機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー) 作:KUS
アビドスへ
「アビドスに?」
"うん、手紙が来たんだ"
どうやらアヤネが手紙をシャーレに送ったみたいだ。
定期的に物資の支援はしてるんだが……何かあったのか?
「その手紙、見せてくれるか?」
"はい、これだよ"
先生に手渡された手紙には、地元の暴力組織による定期的な襲撃。
相手にはMSもおり、校舎に大きな損害がないよう立ち回らなければならず、撃破に至ることが出来ていない。
このままだとジリ貧であり、最終的には余裕のない自分達がすり潰されると思われる。
なので、先生の力を借りたい。
要約するとこんな事が書かれていた。
「それで、出発はいつなんだ?」
"今すぐ"
「……先生、アビドスは砂漠地帯です。準備はしっかりしてくれ」
"わかった。それじゃあ行ってくるね"
不安だな……
やっぱり付いていこう。
「先生、送ってく」
"いいの?"
「ああ、何度も足を運んでるからな」
数分後、用意した車に先生を乗せてアビドスへ出発した。
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"……"
「先生?どうかしたか?」
"いや……一面砂漠だなって"
「さいですか」
一瞬、アビドスの説明をするか迷ったが、それはホシノ達がした方がいいと判断した。
「先生、そろそろ着く」
"わかった。準備しとくね"
そうこうしている内に、アビドスの校舎が見えてきていた。
「来てくれてありがとございます。初めまして、対策委員会で書記をしている奥空アヤネです。こちらは委員長の小鳥遊ホシノ先輩です」
「よろしくね~先生」
"シャーレの先生です。よろしくね"
教室にはアヤネとホシノしかいなかった。
他の皆もその内戻ってくるらしい。
「アヤネ、補給物資は校庭に止めたトラックに詰め込んである」
「いつもありがとうございますアキ先輩」
「取り敢えず、シロコ達が戻ってくるまでに運び込んでおこう。いつヘルメット団が来るのかもわからんし」
「はい」
俺とアヤネは持ってきた物資の搬入を始めた。
その間先生とホシノはというと……
"おお、クジラ"
「前に水族館に行った時に撮ったんだ~人形も買っちゃった」
"ホシノはクジラが好きなんだね"
「うん、海の生き物は色々好きだけど、クジラが一番かな~」
クジラ談義で盛り上がっていた。
まあ、仲が深まるのは良いことだ。
「ん、ホシノ先輩、アヤネ。今戻った」
「あれ、アキ先輩いるじゃん。そっちの大人は?」
物資を運び終えたタイミングでシロコとセリカが教室に入ってきた。
「二人とも、この人は最近話題のシャーレの先生」
"どうも、先生です"
「砂狼シロコ。よろしく」
「黒見セリカよ。よろしく」
自己紹介は滞りなく終わったらしい。
「シロコ、ノノミとユメ先輩は?」
「二人なら用事があるって途中で別れた。そろそろ来ると思う」
らしい。
そこまで待つことはないか。
そんな事を考えていると、ドアの向こうから声が聞こえてきた。
帰って来たらしい。
「おはようございま~す」
「戻ったよ~」
「あれ?そちらの方は……」
「ノノミ、シャーレの先生だ」
「あ~、そうでしたか。十六夜ノノミです」
「梔子ユメです。初めまして先生」
"初めまして、シャーレの先生です"
因みにOGのユメ先輩がなんでここにいるかというと、キヴォトスの外へ行かずに残ったからだ。
つまり、進学ではなく地元で就職した。
今は柴関ラーメンで看板娘をやっている。
最近投資の勉強を始めたって言ってたな。
「さて、物資は補給したし、あとはカタカタヘルメット団だが……」
ドカーン!
