機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー)   作:KUS

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威力偵察

「ブラックマーケットにか?」

「はい」

 

翌朝、最初に教室に来ていたアヤネが突然そんなことを言い出した。

 

「いきなりどうして?」

「昨日の話、やっぱり自分達の目で確かめたいと思って」

「それで、ヘルメット団とカイザーの繋がりを調査する為にブラックマーケットにと」

「はい。ダメでしたか?」

「いや、ダメじゃない。わだかまりがあるなら解消した方がいいしな」

「ありがとうございます!」

「ああ、俺は予定があるから同伴できんぞ?」

「構いません。これは私達のわがままなんですから」

 

アヤネはそう笑顔で言った。

それから俺は先生とアヤネに一言申し入れて、校舎を後にした。

 

 

 

 

柴関ラーメン

大半が砂に埋もれたアビドス自治区の中でも、

まだ砂が到達していないアビドス近隣の都市部にあるラーメン屋。

アビドス生の憩いの場でもある。

俺は便利屋にここを集合場所として指定したのだ。

 

「よっす大将」

「おっ、アキくんじゃないか。久しぶりだな。今日は一人かい?」

「後で連れが四人来る。柴関ラーメン5杯で」

「あいよ」

 

大将に注文をしてから数分後、アル達が入ってきた。

 

「あのー」

「おっ、アキくんが行ってた連れかい?」

「アル、こっちだ」

 

アル達にわかるように手招きをする。

四人はそそくさと俺が座っているテーブル席に座った。

 

「さて、よく来てくれたな」

「ふふふ……それで、どんな依頼なのかしら?パクスに喧嘩を売る依頼」

 

早速アルが依頼内容を聞いてきた。

ノリノリそうで良かった。

 

「そうだな。まず状況を説明しよう」

「ええ、お願い」

「まず、ここアビドスは現在、パクスとカイザーの主戦場だ」

「あら?ここってアビドス自治区よね?」

「社長、ここはアビドス自治区だけど、土地はカイザーが所有してるの」

「補足ありがとうカヨコ。さて、俺の目論見はカイザーが倒れられるのを防ぐことだ」

 

勿論建前だ。

本当はウトナピシュティムがパクスに渡るリスクを減らしたい。

 

「カイザーが倒れると、どうなるの?」

「まず、パクスにはアビドス方面軍、トリニティ方面軍、ゲヘナ方面軍、本土守備軍の4軍が存在している。どの軍も戦力は強大だ」

「なるほど……カイザーが負けるとアビドス方面軍がトリニティやゲヘナになだれ込んでくる可能性があると」

「ああ。現状、連邦生徒会の軍を合わせても拮抗にしか持ってけていない。一軍でそれなのにそこに追加が入れば……」

「戦線が崩壊する」

「それってかなり不味いんじゃ……」

「だからこそ、私達を呼んだんでしょ?」

 

ムツキが楽しそうに呟く。

そうだ。本題はここから。

 

「ああ、ここでパクスをカイザーには止めておいてもらわなきゃいけない」

「それでアビドス方面軍を攻撃するってわけね」

「ああ、予定戦力はアビドスとSRTのMS小隊。それとお前ら便利屋」

「数、足りるの?」

「別に真正面から喧嘩を売る訳じゃない。パクスに勝たれると困るが、カイザーに勝たれても困るんだ。だから、共倒れを狙う」

「どうやって?」

「今調べてる所だが、近々パクスによる大規模な軍事作戦があると睨んでる。そこを横合いから殴る」

 

作戦はシンプルだ。

パクスとカイザーが戦闘を始めたら、そこに乱入して両者に被害を与える。

戦力の再編を余儀なくされる程のダメージを与えるのが望ましい。

 

「第三勢力に対処する為に手を組む、なんてこともないだろう。後はお互いに、勝手に削ってくれる」

「なるほど。まかせなさい!」

「よし、情報を掴んだら作戦始動だ」

「話は終わったかい?できたぞ柴関ラーメンだ」

 

丁度良く大将がラーメンを持って来てくれた。

その後は5人でラーメンに舌鼓を打った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ヘルメット団が壊滅した?」

「はい」

 

アビドス砂漠にあるカイザーPMC基地。

そこでカイザーPMC理事は部下からカタカタヘルメット団壊滅の報告を聞いていた。

 

「どうされますか?」

「……わざわざパクスがチンピラ如きに戦力を差し向けるとは思えん。

そうなると……情報が漏れている可能性があるな」

「つまり、アビドスは放置すると?」

 

部下の言葉に理事は頷く。

 

