機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー)   作:KUS

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プロローグ
転生


今日も学校だ。

面倒だが、行かない選択肢はなかった。

そう思いながら俺は、ゆっくりと目を開けた。

 

「……ここどこ?」

 

眼前に広がっていたのは、見慣れた自室の天井ではなく……

どこかの施設みたいな無機質な壁だった。

待て、「壁」?

 

「もしかして立ってる?」

 

なんで?

寝る時は間違いなく寝転がっていた。

というか……

 

「なんか目線が高いな……」

 

近場に鉄柵が見えたが、小さい。

というか……身体に感覚がない。

 

「なんで感覚が……ん?」

 

俺はふと視界の端にタップできそうなアイコンを見つけた。

まさかVRゲームとか言わないよな。

 

「押せんのかよ」

 

タップしたら画面が映った。

そこには各部の損傷具合や弾薬の残量……待てこのシルエットは

 

「ガンダムじゃねえか!?」

 

どこからどう見ても俺が一番好きなロボットことRX-78-2 ガンダムだった。

待て……俺は人間だ。

献血だって何度もしたし、発熱もする。

つまり……

 

「転生したのか……」

 

俺はガンダムに転生したと、理解した。

なんで?

 

「ん~整備の続き続き~」

「先輩、吞気過ぎません?」

「いいじゃん、気を張りすぎて失敗したらいかんぞ~」

「先輩は気を抜き過ぎです」

 

困惑していると二人の女の子が部屋に入ってきた。

一人は紫髪でそこそこ身長がある。

吞気な口調で喋ってる娘だ。

もう一人は小柄のピンク髪の女の子。

こっちは逆にしっかりとしているらしい。

そして二人して白衣を着ており、頭の上には輪っかが浮いてる……ん?「輪っか」?

 

高校生くらいの少女+頭上の天使みたいな輪っか=……

 

ブルアカじゃねえか!!

 

なんで?

ガンダムに転生したと思ったらそこは宇宙世紀じゃなくてキヴォトスでしたって?!

何が起きてるんだ!?

 

待て、落ち着け。

素数を数えるんだ。

1,2,3,5,7,11……うん、大分冷静になれた。

取り敢えず……意思疎通出来るのか?

 

「んぅ? 珍しいなRX-78-2。今日は喋らないなんて」

「珍しいですね」

「機嫌悪いのかな?」

「AIに機嫌なんてあるんですか?」

 

彼女たちは俺が喋らないことを不思議がっていた。

いや、俺じゃなくてAIだが……ていうか、転生って言ってもこれ憑依か。

いやAIに憑依ってなんだよ。

 

「おーい、78-2?」

「先輩……機嫌が悪いんならそっとしておいた方が……」

『なんだ?』

「ほら、機嫌悪そう……!?」

 

俺が喋ると、二人して驚いたようにこっちを向いた。

そこまで驚くことなのか?

 

「せせせせ、先輩……」

「ああ、聞いたよ」

 

なんか物凄く警戒されているような……

いや、これは……

 

「「RX-78-2が……感情を出した~!」」

 

なんか、物凄く喜ばれてる……

 

 

 

 

「なるほどなるほど、つまり君は転生者で、いつの間にかRX-78-2のサポートAIになっていたと」

「先輩、本当に信じる気ですか?こんな荒唐無稽なはなs「そうか、それは大変だったな」被せないで下さい!」

 

話してみたら案外話が通じた。

先輩と呼ばれてた子は俺の言ったことをあっさり信じた。

詐欺に騙されないか心配だな……

後輩の子は信じてはなかったが、別に俺への不信からじゃない。

 

「取り敢えず話はわかったよRX-78-2。君から私に質問はあるかい?」

『そうだな……じゃあ』

 

俺にはまず聞きたいことがあった、ここが本当にブルアカの世界なのか。

いや、ほぼほぼ確定みたいなものだが。

 

『ここはキヴォトスか?』

 

シンプルな質問だ。

特に深い意味はない。

だが……

 

「キヴォトス?」

「先輩、知ってます?」

「いや知らないね」

『なっ!?』

 

彼女たちはキヴォトスを知らなかった。

つまりここはブルアカの世界じゃないってことか!?

