機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー) 作:KUS
アビドス砂漠・カイザーPMC基地
そこは今、騒然としていた。
『西及び北から進軍するパクス軍を確認!』
「準備が出来たMSから順次出せ!この基地に一歩も入れるな!」
基地から多数のMSや戦車が迎撃に出る。
歩兵部隊も随伴している。
『敵部隊が出撃してきました。各員、奮闘を期待します』
『いいか!この戦いで我々は勝利を掴み、アビドスでの覇権を確固たる物とする!
それが済めば次は連邦生徒会だ!オール・ハイル・パクス!!!』
『『オール・ハイル・パクス!!』』
両軍の進行により、視界が遮られる程の砂塵が出来る。
何も見えない砂の雨の中、両軍が激突した。
「落ちろ!ガラクタが!」
『こんの!』
砂塵の中で最初にぶつかったのは、先頭を走っていたカイザーのゲイレールとパクスのディザート・ザク。
両機とも、すでに旧式化している機体だ。
そのぶつかり合いを皮切りに、戦闘が勃発する。
「はっはっはっ!この前の汚名、貴様らで雪がせてもらう!」
ネキに撃破されたデザート・ゲルググのパイロットも、戦闘に参加していた。
機体はドワッジだが……
『隊長!調子乗らんで下さいよ!』
「そう簡単に乗るか!」
『乗った結果が
「ぐぬぬぬ……」
部下と無駄話をしながらも、的確に敵機を撃破するドワッジだった。
「なんだ!?」
『ビームが?!』
『親衛隊!そいつらにビームは無理だ!接近戦で仕留めろ!』
別の戦場では、今回が初陣の一年の親衛隊がグレイズに苦戦していた。
ナノラミネートアーマー
実弾射撃だけでなく、ビーム攻撃にも高い耐性がある装甲技術だ。
『あたしがやる!』
「りょ、了解!」
近場のグフが一機、目の前のグレイズに斬りかかった。
ナノラミネートアーマーは特殊な金属塗料を装甲の表面に蒸着させ、皮膜にしたもの。
原理的には幾層にも重ねたクッションのようなもので、エネルギーを有した分子が衝撃を吸収・拡散し、更に鏡面構造によってビームを反射する。
一見すると無敵の装甲に見えるが、あくまで塗料を蒸着させたものだ。
つまり……
ガギン!
「おらあ!」
『このお!』
継続的な衝撃や熱に弱い。
実体近接武器やナパームなどが有効打となる。
なので、ビームが主流ではない旧型機が対グレイズでの主力となる。
グレイズは、グフのヒートサーベルを躱しながらバトルアックスを振るうが……
『隙ありよ!』
『しま!?』
隙を突いたハイザックのヒートホークに叩き切られた。
「ナイスだ!」
『ありがとうございます。親衛隊!私に続きなさい!一番乗りするわよ!』
そのハイザックは近場の親衛隊を鼓舞しながら基地に向かって真っ直ぐ進軍した。
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「西部防衛戦、突破されました!」
「基地にあるMS、戦車、ゴリアテ、全て出せ!」
「は、はい!」
理事は基地内の全ての戦力を動かすよう命令する。
総力戦だ。
「"アレ"は動かせるのか?」
「それが……未だに拒否してまして」
「ええい!面倒な!」
理事が言う"アレ"。
ゲイレールやグレイズを開発するきっかけになったMSだ。
発掘中に偶然掘り当てたお宝である。
「理事、ご報告が!」
「今度はなんだ!」
「な、南部に第三勢力を確認!アビドスです!」
「なんだと!?」
なぜアビドスが?
