機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー) 作:KUS
ユカの駆るゼフィランサスと、大尉の駆るバイアランの戦闘は、佳境に入っていた。
途轍もない推力で空を駆けるバイアランだが、弱点もある。
飛行時間の短さだ。
だから、推進剤の節約の為に長時間飛ぶことはできない。
ユカはビームライフルを連射することで回避行動を取らせ、地上に引き摺り下ろすつもりだ。
『ちぃ!面倒な!』
「降りて……きなさい!」
一条のビームがバイアランの右肩を貫く。
段々と精度が上がってきている射撃に、大尉は冷や汗をかいた。
このままでは狩られるのは自分。
そう感じた大尉はゼフィランサスに向けて急降下をする。
そしてバイアランの両手からビームサーベルを展開した。
『落ちろ!』
「誰がっ……!」
負けじとゼフィランサスもビームサーベルを抜く。
そしてバーニアを吹かし、跳び上がった。
「はあああ!」
『これでええ!』
バイアランが両手のビームサーベルを振るう。
ゼフィランサスはそれに対し……
バーニアを切って自由落下を始める。
『!?』
バイアランの攻撃は空振りに終わり、バランスを少し崩した。
それこそがユカの狙いだ。
「そこです!」
ゼフィランサスの態勢を整え、頭上のバイアランを見据える。
そして、ビームサーベルで胴体を串刺しにした。
『そうか……』
「はい、あなたの……負けです」
『ははは……オール・ハイル・パクス……』
その言葉の後、バイアランは機能を停止した。
パイロットは気絶したようだ。
機体を着地させたユカは、周囲を索敵する。
親衛隊は……粗方ルシが落としたらしい。
「援護に行きたいですが……消耗が激しい……」
ゼフィランサスの武装は殆ど使えない。
残りはビームサーベルだけだが、空中戦をするには推進剤が厳しい。
「無事を祈るしかできませんか」
ユカはそう、力なく呟いた。
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『ははは!まさかこんな所で君と相まみえるとは、
やはり私と君は、運命の赤い糸で結ばれていたようだ』
『言っている意味がわからないな』
『そのままだ!』
エイカの駆る可変モビルスーツ──カスタムフラッグとエクシアが激しい剣戟の応酬を繰り広げる。
仮にもエクシアはオーパーツ。
それ相手に現代科学で生み出されたフラッグで互角に渡り合っている。
こいつもこいつで化け物である。
二人の戦闘に横槍を入れるように、通信が繋がる。
ヒマリだ。
『ふふ、中々情熱的な方ですね』
『君は……「ミレニアムの全知」、明星ヒマリだな』
『おや、知ってくださったんですね』
『当然だ。各校の要注意人物は全て記憶している』
『ふふ、ありがとうございます。それはそれとして……ストーカー行為をしても相手に振り向いてもらえませんよ?』
『ヒマリ?』
突然敵にアドバイス──しかも戦闘ではなく恋愛面の──をし始めるヒマリにエクシアが困惑した様子だ。
『ストーカーだと?』
『ええ、エクシアがいる戦場に必ず現れる。ストーカーと言わずしてなんと言うのですか?』
『ストーカーではない』
『ではなぜエクシアを見つけられるので?』
『それは愛だ!』
『……愛?』
『そうだ、乙女座である私の愛のセンサーが、ガンダムの下へ誘ってくれる。このようなことはガンダム以外では起きない。これを運命の赤い糸と言わずして何と言うのか!』
『ええっと……』
オカルトに造詣のあるヒマリだが……
彼女を以てしてもエイカの理屈は理解出来なかった。
理解するのを拒んだというべきか……
『さあ!再開しよう!』
『断る』
『何故だ!私はこんなにも君を愛しているのだぞ!』
『得体の知れない輩の誘いにホイホイ乗る気はない』
エイカの誘いはズバッと切り落とされた。
序に再開の号砲と言わんばかりのリニアライフルの射撃も斬り落とされた。
『エクシア~受けてやったらどうだ?』
『デュナメス、作戦中に茶化すな』
『ええっと……女の子の頼みを無下にするのは……』
『キュリオス、黙ってろ』
『そうだぞ二人とも』
『ヴァーチェ……』
『そういうのは作戦が終わった後に幾らでも言えるだろう』
『ヴァーチェ、お前もか』
何故かエクシア側は漫才が始まった。
それを見ていたエイカは……
『そうか……』
