機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー) 作:KUS
「クッソ!歩兵が鬱陶しい!」
『数が減ってない……いや死んでないんだから減ってないのはおかしくないんだけど』
「起き上がった瞬間復帰してるのか?こいつらはゾンビか!?」
イオリとストライクを悩ませているのはパクス軍の歩兵だ。
倒しても起き上がったら、すぐに戦線復帰。
武器は手近な物から敵から奪った物まで多種多様。
パクス軍の士気の高さが伺える。
ここまで来ると逆に恐ろしいが。
そんなイオリらの下に、1機のモビルスーツが降ってきた。
『ストライク!』
「!?」
『はっ?!デュエル!?』
ストライクに肉薄してきたデュエルは、ビームサーベルを振り下ろす。
ストライクは寸でのところで回避した。
『久しぶりだな。ストライク』
『デュエル……久しぶりだね本当に』
『会いたかった。会いたかったぞ。お前に雪辱を晴らす時が来たようだな』
イオリは息を吞む。
それほど気迫がすごい。
一体何をやらかしたんだと、ストライクに対して心の中で叫んだ。
『デュエル……まだ……』
『そうだ、一度たりとも忘れたことはない。
お前に火を付けられて、火の玉と化したことはなぁ!』
『いつの話してるの!?封印される前だよねそれ!?それにデュエルもノリノリだったじゃん!』
『思ったよりも熱かったんだ馬鹿者!』
『理不尽!?』
『文字通り、俺の身体が真っ赤に燃えたんだぞ!』
『知らないよ!?』
最初は何やってんのと思ったイオリだが。
「封印される前」と聞いて、キヴォトス設立以前の恨みかよと
おまけにクソしょうもない。
結果、思わずギャグみたいに頭をぶつけてしまった。
因みにデュエルのパイロットも頭をぶつけている。
『さあ覚悟しろストライク!』
『てっきりライの前で容赦なくボコボコにしたのを恨んでるのかと思ったじゃん!』
『そうだったな。それもあったな』
『忘れてたなこのポンコツ!』
『貴様ぁ!一番言ってはならないことを!』
『うっさいポンコツ!』
『ストライクぅ!』
パイロットそっちのけで撃ち合いを始める2機。
『なぁストライクのパイロット。名前は?』
「……銀鏡イオリ」
『東イザ……お互い、苦労してるな』
「多分そっちだけだと思う」
完全に蚊帳の外の2人は、完全に操縦桿から手を離して成り行きを見守る姿勢に入っていた。
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『そこぉ!』
ブリッツが攻盾システム「トリケロス」のランサーダートをヒナに向けて発射した。
ヒナは自分が立っていた廃墟から飛び降りる。
廃墟に深々と刺さったランサーダートにより、建物は崩れ落ちていった。
デュエルがストライクの下に降下し、残りの3機も来たと思えば……
ブリッツ以外は一目散にモビルスーツ部隊に襲い掛かった。
他の2機を相手したくてもブリッツが邪魔をする。
速攻すればいいって?