理事の頭の中がその疑問で埋め尽くされる。
現在、パクスと戦闘中。
そこにアビドスまで……
「──ぶせ」
「理事?」
「潰せ!たかが数人、数で押し潰せ!」
「は、はい!」
敗北の報せ
それが続いていることへの苛立ちや、成果をせっつくだけの本社。
そこに、アビドスまで来た。
彼の苛立ちは頂点に達していた。
だがそれは、攻撃を受けたという正当性を、アビドス側に与えることになってしまった。
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『砲撃、来ます!』
「ちっ!」
アヤネの通信を聞いて、俺は直ぐにホシノ達の前に出てシールドを構えた。
幸いにも、飛んできたのは挨拶代わりなのか数発だけだ。
「アヤネ、出元は?」
『カイザーPMCからです』
「予想通り、カイザーは撃ってきたか。全員、このままとっこむぞ!」
俺がスピーカーでホシノ達に叫び、基地に向かって進行を再開した。
カイザー側は歩兵や戦車、少数だがMSもいる。
「シロコ、モビルスーツをやるぞ!」
『ん、了解』
出てきたのはゲイレール。
カイザーが主力として使ってる機体だ。
グレイズはいないらしい。
「シロコ、右の2機を頼む。残りは俺が」
『わかった』
そのままシロコはヒートホークを構えながらゲイレールに突撃していった。
それを横目に、俺も残りのゲイレールの前に立つ。
「さあ、かかってこい」
「ぐわ?!」
「くそっ!数では勝ってるのに」
私はカイザーのオートマタ兵士を一人ずつ倒しながら、ゲートに向かって突き進んでいた。
ゲートから基地内に侵入するメンバーの中で、私が一番適しているからだそうだが……
アキは私に期待しすぎじゃない?
「まぁ、言われたからにはやるけどさぁ~」
「小鳥遊ホシノ!」
私の名前を叫びながらクルセイダーが突っ込んできた。
面倒だな~
ガンッ!
「なっ!?」
「うへ~おじさんをあんまり酷使させないで欲しいなぁ」
盾で戦車の動きを正面から止める。
これくらいはわけない。
そのままハッチを開けて中に手榴弾を投げ入れた。
車内から聞こえる爆発音を尻目に、ゲートに向かって真っ直ぐ進んだ。
「ラスト!」
俺は最後のゲイレールをビームサーベルで真っ二つにした。
最初は効かない前提でバズーカ持ってきたんだがなぁ……
ナノラミネートアーマーどころかエイハブ・リアクターも再現出来てないって……
グレイズも想定より弱いかもな。
『アキ先輩、こっちも片付いた』
「よし、迎撃に出てきた部隊は……撃破できたみたいだな」
カメラを下に向けると、そこには倒れ伏すオートマタと無惨にもスクラップと化した多数の戦車がいた。
『先輩、ホシノ先輩がゲート前に着いたそうです』
「よし、作戦通りに」
俺がそう言うと、向こう側で端末音が聞こえた。
ゲートをハッキングで開けるのだ。
ゲート前の制圧は、戦力がプラスになるのを防ぐ……というか、ゲート前で混戦中に開けて増援が出てきて更なる混戦になることを防ぎたい。
流石に混戦中に出てこられたら不味い。
その点、制圧を済ませておけば、後から出てきてもホシノなら問題ない。
混戦中でもホシノなら大丈夫そうなんて言ってはいけない。
『ゲート、開きました!』
「よし、なだれ込むぞ!」
開いたゲートから、ホシノ達が基地内に侵入していく。
それを見届けてから、俺とシロコも基地に侵入した。
「こいつは……」
"うん……"
俺は基地の惨状に一瞬言葉を失った。
先生も通信越しに相槌を打った。
破壊された戦車やモビルスーツ、ゴリアテの残骸がそこかしこに転がっている。
パクスの進撃が予想以上に早い。
「取り敢えず司令塔へ……」
"!? シロコ、危ない!"
『ん!?』
先生が叫んだ瞬間、シロコのザクに攻撃が当たった。
当たったのはバーニア、後方に敵はいない。
てことは……
「上か!」
"皆!散開!"
