機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー) 作:KUS
アマネの夢を聞いてから早4年……
また飛んだのかって?気にしない気にしない。
今日はアオが一人で来ている。
アマネは後から来るらしい。
何でも用事があるとか。
「……」
『アオ、どうかしたのか? そんな真剣な表情で』
「……私は連邦生徒会長になりたい。なので勉強中なんです」
なるほど、真面目だな。
読んでいるのも政治学の本だ。
にしても……俺のよく知るアロナとは本当に似ても似つかない性格だ。
まさかここに来てそっくりなだけの別人説もあるのか?
いや……こっから先でアマネに似てくるのか。
「一つ、疑問があるんですが」
『ん? どした?』
「いえ……………………
なんで寝転がってるんですか? しかもご丁寧に肘枕までして」
アオは今の俺の態勢にツッコミを入れてきた。
まあ……ロボットがこんな態勢取ってたら……なぁ?
『いやな、俺ってガンダムのサポートAIな訳じゃん?』
「はい、そうですね」
『つまりね、ガンダムは俺の身体も同然なのよ』
「それで?」
『俺って身体を自由に動かせるのよ。人体みたいに』
「それにしてもヌルヌル動きすぎです。気持ち悪いですよ」
『そう言われてもなぁ……』
俺はマニュピレーターをグーパーさせながら呟いた。
だが、アオが放った一言が俺の心を抉った。
「にしてもおっさん臭いですね」
『ガフッ』
「何ですかその擬音? その反応は図星と言ってるようなものですよ?」
『ゴハッ』
容赦なく……追い打ちをかけるアオ。
幸いにも……まだライフは残っている。
まあガンダムが床に突っ伏しているという謎の絵面になってるが。
「到着~!……あれ?ガンダムさん?」
「やっときたねアマネちゃん」
『よ、よう……来たか』
俺は声を振り絞りながらアマネに挨拶をする。
そんなアマネは、首をコテンと傾けながら一言。
「ガンダムさん? もう年?」
『グボッ!!!』
「アキさん!?」
アマネの純粋無垢な瞳から放たれた容赦のない一言は……
俺の残ライフを削るのには充分だった。
「あ、あれ???」
「アキさん!!まだ死んじゃダメですよ!」
「が、が、ガンダムさん~~~!!??」
アマネの絶叫を耳にしながら……俺はスリープモードに入った。
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「なんか……ごめんね?」
「すいません。私も言いすぎました」
『いや……いい』
「大丈夫?」
『大丈夫だ……問題ない』
「それは問題大有りのセリフでは?」
代表的な死亡フラグセリフを言いながらも、俺は何とか立ち直った。
「大丈夫?」
『大丈夫だ……致命傷で済んでる』
「それ大丈夫じゃない!」
さて、おふざけはこれくらいにして……
『アマネ、どうして遅れたんだ?』
「ぬるっと話題を変えましたね」
「えへへへ……そのことで重大発表があるの!」
『「重大発表?」』
「それはね……」
アマネがそのまま言葉を溜めに溜める。
「もったいぶらずに言ってよ」
「むー……アオちゃんのせっかち」
「ほら、早く」
「わかったよ~。えー、この度私、高原アマネは」
かなり仰々しく喋り始めたよ。
そんなにエラいことなのか?
「は?」
「えへへ……トリニティ総合学園パクス分校に、飛び級入学が決まりました!」
「『………………はぁ?』」
「『はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!』」
俺とアオは、一緒になって大声で叫んでしまった。
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『待て待て……どうしてアマネが分校に入学するんだ?!しかも飛び級!?』
「そうだよ、旗頭にされる可能性もあるのに」
アオの言う通り、パクス創設者の子孫であるアマネは独立の旗頭に丁度良い。
現状、一般生徒はほぼ諦めムードが長年続いているが……
アマネの入学で活気づく可能性もある。
一見トリニティにメリットがないように思えるが……
「理由は単純だと思うよ。"宣伝"」
「あっ」
『なんだ?宣伝?』
「そうそう」
アマネが相槌を打ちながら頷く。
「私が入学して、それからトリニティ本校に編入すれば、アピールになるんじゃないかな?「創設者の子孫がトリニティに恭順した」この事実で独立派の大義名分とか、その他諸々奪えると思うから」
「だから飛び級なんだね」
『飛び級だと……何かあるのか?』
「キヴォトスでは、飛び級で高校に入学した生徒は特例で本来の卒業年まで学園に残る選択が出来ます。当然、留年扱いにはなりません」
「分校に飛び級だとちょっと変わって、本来入学する年齢になったら本校に自動で編入されるの。その間に私を懐柔ってのが向こうの魂胆かな」
『わかってるなら何で受けたんだよ……』
いや本当……アマネにメリットがないように見える。
「はぁ……アマネ、大人しくする気はないんでしょ?」
「うん、何の為に11になっても無邪気演技してたと思うの?」
『え?演技だったのか?あれ?』
アマネの情緒はかなり幼い。
それこそ、初めて出会った時から変わらないと感じる程。
だが、今までのそれが全部演技?