「噂をすれば……」
窓から覗くと、ヘルメット団が大挙して正門前に陣取っていた。
後ろには例のごとくザクがいる。
2機って……どっから調達したのやら。
「あいつら、性懲りもなく」
「うへ~……どうする?」
「MSが2機……砂漠用の改修もなしだな。動きが若干ぎこちない」
"指揮は任せて"
「一先ず、あの状態じゃMSの強みは活かせない。問題は流れ弾だ。武装はマシンガンだけっぽいのが救いか」
「これでバズーカを持ってたら厄介だったね~」
「主に被害ゼロで倒すのにな」
取り敢えず、ザクは俺とホシノとシロコで対処する方向にまとまった。
他の皆で歩兵を片付ける。
「で、どうする?」
「先輩、"あれ"は?」
「あれは持ってきてない。目立つし」
「そもそも使えるだけの広さの戦場じゃないからね~」
「じゃあカメラを破壊する?」
「やめとこう。相手はただのチンピラ。目を奪われたら焦ってそこかしこに乱射しまくるぞ」
「じゃあ第一にマシンガン壊そうか。あとは足なり壊せば」
「序に鹵獲もできるか」
「ん、そのまま私たちで使う」
「シロコ……維持費はあるのか?」
「ん……」
MSは実際有用だが……借金で首が回ってないアビドスにはキツイ。
一番安い旧ザクでも利息の半分は飛ぶんだぞ……
「一先ず、武装を破壊してから足を奪う。これで行こう」
「了解~」
「シロコは遊撃。メインはホシノだ。俺は後方から援護する」
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さて……二人は配置についた。
あのザクの撃破自体はホシノとシロコでどうにでもなる。
問題は校舎から引きはがすこと……
そのために俺はこれを用意した。
『お、おい!向こうにいるのは!?』
『な!?連邦生徒会の!?』
少し先に、ジムの姿が見えている。
当然、本物じゃない。
ドローンを使ってホログラムを映し出しているんだ。
遠くから見たら本物にしか見えない優れものだ。
そして、目論見通りザク2機はホログラムに向かって移動し始めた。
「ホシノ、シロコ。ターゲットが移動した」
『了解』
『じゃあ、始めよっか』
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『確かここら辺に……』
『いねえじゃねえか。蜃気楼か?』
ヘルメット団のザクが、ジムのホログラムがいた付近を探していた。
だが、その機影は見当たらない。
『なんだったんだ?』
『戻るぞ』
目撃したジムを蜃気楼と判断した二人は、校舎の方へ戻ろうと反転した……が
ドカーン!
『な、なんだ!?』
『ドローン?!くっそ!』
シロコのドローンによるミサイル攻撃だ。
正確にマシンガンを狙い、1機の武装を完膚なきまでに破壊した。
もう1機が慌てて対処しようとするが……
「うへ~させないよ~」
『!?』
ホシノがすかさず懐に潜り込む。
ホシノの狙いはコックピットだった。
足を狙うよりも綺麗に鹵獲出来ると判断したからだ。
「ここかな~?」
『ひっ?!』
ホシノはコックピットのある場所に銃撃を行う。
いくら普通の銃ではびくともしない装甲でも、
至近距離からショットガンの銃撃を……しかも比較的脆い部分に受け続ければどうなるか。
「おっ、開いた開いた」
「あ、ああっ」
ハッチがこじ開けられる。
ホシノの目には怯えた様子のヘルメット団が映っていた。
「た、たすけ……」
「無理かなぁ」
無慈悲にもヘルメット団の頭に銃撃が叩き込まれた。
『や、やばい』
「ん、お前も終わり」
『しまっ?!』
もう1機も、ホシノに気を取られている隙に、シロコが投げた手榴弾が頸部に直撃した。
更にミサイルでアイカメラも攻撃される。
完全にモニターが死んだコックピット内で、ヘルメット団は恐怖からハッチを開ける。
なんとか外にはい出て、猛ダッシュでその場から逃走した。
「お疲れシロコちゃん」
「先輩、あいつ追う?」
「いいんじゃないかなぁ。もう戦意なさそうだし」
「ん。じゃあ運ぼう」
「そうだね~」
二人は戦果たるMS2機を見上げながらそう呟いた。
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「あっ、先輩達戻ってきた」
「シロコ先輩はなんでザクに?」
戻ってきたホシノとシロコを見てアヤネはそう溢した。
状況を説明すると、
シロコがザクを操縦し、片手でもう1機を引きづってきており、もう片手にはホシノが乗っている状態であった。
「ん、戦利品」
「わぁ、売ればいくらくらいになるんでしょうか?」
「アキ先輩、いくらになるかな」
「市販品のザクはざっと現在のお前らの利息の7割ってとこか」
「それが2機ってことは……」
「問題は……デッドコピーだったら一般だと売れないってとこか」
「その場合違法品だからね」
「そんな~」
「そうガッカリするな。市販品かもだぞ、多分」
「多分って言った!今!」
この場には和やかな雰囲気が流れていた。
少なくとも今は。
"高いんだね、MSって"