相手はフェイズシフト装甲持ちだ。
生身用の携帯ビーム兵器が開発されていない以上、ヒナにブリッツの撃破は困難だ。
フェイズシフトダウンまで粘ればいいと思うかもしれないが。
そもそも弾薬の問題もある。
本人は消耗が軽くとも、弾薬の消耗は激しい。
「アコ、あの子は?」
『今全速力で向かっています!』
「そう……ブリッツくらいは持っていきたいわね」
『ど、どうやってですか!?いや……ヒナ委員長には無理って言いたいわけじゃなくてですね……』
「トリケロスを破壊する。あれを壊せば、ブリッツの戦闘能力は大きくダウンするから」
トリケロス
ブリッツの右腕にある複合兵装。
先程使用したランサーダートの他にも、ビームサーベルとビームライフルも併用している。
つまり、破壊すれば戦闘能力の低下は免れない。
難しいが……どうにかして銃口に弾丸を叩き込めれば……
一方、バスターとイージスはゲヘナのモビルスーツ部隊と交戦中だった。
『おらぁ、命中!』
『あまり調子に乗るなよバスター、足元を掬われるぞ』
因みに、デュエル以外にパイロットはいない。
イージスとブリッツは扱いが難しい。
バスターはランチャーストライカーでいい。
なので、パイロットに志願する人間がいなかった。
『あっ?まだくんのか』
『バスター、俺はこっちを片付ける。そっちは頼んだ』
『了解』
バスターがいるのは朽ちた工場の上。
そこに1機のダガーLが上方からバスターにビームライフルを乱射する。
だが……避けずとも射撃は一発も当たらない。
『(素人かよ)』
バスターは収束火線ライフルでダガーLを狙うが、寸での所で回避された。
だが……ライフルは破壊した。
『来れるもんなら来てみろ!』
バスターはミサイルを発射し、ライフルとガンランチャーも含めた弾幕を形成した。
ライフルを失ったダガーLの勝ち筋は近接戦である以上、近づかせないは正しい。
だが……ダガーLはシールドを構えながら恐れずに突撃してきた。
『(ちぃっ)』
バスターはガンランチャーを前面に収束火線ライフルを連結し、ダガーLに対装甲用散弾砲を発射する。
ダガーLはシールドで散弾を防ぐが、シールド諸共左腕を失う。
『(これで流石に……)』
だが、ダガーLは更にスピードを上げてビームサーベルを抜く。
『くそっ!しつこいぞ!』
バスターは再び散弾砲を浴びせるべく射撃体勢を取った。
だが……その瞬間、足元が崩れた。
『はぁ!?』
何も、不運な事故というわけではない。
先程の乱射、あれは闇雲に撃っていたわけではない。
バスターがいたのは工場の屋上。
つまり、その下には屋上を支えている支柱か壁がある。
先程のビームで、所かまわずそれらを融解させたのだ。
その結果、脆くなった支柱や壁ではバスターの重量に耐えられなくなった。
『(不味い?!)』
ダガーLがバスターに肉薄する。
そのままビームサーベルを向けるが……
『舐めんじゃねえ!』
寸前で散弾砲を発射し、ダガーLを撃破した。
だが、最後の足掻きなのかガンランチャーをビームサーベルで破壊された。
『くそ……戦力半減かよ……』
勝ったは勝ったが、勝った気がしないバスターだった。
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バスターと別れたイージスは、ゲヘナ側のモビルスーツの他にも、左翼側に飛び出てきた連邦生徒会のモビルスーツも相手にしていた。
『全く、練度は低いが数はいる。士気も妙に高い。強くはないが厄介だな』
イージスが言及したのは連邦生徒会の兵士だ。
連邦生徒会の常備軍は、もとから数が少ない。
各学園を無用に刺激しないためだ。
その為、現在の連邦生徒会の兵士の大半は各学園……特に常備軍を持てるほどの力がない中堅学園や弱小学園からの徴兵だ。
開戦後、次々に侵略される同規模の学園を見て、次は自分達という恐怖と、母校を守るという気概が士気の高さに繋がっている。
一方、戦線を持たせるために最低限の訓練しかしておらず、モビルスーツの性能頼りな傾向にある。
当初はパクスのモビルスーツ相手には性能で優位に立っていたが、段々と性能差を埋められ始め……という状況だ。
強くはない。
だが士気とMSの性能は高い。
故に厄介という評価だった。
『次は……』
ビー!ビー!ビー!
