機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー) 作:KUS
「やっぱ、デッドコピーだな」
アビドスの校庭に置かれたザクのコックピットの中で、俺はそう呟いた。
このザクには識別番号がない。
市販品のMSはパクス製か、ライセンスを得た企業製のどっちか。
そして必ず識別番号が振られる。
犯罪組織にMSが渡った時に、番号からどのルートで入手したのか知るためだ。
どうしてそこまで詳しいのかって?
番号を振るのは俺とアオの提案だからだ。
「売却はできねえな。やっぱパーツ単位にバラシて……」
そんなことを考えていると、外から声が聞こえた。
先生達が戻って来たらしい。
「戻ってきたか……って、何でそんな浮かない顔してんだ?」
"アキ……ちょっとね"
「……一先ず教室に行こう。話はそこで」
俺の言葉に全員が頷き、皆で教室に戻った。
「それで、何があったんだ?」
「色々とあってね……ヘルメット団が正規軍に襲われてた」
「どこのだ?」
「わざわざアビドスまで来る連中。一つ目のMSがたくさんいたって言えばいいかな?」
「……パクスか」
わざわざカタカタヘルメット団を潰したってことは……
情報は掴んでるっぽいな。
「なんでアビドスにいるんでしょうか……」
「おじさん達が言うのもあれだけど、ここって何にもないからね~」
ホシノの言う通り、アビドスには戦略的価値はない。
わざわざ戦争してまで狙う意味はないが、現状のパクスの目的を考えると……
「パクスの目標はキヴォトス統一。戦略的価値がなくても攻めるは攻める」
「そっか~……敵対は既定路線かな?」
「ど、どうやって戦うのよ?こっちにMSなんてないのに……」
「ヘルメット団から鹵獲したやつが……」
「シロコ、ザクはパクスが最初期に開発したMSだ。現行よりも旧式。その上あれはデッドコピーだ」
「ん……」
現状、アビドスにパクスとやり合う力はない。
皆強いが……数が違う。
「取り敢えず、今んところパクスと正面衝突はないと思う」
"どうして?"
「パクスがアビドスにいる、相手は多分カイザーだ」
「? なんでカイザーが出てくるの?」
セリカが首をかしげた。
そう言えば、一年組には話してなかったな。
「現状、アビドス自治区の土地の大半をカイザーが保有している」
「「!?」」
「利息を返すためにね、昔の生徒会が土地を売っちゃったんだ」
「つまり、今アビドスは……」
「パクスとカイザーの主戦場の可能性大だな」
全員の顔に陰りが見えた。
アビドスへの帰属意識が高いこいつらが、
「故郷でアビドスと関係のない連中が戦争してます」
なんて言われて何も思わない訳がない(カイザーは本社位置はアビドスとは別だし、パクスは言わずもがな)。
「しかし……どうしてヘルメット団を襲ってたんでしょ?」
「そこは気になります。邪魔されると困るという可能性もありますが……」
「可能性の一つはそれだろうね~。他の可能性は……」
「カイザーと同じで、ヘルメット団とも戦争中なのか」
「それとも、あいつらがカイザーに雇われていたかだ」
全員の顔が今度は驚愕に染まった。
ホシノは薄々勘付いてたのか、大きな反応は見えない。
"確か、ヘルメット団は定期的に襲ってきてたんだよね?"
「はい、そうです」
「計画的な襲撃だ。ただアジトが欲しいなら夜にコッソリ奪えばいいし、なによりここである必要がない」
"誰かに雇われているって考えるのが自然だね"
そこは原作と変わらないだろう。
まあパクスとヘルメット団全体が戦争中な可能性も普通にあるが……
「ですが、それだと借金を回収できないんじゃ……」
「カイザーは黒い噂はあるが曲がりなりにもキヴォトス一の大企業。9億程度端金なのか、それとも土地を手に入れることでそれ以上の利益を手に入れられるのか」
原作知識があるなら教えればいいって?