「ここだとヘリや戦車、銃なんか外より安いんだけどな……MSは元々学園や企業に売る前提なのか高いんだよ」
「武器とか弾薬もMS用の物なので、武器・弾薬代も別途でかかりますし」
本当に個人で所有するにはMSは高い。
キヴォトスでも、不良が持ってることはあるが、大半が放棄されてたジャンクかデッドコピー。
正規品を持ってる個人も、資産があったり稼ぎが良い連中が殆ど。
キヴォトスで学園や企業以外にMSがあまり浸透していない理由がこれだ。
この2機もデッドコピーの可能性が圧倒的に高い。
ワンチャンジャンク品の可能性はあるが。
なにせアビドスは……
「取り敢えず調べてみる」
「じゃあ私たちは教室にいますね」
「じゃあさ~終わったら柴関ラーメン行こうよ~」
「いいねホシノちゃん」
「その前にカタカタヘルメット団よ。MSを奪ったんだから、前に見つけたアジトを潰してやろ?」
「それもそうだね~。それじゃあアキ、おじさん達は追撃してくるからね~」
「おう、了解」
カタカタヘルメット団のアジトに向かっていった対策委員会と先生を見送り、俺はザクの解析を始めた。
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「くそ!なんなんだよ!弾薬は切れてるんじゃなかったのか!」
「う~MSもやられちまったし……」
現在、カタカタヘルメット団は、アジトに向けて撤退中だった。
これまで何度も襲い、弾薬が漸く切れたと聞いたのに……
結果はボロボロ、おまけにMSも失う始末。
彼女達はクライアントになんて言われるかと戦々恐々していた。
キーッ
「おいどうした?急に止めて」
「あ……ああ」
「おいどうした」
急に停車したのを受けて、リーダーは運転手に確認を取ろうとする。
だが彼女は呂律が回っていないようだった。
おかしいと思い運転席に顔を出すと……
窓の外に自分達が前哨基地として使っている廃墟に群がる多数の機影が見えた。
「!?」
「な、なんで……」
空を飛ぶ紫のMS。
地上を駆け回る重厚なシルエットのMS。
遠くから砲撃を行っているザク。
そして……
前哨基地に残っていた予備の3機目のザクを貪るように群がる四足歩行のMS。
「あっ、あっ」
「くそっ、全車反転!迂回してアジトに逃げるぞ!」
「なんでパクスがいんだよ!あいつらカイザーと戦争してるんじゃねえのかよ!」
「まさか、うちらがカイザーに雇われてるのが知られて……」
「そんなことは後回しだ!今は逃げろ!」
前哨基地に残っていた仲間は全滅だろう。
そう考えたリーダーは直ぐに逃走を選択した。
だが……一歩遅かった。
「り、リーダー!」
「なっ!?」
既に目の前に、一つ目の化け物は構えていた。
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「あれって……」
「MS。それも不良が使ってるようなものじゃない」
「……」
「ホシノちゃん……」
対策委員会は、その様子を離れた位置から見ていた。
逃げるヘルメット団を、容赦なく殲滅するMS。
そして捕縛を行う歩兵。
不良の様相ではなかった。
『あれは……』
「パクスだよ。パクス連邦学園、今アキ達が戦争してる相手」
「あれが……」
「なにあのスピード……ザクどころか下手な車よりも速い」
セリカの呟きにその場の全員がMSに目を向けた。
見た目に反する速さで地上を走る重MS。
MSとは思えない獣型のシルエットをしたMS。
この2機のスピードは他に比べて圧倒的だ。
"……ここは退こう"
「えっ!?ヘルメット団は?!」
"あの様子だと……もう全滅状態だよ。私たちの目的は達成されてる"
「それに、数で負けてるのに相手の大半はMS。勝ち目は限りなく薄い」
「でも……ここはアビドスなのよ?あいつら好き勝手に……」
『気持ちはわかるよセリカちゃん。でもあの人たち、軍隊だよ。不良とは練度も強さも違う』
先生の撤退という選択に、異論を唱える者はいなかった。
自分達の自治区で余所者が好き勝手している。
その状況に怒りを覚えているのはなにもセリカだけではない。
だが、数で勝る相手に作戦もなしに突っ込めばどうなるか。
それがわからない人間はここにはいなかった。
対策委員会と先生は、直ぐにその場を離れた。
それを四足歩行のMS──ケルベロスバクゥハウンドは静かに見つめていた。
ちょこっと解説
ケルベロスバクゥハウンド
機動戦士ガンダムSEED C.E.73 -STARGAZER-に登場したザフト軍の陸戦用MS。
バクゥハウンドという一機のMSだが、それ単体で運用されることは殆どなく、ケルベロスウィザードという装備を搭載した状態での運用が基本となっている。
ビームファングという近接兵装を装備している。
それを使用する様は、さながら餌を貪る肉食獣である。
今作では、パクス連邦学園の分校であるプラネット分校が開発したMSという設定。
ウィザードシステムの基となったストライカーパックシステムの技術を持っていた雷帝派との共同開発品の一つ。