機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー)   作:KUS

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二コラ反攻作戦

「ふ゛く゛か゛い゛ちょ゛ー」

「あー……よしよし」

「何があったんですか?」

「ゲヘナの連中の制御に苦労してるみたい」

「ゲヘナの司令官はどうしたんですか」

「"そういうこと"だよ」

 

ゲヘナ自治区郊外にある指令部の、アキとCAT小隊の面々は来ていた。

今は泣きついてきた司令官をアキが慰めてる図である。

 

「うぅ……副会長が居れば、戦況も好転しますか?」

「好転させる。少しでもな。エデン条約も近いし。

取り敢えず、主要人物を集めておいてくれ、6時から会議を始める」

「は~い……」

 

司令官はそう返事をすると、手元の通信機を手に取った。

 

 

「にしても、ゲヘナ軍には何というか……」

「何か気になる事でもあるのか?」

「いえ……あまり真面目さを感じないというか」

 

司令室を後にした5人は、基地の通路を歩いていた。

そんな中でユカは率直な思いを口にした。

 

「なぜでしょうか。自分達の自治区も侵略されるかもしれないのに」

「まあ……そう思うのも当然か。

まず一つ。ゲヘナはパクスの友好校だ。元な」

「まさか、昔は仲が良かったから攻め込んでくることはないとでも思ってるんですか?」

「……詳しいことは俺にもわからない。だから推測になるんだが……ゲヘナとパクスの両軍でお互いと本気で戦うつもりがある人間がいないんじゃないか?」

「えっ……それってどういう……」

「昔友好校だったのもある。それに、交流は2年前まであったんだ。当時を知る生徒はまだ在校中。それに……ゲヘナの仮想敵はわかるだろ?」

「トリニティ総合学園……」

「一応は共通の敵がいるんだ。だからこそのエデン条約なんだが」

「ゲヘナとトリニティの和平にプラスして、ゲヘナの動きを制限する狙いもあるんですか?」

「まぁ、そういうこった」

 

アキはそう答える。

元々雷帝に対する対抗策として発案されたエデン条約が、ナギサの意向もあるとはいえ再び話が上がってきたのはそういう理由もある。

 

「取り敢えず、会議まで機体の整備をしておけ」

「わかりました。行きますよ」

「「「了解」」」

 

アキの指示を聞いて、CATの4人は愛機のある格納庫に向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

会議の予定時間である午後6時

ゲヘナ戦線の指令部のブリーフィングルームに主要メンバーが集まっていた。

 

連邦生徒会副会長のアキと護衛のCAT小隊

連邦生徒会ゲヘナ戦線司令官と幹部

今回の作戦に同行するゲヘナ風紀委員長の空崎ヒナ

ゲヘナ学園正規軍司令官と幹部

ゲヘナ戦線の反パクスレジスタンスの指導部

 

「さて、ゲヘナ方面反攻作戦の会議を始める」

 

会議が始まった。

 

 

最初に発言したのはレジスタンスのリーダーだ。

 

「まず私から。昨日、同志達が市街地でバクゥの部隊を奇襲した。

だが、攻撃中にゲヘナの部隊から砲撃を受けたと報告を受けたぞ。どういうことだ?」

 

行き成りそれか。

それがアキの内心だった。

確かにフレンドリーファイアは問題だ。

それが意図的なら一層。

 

「ふむ……確かに"レジスタンスの部隊を砲撃した"という報告は上がっている」

「! なら!」

「しかしだな久高殿。彼女が言うには

「明らかに過剰火力であり、RPGの弾薬を大量に保持しているのを確認した。

抵抗力のないパイロットに対する過剰攻撃を防ぐための処置だった」

らしいぞ?」

「っ……!?そんなの……」

「勝手な妄想?と言うには、貴殿らには前科があってなぁ。投降したパクス兵に執拗に攻撃を続けたのは誰だったか。

おまけに、彼女らはパクスの生徒じゃなくて傘下の学園の生徒という始末」

「そこまでだ。今は仲間内で争ってる場合じゃない」

 

流石にヒートアップのし過ぎだとアキが止めに入る。

 

「了解副会長殿」

「くっ……わかりました」

 

一名不服そうだが。

 