情報ゼロなのに全部言えば怪しまれるからな。
「とにかく、パクス軍と遭遇する可能性があるから砂漠にはあんまり近付かないように」
「OK~じゃあ今日は解散かな?」
「先生はどうする?」
"どこかホテルにでも泊まるよ"
「ん、それなら空き教室を使って。案内する」
"ありがとうシロコ"
一先ず、その場は解散となった。
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『シャーレの先生がアビドスに?』
「はい」
『確認したのか?』
「カメラ映像にも映ってました」
パクス連邦学園アビドス方面軍司令部。
そこで軍司令官が本校と通信を行っていた。
相手は軍最高司令官の島原アイラだ。
「どうします?」
『……一先ずは保留だ。カイザーとあの機械蛇。ここにアビドスとシャーレまで入れたくないからな』
「了解しました」
『ああそれと、アビドス砂漠にあるPMC基地。攻撃に親衛隊が参加する。もてなしてやれ』
「誰がいらっしゃるので?」
『最近頭角を現してきた一年のエースってソルは言ってたな。序に揉んでやれとも』
「了解しました。丁重におもてなしさせていただきます」
『頼んだ』
プツンという音と共にモニターが光を失った。
それを見届けた軍司令官は立ち上がり、窓の外を眺めた。
「……」
「通信は終わりましたか?」
「ああ」
「島原元帥はなんと?」
「親衛隊が参加するからもてなしてやれ、だと」
「了解しました。調整を……」
「揉んでやれとも言ってたな」
「では、そのように」
そう言って副官の少女は下がっていった。
部屋には司令官のみとなる。
「儚い物だな。かつてはここにキヴォトス屈指の都市があったと思うと。
かつてのパクスも、このような儚さを感じたんだろうか」
彼女の言うかつては、トリニティによる侵攻の結果焦土と化した時期か。
過去の栄光は地に堕ち、ただ搾取されるだけだった時期か。
それとも、両方か。
彼女にしか分からなかった。
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アビドス高等学校の空き教室
そこで俺はある所に電話をかけていた。
プルルルル……
『はい、便利屋68、陸八魔です』
「夜遅くにすまんな」
『あ、アキさん?急にどうしたのよ?』
相手は便利屋68。
指名手配犯だが、俺は彼女達に依頼を度々していた。
「権力者からコッソリ依頼を受けるなんてっ……」
と、アルは舞い上がっていたが……
「仕事の依頼をな。頼めるか?」
『ええ、もちろん。今回は何をすればいいのかしら?』
「なぁアル」
『?』
俺は一拍置いて、その言葉を発した。
「一つの学園、しかもマンモス校と同レベルの相手に喧嘩を売る。どうだ?乗るか?」
『……』
電話の向こうから息を吞む声が聞こえた。
流石に無理かなと思ったが……
『フフフ……いいわねそれ』
「ふっ、お前ならそう言うと思ってたぞ」
『まかせなさい!その依頼、便利屋68が承ったわ!』
「詳細は後でモモトークで送る。じゃっ、頼んだぞ」
そう言って俺は電話を切った。
パクスに本気で喧嘩を売る。
なぜ突然そういう考えに至ったのか……
パクスにあれ──ウトナピシュティムの本船が渡るのを避けたい。
あれがなきゃ最終編でアトラ・ハシースの箱舟に乗り込めない。
MSで運べばいい?
