機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー) 作:KUS
ゲヘナ戦線
「先生、新しい書類が来ました」
"うう……多い、多すぎる。多すぎない?"
「普段の業務量にプラス、アビドスの一件の報告書ですからね」
アビドスの一件から早2週間
ホシノ達に捕縛された理事は諸々の不正の証拠と共にヴァルキューレに突き出された。
本社の方はというと、理事をお得意の尻尾斬りで早々に斬り捨て、遺憾砲を発射している。
恐ろしく早い対応だ。
パクス軍はというと、戦力の過半を失った結果か、一部の占領地域(といっても無人の砂漠だが)から撤退した。
それでもアビドス砂漠のかなりの割合を占領している。
だが、勢いを削ぐことは出来た。
ピコン
「先生、メールですよ」
"? 誰からだろう"
一緒にメールを見ることにした。
まあ誰からかはある程度予測できるが……
『ゲーム開発部は今、存続の危機に陥っています。生徒会からの廃部命令により、破滅が目前に迫っている今、助けを求められる相手は貴方だけです。
勇者よ、どうか私達を助けてください!』
やっぱり、もうパヴァーヌの時期か。
"差出人は……ミレニアムのゲーム開発部?"
「ミレニアムですか……」
"そうだね……ちょっと行ってくるね"
「気を付けてくださいよ~俺は付いていけないので」
"え!?なんで?!"
先生が驚きの声を上げた。
アビドスの時と同じように案内してもらおうと思ってたのか。
「大事な要件なので……案内ならユウカ辺りにでも……」
"うん。ごめんね、我儘みたいなこと言っちゃって"
「大丈夫ですよ。まだキヴォトスに来て一か月も経ってないですからね」
案内しないのかって?
さっき言った通り、大事な要件がある。
それに、ミレニアムは前線から遠い。
三大校で唯一自治区が戦場になっていない学園だ。
戦争に突然巻き込まれる、なんてこともないだろう。
"それじゃあ行ってくるね"
「リンには俺から言っておきますね」
"ありがとう”
先生はそう言ってオフィスを後にした。
その後、リンに電話をかけてから俺も出発した。
行先は……ゲヘナだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ゲヘナ学園とパクス連邦学園
2校に挟まれた位置に自治区を持つ学園がいた。
二コラ工業高校。
その名の通り工業を専門とした学園。
だが……ゲヘナとパクスに挟まれているという立地のせいで、戦争の最前線と化してしまった。
開戦早々に、工業地帯の掌握とゲヘナへの橋頭堡を築く目的でパクスの攻撃を受け、
増援としてきた連邦生徒会やゲヘナがパクス軍を押し返すと、今度は執拗な爆撃で自治区は焦土と化した。
現在も、両校による激戦が続いており、復興もままならず、大部分の住民や生徒は自治区に戻れていない状況だ。
そしてその日も、ゲヘナとパクスが戦闘を行っていた。
「シャーマンが出てきたぞ!」
「丁度いい、マコト様より与えられたこのティーガー型……その名も超無敵徹甲虎丸!
その的になってもらおう」
「ゲヘナのやつら、ティーガーを出してきました!」
「シャーマンを下らせろ!新型戦車の丁度いい練習台だ!」
地上では、戦車戦が繰り広げられ、
「ははは!落ちろぉ!」
『ばーか!落ちんのはてめえだよ!』
空中では、ゲヘナのダガーLと、パクスのバビが空中戦を繰り広げている。
廃墟と化した市街地を背景に戦闘する両者。
だが……そこには悲壮感というものが感じられなかった。
そもそもパクスとゲヘナの2校は元同盟校。
関係も古く、パクスが植民地だった時代もゲヘナはひっそりと地下組織を援助していた。
2年前のクーデターまで、間違いなくパクス最大の友好校だった。
つまり、お互いに悪感情がないのである。
パクスゲヘナ方面軍を構成しているのは、
上のようにゲヘナに悪感情はないパクス生
クーデターを起こした反雷帝派を敵視しているだけで母校を嫌ってるわけではない旧雷帝派
そもそも因果の外側にいた不良上がり
ゲヘナ側も
取り敢えず暴れられると聞いて志願した問題児
パクス生と実際に交流したことがある3年や、彼女らから色々聞いている結果、悪い印象が薄くなっている正規兵
そこにゲヘナの気風や旧雷帝派や不良上がりの空気も加わり、ゲヘナの日常の延長線上でしかない戦闘が広がることになった。
おまけに共通の敵(トリニティ)がいるのになんで自分達戦ってるんだろうと思う人間が両軍にごまんといた。
まあゲヘナ側は連邦生徒会や真面目に戦局に向き合っている一部の生徒、
更にはパクスに占領された学園の生徒で構成されたレジスタンスの目がある以上、
形だけでもやり合おうということで今の状況になっていた。
それでも空気だけで察することが出来るレベルなのだが……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁ……」
ゲヘナ戦線の指令本部
そこで溜息を吐いているのはゲヘナに派遣されている連邦生徒会軍の司令官だ。
彼女が溜息を吐いている理由……
目に見えてゲヘナ軍が真面目に勝つ気がないように見えるからである。
パクス側も似たような空気を感じるので……
向こうも同じよう苦労があるのかなと、彼女はしみじみ勝手にパクス司令官に共感していた。
現実は真逆だが。
こんな空気の癖に、連邦生徒会の迎撃やレジスタンスの掃討は真面目にやってくるので、始末に負えない。
「大丈夫……副会長が来るんだ。そうすれば少しはマシになる……筈……」