上空からディンの編隊が急降下爆撃を仕掛けてきた。
俺はシロコのザクを庇いながらシールドで爆撃を防ぐ。
下の皆もユメ先輩やホシノが盾で守ったり、アルに至っては一部を撃ち落とした。
すげえよアル。
「全員、このまま進め!空は俺がやる!」
「えっ!?でも……」
「いいから行け!」
俺の言葉に全員が走り出した。
幸いにもディンは俺をターゲットにしている。
よく見たらグフフもいるじゃねえか。
シロコのザクを撃ったのはあっちか。
「シロコ、脱出できたか?」
『ん、大丈夫』
「よし、お前もホシノ達を追いかけて……」
『あそこは格納庫……!』
「おい待て!シロコ!」
シロコはそのままカイザーの格納庫と思わしき方に走って行ってしまった。
追いかけたいが……行かせてはくれないらしい。
「そこをどいてもらうぞ!」
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私は走っていた。
こっちに何かある。
野生の勘というやつがそう言ってる。
格納庫に入り、中を見回す。
何もない。
強いて言うなら作業用の車両やロボットはいた。
でも……
「ここ……閉まってる」
厳重に閉められてる扉を発見した。
この先に何かある。
そう相場は決まってるのだ。
取り敢えず、手持ちの手榴弾を使って爆破した。
思いの外簡単に開いた。
そのまま奥に進んでいったら……
「わぁ……」
一機のモビルスーツがあった。
どことなく、アキ先輩やミレニアム、ゲヘナ、SRTの隊長が持ってきていたモビルスーツに似ている。
確か名前は……
「ガンダム」
私は乗るために足場を登る。
開いてる場所があるから、あそこがコックピットだ。
急いで乗り込み、機器類をイジるが……反応しない。
「ん、動け」
『もうちょい優しい言葉遣いがいいな嬢ちゃん』
「どうでもいいから動け」
『ありゃ、驚かないんだ』
「……喋ってる?」
『気付くのが遅いぜ』
驚いた。
モビルスーツって喋れるんだ……
いや待って、ゲヘナやミレニアムのやつも喋ってたなそう言えば。
「いいから動いて」
『ええ~変なロボットにあっちこっち弄られて疲れてんだが』
「動かないとアキ先輩に言ってやる」
『はい?』
言っても意味ないだろうにアキ先輩の名前を出した。
あの喋ってるガンダムがアキ先輩にだけなんか親しげだったから。
だけど……
『先輩が……いるのか?』
「ん?う、うん」
『やべえ……どやされる……嬢ちゃん名前は?』
「砂狼シロコ」
『よしシロコ、俺はバルバトスだ。ガンダム・バルバトス。早速操縦方法教えるから、先輩にだけは言わないで下さい!』
このモビルスーツが土下座する幻覚を見てしまった。
まあそれはいい。
「さっさと教える」
『あ、ああ。まずは……』
その後、起動の仕方を教わった。
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「落ちろ!蚊トンボ!」
ガンダムのビームライフルが、グフ・フライトタイプを撃ち抜く。
アキはアキで、余裕を失わないようシロッコのセリフをおふざけで吐いたが……
そんなことで戦況は変わらない。
「グフは後2機……問題はディンか」
グフ・フライトタイプは既に残り2機まで減らした。
当人が言うように、問題はディンだ。
ディンの装甲は柔らかい。
だが、ライフルが当たるかと言うと……な状態だ。
アキはニュータイプでもなければスーパーコーディネーターでもないのだ。
おまけにガンダムでドッグファイトは厳しい。
「跳んで斬り落とすか」
アキが出した結論はシンプルだ。
跳んで、叩き落とす。
「じゃあ早速……」」
ガンダムのバーニアを思いっきり吹かし、高く跳躍する。
『なっ!?』
ディンのパイロットは驚愕するばかりだ。
これまで地上から撃つだけのガンダムが、ジャンプしてきたのだ。
想定外……ではないが、意表は突かれた。
アキはそのままディンを1機、ビームサーベルで切り裂く。
序に少し低空にいたディンも蹴りを入れて中破させた。
「あと8機!」