「まず、今回の作戦目標は前線の押し上げだ」

「パクス軍を撃退しないのですか?」

「そこまでの余力があればな。所属生徒の8割が従軍しているのがパクスだ。そこに自校外の生徒や、ブラックマーケットの傭兵崩れまでいる。単純な数は向こうが上だ」

 

パクス軍の人員は、

志願した自校(マンモス校レベル)の8割の生徒

軍門に下った、保護を求めたなどで傘下に入った学園の生徒

今の生活よりはマシと軍に直談判して入った無学籍の生徒

ブラックマーケットの傭兵崩れ

吸収されたブラックマーケットの元マーケットガード

ゲヘナの旧雷帝派

 

これだけの数がいる。

それに対して連合側は全校生徒を徴兵するわけにも行かず、単純な数では負けている状態だ。

パクスが複数の戦線を抱えながらも拮抗どころか押し気味だった理由である。

 

「まず、二コラ自治区からパクス軍を撤退させる。これが最低限の目標だ」

「最低限がそれなら、理想はどこまで押し返すことだ?」

 

ゲヘナの司令官──加賀ヨハネがそう尋ねる。

 

「前線の後方、二コラ自治区郊外の要塞線だ。理想は要塞の掌握。

強固な要塞だからな。こっちで使えば強力な盾になる」

「なるほど、理解した」

「軍の配置だが、中央を俺達連邦生徒会、左翼をゲヘナ、右翼をレジスタンスが担ってもらう。同時攻撃を仕掛けて、一極集中をできなくする。

……全員、覚えたか?」

 

アキの問いにその場の全員が頷く。

 

「よし、作戦開始は明日の正午。昼休憩の隙を突く。

各々部下に通達して、それぞれ作戦を立案してくれ。では、解散」

 

アキがそう閉めて、会議は終了した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

パクス連邦学園ゲヘナ方面軍──前線要塞

 

「あああ……酒が欲しい」

「我慢しろ。酔ってる間に敵が来たらどうする」

「わかってるけどよぉ……ああ、傭兵時代が恋しい」

「じゃあなんで軍に入ったんだよ……」

 

会話をしているのは二人のオートマタ。

元々傭兵をしていた二人だ。

その頃からの腐れ縁らしい。

 

「お疲れ様で~す」

「お疲れ様です」

「お疲れ、交代か?」

「ですです」

「頼んだぞ~」

 

防壁の上で見張りをしていた生徒と交代で、二人は見張り台に昇る。

 

「敵なんて来るのかねぇ」

「レジスタンスは来るかもだぞ」

「暇だねぇそいつら」

「その言葉はパクスの連中にも刺さるからやめるんだ」

 

そんな雑談をしていると、突然ブザーが鳴った。

 

「!? 敵か!?」

「いや……集合のベル?」

 

 

ベルが鳴った後、大広場には要塞の人員の殆どが集まっていた。

 

「諸君!あと数週間もすれば、我らが母校、パクス連邦学園の独立記念日だ。

だが、残念ながら我々に祝う暇が出来るかはわからない。

情報によれば、明日連邦生徒会は攻撃を仕掛けてくる」

 

基地司令の言葉に、一斉にざわつく。

 

「なので、今から前祝いだ!先日アマネ様から送られてきた趣向品を全面開放するぞ!

今日は無礼講だ!」

「「「「「うおおおおおお!」」」」」

 

一斉に沸き立つ広場。

攻撃の前日にやるのもどうかと思うが……

司令官には攻撃をやり過ごせるという確固たる試算があった。

 

「オートマタ組も来い!酒もあるぞ!」

「おお!久しぶりの酒だ!」

「どっから持ってきたんだ?」

「裏ルートで民事部が手に入れたいらしい」

「うおおおおおお!アマネ様最高!」

「ただし!飲み過ぎたらもう送らないとの民事部長のお達しだ」

「「「イェッサー!」」」

 

和やかな雰囲気に包まれる広場。

 

明日から再び激しい戦闘が起こる。

そこへ送る前の、司令官なりのサプライズだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌日午前11:40

二コラ自治区工業地帯跡地

そこで連合軍とパクス軍の睨み合いが行なわれていた。

 

「敵、かなりいますね」

「……」

「副会長、何かありました?」

 

連邦生徒会の司令官の横で、アキは神妙な顔をしていた。

 