 

『キヴォトスを知らない?!じゃあ連邦生徒会は?』

「連邦生徒会?ですか……」

「残念だけど、そのような組織は私の記憶にもデータベースにもない」

『じゃ、じゃあゲヘナは?トリニティは?』

「ゲヘナ? 確かそんな閥がありましたよね?」

「ああ、パテルとかアリウスとか、あっち方面の連中と仲が悪かったな

それとトリニティというものはわからない」

『……』

 

どういうことだ?

キヴォトスも連邦生徒会も知らない。

おまけにトリニティは知らないのにゲヘナは知ってる。

でも、トリニティの分派のパテルや分かれたアリウスは知ってる。

 

「ふむ……私たちの間に認識のズレがあるな。一回お互いの認識をすり合わせよう」

『あ、ああ』

 

そして俺は、ブルーアーカイブというゲームのことを話した。

 

「なるほど……キヴォトス、連邦生徒会。

恐らく君が知っているのは未来の話ではないかな?」

『未来?』

「ああ、私たちにとって君が出した単語の殆どは未知だった。

だが、現状が解決したら学園都市が設立されるって言うのは聞いたことがある」

『じゃ、じゃあ……』

「はい、ここは貴方が知る時代より「過去」というのが推測として最も筋が通ります」

 

マジか……つまり俺は原作よりもずっと過去に転生してしまったらしい。

あれ……てことは推しに会えないの?

 

「なんかガックリしてるような……」

『なぁ……俺はどうすればいい?』

「声がガッカリしちゃってるよ。さっきの勢いがない」

 

推しに会えない……ブルアカの世界に転生したのに。

 

「君が何を考えているかわからないが……君はAIだ。私たちみたいに時間が限られているわけじゃない。壊れさえしなければ永遠を生きられる」

『つまり?』

「ようは貴方の知る時代まで生きればいいんですよ」

 

そうだ……今の俺はAI。

俺のよく知る時代まで生きればいい。

 

「希望、見えましたか?」

『ああ』

「そいつは良かった。じゃあ君にして欲しいことは……

 

脅威に対抗することだ」

『……脅威?』

 

 

 

 

 

「今、我々は戦争中だ」

『一体誰と?』

「無名の司祭、名もなき神を崇拝する者達だ」

 

無名の司祭、その名前はブルーアーカイブ本編にも出てきた。

最終編やデカグラマトン編の黒幕だ。

 

「なんで戦争が、始まったのか」

「きっかけはこの世界を支配する無名の司祭ひいては名もなき神への反抗でした」

「当初戦争は膠着状態で時間が経ってたんだが……向こう側が新兵器を投入してね」

『新兵器?』

「映像で見たほうがわかりやすいだろう?」

 

少女が端末を操作し、ホログラムで映像を見せてくれた。

そこに映っていたのは……

 

『ハシュマルに……ガフラン!?』

「おや、知ってたのか。そう、奴らが投入したロボット兵器。私たちは人型をモビルスーツ、大型の方をモビルアーマーと呼称してる」

「こいつらに対抗する為に、私たち技術陣が兵器開発を任されました」

「その第一号がRX-78-1。実戦で実際にモビルスーツを撃破したから、増産が決まって、君が完成したってわけさ」

「もう既に他の機体の建造も進んでる」

 

なるほど、俺……というかガンダムを開発したのは、そういう経緯があったのか。

確かに、生身にとってMSは脅威だ。

例えキヴォトス人であっても。

 

『他にMSは?俺以外にもいるんだろ?』

「RX-78-1は残念ながら大破した。初期型は君含めてあと6機」

「あとは、見た目は似てますけど中身は別物な機体が結構、ですかね」

「君の派生型も結構いるけどね」

 

なるほど……RX-78-1……プロトタイプガンダムは大破。

初期型6機は、俺を除けばG-3、四号機、五号機、六号機、七号機だろうな。

他にも派生型、考え付くのは一年戦争期のガンダムタイプ。

アレックスやピクシー、いて欲しくはないがブルー。

あとは見た目は似てるけど中身は別物……十中八九、アナザーの機体だな。

 

「さてと……状況は理解できたかい?」

『ああ、なんとか』

「それは良かった。私は今から総督を連れてくる」

「良いんですか?」

「情報共有はしないとね」

 

そう言って彼女は部屋を出ていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「アクアが急に引っ張ってきたものだから何事かと思ったのだが……」

「先輩?」

「いやそこはさ?幼馴染のよしみってことで」

「限度があるのだ限度が」

 