声からわかる通り、露骨に落ち込んでいた。
そのままフラッグはトボトボと来た方へ歩いて行った……
『待て待て待て待て』
そこに待ったをかけたのは近くに待機していたパクス軍のダブデ級陸戦艇のブリッジにいる司令官だ。
『なんだ?』
『いや!敵前逃亡をするな!』
『振られてしまった以上……私がここにいる意味はない……』
『一回振られたからなんだ!女なら男が折れるまでぶつかるんだよ!』
何言ってんだこいつ。
エクシアが率直に感じたことだった。
なお、それを聞いたデュナメス達は言ってやれと言わんばかりに野次を入れるわ。
パクス軍も野次を飛ばすわ。
ミレニアム側も温かい目でエクシアを見るわ。
場は混沌を極めていた。
謎に平和な時間だが。
『……』
『何度も言うが、断る』
自分の方を向いたフラッグに一言そう言った。
何でもかんでもバッサリ行くのがエクシアだ(物理的にも、精神的にも)。
『フフフ……』
『おい、何を笑っている』
『ガンダムよ、当たって砕けろという諺を知っているな?ならば私は、砕けるまでぶつかってみせる!』
『お前を物理的に砕いてやる』
エイカの発言に黄色い歓声を上げる周囲を無視して、エクシアはGNソードをフラッグに向けた。
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『ははは!楽しい、楽しいですわヒバナ!』
「くっ……」
エイカの公開告白を他所に、ヒバナとマユは激しいぶつかり合いを披露していた。
温度差が真逆である。
「あなたは……そんなに戦争が好きなの?」
『私が好きなのは戦争ではなく心躍る戦いですわ!戦争狂など、あの傭兵上がりで充分!』
ギャン・エーオースのビーム・ベイオネットをシールドで受けるトールギス。
先ほどから防いでは反撃の繰り返しだ。
二人の実力が拮抗しているのがわかる。
別にヒバナが研鑽を怠っているわけではない。
マユの成長スピードが異常なのだ。
『あの時敗北してから、私は思い知りましたの』
「何を……」
『あなたこそ、運命の相手だと』
はあ?とヒバナは思わず漏らした。
なお、運命とは恋愛的な意味ではなく好敵手的な意味だ。
『私の願いは、ヒバナ、あなたとの血が湧き上がる激しい戦い。それだけですわ!』
「くぅ……」
『ヒバナ!あなたの願いはなんですの?』
激しい攻撃に押され気味のヒバナ。
マユの問いに思考を回す余裕なんてない。
だから、彼女の答えはシンプルだった。
「ヒフミの……妹の普通の日常だ!」
『フフフ、軍人として、姉としてさいっこうの答えですわね!』
誰目線で言ってるんだこいつは。
思わずそう言いたくなるが、残念ながらここにツッコミ役はいない。
二人の激しい戦闘は、ただひたすら続く。
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『うおおおおおお!』
『はああああああ!』
PMC基地内で、バルバトスとキマリスがぶつかり合う。
かなり感情むき出しで戦う2機だが、それを操るパイロットは両方真顔である。
まだ時折しかめっ面を浮かべるシロコの方が感情を読み取れた。
『なぜだバルバトス!母上の理想は崇高で偉大な物だ!それはお前も知っているだろう!』
『知ってるさ!だがなぁ……子どもを犠牲にしてまで実現して欲しいなんて、母さんも思ってねえだろうがああああ!』
バルバトスが感情のままメイスを振るう。
それを間一髪でキマリスは回避した。
『しっかりして』
『悪い、カエ』
シロコとカエ
操縦技術はカエの方が上だ。
才能があるとはいえモビルスーツに触れたばかりのシロコと、訓練を受けた軍人のカエ。
おまけに、カエはガンダム、しかもオーパーツを任せられるほど優秀なパイロット。
地力の差が大きい。
一方のバルバトスとキマリス
バルバトスの方が上だった。
地力は互角の2人だが……怒りでブーストが入ってるバルバトスがキマリスを圧倒していた。
ロボットに精神論ってなんだよ……
つまり、お互いパートナーが劣っている部分をカバーしている結果、
今の互角の戦闘である。
『シロコ』
「ん、何?」
『リミッターを少し外す。あの馬鹿にお灸を据えねばならん』
「大丈夫なの?」
『大丈夫、シロコに負担がかからないようにする』
「わかった」
シロコが了承した瞬間、バルバトスのツインアイが赤く、鋭く光った。
『!? バルバトス……お前も人のこと言えないじゃねえか!』