着陸したアキは、再度バーニアを吹かせようとしたところで……
『うおおおおおお!』
「!?」
1機のマラサイがビームサーベルを片手に突撃してきた。
「くっ?!」
アキは振られたサーベルをビームサーベルで受けた。
幸い、至近距離にいるお陰でディンは攻撃してこない。
「ああ、もう!」
『なぜですか守護神様!なぜ連邦生徒会に!』
「お前は?」
『なぜアマネ様を裏切ったんですか!』
マラサイのパイロットからの叫びに、アキは固まる。
言い返せなかった。
パクス生の視点から見れば……自分はただの裏切り者だと、突きつけられた。
『なぜ……』
「あいつを裏切るだと?!俺だってあいつとは戦いたくねえよ!」
『じゃあなぜ!』
マラサイがビームサーベルを再度振ってくる。
アキはシールドで腕部を弾き、一度後退する。
『守護神様、お覚悟を』
「ちぃ!」
後退したガンダムに、ディンが迫る。
それを対処すべく、ガンダムが上を向いた瞬間……
『なっ?!うわ──』
ディンが突然地面に叩き落された。
「なんだ!?」
『な、なんなんだ!?』
ディンを叩き落とした下手人が、ガンダムの側に降り立った。
『ガンダムの兄貴に指一本触れようなんざ……』
「お前は……」
『この俺が許さん!』
「バルバトス!」
そこに立っていたのはバルバトスだ。
「お前、今まで何やってたんだ!」
『いや~変なロボットに体を調べまわされて……』
『ん、私もいる』
「シロコ……そいつを動かせるのか……」
『なんとか』
『阿頼耶識なしだけど、動かせないことはないですね』
そうか……
とアキは呟いた。
それはそれとして、目の前の敵に目を向ける。
マラサイとディンが3機。
向こうから増援も見えた。
ホシノ達も戦っているのか、戦塵が見える。
「よし、いくぞバルバトス、シロコ!」
『ん、了解』
『よっしゃー!行くぜ!』
ちょこっと解説
ゲイレール
機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズに登場したギャラルホルンの主力MS。
グレイズが配備される前の機体。
高い汎用性を持っており、肩部や腰部にオプション装備が可能。
カイザーがバルバトスのデータから開発したが、エイハブ・リアクターを再現できず、既存の水素エンジンで動かしている。
なのでナノラミネートアーマーもない。
扱いやすいから主力だが。
グレイズ
鉄血のオルフェンズに登場。
装備の換装であらゆる環境に対応する万能機として設計されており、パイロットを問わない高い操縦性をもつことから、後継機の開発が疑問視されるほどに現場での運用評価は高い。
カイザーが限定的ながらナノラミネートアーマーを再現できた、のだが。
エイハブ・リアクターなしでの無理矢理再現したらしく、劣化・剝離が起こりやすい。
それでもある程度の耐久性はある模様。
グフ・フライトタイプ
第08MS小隊に登場。
強力な出力のランドセルと臀部のスラスター、脚部の熱核ジェット・エンジンを使用しており、大気圏内の単独飛行が可能。
ディンを自分達でも作れないかとニアが四苦八苦しながら開発した。
後にディンほどではないがある程度の単独飛行が可能な新型汎用MSの開発に繋がった。
マラサイ
Zガンダムに登場。
ハイザックでは不可能だったビームサーベルとビームライフルの両立を達成した機体。
性能・生産性・操縦性・汎用性に優れた名機。
親衛隊に配備されている。
今作ではゲルググと同期だったりする。
ガンダム・バルバトス
鉄血のオルフェンズの主役機。
オーパーツモビルスーツの1機で、エイハブ・リアクターやナノラミネートアーマーに始まるロストテクノロジーが使用されている。
性格はちょっと軽い。
カイザーはナノラミネートアーマーを無理矢理再現するしか出来なかった模様。
守護神
パクスでのガンダムの異名。
6年前のトリニティとの抗争で敗北しかけだったパクスを救ったことから。
なお、2年前から連邦生徒会と共にパクスと対峙するようになったため、一部からは忌み嫌われている。