いをくれてやる。世間は馬鹿だから、これで十分だ」

「社長、流石っす! 次はどんな大物潰しますか? 俺らがどんな汚れ仕事でも請け負いますんで!」

 

三人の汚い笑い声が響き渡る中、突如として、その空気を切り裂くような声が聞こえた。

 

「こんにちは。ごみ収集でまだ出していない粗大ごみの回収に来ました~。」

 

悪魔の微笑みともとれる顔で、織姫星彦が社長室の扉を蹴り破った。

蝶番が砕け散り、木片が飛び散る。その背後には、護衛だったであろう屈強な男たちが、まるで枯れ葉のように薙ぎ払われ、全員が気絶して倒れているのが目に映った。

 

「なっ……ななな、何だ貴様は!?」

「おっお前! いったいどこから入りやがった!?」

 

社長と半グレたちが一斉に声をあげる。だが、星彦は半ば笑いながらも、その声は凍てつくように冷たかった。

 

「会社は正面玄関からはいるもんだろ?ご丁寧に警備員までつけてくれてて分かりやすかったぜ」

 

警備員とは名ばかりで、実際は半グレの護衛だったのだが。この様子ではそいつも気絶しているのだろう。

星彦はキセルの灰を無造作に床へ落とし、ゆっくりと三人に歩み寄る。

その圧倒的な威圧感に、風間社長は椅子から転げ落ち、半グレのボスたちは腰に差したナイフに手をかけながらも、膝の震えを止められずにいた。

 

「な、何しに来た! 金か!? 金ならいくらでも出す! 営業妨害だぞ、警察を呼ぶぞ!」

 

風間が喚き散らす。星彦はその言葉に、心底おかしそうに口角を上げた。

 

「警察? ああ、呼べるもんなら呼んでみろよ。でもざんね~ん。俺も警察です。ということで、警察が来たからには事情聴取なわけだが、お前らが売っているその『嘘』という名の商品について話してもらおうか。」

 

半グレのボスが顔を真っ赤にして怒鳴り返す。

 

「嘘だぁ!? 言いがかりをつけんじゃねぇ! 俺たちは世の中が求めてる『情報』を提供してやってんだよ! 芸能人の裏側を知りたがってる大衆のために、ちょっとしたスパイスを加えてやってるだけだ。これはビジネスなんだよ!」

 

側近の男も、風間の後ろに隠れながら卑屈な声を上げた。

 

「そうだ! 俺たちは無実だ! 写真をどう加工しようが、それを見て信じるのは世間だろ? 俺たちはエンターテインメントを提供してる善意の第三者だ! 犯罪者扱いされる筋合いはねぇ!」

 

風間がここぞとばかりに、震える指を星彦に突きつける。

 

「そうだ……我々は知る権利を保障しているだけだ! 世間が騒げばアクセス数が稼げる、広告費が入る。それのどこが悪い!? 俳優の一人や二人、再起不能になったところで、代わりなんていくらでもいるんだよ! むしろ話題を提供してやってる我々に感謝してほしいくらいだ!」

 

その言葉を聞いた瞬間、星彦の瞳から一切の光が消えた。

 

「……感謝、だと?」

 

低く、地を這うような声。

 

「情報の提供……ビジネス……。なるほど、お前らの中では他人の人生を切り刻んで金に変えることが『善意』なのか。……お前らが『スパイス』と呼んだその一滴の毒で、どれほどの人間が血の涙を流し、絶望の淵に立たされたか。その想像力すらも、その腐った脳みそには残っていないらしいな。」

 

星彦が拳を握り込むと、ミシミシと関節が鳴る音が静かな部屋に響いた。

 

「『世間が信じるのが悪い』か。……ならば、お前らがこれから受ける『制裁』も、世間はきっと喜んで信じるだろうぜ。安心しろよ。お前らが大好きな『真実』という名の地獄を、今からたっぷりと味わわせてやるからなぁ。」

 

「ひ、ひぃぃっ! や、やめろ! 来るなっ!」

 

風間が悲鳴を上げるのと同時に、半グレのボスが震えながら奥に控えていた部下たちに叫ぶ。

「おいテメェら、そこのおっさんをぶっ殺せ! やっちまえ!」

呼び声に応じ、奥から十数人の半グレどもが星彦に襲い掛かった。

 

だが、星彦の動きは、人間離れしていた。

最初に飛びかかってきた男の顔面に肘鉄を叩き込み、そのまま背後に回った男の顎を掌底で打ち砕く。

一撃一撃が、人間が耐えうる限界を超えていた。

骨が砕ける鈍い音、半グレたちの絶叫が響き渡る。

星彦は全く表情を変えず、まるで害虫を潰すかのように容易く制圧していく。

十数人の半グレは、ほんの数十秒で床に転がる肉塊と化した。

かろうじて息はしているようだが、そんなことは気にはならない。

 

「ひ、ひぃぃ……!? 」

ボスの側近が腰を抜かし、その場で小便を漏らす。

「て、テメェ……何なんだ一体!?」

ボスも顔を真っ青にして後ずさるが、その両肩はすでに震えが止まらなかった。

 