彼女が待ち望んでいたこと。
アキが来ることだ。
彼が入れば、少しはゲヘナ生も真面目にやってくれる筈。
だが、そんな連邦生徒会を逆に邪魔だと思う空気がゲヘナ軍に蔓延しているのを、彼女は知らなかった。
「爆薬のセットは?」
「大丈夫、ばっちし」
「よし……バクゥが真上を通った瞬間、起爆だ」
「OK」
彼女らはレジスタンス。
パクスに占領された学園の生徒達だ。
彼女達は二コラの生徒である。
故郷を焼かれ、踏みにじられた彼女達の心には、パクスを倒して二コラを再興するという思いがあった。
「バクゥ、来ました」
「よし、三つ数える。ゼロで発破だ」
「了解」
「3……2……」
爆弾が仕掛けられた道路の上を、バクゥの隊列が通過しようとしている。
「1……今だ!」
「発破!」
リーダーの声と共に、爆破スイッチが押される。
道路が爆発し、直上にいたバクゥが直撃を喰らって大破。
残りのバクゥも崩れた地面と共に落下していった。
「今だ!ありたっけのRPGを喰らわせてやれ!」
「よし、行くぞ!」
ロケットランチャーを担いだレジスタンスのメンバーが大挙して、穴に向かう。
身動きが取れないバクゥのパイロットは、ただそれを見ることしかできない。
「私達の恨み、思い知れ!」
RPGが次々と撃ち込まれていく中、それを遠目に見ていた部隊がいた。
ゲヘナの部隊だ。
戦車とモビルスーツの混成部隊である。
「ありゃりゃ、えげつねえ」
「……」
「どうする?獲物取られちまったぞ」
「偵察隊は何やってんだ。あたしがバクゥを潰すから報告はいらねえっつたのに」
「お得意の盗み聞きからの横取りかねぇ」
「隊長~気に入らないから吹っ飛ばしていいっすか~?」
「やれ、言い訳はそうだな。パイロットがリンチされないようにするための人道的な判断、でいいか」
その後、レジスタンスに向かって砲撃が加えられたのは、言うまでもない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「レジスタンス、減りませんねぇ」
「の癖に同じような手ばっか。学習って言葉を知らんのか」
ゲヘナ方面軍指令本部。
そこで協議されていたのはレジスタンスについてだ。
対処には一切困っていなかった。
手口がワンパターンすぎるのである。
問題はモビルスーツ。
「連邦生徒会がレジスタンスにモビルスーツを供給し始めたようですね」
「まあ、素人ばかりで脅威じゃないが」
「問題はその中に混じっている化け物だ」
レジスタンスのモビルスーツ部隊。
レジスタンス自体、訓練を受けていない素人集団だ。
そこに、訓練を受けた軍人でも、動かすには更なる訓練を要するモビルスーツを渡したらどうなるか。
大部分が動くデカい案山子になる。
だが、その中にいる化け物が問題だ。
「天才って、本当にいるんですね」
「アマネ様も充分天才じゃね?」
「話がズレてるぞ。それに、親衛隊から選りすぐりの精鋭が派遣されてくる。
これでどうにかなることを願おう」
「そうしますか」
その後も、今後の方針を話し合って会議はお開きになった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
パクス軍、ガルダ級大型輸送艇
「隊長、今回我々が呼ばれたのは……」
「レジスタンスの化け物、そいつを仕留める」
「ソルさんも大盤振る舞いっすねぇ、たかが一人にこの数って」
「シャーレの先生、イレギュラーを警戒しているのだろう。それに、アビドスでの事もある」
「どうでもいいさ。戦えれば」
隊長と呼ばれた少女は、自身の愛機──ハンブラビを見上げながらそう呟いた。
「見よ、この
「うわー、や~ら~れ~た~」
「何やってんのこいつら?」
「アイムの中二病にイサメが付き合っているだけだ。気にしなくていい」
また別の場所では、4人の少女達が思い思いに過ごしていた。
一人は中二病発症中
もう一人はそれに付き合い
もう一人はそれを呆れながら眺め
最後の一人は新聞を読んでいる。
「隊長は何読んでるの?」
「シャーレとやらの記事だ。つい先日のアビドスの一件が報じられている」
「ああ、あれね。プロパガンダって思うくらいだったけど」
「ガンダムタイプが複数敵に回ったのだ。あれだけ損害が出ても不思議ではない」
プロパガンダだと考えている隊員──天野テンシに対して隊長はバッサリと言い切った。
「全く、連邦生徒会長が呼び寄せた外様がこれだけ動いているというのにとうの連邦生徒会は……」
(また始まった)
「副会長の九条アキ。やつ以外目立った動きがない。現状を打開しようとする気すらないのか?やはり超人におんぶ抱っこの日和見主義の連中ではキヴォトスは統治できない。
やはりキヴォトスを統べられるのは一握りの天才……つまりアマネ様だ」
「終わった隊長?早速だけど、整備手伝って」
「何?私は忙し……「いいから手伝って」待て、離せぇ!」
テンシは隊長──白原シオンを引っ張って、愛機がある格納庫に歩いて行った。
ちょこっと解説
白原シオン
武装親衛隊の3年生。
少し思想が強めで、キヴォトスを支配出来るのは一握りの天才だけだと思っている。
その中に入っているのはアマネか連邦生徒会長。
天野テンシ
武装親衛隊の3年生。
シオンとは幼馴染。
若干思想強めのシオンの扱いには手慣れている。
ツッコミ役
須原アイム
武装親衛隊の2年生。
中二病患者。
左手には包帯、左目に眼帯装備。
六角イサメ
武装親衛隊の1年生。
割と無邪気で付き合いがよく、アイムの中二病にも嫌な顔せずノる。