機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー)   作:KUS

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先生来訪

アオが姿を消して早数週間。

俺はいつも通り連邦生徒会本部に来ていた(登校が正しいか)。

すると、受付の方から複数人の声がした。

どれも聞き覚えのある声だ。

 

「だ~か~ら~、連邦生徒会長に会わせて!それか代行!」

「誰かと思ったら……」

「あっ、副会長!」

 

受付にいたのは

ミレニアムサイエンススクール生徒会「セミナー」会計の早瀬ユウカ

ゲヘナ学園風紀委員会救護担当の火宮チナツ

トリニティ総合学園正義実現委員会副委員長の羽川ハスミ

同じくトリニティ総合学園自警団団員の守月スズミ

 

ブルアカのチュートリアルメンバー……

そうか、今日が……

 

「副会長、矯正局から停学中の生徒が一部脱走したとの情報がありました」

「登校中のうちの生徒達が襲われる頻度も急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています」

「戦車やヘリコプター等、出所の分からない武器の不法流出も2000%以上増加し、正常な学園生活に支障をきたしています」

「そうよ!うちの風力発電所だってこの前シャットダウンしたんだから!」

「それに、連邦生徒会直属軍の統制も乱れています。今は問題ないですが、もし攻撃を受ければ……」

「わかってる、一つずつ話す」

 

矢継ぎ早に抗議を口にする四人を制する。

そして、事情説明を始めた。

 

「まず、連邦生徒会長は失踪した」

「えっ!?」

「やはりあの噂は……」

「ちょっ……それが本当なら……」

「ああ、サンクトゥムタワーの最終管理者がいなくなったから行政制御権は失っているし、軍の統制もまともに取れていない状態だ」

「!……非常に不味い状況ですね」

「ですが、副会長が冷静ということは、何かあるのですね?」

 

ハスミは勘付いたらしい。

 

「ああ、そろそろ連絡が来ると……」

 

ピロン♪

 

「言ってる側から来たな。四人とも、今からリン代行が来る。"何か"はそこで話そう」

 

しばらくして、エレベーターからリンと、

ヘイローのない大人の男性──"先生"が降りてきた。

 

「もしかして、あの大人の方が……」

「ああ、現状を変えるキーだ」

 

呟くハスミに、俺はそう返した。

 

「リン、その人が?」

「はい」

「ちょ、ちょっと待って。その人は誰なの!?」

「ああ、そうだったな」

 

ユウカのご尤もな叫びに対し、俺は説明を始めた。

 

「この人は先生……連邦生徒会長が指名した大人だ」

「行方不明になった連邦生徒会長が指名……?ますますこんがらがってきたじゃない……」

「まあ、サンクトゥムタワーへアクセスするのに、先生の力が必要って思ってもらえれば」

 

ユウカにそう返しながら、俺は先生を観察する。

眼鏡をかけていて、柔和な雰囲気だが、なんか胡散臭い……

一見頼りなさげだが……アオが指名したんだ。

大丈夫だろう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

あの後、俺たちはシャーレ奪還の為に移動を始めた。

先生の指揮で大抵の不良は一掃出来た。

俺?先生の護衛として後方にいる。

生身での戦闘は得意じゃないんだよ……

 

"お疲れ"

「シャーレビルまでもうすぐだ。あと少し頑張れ」

「それにしても……どうしてこんなに……」

 

ユウカが愚痴をこぼした。

リンからの報告で、この騒動の主犯が災厄の狐──狐坂ワカモだと言うことは分かっている。

だが……ワカモは扇動はするが統率を取るようなタイプじゃない。

なのに不良たちは妙に統率が取れている。

 

「裏に誰かいるのか……」

「ワカモ以外にですか?」

「不良たちは所詮、同じ場所に収監されていただけの寄せ集め……なのに統率がここまで取れているとは……」

 

間違いなく指揮を執っている人間がいる。

そう考えていると、リンから通信が聞えてきた。

 

『アキ副会長、そちらに集団が向かっています』

「だってよ。お代わりだ」

「まだ来るの……」

"行けそう?"

「大丈夫です。問題ありません」

「ハスミ、それはフラグというやつだぞ?」

 

典型的な死亡フラグ(キヴォトスで死亡はないだろうが)を立てるハスミにツッコミを入れると、地響きが伝わってきた。

 

「な、なに今の!?」

「戦車で地響きは起きません。ということは……」

 

チナツの懸念、それは当たっていた。

ビルの陰からザクが出てきたのだから……

 

「はぁ!?」

「!?」

「なんでザクが……?!」

「おいおい……」

"……"

 

色は緑ではなく、なんか黄色に塗られてリボンが付いてるが……

生身から見た大きさと、こちらをギョロリと見つめる一つ目のせいで可愛らしさもなにもない。

 

『ハァハッハッハッハ。このザクがあれば例え正義実現委員会とてなぁ!』

「一先ず下がりましょう……先生?」

 

オープンスピーカーでなんか言ってるパイロット(十中八九不良)を無視してチナツは撤退を進言するが……先生の反応がない?