『はあ!?俺はお前と違ってなあ!』
『!? カエ!』
『無理、速い?!』
バルバトスのスピードが一気に上がる。
シロコはかなりのGを感じたが、バルバトスが決められるように制御する。
『子どもが大好きで、大事にするんだよおおおお!』
バルバトスが振りかぶったメイスが、キマリスの胴体を捉えた。
ぐしゃりという音と共に、キマリスは吹き飛ばされた。
地面に沈むキマリス。
その姿はスクラップ一歩手前だ。
コックピットは上手く外しているあたり、バルバトスも加減したのだろうが。
『ちったは冷えたか。頭……』
「ん、お疲れ」
『お疲れシロコ……体に違和感は?』
「ない」
『良かった……』
バルバトスはメイスを地面に突き刺し、空を見上げた。
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『やあ!』
「くっ……」
ウーンドウォートのコンポジット・シールド・ブースターが振るわれる。
このブースターは近接・射撃を両方熟せる他、増加スラスターなどの機能も持つ多目的兵装だ。
俺はそれをシールドで受ける。
『この!』
「!?」
『やっと捕まえました』
相手は俺(ガンダム)の肩を掴んでいた。
何が目的で……待て、コンポジットにはI・フィールド機能もあったな。
……まさか!?
俺が思考を纏めた瞬間、ウーンドウォートが離れ、周囲のヘイズルからビームの嵐が放たれた。
寸前でスラスターを吹かして跳んだことで難を逃れた。
ウーンドウォートは当然の如く無傷だ。
「I・フィールドを使っての囮作戦とはな」
『むぅ、失敗しました』
「作戦は悪くなかったな」
そう悪くなかった。
俺がガノタじゃなかったら予測不能回避不可避だ。
『次は当てます』
「今のは初見だからこそ効果がある戦法だ。2度は通じんぞ」
『最初から知ってるみたいなあなたが言っても説得力皆無です』
そりゃそうか。
そう思いながら、俺はビームサーベルを構えた……
その時だった。
『せ~んぱ~い』
明らかに泣きそうな声のストライクが全力ダッシュをしていた。
「どうしたんだ?!ストライカーは!?」
『ビームが当たって壊れちゃいました~』
『なんなんだよあいつ!?』
一体何が……
おれがそう思った瞬間、1機のヘイズルの足元が崩れ落ちた。
『う、うわあああああ!?』
『危ない!』
落っこちかけたヘイズルはウーンドウォートが救出。
穴からでてきたのは……
『なんだよこいつ……』
「ビナー……」
デカグラマトン第三の預言者──ビナー
そいつが目の前にいた。
『こ、こちらヘイズル三番機!例の機械蛇が出現!至急、増援を!』
『無理だ!対処出来る連中は落ちたか手が離せない!』
『くうううう』
『皆、撤退!下がるよ!』
ウーンドウォートのパイロットの号令で、ヘイズル達は一斉に退いていった。
『カエ先輩、大丈夫?』
『私は平気。キマリスは知らない』
『兎に角退きますよ!』
『バルバトスぅ……覚えておけよおおおお!』
『小物臭くならないで。私に風評被害が来る』
ウーンドウォートは序と言わんばかりにキマリスを引っ張っていった。
『先輩、モビルアーマーか?』
『うお、バルバトス!?』
『ようストライク。元気そうだな』
「再開の挨拶は後だ。シロコ、行けるな?」
『ばっちり』
「ストライクの方は……」
『私だ。いけるぞ。たっぷり休んだからな』
「イオリか、OK。じゃあ、蛇狩りと行くぞ」
ビナーが口を開き、アツィルトの光のチャージを始める。
「散開!」
『シロコ、悪いが盾になるぞ』
『!? 大丈夫なの!?』
『ナノラミネートアーマーを……舐めるな!』
バルバトスが前に出てアツィルトの光を弾く。
ナノラミネート様々だ……
『イオリ、ストライク!ソードストライカーを射出しました!』
『ナイスタイミングだよチナツ!』
『装着開始する』
『バルバトス、シロコ、援護するぞ』
『『了解』』
ストライクがストライカーを装備する間の隙を埋めるように俺とバルバトスが動く。
やることは単純。
ビナーがストライクを見た瞬間殴るだけ。
「おら!こっちだ白蛇!」
『かかってきやがれモビルアーマー擬きがあ!』
『ん、アビドスで好きにはさせない』
その間に、ストライクがソードストライカーを装着する。
『装着完了!』
『覚悟しろ!機械蛇!』
ストライクは行き成り対艦刀を構えた。
行き成り行くのか?