『敵正反応?!』
イージスのセンサーが敵機を捉える。
その機体は、頭上からイージスに対艦刀を振り下ろした。
『貴様は……ストライク!?』
イージスの目前にいたのはストライクと酷似した機体だ。
だが、そのストライカーパックはイージスにとって未知の代物。
なにより、ストライクはデュエルと交戦中だ。
『何者だ?』
『……』
ストライクに酷似した機体──ストライクEはゆっくりと顔を上げる。
『私は、ゲヘナ学園・風紀委員会兼ゲヘナ学園軍の地戸アンナだ。お前を撃破する……パイロットの名だぁ!』
ヒナの言うあの子──地戸アンナはそう言うと、ストライクEをイージスに突貫させる。
振りかぶられた対艦刀をイージスはシールドで受け止める。
だが、ふと違和感を感じた。
『(なんだこれは?まるで、ストライクと対峙してるかのような……)』
本来、イージスらオーパーツMSと、現代で開発されたMSの間には隔絶した差がある。
ワンオフ機ですらイージスらにはスペック的には及ばない。
だが……目の前のストライクEの攻撃の重さはストライクと遜色ない。
『貴様……その機体は……なんだ?』
『こいつか?』
ストライクEが後ろに後退する。
そしてアンナは声高らかに語った。
『こいつはなぁ!ミレニアムと我がゲヘナの技術力の結晶だ!性能で言えばてめえらオーパーツと遜色ない!お前らをぶっ倒すためだけに、2校の技術者が徹夜で開発したんだ!その結晶、受け取れぇ!』
ストライクEが肩部105㎜単装砲をイージスに発射する。
実弾であるため、受けても問題はないが、エネルギーの消耗を抑えるためにイージスは回避を選択した。
『面白い。どこまで我々に近付けているのか見せてもらおう』
『はっ、存分に見せてやらぁ!』
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『あ~……どうするか』
バスターは途方に暮れていた。
ガンランチャーが破壊され、武装は収束火線ライフルのみ。
ミサイル?弾幕を張ったときに撃ちきったよ。
『イージスにどやされる……ん?』
そんなバスターの目に、交戦中のストライクEとイージスの姿が映った。
『!? イージス!援護する!』
『バスター?!』
即座にライフルをストライクEに向けるバスター。
だが……
ドカーン!
『はぁ!?』
ライフルの銃口が爆ぜた。
派手に……
「アンナ!大丈夫?」
『ヒナか!』
下手人はヒナだ。
収束火線ライフルの銃口を撃って破壊したのである。
『空崎ヒナ!?ブリッツはどうした!』
「トリケロスを破壊して撤退させたわ。バスターも……あの様子じゃ戦闘能力はなし」
『つまりは……後はお前だけだイージス!』
「デュエルもいるわよ」
イージスの動きが止まる。
苦戦していたストライクEに加え、ヒナまで相手にする余裕はなかった。
デュエルを呼ぼうにも、そしてらストライクが追加される。
つまり……呼べなかった。
『……バスター、推進剤は?』
『まだ余ってるが?』
『撤退する、信号弾を上げる』
『本気か!?』
『元々放棄する予定のエリアだ。問題はない』
イージスはそう言うと信号弾を上空に打ち上げた。
『スモーク!』
『デュエル撤退だ。地戸アンナだったか?この借りは必ず返させてもらう』
煙幕に身を隠しながら、イージスとバスターは撤退した。
『おい待て!』
「追わなくていい」
『はあ!?なんでだよ!』
「こちらの損害も大きいからよ。一先ずは、態勢を立て直さないと」
『はぁ……了解』
「アンナは右翼に、私は中央に行くわ。多分、敵は撤退を始めてるでしょうけど」
そう言ってヒナは、走り出していった。
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「フレッチャーがやられました!」
「海中に何かいるぞ!Uボートはどうした!」
「海中部隊と連絡が付きません!」
「全滅したのか!?