 

「先生、どうかした─"カッコイイ"……」

 

ズコォ

 

それはもう、見事に全員ズッコケた。

ギャグみたいに、俺らも不良も全員……

先生……タイミングを考えてくれ。

 

"あれ、なんて言うの?"

「後ででいいか?まずは指揮を」

"あっ、うんそうだね"

 

なんか締まらないまま戦闘が始まった。

 

ザクに関しては売り払われたデチューン品なのかデッドコピーなのかは分からなかったが……

正規品には性能もパイロットも遠く及ばず、ハスミにアイカメラを破壊された隙にあっさり沈められた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……」

「ああもあっさりとは」

「あの大人、指揮能力は目を見張る者がある」

「面倒なイレギュラーだ。ソルさんに報告しておいてくれ、私は仕事を片付ける」

「了解」

 

 

 

 

 

「ここがシャーレ……」

「一先ず、俺は先生と地下に行くから……」

「では、こちらで他の階をクリアしておきます」

「頼んだ。行くぞ先生」

"うん。じゃあ、皆あとで"

 

それから、先生を伴って俺は地下に降りた。

 

俺と先生は薄暗い地下を降りて行っていた。

そろそろか……

 

「…うーん。これが一体何なのか、全く分かりませんね。これでは壊そうにも…」

「壊さないで貰いたいなぁ。狐坂ワカモ」

「あら?誰かと思えば……」

 

ワカモは、俺の声に反応して振り返ると、そのまま硬直してしまった。

これはまさか……

 

「あら、あららら」

「…あ、ああ。し、し」

"し?"

「失礼致しましたあ〜!」

 

そう叫びながらワカモは走り去っていった。

 

しばらくして、リンが降りてきた。

 

「お待たせしました。……?何かあったのですか?」

"ううん、大丈夫"

「そうですか。ここに、連邦生徒会長の残した物が保管されています。…幸い、傷一つなく無事ですね」

 

そう言うと、リンは先生にタブレット端末を渡す。

シッテムの箱だ。

 

「普通のタブレット端末に見えますが、実は正体の分からない物です。製造会社も、OSも。システム構造も、動く仕組みの全てが不明」

「連邦生徒会長は、この"シッテムの箱"は先生の物で、先生がこれでタワーの制御権を回復させられるはずだ、と言っていた」

「私達では、起動すら出来なかった物ですが、先生ならこれを起動させられるのではないでしょうか。それとも…」

 

リンが含みを持たせるが、別にこちらに深い意図はない。

 

「…では、私はこれまでです。ここから先は全て先生にかかっています。

…邪魔にならないよう、離れています」

「先生、俺は先にオフィスでユウカ達と待っている。状況は、その時に」

"うん、二人ともありがとう"

 

そう言って俺は地下室を後にした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あっ、副会長」

「お疲れ様、これからオフィスに向かうから着いてきてくれないか?」

「先生への状況説明、ですね」

「ああ。幸い、ここにいるメンバーなら偏見なく語れると思ってな」

「そう言う事なら、行きましょうか」

 

そんな感じで、俺は四人と一緒にオフィスに向かった。

 

しばらくして、リンと一緒に先生が来た。

 

「リン、ご苦労様。こっからは俺が引き継ぐから」

「分かりました。では、私はこれで」

"ありがとうねリン"

 

リンはそのままオフィスを出ていった。

改めて、俺は先生に向き直る。

 

「さて先生、色々話したいことはあるが……まず、先生にやってもらいたい事がある」

"……教えて"

「先生には、このキヴォトスの現状を変える手伝いをしてもらいたい」

 

その言葉に先生は目を見開いた。

まだ何かあることに驚いたのか……

 

"それってどういうことなの?"

「現在、キヴォトスは戦争状態にある」

"戦争……"

「安心……出来るかはわからないが、一応死人は出ていない」

"どういう状態なの?"

「俺たち連邦生徒会とここにいる四人の母校、ゲヘナ学園、トリニティ総合学園、ミレニアムサイエンススクール、謂わば三大校と呼ばれるマンモス校を中心とした連合軍と、一つの学園が争っている」

"一つの学園?"

「ああ、その名はパクス連邦学園。規模で言えばゲヘナ、トリニティ、ミレニアムと同等のマンモス校だ」

"パクス……平和って意味だよね?何で戦争が?"

「そこについては私からご説明を」

 

ここでハスミが出てきた。

まあ、これは自分が通う学園のことだ。

説明責任を感じているんだろう。

 

「大元のきっかけは、今から100年も前のことです」

"100年……"

「当時パクスは、経済的に非常に潤っていたマンモス校でした。誰かの敵にはならない。全ての味方。そんな姿勢を体現するかのように、各校に様々な産業支援を行っていたそうです」

"大きい存在だったんだね"

「はい。ですが、当時のティーパーティー……我が校の生徒会は、その利益を独占したいという欲を出してしまった」

「先に前提を言っておくぞ先生。トリニティは元々複数の学園が統合されて誕生した学園だ。

当時の色がまだ残ってるのか多くの派閥が今も残ってる。

特に大きいのが成立の中心だったパテル、フィリウス、サンクトゥスの三分派。この三つがトリニティの生徒会を構成している」

「補足ありがとうございます。続きを話しましょう。利益の独占を目論んだのはフィリウス分派でした」

"それで戦争を?"