十五分くらいたって総督と思わしき少女が連れてこられた。

というかあの子アクアって言うのか。

どっかの駄女神を想起しちまう。

 

「さて……転生者、と言ったかRX-78-2」

『ああ』

「おまけに未来まで知っていると」

『ああ』

 

一先ず相槌を打つ。

謎の威圧感が放たれてるんだよな。

 

「一つ聞く、お前の知ってる未来は戦争のない平和な世か?」

『……銃撃戦は日常茶飯事だが、間違いなく戦争がない世の中だ』

 

俺は隠さず言った。

彼女にとっての平和の基準がわからないが……

 

「そうか……良かった」

『不安だったのか?』

「ああ、私たちが間違っているとは思わない。だが、戦争が終わるかどうかの不安があった。ありがとう、君のおかげで未来に希望が持てた」

『だがこの未来は確定したわけじゃないぞ?』

 

俺はそう言った。

MSがある以上、原作通りになる確証がなかったんだ。

 

「だからどうした!確証はなくとも、私たちが勝てば後の世代は平和を享受できる。それさえわかれば気力が湧いてくるのだよ」

「「おお~」」パチパチ

 

彼女はそう言い切った。

 

『……』

「これは私からのお願いだ。力を貸してほしい。平和な世の為」

『……ああ。乗り掛かった舟だ』

「よろしく頼むぞ、RX-78-2」

『なあ、そのRX-78-2ってのやめないか』

「おっ、名前決めかな~」

「そう言えば、全機番号で呼んでましたね」

「ふむ、確かに堅苦しいな」

 

名前決めには皆賛成らしい。

俺は自分にこの名前を付けるみたいでこっ恥ずかしいが、

この機体にはこの名前が相応しい。

 

『ガンダム……これがこの機体の名前だ』

「ガンダム……」

「いいんじゃない? カッコイイよ?」

「そうですね」

 

好評みたいだ。

それからもう一つ。

 

『自己紹介もしてなかったな』

「あっ、そうじゃん」

「忘れてたんですね」

「サクラもじゃん! 私の名前は白井アクア。よろしくガンダム」

「私は桃倉サクラです」

「私は高原ワカナだ。ここの総督をしている」

『俺は……』

 

俺は名前を言う。

前世で、親から貰った名前。

 

『俺は九条アキだ。これが前世の名前』

「ガンダムじゃないのか?」

『それは機体の名前ね』

「なるほど、ではよろしく頼むぞアキ」

 

そうして俺はマニュピレーターを動かして手を差し出した。

よくよく考えれば握手なんてできないんだが……ワカナは快く指先を握ってくれた。

これが、俺と彼女たちの関係の始まりだった。

 

 

この時は何も違和感を抱いていなかったが……

手と人のサイズ比がおかしいと後で気付いた。

だけど、調べたらこの世界のMSは大体4~5mらしく、

思わず『ナイトメアじゃねえか!』と叫んでしまった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

その後は色々あった。

他のガンダムと交流したり……

そいつら(のサポートAI)から何故か兄貴と呼ばれたり……

唯一先輩と呼んでくれたストライクやドライなウィングゼロが癒しだったり。

バルバトスとブルーががん飛ばし合ってたり。

そのタイミングでMAが出てきたら仲良く粉砕してたり。

アクアが俺用の生体ボディを培養してたり。

それが原因でワカナにハリセンで引っぱたかれたりかれたり。

ワカナと一緒にゲヘナとアリウスの間に仲裁に入ったり。

AGE-1が謎にガフランをズタズタにしてたり……

色々ありながらも、俺たちは勝った。

 

「アキ」

『どうしたワカナ』

「これからの方針を決めた。私は学園を立てる。

平和で皆が幸せに暮らせる。そんな学園を」

『いいんじゃないか?』

「ああ、だが丁度いい名前が思いつかなくてな」

『名前か……』

 

ワカナが作る後世まで残る学園。

適当な名前は頂けない。

となると……

 

『パクス』

「パクス?」

『ああ、ラテン語……って言ってもわからないか。まあその言語で「平和」を意味する言葉だ。安直だが……』

「いや、確かに安直だが……覚えやすい」

『それでいいのか?』

「何を言う。覚えやすい=意味を覚えやすいだぞ。長ったらしい名前では意味まで頭が回らんではないか」

『そ、そうか』

 

まあ確かに?