「お前らに名乗る名なんてねえよ。しいて言うなら…あー…正義の味方ってやつか?まぁそんなことはどうでもいい。お前らのやっていることは『弱者を食い物にする』という、この世で最も醜い行為だ。いくら時代が変わろうと、それは許されることではない。安心しろよ。命は取らないでやるからなぁ?」

 

星彦がゆっくりと二人に歩み寄る。

半グレのボスと側近は、恐怖で身体が硬直していた。

震える手でナイフを構えるボスだったが、星彦の歴戦での経験と技量には比べ物にならなかった。

一瞬の閃光の後、二人の顔面は原形を留めぬほど腫れ上がり、意識を失って床に沈んだ。

 

その間も、社長の風間は必死に逃げ出そうと社長室の窓際にへばりついていた。

だが、その視線の先にある向かいのビルの屋上から、一筋の光が放たれた。

 

パンッ!

 

狙撃音は鳴らず、ただ小さな空気が弾ける音だけが響く。

風間の首筋に、何かがチクリと刺さった。

「ん……ぅ、あ……?」

数秒後、風間の意識は急速に混濁し、その場で糸が切れた人形のように崩れ落ち、麻酔銃で眠らされた。

 

叶「ターゲット確保。おやすみなさい、外道さん。次のおはようは裁判でかな?」

 

向かいのビルの屋上で、叶恵がスコープから目を離し、静かに呟いた。

 

______________________________________

 

――翌朝、その出版社は警視庁による家宅捜索を受け、風間とその一味は過去の余罪を含め、芋づる式に逮捕された。

捏造された俳優の汚名は雪がれ、逆に風間たちは世間から一生消えない『捏造犯』というレッテルを貼られることとなった。

 

叶「俳優さんもその奥さんも無事みたい。日向さんとギルハーツさんがそれぞれ二人の警護とメンタルケアを念のためにしてたみたいだけど、奥さんの方は肝が据わっててむしろ一緒に俳優さんのメンタルケアをしてたみたいだよ。」

 

天「奥さんを一途に愛していることがファンの方々には逆に好感を得たようですね。それもネットニュースになり、俳優さんのギャップにやられたファンの方々が上昇。世間を騒がせた嘘の記事でしたが、かえって俳優さんの人気の手助けをしてしまいましたな。」

 

奥さんの方も肝の座り方から「カッコいい」「姐さん」と言われるようになり、俳優さんは今でも昨日までとは違う意味で記者たちに追われているそうだ。

 

星「叶恵の方も、あんな正確にそして検査時にも見つからないようなところに命中させれるようになったとはな。俺がいない間も、頑張ってたじゃねーか。」

 

星彦はガシガシと叶恵の頭を撫でた。

 

叶「痛いよ父さん。もう子どもじゃないんだからさ」

 

照れくさそうに顔を背ける叶恵だったが、その口元はどこか緩んでいる。

二年の空白。

その間、必死に腕を磨き、この『宝船』を守り抜いてきた努力が、この大きな掌に報われた気がした。

 

星「ハッ。これくらいで痛がってりゃ、これから始まる俺の特訓には耐えられねえだろう?」

 

そう言って星彦は、窓の外――平和を取り戻した竜桜町の空を見上げた。

一派の仲間、そして愛する家族。

彼らが笑っていられる場所を守るためなら、自分は何度でも修羅になれる。

 

星「……さて、一仕事終わった後の珈琲は格別だ。マスター、最高の一杯を頼む。今日は奢りだ」

 

天「おやおや、それは珍しい。では、とびきりの豆を用意いたしましょう」

 

ギルハーツが穏やかに笑い、莉寿が嬉しそうに日向特製のクッキーを運んでくる。

これが星彦のいつもの日常であり、束の間の平和だ。

この平和を守るためにも、彼の「真の正義」がこの国を照らすまで、その歩みが止まることは決してない。

 




名前:織姫 叶恵(おりひめ かなえ)
誕生日:7月7日
好物:チョコのケーキ
身長:180cm
年齢:20歳

国立警察大学校二年生
星彦と夏咲の一人息子。
5歳の時の放火事件に巻き込まれ、顔の右側に酷いやけどの痕が残っている。その事件の影響か右目の視力が向上した。やけど痕を隠すような前髪が特徴。
スナイパーとしての腕と視力はピカイチで、一派の中でも随一の精度を誇る。近接戦要員ではないためカチコミなどには基本参加せずサポートに回ることが多い。ハッキングも得意で情報収集や電子機器の遠隔操作を主に担う。裏方業務が多く、そちらの方が得意でもある。
ゲームが得意で、匿名の「K」として大会に出ると参加者が優勝を諦めるほどの実力を持つ。
勉学と武道はまだまだ修行中で、筋肉や脂肪がつきにくい体質のため体格面での成長に悩んでいる。父の子であることを尊敬しつつも、自身の才能が父とは異なることも理解しており、それでも抗いたい気持ちから鍛錬を続けている。
父同様に政府と警察に呆れている。
莉寿を本当の妹のように可愛がっている。
お酒には弱い。
寄食ではないがご当地の郷土料理などの普段なら食べないであろう者を進んで食べる。
食いつくし系ではないが見た目に似合わず大食い。
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