成層圏よりも上に出現した箱舟にMSで人を運ぶにはコックピットに入れるしかない。
精々入れるのは2人。
おまけに、あの高度まで飛べるのは俺たちオーパーツ組だけ。
他はあくまで大気圏内での運用が前提になってる。
そう言う理由で、今カイザーがアビドスから撤退するのは都合が悪い。
だから……パクスのアビドス方面軍を叩く。
少なくとも、戦力再編を行う必要がある程度には。
一方、便利屋では
「アルちゃん、今の電話、アキさんから?」
「フフフ、そうよ」
「今度はどんな依頼を受けたの社長」
「マンモス校に喧嘩を売るわ!さいっこうにアウトローじゃない?」
「……社長、アキが喧嘩を売る可能性のあるマンモス校クラスって……」
「パクス、だよねぇ?」
「……」
「あ、アル様?わ、私はアル様のためならどこまでも……」
「なななな、なっ、なんですってーーーーーー!!!???」
「はぁ、気付いてなかったの?」
アルは相手がパクスと知って白目を向いていた。
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プルルルル
「? どなたでしょう?」
ミレニアムサイエンススクール特異現象捜査部の部室
同部の部長であるヒマリの下に電話がかかってきていた。
「もしもし」
『もしもし、ヒマリか?』
「おや、アキじゃありませんか。どうしたんですかこんな遅くに」
『それに関しては悪いと思ってる。本題だが、ヒマリに頼みたいことがあってな』
「なんでしょう?」
『パクスのアビドス方面軍。連中の作戦計画を盗めないか?』
「おや、本格的に反攻でも始めるのですか?」
『できるか?』
「当たり前です。この超天才清楚系病弱美少女ハッカーに不可能はありません」
『アナログ管理だったらどうするんだ?』
「カメラでもハッキングします」
『そ、そうか。じゃあ、頼む』
「序に、リオにも連絡はしておきますね。どうせ連絡するつもりなのでしょう?」
『……悪い』
そう一言残して、アキは電話を切った。
「部長、誰から?」
「アキですよ。エイミ、リオに連絡を取ってくれませんか?私はやる事が出来たので」
「了解部長。もし現地に行くことになったら……」
「そこはリオ次第です。あなたではなくC&Cが行くかもしれませんし」
「まぁ、一応準備はしておくね」
エイミはそう言って、部室を後にした。
それを見届けたヒマリは画面に向き合った。
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「これで大丈夫かな」
戦力的には充分だろう。
ヒナを呼ぶ手もあったが、風紀委員会を大々的に動かすわけにもいかないしな。
それに、リオがもしかするとC&Cを寄こしてくれるかもしれんし。
足りない分はSRTを呼び寄せる。
「そろそろ寝るか」
明日も早い。
便利屋にメールを送ってと。
アルにモモトークを送った後、俺は眠りについた。
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「……」
「す、すごい。これだけのMSが並んでるの……」
アビドス自治区上空
パクス軍の輸送機内で、少女は興奮した様子で呟いた。
彼女は遠坂エリナ。
親衛隊所属の一年。
アイラが話していた新米エースだ。
「エリナ、あまりはしゃぐな」
「でも大尉、こんな光景初めてで」
「気持ちはわかる。だが一旦落ち着け」
彼女の上官の宥められ、エリナは席に座った。
窓の外には、砂漠を滑走するドム・トローペンやバクゥの姿が見えた。
「着いたら、いくらでも見れる」
「ごめんなさい」
「気持ちはわかるぞ、私だってMSの編隊を見たときは興奮したから」
「やっぱりそうですよね?」
「アマネ様に似たかな」
「アマネ様に?」
「知らないのか?あの人、プライベートだとプラモに財産を割く人だぞ」
「ええええええ!?全く想像出来ません!?」
「だろうな。私もそうだった」
実際、公務中のアマネは「カリスマ指導者」という評が正しい。
プライベートだとはっちゃっけまくっているのは学園の上級生の間では公然の秘密だ。
「そろそろ着く。シートベルトをしっかりしとけ」
「いるんですか?」
「前に着けなかったせいでゴロゴロ転がりまわった挙句、ソルに連れてかれた隊員の話しを聞くか」
それを聞いた瞬間、エリナはシートベルトを直ぐに装着した。
ちょこっと解説
ドム・トローペン
機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORYに登場したジオン公国軍の陸戦用MS。
トローペンはドイツ語で熱帯を意味する。
その名の通り、ドムを熱帯や砂漠での運用目的に改修した機体。
今作では砂漠戦に最適化された設定。
キヴォトスに熱帯ってあるんだろうか……
バクゥ
機動戦士ガンダムSEEDに登場したザフト軍の陸戦用MS。
基本人型なMSの中では珍しい獣のようなデザイン。
作中の舞台であるコズミック・イラにおいて陸の王者とも言わしめた名機。
今作ではパクスの分校であるプラネット製の陸戦用MSという設定。
遠坂エリナ
パクス親衛隊に所属している一年生。
もうすでにエースとして頭角を露にしているが、まだ未熟な面がある。
MSマニアらしく、隊列を見ると興奮する。