「はい……フィリウスはティーパーティーの"ホスト"という立場を利用して、強引に侵攻を決定したようです」

「突然の宣戦布告、さらにそれから僅か数分後の奇襲攻撃。パクス側も中立を維持する為の相応の武力は持っていたが……」

「押し切られた」

 

初めて経過を聞いた時は、一年戦争が頭に浮かんだ。

あの戦争も、宣戦布告から僅か三秒で攻撃が開始された。

 

"パクスは、どうなったの?"

「占領の上、傀儡化されました。しかし、トリニティにとっても想定外の事態が起きました」

"想定外?"

「パクスの産業地帯──トリニティが最も欲してた物は、既に灰と化していたんです」

「焦土作戦だ。先生も知ってるか?」

"うん。防衛側が相手に資源とかを与えないために自分達で破壊する作戦"

「パクスはそれを行ったんです。それなら交易による利益を、と考えたそうですが、戦争が終わった直後で治安も悪化している自治区を中継地点として使おうと思う学園はいなかった」

"目論見が大きく外れた訳だね"

「そうなります」

 

騙し討ちに近い形での侵攻。

それなのに成果はほぼゼロ。

パクス側の貯蓄があったから賄えたとはいえ……

 

「大変だったのはそれからです。パクス降伏は、本校舎を制圧後、トリニティに協力的な内部の生徒による無条件降伏。ですが……」

「未だ戦闘能力が残っていた軍からしたら、上司でもないやつが勝手に降伏した形。納得いかなかったんだろうな」

「残党は本校から離れていた多数の分校による支援を受けて、ゲリラやテロ行うようになったんです」

「そんな状態が、2年前まで続いた」

 

そう、6年前まで。

 

"でも、今のパクスは独立してるんだよね?"

「はい。今から6年前、いざこざはありましたが、平和的に独立しました。ですが……」

「長年のテロにフィリウスもサンクトゥスも鬱憤が溜まっていた。そしてそれが憎悪に変化した」

「それからも、何度か武力衝突は発生しましたが……パテルとパクスが波風立てずに収めて、本格的な衝突はなかったんです……ですが、それは2年前に起こりました」

"2年前"

「私や副会長が1年生の時です。パクスとトリニティ間で和平交渉が行われました」

「普通ならそこで終わり。だが……」

「会談会場でテロが起き、会場にいたパテル首長とパクス生徒会長が意識不明の重体。フィリウスとサンクトゥスは、それをパクスによる犯行と断定して攻撃……返り討ちに遭いましたが」

 

ハスミは少し息を吐いた。

長く話してるからな。

 

「ハスミさん、水をお持ちしましょうか?」

「ええ、お願いします」

「チナツ、俺の分も」

「分かりました。全員分出しますね」

「手伝います」

 

チナツは水を取りに行き、スズミも付いていった。

 

「話しを続けよう。その攻撃から数ヶ月後、パクスはキヴォトス全体に宣戦布告を行い……今に至る」

"そうなんだ……私は何をすればいいの?"

「協力してくれるのか?頼んだ身ながら言うのはあれだが、無関係な先生を俺たちの業に巻き込もうとしてるんだぞ?」

"それでもだよ。私は先生だ。赴任したばかりだけどね?

それに、学生の本分は勉強とか、趣味とか、そういうもの。決して戦争なんかじゃない。ここでは学生が行政を担当しているんだとしても、戦争なんかの為に学生生活を棒に振っていいわけない。だから、精一杯協力させてもらうね"

「先生……」

 

この場にいたハスミとユウカ、いつの間にか戻ってきていたチナツとスズミ

そして、俺。

全員が先生の言葉に耳を傾けていた。

俺は確信を抱いた。

この人がいれば、アマネを止められる。

少なくとも、一歩前に進めるって。

 

 

 

 

"それはそうとして、あのロボットの事教えて欲しいな"

「先生……良い雰囲気が台無しなんだが……」

 

結局締まらないまま終わってしまった。




ちょこっと解説
不良のザク
黄色に塗られ、リボンが付けられた機体。
市販されているデチューン品……ではなくブラックマーケットに出回っているデッドコピー。
不良たちは安くて使いやすいザクを運用している事例が多数ある。
皆好きなようにデコッたり、カスタムしたりしている。

一年戦争
機動戦士ガンダムの舞台である宇宙世紀で発生した戦争。
おおよそ一年で終結したことから一年戦争と呼ばれている。
初戦だけで、人類の半数以上が死亡した(参考に、一年戦争開戦時点での地球圏の総人口がおおよそ110億~120億)。
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