『なら俺らも行くぞシロコ!』
『任せて』
バルバトスもメイスを構える。
決め技がはええんだよ!
「ああもう!」
俺もビームサーベルを構え、ビナーに向き合う。
「『『喰らいやがれ(喰らえ)!!!』』」
『喰らえ!』
『終わり』
三機による同時攻撃。
ストライクの対艦刀がビナーを叩き切り
バルバトスのメイスがビナーの装甲を勢いで削り
俺のビームサーベルが装甲の一部を斬り裂いた。
ビナーはまるで悲鳴のような雄たけびを上げながら、再び砂の中へ逃げるように潜っていった。
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「……」
「司令、遠坂隊が帰投しました。これからどうしますか?」
「撤退だ」
「はい?」
「戦力の過半を喪失。これじゃあ占領地の維持は不可能だ。一度態勢を立て直す」
「了解しました」
ダブデのブリッジで、司令官は諦めたかのように呟いた。
カイザーとの戦い。
負ける気は起きなかった。
だが、イレギュラーに壊された。
これなら……先んじて潰しておけば良かったと、彼女は後悔していた。
『各員に通達。戦闘停止。繰り返す、戦闘停止。負傷者や撃墜されたパイロットを回収し、離脱せよ。繰り返す……』
『終わりのようだな』
『そうだな』
エクシアはエイカの言葉にそう返した。
フラッグは見るも無残にボロボロだ。
流石にこの惨状はと、ミレニアム勢は引いていた。
デュナメスなんか『大人げねえ……』と呟いている。
『ははは……だが諦めん!いつか必ず、君を振り向かせて見せる!』
『……』
こいつ無敵か?
エクシアは思わずそう心の中で呟いた。
味方に回収されていくフラッグの姿は、何故かやり切ったどころか諦めていないという感情が読み取れた。
『終わり……ですわね』
「そう……だね」
一方こちらはヒバナとマユ
両者の機体はボロボロ。
辛うじて大破は免れている状態だ。
『フフフ……次こそはその首を取って差し上げますわ』
「2度と来ないでほしいかな」
『お断りですわ!』
そんなことを言いながら、ギャン・エーオースは回収に現れたディンに持ち上げられていった。
ちょこっと解説
カスタムフラッグ
機動戦士ガンダム00に登場。
ユニオン軍の可変モビルスーツ──ユニオンフラッグのカスタム機。
カスタムフラッグが愛称のようなもので、正式名称はグラハム専用ユニオンフラッグカスタムとなっている。
ガンダムの機動性に対抗すべく、フライトユニットを大出力型に換装。
さらに装甲や搭載燃料を削ぎ落し、リミッターも解除するなど徹底的に機動性を強化している。
また、パイロットが左利きの為、武器やディフェンスロッドが通常とは左右逆になっている。
今作でも大体同じ設定。
因みに改修の際にエイカが愛を語ったらしい。
ダブデ級
機動戦士ガンダムに登場したジオン軍の大型陸戦艇。
今作ではパクス軍の陸上空母艦として開発された。