パクス軍の旗艦・アイオワ級戦艦「ネプトゥーヌス」の艦橋は、喧騒に包まれていた。
何せ、海中からの攻撃で多数の船が沈められているのだ。
海中には、パクス肝いりの部隊が潜航していた。
網をかいくぐったのか、壊滅したのか。
通信が繋がらないあたり後者だろうと、その場の誰もが思い至っていた。
「し、司令……」
「……こちらからも水中部隊を放て、ワスプ級とニミッツ級は決して沈めるな。パイロット達の帰るところがなくなる」
「は、はっ!」
一方の海上では、3機のモビルスーツが鬼神の如く暴れていた。
「滅殺!」
内1機──レイダーガンダムは鉄球でディンを粉砕する。
「ああもう!ウザいんだよ!ハエみたいに!」
鎌を持ったディープフォビドゥンに似た機体──フォビドゥンガンダムは肉薄してきたグフ・フライトタイプを鎌で切り裂いた。
2機とも海上でパクス軍のモビルスーツ、軍艦関わらず暴れまわっている。
最後の1機──カラミティガンダムはパクス軍のボルチモア級重巡洋艦の甲板に降り立っていた。
そして胸部の複列位相エネルギー砲「スキュラ」でブリッジを破壊する。
遅れて砲撃してきたセントルイス級軽巡洋艦2隻も、2連装高エネルギー長射程ビーム砲「シュラーク」で船体に風穴を開ける。
「全くあいつら……暴れすぎだっての。旗艦や空母にあてねえといいんだが……」
カラミティのパイロット──厄神サブナはそう呟いた。
言葉の端々から苦労が滲み出ている。
序と言わんばかりに近づいてきたゲイツをバズーカで撃ち落とした。
だがそれでも、パクス軍のモビルスーツはわらわらと出てきた。
「……多すぎだっての!こっちのパワーがなくなるだろうが!」
サブナの、渾身の叫びだった。
ちょこっと解説
地戸アンナ
風紀委員会と正規軍を兼任している少女。2年生。
熱血系な性格。イオリとは同期なことと波長が合うので仲がいい。
厄神サブナ
正規軍所属の2年生。カラミティガンダムのパイロット。
戦闘狂な一面のある部下2名に振り回される苦労人。
トリガーハッピーになれれば楽かなと最近思い始めている。
東イザ
旧雷帝派の少女。当時2年生。
亡命した為、籍はゲヘナのままなので、卒業出来ていない。
なので現在も書類上は2年。
デュエルガンダム
ゲヘナで発掘されたオーパーツモビルスーツ。
クーデターの際に雷帝派に持ち出され、パクスへ渡った。
4機の中で唯一パイロットがいるが、これは扱いやすく代替になるモビルスーツが雷帝派になかったのが理由。
バスターガンダム
同上。
パイロットがいないのは、ランチャーストライカーという代わりになる存在がいてしまったから。
近接武器なしと射撃に振り切ってしまっているのも拍車をかけている。
ブリッツガンダム
同上。
パイロットがいないのは扱いにくいから。
武装もさることながら、本来ステルス機なのに、何故か前線に出されるのである。
イージスガンダム
同上。
可変機構が特に扱いにくい。
4機の中では指揮官的役割。
ストライクE
ゲヘナがミレニアムと共同で開発したガンダムタイプMS。
コンセプトは、オーパーツと同等のモビルスーツの独自開発であり、見事にその要望を満たした。
今回装備しているストライカーはI.W.S.P.
カラミティガンダム
ゲヘナが開発したガンダムタイプモビルスーツ。
バスター同様近接武器を持たない砲撃一辺倒の機体。
火力は相応に高く、ゲヘナ製ガンダムの中では現状トップ。
フォビドゥンガンダム
カラミティと同期のモビルスーツ。
ディープフォビドゥンの派生元で、同じ装備をしている。
なので、ビームと実弾の両方が効かないチート仕様。
一応、近接は効く。
ただし、曲がるビームをかいくぐって接近戦がどちらかというと得意な本機を相手にする必要がある。
レイダーガンダム
上記2機と同期。
可変モビルスーツであり、自力で飛べないカラミティの運搬役。
機動力と破砕力、火力もある。
ゲイツ
プラネット分校が開発したモビルスーツ。
ジンの後継だったが、主力だった期間は短く、ザクウォーリアにその座を奪われてしまった。