「準備が良い。しかも、俺達が陣を構え始めた時には向こうは戦力が集結し始めていた」

「まさか……情報が漏れている……」

「可能性はある。だが、強襲が出来ないだけだ。このまま仕掛ける。

シキ、俺も出るから、指揮は任せた」

「分かりました。ご武運を」

 

アキはその言葉に頷いて指揮所を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

『副会長、こられたんですね』

「ああ。ユカ、作戦は分かっているな?」

『はい。我々CAT小隊で敵陣を強行突破、防衛線を崩す』

「そうだ。ここに俺も入る。4人とも、成功させるぞ!」

『『『『はい!』』』』

 

そして、時計の数字が12時に変わる。

その瞬間、連邦生徒会のガンタンクやガンキャノン、ジム・キャノンが敵陣に砲撃を浴びせ始めた。

 

それに合わせて主力部隊も突貫を始める。

 

「CAT小隊各機、俺に続け!」

『了解、行きます』

 

その中の5機のモビルスーツが、真っ直ぐ敵陣に向かって猛スピードで突貫した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『くらえ!』

 

ジムIIが構えたバズーカがパクス軍のジンに直撃する。

爆炎を上げるジンの影から、一条のビームが発射され、ジムIIを貫く。

 

『奥にいるぞ!気を付けろ!』

『普通のジンとは色が違う……エースだ!』

 

ビームを放ったのはオレンジ色のジンだ。

その手にはジン用のビーム兵器──バルルス改が握られている。

 

『各機、俺がアウトレンジで数を減らす。撃ち漏らしを墜とせ』

『あいあい隊長』

 

跳び上がったジンは、手近な廃墟の屋上に着陸し、射撃態勢を取る。

次に貫かれたのは、後方にいたガンタンクだ。

動きはお世辞でも素早いとは言えないガンタンク。

後方の火力要員故に狙われたのだろう。

 

『クッソ!オレンジのジンを墜とせ!』

『隊長の邪魔はさせん!』

 

 

 

『こんの!』

『落ちろ落ちろ落ちろ!』

 

別の場所では、ジム・スナイパーが上空を舞うディンやバビを狙い撃っていた。

直掩の陸戦型ジムも、襲い掛かってくるグフと真っ向勝負を演じている。

 

『そこだああ!』

『しまっ!?』

 

一発のビームがバビを1機撃墜する。

それに動揺して動きが鈍ったディンも墜とされた。

 

『やった!当たった!』

『すごいすごい!なら私も!』

 

もう1機のジム・スナイパーがディンを狙う。

だが……

 

『悪いが、そうポンポン墜とされるのは困る』

 

背後から現れたグフ・カスタムがコックピットをヒートサーベルを貫く。

そしてもう1機をヒートロッドで無力化した。

一瞬の出来事に啞然とする直掩の陸戦型ジム。

だが、直ぐに対処すべくグフ・カスタムに斬りかかるが……

左腕のガトリングで蜂の巣にされる。

 

『次は……あいつか』

 

グフ・カスタムが捉えたのは、ガンタンクだった。

 

 

 

 

『こいつぅ!』

 

1機のジムIIIがグフ重装型に斬りかかる。

だがグフ重装型は左腕をジムIIIの胴体に突き刺す。

そこはコックピットがある場所だ。

 

『ひぃっ!?や、やめ……』

 

訴え虚しく、グフ重装型のフィンガーバルカンがゼロ距離でパイロットを襲った。

機能停止したジムIIIを尻目に、次の獲物を探すグフ重装型だったが、

 

『くらえ!』

 

タマのジム・キャノンIIが横合いから砲撃を浴びせ撃墜する。

 

『副会長、そのパイロット……』

「今は時間がない。救出は後だ。進むぞ」

『わかりました』

 

ユカはパイロットを救出したかった。

だがこの乱戦の中ではそれは難しい。

それに、後方に移送する時間も惜しい。

 

『CAT1、見捨てるわけじゃにんだから。こいつの無念を背負ってやってやるわよ』

 

ネキはこっそりと自分を狙っていたパットンを踏み潰しながらそう言った。

 

「ネキの言う通りだ。ユカ、もし負ければそいつの犠牲が無駄になる」

『別に死んじゃあいねえけどな』

『CAT3、茶化さない』

「行くぞ」

 