「今はパクスだ。土地は欲しいが、パクスの脅威度はアビドスよりも大きい。

それに、新しく雇われをアビドスに向けてもパクスに潰されるだけだ。

お前たちは今の内に戦力を整えておけ」

「了解しました」

 

命令を受けた部下が退出する。

その後、一人になった理事は窓の外を眺めた。

 

「……」

「お困りのようですね」

「……黒服か」

 

部屋に一人の人物が入ってきた。

黒のスーツを着用し、身体は黒くひび割れている。

ひびからは白いモヤが出ていた。

 

ゲマトリア所属、黒服

 

理事と協力する、正体不明の人物。

 

「別に困ってはいない」

「くくく……アビドスについては任せて頂きたい。あなたはパクスに集中していただければ」

「わかっている。貴様こそ、しくじるなよ?」

「ええ」

 

黒服は不気味にわらいながら部屋を後にした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……」

 

便利屋と一時別れた俺は、招集したSRTの部隊を待っていた。

しばらく待っていると、頭上に輸送機が現れた。

ミレニアム製の光学迷彩を搭載した輸送機だ。

SRTや空挺部隊が使っている。

輸送機が着陸すると、中から四人のSRT生が出てきた。

 

「副会長、CAT小隊現着しました」

「お疲れ様、早速今回の作戦について話したいことがある。校舎に入ろう」

「了解しました」

 

来たのはCAT小隊。

その名の通り、メンバーは全員猫耳がある。

FOX小隊と同じ自前だ。

こいつらはMS操縦適正がSRTの中でも高かった。

その為、SRTで数少ないMS部隊となっている訳だ。

因みに学年は2年。

 

アビドス校舎にて、俺は寝泊りに使っている空き教室にCAT小隊を集めていた。

 

「さて、今回の作戦だが……」

「「「「……」」」」

「パクスのアビドス方面軍、連中の軍事作戦の横合いを突く」

 

俺はアル達に話した内容と同じものを説明した。

説明をしっかり理解してもらった後、俺は本題に入る。

 

「現状、ミレニアムに情報を収集してもらってる。俺たちがするのは偵察だ」

「偵察ですか?」

「ああ、ある程度敵戦力を把握しておきたい。アビドス方面軍に関する情報が少ないからな」

「アビドスではカイザーとやり合ってますからね、こっちはトリニティ・ゲヘナの方面軍の相手で一杯一杯でしたし」

「ああ、どれくらい戦力がいるのか。知っておいた方が本番がやりやすくなる」

「ではこれから?」

「ああ、来てもらったばっかなのに悪いな」

「構いません。こういった任務こそ、MSを与えられた我々の仕事ですから」

 

それから、機体を砂漠用に簡単に調整してから出発した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

アビドス砂漠、パクス軍基地付近

 

「見えた」

「CAT4、何か見えるか?」

『バクゥタイプとドムタイプは見える』

「それだけ……ってことはないよね」

「当たり前だろ。主力のザクが居ないわけない」

「それに、パクスの量産MSの数を考えるなら2機種な訳がありません」

 

CAT2の言葉にCAT1とCAT3が答える。

実際、ドムとバクゥしかいないというのはないだろう。

 

「もう少し近付きますか?」

「……副会長、戦闘は可能ですか?」

「ん?どうしてだ?」

「威力偵察を行います。それなら、厄介な戦力も引き出せるかも」

「……」

「勿論無理をするつもりはありません」

「……仕方ない。威力偵察を許可する。ただし、危なくなったら撤退を命令する。そのつもりで動け」

「「「『了解』」」」

 

数分後、輸送機に戻った三人が各々のMSに搭乗する。

 

「各機、無事に戻って来いよ」

『了解です。CAT1、猫崎ユカ。ゼフィランサスでます』

『CAT2、豪徳寺ネキ。ジム・カスタム行きます』

『CAT3、貴志タマ。ジム・キャノンII、でるぞ』

『CAT4、田代ルシ。ジム・スナイパーII、狙撃支援を開始します』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『敵性反応接近!数は3!』

『各機、出撃準備!連邦生徒会だ!』

 

パクス軍基地では、降下した三機を当然捕捉していた。

慌ただしく、待機していたMSも出撃準備を整えていく。

 

「た、大尉、行かないと!」

「落ち着けエリナ。私達の出番はない」

「で、でも」

「今回は正規軍の連中の戦い方を観察しろ。まだ未熟なんだからな」

「は、は~い……」

 

自分も出撃しようとしたエリナは、上官から制止された。

そこまででしゃばる気は、大尉にはなかったのだ。

それに、手札は伏せておくものである。

 