 

「なあアキ」

『?』

「お前にはずっと私たちといて欲しい。そして私たちで作った平和を見て欲しい」

『……』

「だが協議の末でな、ガンダムは封印することになった。平和の世にはMSは過ぎたる力だ。だから、ガンダムを封印してMSに関する記録も一緒に封印することになった」

『だろうな。俺の知る未来にMSは一欠けらも存在しない』

「ああ……」

 

ワカナは寂しそうな、悲しそうな表情を見せながら、俺に近付き、足に抱き着いた。

 

「だから、お前がいつか目覚める時、パクスを見てくれ。私や、後の世代の努力を」

『ワカナ……』

 

その言葉を最後に、ワカナは倉庫を出ていった。

 

その後、アクアやサクラとも別れの挨拶を交わしながら、俺は地下に建設された施設に安置された。

アクアが寂しくないようにと、みんなで撮った写真を置いて、二人は扉を固く閉ざした。

そして、俺もゆっくりとスリープモードに入っていった。

 

 

 

 

 

 

「見て見てアオちゃん!おっきいロボット!」

「あ、アマネちゃん……危ないよ」

 

目が覚めたと思ったら幼い女の子がいた件。

なんで?




ちょっとした解説
名もなき神との戦争
原作でも言及された名もなき神と忘れられた神々の争い。
今作では独自設定が結構ある。

モビルスーツ
ガンダムシリーズに登場する機動兵器。略称はMS。
今作のMSは名もなき神の遺産であり、ガンダムはそれに対抗すべく忘れられた神々が開発したオーパーツ。戦いの後は、キヴォトス各地に封印された。
大きさは4~5mほど。設定的な意味は実は決まっておらず、メタ的な意味はブルアカの世界観になじませる為である。

モビルアーマー
ガンダムシリーズに登場する機動兵器。
今作では名もなき神の遺産という設定。

RX-78-1
MSVという企画が初出のMS。
ガンダムの一号機。
今作ではただ型式番号で呼ばれているが、ガンダム公式での名称はアキが言ったプロトタイプガンダム。
アキの転生前に名もなき神との戦いで大破した。

G-3、四号機、五号機、六号機、七号機
ガンダムの3~7号機。全て初出はMSV。
八号機も原作にはいるが、今作では未開発。
全機戦い抜いており、キヴォトスのどこかに封印された。

ガンダム
主人公が転生したMS。
初代「機動戦士ガンダム」の主役機。
トリコロールカラーが特徴的な機体。
因みに型式番号のRX-78-2から分かる通り、本機は二号機になる。

ブルー
ブルーディスティニー一号機のこと。
ゲーム「機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY」の主役機。
陸戦型ガンダムをベースにしているが、頭はジムと一見するとガンダムには見えない機体。アキがいて欲しくはないと言った理由は本機に搭載されたEXAMと呼ばれるシステムが理由。なお、しっかりいた。バルバトスとは仲が悪かったらしい。

ピクシー
ガンダム・ピクシーのこと。単にピクシーと表記されていることもある。
初出はゲーム「機動戦士ガンダム クロスディメンション0079」

アレックス
ガンダムNT-1のこと。同機のコードネームがアレックス。
初出はOVA「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」

ウィングゼロ
ウィングガンダムゼロのこと。
初出はテレビアニメ「新機動戦記ガンダムW」。
アキ曰くドライ。

ストライク
ストライクガンダムのこと。なお、原作ではガンダムは付かない。
初出はテレビアニメ「機動戦士ガンダムSEED」
アキことガンダムを唯一先輩と呼んでいた。

AGE-1
ガンダムAGE-1のこと。
初出はテレビアニメ「機動戦士ガンダムAGE」。

バルバトス
ガンダムバルバトスのこと。
初出はテレビアニメ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」
ブルーとは仲が悪かったらしい。

ガフラン
機動戦士ガンダムAGEに登場したMS。
作中の敵勢力「UE」の主力MS。
今作では名もなき神の遺産という設定。

ハシュマル
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズに登場したモビルアーマー。
作中世界の300年前に発生した厄災戦という戦争の元凶。
本作では名もなき神の遺産という設定。

ナイトメア
ナイトメアフレーム。コードギアスシリーズに登場する機動兵器。
アキがナイトメアの名前を叫んだのはMSの大きさがナイトメアと同じだったから(参考にナイトメアの大きさは4~5m。ガンダムの原作での大きさが18m)
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