「アキさん……アキさんの前だと割と素ですよアマネちゃんは」
「もう……言わないでよ」
『待て待て、頭が混乱してきた』
な、なんだ?
俺がよく知るアマネ=素
無邪気なアマネ=演技
今の真面目な雰囲気のアマネ=素
えっと……
「別にガンダムさんの前でずっと無邪気だった訳じゃないもん」
「正確にはアキさんと会っている時が素で、後はモード変換してるようなもんです」
『あああ……なるほどそういう』
つまり、
俺と会ってる時のアマネは無邪気だけどそれだけじゃなかったと……
いや純粋無垢な子にしか見えない……
もしかして、純粋は素、無垢が演技か?
「それで……入学した後のプランはあるの?」
『まあ、そこは大事だな』
「あるよちゃんと」
そう言ってアマネは紙を取り出した。
そこには具体的な計画が書かれていたが……
順序を矢印で結んだだけだった。
「もうちょっとマシなの書けないの?」
「別にいいじゃん」
『まあ、分かりやすくったら分かりやすい』
計画の大まかな流れはこうだ。
まず分校の生徒会を掌握。独立派で埋める。
↓
その後に独立運動を扇動する。当然、過激にならないようコントロールする。
↓
ティーパーティーで唯一の侵攻反対派だったパテルと接触し、独立の確約を貰う。
↓
中立のサンクトゥスに接触して同じように確約を貰う。今度はパテルの援護付き。
↓
最後に、侵攻派のフィリウスと交渉する。
その為にティーパーティー内でフィリウスを孤立させる必要があった。
追記
もし攻められた時用にゲヘナと密約を結び済み。
ロボオタ友達でエンジニア志望の子にザクの設計図面を渡し済み。
って……
『ザク!?渡したの!?』
「あくまで保険。もう二機くらい作ったって」
『はっや!?』
「アマネちゃんの懐柔とアピールが目的なら、生徒会にもすんなり入れるだろうし……」
「ふふーん、完璧でしょ?」
「まぁ……保険まで用意してるし……」
アオは呆れながらもそう言った。
本当にアマネは行動力のすごい子だ。
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アマネの衝撃的な暴露に驚いてから数日。
アマネは一足早く高校に入学した。
アオも負けじと勉強に力を入れるようになった。
アオに連邦生徒会長になりたい理由を聞いたら、
「故郷を独立させたい……というのもありますが、何よりもこのキヴォトスを守りたい」
『守りたい?』
「アキさんの話を聞いてから、そう思うようになったんです。まだ脅威はいなくなってない」
『だから連邦生徒会長に?』
「はい、サンクトゥムタワー。オーパーツであるあれの管理権限のある連邦生徒会長なら。そう思ったんです」
アオも……立派だな。
俺がこの年の時は家でゴロゴロゲームをしてた記憶がある。
数週間後、パクス内での独立デモが活発化したというクロノスのニュースが入ってきた。
動いたみたいだ。
生徒会のデータベースにアクセスしてみたら、アマネ入学時からゴッソリ入れ替わってた。
一応、旧メンバーも数人いたが……いるって事は隠れ独立派だったんだろう。
だが……トリニティ側からのアクションがない。
まさか情報を漏らさずにプチクーデターを成し遂げるとは……
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トリニティ総合学園パテル分派首長室
「ようこそお越しくださいました。高原アマネ"会長”」
「本日はよろしくお願いします。桐谷首長」
アマネは今、トリニティ総合学園本校にいた。
計画の通り、パテルとの交渉の為だ。
「そちらも大変でしょう?独立運動が活発化しているようで」
「ええ、"とても大変"です」
「まったく、まだ11の子を生徒会長に任命するとは、他の気が知れませんね」
「あはは……」
二人のちょっとした会話。
だが、それを聞いているパテルの行政官とパクスの行政官は冷や汗を垂らしていた。
「さて、アイスブレイクはここまでにしましょう。本日はどのようなご用件で?」
「我々の独立……認めて頂けませんでしょうか」
アマネは隠さずにそのまま要求を伝えた。
「ふむ……独立ですか」
「ダメですか?」
パテルの現首長──桐谷ユウは頭の中で計算を始めていた。
パクスの独立……認めれば利益が出るのは分かった。
かつての侵攻で得るはずだった長期的な利益は全て灰燼と化し、