アキ達が更に戦場を進む。

すると、ルシが上空に新たな機影を確認した。

 

『皆、上に敵。数は3』

「上……」

 

いたのはエイのような形をした戦闘機だ。

内、中央の1機がモビルスーツに変形してアキに襲い掛かった。

 

「くっ……」

『ガンダムか。面白い!』

 

可変モビルスーツ──ハンブラビのMS小隊が、アキ達に襲い掛かった。

 

 

 

『ぐわ?!』

「この程度かよ……」

 

アキ達がいる場所から少し離れた戦場。

そこで1機のモビルスーツが単機で連邦生徒会のモビルスーツを殲滅していた。

まさしく無双という言葉が似合う惨状だ。

 

「さて、お次は……」

 

その機体のパイロットが次なる獲物を探し始めようとした瞬間、

背後からモビルスーツが襲い掛かる。

 

「おっと……」

『……』

「またお前か。ストーカーは嫌われるぞ?」

『構わない。兄貴に嫌われるくらいなら、他から嫌われても』

「おっもいなぁ。君はさぁ、何が目的なの?」

『そのシステム、完全に破壊する』

「面白れぇ!行くぞぉ!」

 

『EXAM system stand by』

『EXAM system stand by』

 

2機のモビルスーツ──ブルーディスティニーとイフリート改がぶつかり合う。

戦場の混沌が、段々と深まっていった。




ちょこっと解説
加賀ヨハネ
ゲヘナ正規軍の司令官。
一年時点で隊長職に就いていた優秀な人物。
反トリニティ的な思想の持ち主であるため、クーデター後に政権を親トリニティ派から疎まれてたが、マコトの計らいで首にならずに済んだらしい。
親トリニティ派に対して「不義理な連中」という感想を残している。

久高アンナ
レジスタンスのリーダー。二コラ工業高校の3年生。
故郷の為にレジスタンスに身を投じた。
だが、パクス側に対してやり過ぎな事も多い。

七海シキ
ゲヘナ方面の連邦生徒会指揮官。
苦労人で、アキと会うたびに泣きついている。
能力は本物。

ガンタンク
連邦生徒会が開発した初期のモビルスーツ。
圧倒的な射程距離を持つため、現在も現役。

ガンキャノン
ガンタンクと同時期に開発された支援機。
後のジム・キャノンに繋がった他、多数のバリエーションが開発されている。

ジム・キャノン
ガンキャノンのデータを基に開発された支援用モビルスーツ。
右肩にガンキャノンと同じ口径のロケット砲を装備している。

陸戦型ジム
連邦生徒会が開発した量産型モビルスーツ。
当初開発されたジムは、ザクに対抗する目的があった。
こちらはグフやドムといった陸戦用MSに対抗すべく開発された。
なので原作とは稼働開始が真逆だったりする。

ジム・スナイパー
陸戦型ジムを狙撃仕様に改修した機体。
ただし、使用する大型ロングレンジビームライフルを使用するには外付けのジェネレーターを有線で繋ぐ必要があり、狙撃地点からは大きく移動できない。
出力は落ちるが、専用のバックパックを装備することで移動運用が可能。

ジムII
連邦生徒会の先代主力MS。
現在は新型への移行が始まっているため、余剰機体はレジスタンスに供給されている。
初代ジムを改修した機体と、一から製造された機体の2種類がいる。

ジムIII
連邦生徒会の新たな主力機への繋ぎとして運用されているMS。
ジムIIを更に改修した機体。
ジム系列の集大成とも言える機体だが、稼働時間は短め。

グフ重装型
グフの改修機。
片手だったフィンガーバルカンを両手に内蔵した代物で、結果として携帯武器が使えなくなっている。
一方で、火力は一級品。

オレンジのジン
パクスのプラネット分校に所属しているエースの機体。
アウトレンジから正確無比な射撃で敵機を撃墜する。
見た目は完全にジン(ミゲル・アイマン専用機)

イフリート改
元々ガンダムが封印されていた遺跡で発見されたデータから復元されたシステム「EXAM」の試験機として開発された。
頭部にシステムを乗っけたため、他のイフリートタイプよりも頭部が大型。
他にも、二刀流だったりする。
ブルーはEXAMを完全抹消する為、ストーカーレベルでこいつを追い回している。
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