一方で基地外の砂漠

砂漠を走る三機のMS。

ガンダム試作1号機。コードネーム「ゼフィランサス」

ジム・カスタム

ジム・キャノンII

今回の目標は威力偵察。

必要以上の戦闘は行わない。

 

『ドムとバクゥ、接近中』

「ディンもでてきましたね。ザクもいます」

『もう少し粘る?』

「粘りましょう。流石にあれだけはありえないかと」

 

ユカはそう言い、ビームライフルの引き金を引いた。

ビームは一直線にザクを一機貫き撃破する。

 

『撃つのが早い』

『じゃっ、うちらも……』

 

その瞬間、タマが駆るジム・キャノンIIの後ろに機影が出現する。

 

『うお?!』

『仕留め損ねたか』

 

出てきたのはグフ・カスタムと呼ばれる機体だ。

砂の下に隠れていたのか……

そう予測したが、グフ・カスタムの後ろにハッチらしきものが開いているのが見えた。

 

『地下通路かよ!?』

「各機、散開しつつ敵を各個撃破して下さい。CAT4はそのまま援護を」

『おい待て!うちの機体は支援用だぞ!?』

「突撃癖をどうにかしてから言ってください」

 

タマの抗議は虚しく一蹴された。

日頃の行いの結果である。

 

「ほら、敵は待っちゃくれません!」

『了解、散開するね』

『ああもう!こっちだグフ!』

 

三機は散開し、離れていく。

パクス軍も合わせて分かれていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

地下ハッチから次々と出てくるMSを、出た側から撃破するユカのゼフィランサス。

だが、それでも負けじと出てくる。

 

(数が多い。エネルギーのことも考えると……バカスカ撃てないのに)

 

出てくるのはザク・デザートタイプやディザート・ザクばっかりだ。

他の機体群はネキとタマに殺到しているのだろう。

 

(程よくあしらって下がりましょう。作戦目標は達成できた)

 

ユカはそう判断していた。

 

 

一方、ネキの駆るジム・カスタムは、デザート・ゲルググと激戦を繰り広げていた。

 

「こいつ……エースね!」

『やる?!』

 

周りを囲うようにドム・トローペンが集合してくる。

だが囲むだけで攻撃してこない。

さながらリングだ。

 

「逃がす気はないってことね」

 

デザート・ゲルググのパイロットは、一騎打ちが好きだった。

そんな彼女の部下達は、それを理解しこのようにリングを形成する。

 

『落ちろ!』

(確かに強い)

 

ビームナギナタを構えながら突っ込んでくるデザート・ゲルググ。

だが、修羅場を潜り抜けてきたネキは冷静だ。

 

「でも……」

『なに!?』

 

ネキはビームナギナタを、"機体を仰け反らせることで回避した。

さらにブースターを吹かし、勢いのままデザート・ゲルググのマニュピレーターを蹴り上げる。

 

「トリニティやゲヘナ方面のエースの方が厄介だった」

『クソ!』

 

近接武器を失ったデザート・ゲルググは即座に距離を取ろうとするが……

ジム・カスタムの動き出しの方が早い。

 

『しまっ』

「さようなら」

『モビルスーツで……そんな動きが……』

 

そのままデザート・ゲルググは機体の上半身と下半身が泣き別れになり爆散。

立っていたのは、ネキのジム・カスタムだった。

 

『隊長!?』

「私は帰るから、隊長を助けてあげなさい。脱出できてなかったわよ」

『クソッ、いつか必ず借りは返すからな!』

 

炎上するデザート・ゲルググに向かうドム・トローペンを尻目に、ネキはその場を離れた。

 

 

 

タマのジム・キャノンIIは、迫りくるバクゥやディンをひたすら砲撃していた。

 

「多すぎんだよ!くそったれが!」

 

文句を垂れながらも的確に砲撃を当て、移動を妨害する。

タマは突っ込み癖があるだけで砲手としてはしっかり優秀だ。

突っ込み癖があるだけで。

 

『大丈夫?』

「はっ、大丈夫に決まってんだろ。他の二人の援護しときな」

『一番苦戦してるのCAT3だよ?』

「ああもう!知っとるわ!」

 

光学迷彩起動中の輸送機から、狙撃で支援するルシのジム・スナイパーII。

両者は共に支援機。

お互いの死角を埋めるように敵機を撃破する。

 

『はあ!』

「ちっ!」

 

だが、そう上手く事が運び続ける訳ではない。

最初にタマを奇襲したグフ・カスタムが再度挑んできた。

 

「しつこいんだよ!」

『今度こそ仕留める!』

 

タマは咄嗟にビームサーベルを抜き、グフ・カスタムのヒートサーベルと斬り結んだ。

そこからひたすらに白兵戦の応酬が続く。

 

(おかしい、相手は支援機だぞ?!)