結果としてトリニティは無駄に被害を出しただけ。
一応、僅かながらの利益は出たが、
それでも、残党や旧パクスの分校のゲリラによる被害の方が遥かに大きい。
おまけにゲヘナだけでなくアビドスからも睨まれる始末。
数十年前のアビドス衰退もこの件が遠因と言われる程、負の影響が大きかった。
じゃあここで独立を認めたらどうなるか。
パクス側のトリニティに対する感情は最悪だろう。
独立しても侵攻前の状態に戻ったら良い方で、そのまま輸出規制までしてくる可能性もある。
だが、これは武力で独立を果たした場合の話。
相手はわざわざ交渉に来ている。
つまりは穏便に済ませたいということ。
「具体的に。あなた方の独立で我らトリニティにどのような利益をもたらしてくれるのでしょうか?」
大前提だ。
確かにパテルは嘗て侵攻に反対したが、現状よりも利益が減るなら独立を認める義理もない。
「それなんですが……」
「?」
「もし独立が出来た暁には、ゲヘナへの経済援助から引いてトリニティへ割り当てる準備がありますよ?勿論、嘗てと同じような経済態勢が"整ったら"という但し書きが付きますが」
「くく……充分だ」
ゲヘナへの援助を差し引いてトリニティに充てる。
嘗てパテルが望んだ状況そのままだ。
おまけに、未だパクスが中継していた時期に戻ることを望む学園はいる。
100年近く経っているにも拘らずだ。
それだけパクスの復活が望まれている。
他校の援助を考えると経済の回復も早いだろう。
なにより、目の前の少女は11歳。
6年は協定が破られることはない。
「くく……どこまで見えているんだ?」
「さて、どこでしょう?」
「良いだろう。私の名で誓書を出す。他の派閥との交渉の時に存分に使うといい」
パテル分派・パクス独立を確約
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会談開始前、フィリウス分派首長室
「カナ様!パテルがパクスの生徒会長と接触しました!」
「そうですか」
フィリウス分派首長──天草カナは、部下からの報告を静かに聞いていた。
「早いですね。それとあまり大声を上げないで下さい。下品ですよ?」
「も、申し訳ございません」
「それで……交渉の目的は?」
「恐らくは、独立に関することかと、最近パクス側で独立運動が盛んですし」
「そうですか。面倒ですね」
そんな事を言いながらもカナは頭を回転させていた。
パクスが独立するとどうなるか……
彼女の頭の中にはユウと同じ考えが出てきていた。
だが、彼女は侵攻を主導したフィリウス派。
パテルの知らないことも当然知っている。
「どうしますか?パクスが独立すれば……献金は入ってこなくなります」
「そうですね……最近は献金がないことを考えると……生徒会は独立派の手中」
「最悪……このことが暴露される可能性も……」
献金……表向きはパクスが出した利益の7割をトリニティに献上すること。
だが、実際は7割の内4割がフィリウスに入っている。
当然、表向きはトリニティ自体に入っている金だ。
「暴露されたら……フィリウスは終わりです」
「ええ、私の首は飛びますし、あなた含めた幹部も同じように……最悪は退学かもしれませんね」
「ど、どうしましょう」
「……」
頭の中で策を練る。
そこで、一つの策に行き着いた。
「分校にいた本校の生徒はどうなっていますか?」
「えっと……まだ分校いるはずです」
「そうですか」
「な、何をなさるおつもりですか?」
「簡単です」
カナは冷徹な笑顔を浮かべながら言った。
「フィリウス麾下軍と親衛隊、後は正義実現委員会も動かしましょうか」
「ま、待って下さい、それでは」
「大丈夫ですよ。あくまで、"本校の生徒を引き取りに行くだけですから"。
まあもしかすると、"テロリスト"と戦闘になるかもしれませんが」
「わかりました、通達してきます」
「よろしくお願いしますね」
カナは微笑を浮かべながら、部屋を出ていく部下を見送った。
ちょっとした解説
飛び級について
今作オリジナルの設定。
飛び級した生徒が原作でどうなるかは分からないが、今作では卒業要件を満たしても卒業するか選べるという設定。
桐谷ユウ
パテルの首長。実は家柄じゃなくて実力でのし上がった叩き上げ。
ゲヘナへの感情は仮想敵止まり。
天草カナ
フィリウスの首長。
ぶっちゃけ献金については内心、決めた人間をバカにしている。
理由?地位を保つのに邪魔だから。