「おら!どうした!」

 

白兵戦はグフ・カスタムの土俵だ。

だが押し切れない。

要因は性能。

グフ・カスタムは第一世代。

連邦生徒会でいうとジム・コマンドと同クラス。

一方のジム・キャノンIIは第二世代。

パクス側のハイザックやマラサイと同世代だ。

元のスペックで差が出ている。

まあ支援機で白兵戦機相手に優位に立つタマもおかしいのだが。

 

(ここだ!)

『落ちろお!!!』

「ルシぃ!」

『了解タマ』

 

次の瞬間、グフ・カスタムの脚部を一条のビームが貫いた。

ジム・スナイパーIIのビームスナイパーライフルの狙撃だ。

 

「とどめぇ!!」

 

バランスを崩したグフ・カスタムを、タマは斜めに切り裂いた。

爆炎を上げるグフ・カスタム。

それを見ながら一言。

 

「ナイス援護!」

『そっちも、ナイス合図』

「そろそろ撤退だな?」

『CAT1もCAT2も移動中。合流地点の座標送るね』

「助かる」

 

そのまま、タマも撤退を始めた。




ちょこっと解説
CAT小隊
SRTの2年生チーム。
MS運用試験部隊という側面もあり、SRTでのMS運用の先駆け。
入学頃に行われた適性検査で好成績を叩き出した。
それから直ぐにある事件を経験している。

猫崎ユカ
隊長。コールサインはCAT1。
真面目な性格で誰に対しても敬語。
独り言だと敬語が外れる。
一年の時の事件で出くわしたパクスのエースパイロットをライバル視している。

豪徳寺ネキ
ポイントマン。コールサインはCAT2。
愛機同様これといった特徴がないのが特徴。
実はパイロットとしては隊内最強。

貴志タマ
砲撃主。コールサインはCAT3。
男勝りな性格で、突っ込み癖がある。
一応、砲手としての腕は一級品。

田代ルシ
狙撃手。コールサインはCAT4。
寡黙な性格だが、部隊員相手には饒舌になる。
タマと一番仲が良い。

ガンダム試作1号機
機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORYに登場したガンダムタイプMS。
同作の主役機。
開発コードネームはゼフィランサス。
地球連邦軍再建計画の一環であるガンダム開発計画で開発された機体の一つ。
RX-78 ガンダムをベースに改修・設計変更を行い、人型兵器の性能を最大限に引き出すというコンセプトを元に開発された。
今作では連邦生徒会によるガンダム開発計画で完成した機体という設定。
ある事件で強奪されかけたが、ユカが咄嗟に乗ったことで逃れた。

ジム・カスタム
0083に登場した地球連邦軍の量産型MS。
特徴がなにのが特徴と言われた万能機。
今作では連邦生徒会が開発したエース向けの高性能機という設定。

ジム・キャノンII
0083に登場した地球連邦軍の中距離支援用MS。
高い砲撃性能と防御力を有していた。
今作では連邦生徒会が開発した支援用MSという設定。

ジム・スナイパーII
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争に登場した地球連邦軍の狙撃用MS。
頭部のバイザーには精密射撃用アクティブセンサーと高倍率カメラを備えており、スナイパーライフルによって大遠距離射撃によるアウトレンジ攻撃が可能。
ガンダムの2倍以上の推力を誇った。
今作では連邦生徒会が開発した狙撃用MSという設定。
何気に、CAT小隊のMSの中では一番旧型。

ザク・デザートタイプ
MSVに登場したザクIIの砂漠戦仕様の改修機。
機体の軽量化や大型の冷却装置の増設などがされている。

ディザート・ザク
機動戦士ガンダムZZに登場したMS。
ジオン残党軍が連邦軍から奪った物資で独自改修した機体。
脚部推進エンジンの増設や胸部装甲の強化などが行われている。
今作での設定は、パクスのアビドス方面軍が独自に改修した機体という設定。

グフ・カスタム
機動戦士ガンダム第08MS小隊に登場したジオンの陸戦用MS。
グフのフィンガーバルカンなどの固定武装を外し、汎用性を高めた機体。

デザート・ゲルググ
ZZ-MSVに登場した局地戦用MS。
重力下における機動力強化を目的として脚部スラスターと専用バックパックを装着。運用地域の高温対策として機体の冷却機構も強化されており、その一環として動力パイプが機体外部へ露出している。
今作でも重力下うんぬんを除いて同じ設定。
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