機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー) 作:KUS
パクス連邦学園本校・生徒会室
「そう……陥落したんだ」
「はい……奪還しますか?」
「必要ないよ。例の作戦も近いから、割く戦力もいないし」
「分かりました」
会話をしているのは2人の少女。
アマネと、パクスの副生徒会長である周防アレナの2人だ。
内容はゲヘナ側の戦線。
前哨基地だった要塞が落とされた現状、パクスは喉元に刃を突き付けられた状態……なのだが……
「一先ず、ゲヘナ方面軍の再編をアイラちゃんに伝えておいて」
「どのように伝えましょうか?」
「守るのに充分な戦力だけ残しておいて、後は作戦軍に組み込むから」
「分かりました。伝えておきます」
そう言って、アレナは部屋を出た。
「ふぅー」
「お疲れ」
「疲れてないよ。デスクワークだし」
「デスクワークでも疲労は溜まるからな?」
「冗談だよ」
そう言ってニッコリ笑うアマネ。
対するソルも苦笑いをしていた。
そうしていると、扉からノックの音が聞こえた。
「大丈夫だよ」
「失礼します。アマネ様、お客様です」
「来たみたい……応接室に通して。すぐ行くから」
「分かりました」
生徒会役員はそう言って部屋を出る。
アマネも、客人を迎えるために立ち上がった。
「行こっか。ソルちゃん」
「はぁ……終わったら強制的に寝かせるからな」
「だから大丈夫だって」
「お前が大丈夫でも俺達が大丈夫じゃないんだ」
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「お待たせして申し訳ありません」
「キキキ……問題ない」
「有意義な会談にしましょう羽沼議長」
「そうだな、高原アマネ会長」
応接室にいたのは、ゲヘナ学園生徒会「万魔殿」議長の羽沼マコトだった。
「最後に会ったのは確か……」
「2年前の会談だ。雷帝に連れてこられて、だがな」
「ふふ……今でも覚えてます。次のゲヘナのトップはあなただと、目を見た瞬間確信しましたから」
「ほぉ……」
和やかな雑談。
だが、護衛の生徒達は若干ピリピリしていた。
「にしても……まさかあなたから会談を打診されるとは思ってもいませんでした。
エデン条約はいいのですか?」
「キキ、あんなもの、結ばれようが結ばれなかろうが、関係ないからな。
それに、どうせ破綻する」
「どうしてそう?」
「最近、貴様らが戦力を結集させているのは掴んでいる。この時期に仕掛けるとしたら……」
「ふふ……どうでしょう?」
「それに、あそこを襲撃する連中と、私は繋がっている」
その言葉にアマネは頭に?を浮かべた。
マコトは不敵に笑いながらその名を口にした。
「アリウス分校。かつてトリニティに排斥された分派だ」
「ああ……そういうことですか」
「連中はトリニティへの憎悪で一杯だぞ?丁度いい尖兵だ」
「パクスと、ゲヘナの、ですかね」
「そういうことだ」
マコトが会談を申し込んだ理由。
エデン条約を襲撃し、連邦生徒会とトリニティを一網打尽にする。
そうすればもう敵なしだ。
自分とアマネによるキヴォトス征服は達成できる。
前々からヨハネ経由でひっそりとパイプを繋げていたが……
それがここで役に立った。
「二コラ方面は我がゲヘナが手中だ。そこの守りは気にしなくていい」
「となると……我々はエデン条約のみに集中できる」
「後は、合同で調印式を叩き潰すだけだ」
マコトの筋書きはこうだった。
もし、パクス軍が連合軍を潰しきる勢いならゲヘナ本軍を大々的に動かして連合軍に向ける。
パクス軍が押されるなら、ゲヘナ軍はパクスに向ける(とは言っても調印式の警備に出る部隊だけだが)
旧雷帝派に偽装した義勇軍を攻撃に参加させれば、契約違反にもならない。
どっちに転んでもゲヘナに損はない。
そういう状況を作り出すつもりだった。
「この同盟は表沙汰にはしない」
「そうすることで、どちらにも回れるからですか?」
「キキ……もしパクスが敗北するようなことがあっても、ゲヘナはいつでも歓迎するぞ?」
「ふふ……考えておきます」
亡命者を受け入れる。
マコトは暗にそう言っていた。
そして、あくまでゲヘナはパクス側に回るとも。
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「(後処理が……終わらない……)」
俺は今、書類と格闘を繰り広げていた。
ゲヘナ戦線での反攻作戦からもう2週間。
あの後、要塞の管理はゲヘナが買って出てくれた。
まぁ、こちらとしては調印式の警備や警戒態勢にリソースを振りたいから、願ったり叶ったりだったんだが……
それから、ユカ達が対峙したパクス軍が漏らした内通者の疑惑。
念には念を入れて調べてみた。
そしたら案の定、夜逃げを謀ったやつがいた。
そいつはユキノ達が捕まえてくれたからいいんだが……
問題は……そいつが文化室長だったこと。
幹部が内通者……他校にバレたら大事だ。
一先ず、矯正局に入れて拘束してある。
ただ内通者が1人という保証がない。
おまけに幹部の1人が内通者だった以上、室長間でも疑心暗鬼が広がっている。
もう直ぐエデン条約の調印式だってのに……
「副会長、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないー」
「そろそろエデン条約の調印式ですし、出席予定の副会長の負担を分担しては?」
「だってよリン」
「そうですね。分担量を考えておきますので……
ああ、勿論カヤ室長も手伝ってくれますよね?発案者ですし」
「私も調印式に出席するんですが?!」
そんな2人をよそに、俺はエデン条約に関する資料に目を通した。
エデン条約は、ゲヘナ学園とトリニティ総合学園の不可侵条約。
両校の生徒で構成されたエデン条約機構──通称ETOを設立して両校間の紛争を同機構に解決させることで、全面戦争を回避する。
これが原作での大まかな構想。
この世界でも、概要は変わらない。
ただ、この世界での条約の最大の目的は
反パクス陣営である連合軍の軍事的・経済的な結束を高める。
ゲヘナ・トリニティ間でのETO結成はそのモデルケースで、長年いがみ合ってきた両校でも平和的に手を取り合える。
そう、キヴォトスにアピールする。
これが最大の目的だ。
だから、調印式には原作では関わってこなかった学園も参加する。
三大校のミレニアムサイエンススクールは当然、
連合軍に加盟してる百鬼夜行、山海経、レッドウィンターもだ。
つまり、原作の比じゃないレベルで大規模なものになる。
流石にこの状況でマコトもアリウスとは繋がらないだろうし。
問題はアリウスなんだが……俺が原作知識を元に場所を探し当ててもどうするか問題がある。
トリニティからすればなんで知ってるんだ案件だろうし。
下手なことしてトリニティとの連携に問題が生じる……なんてことは避けたい。
どうする?
シスターフッドや図書委員会に掛け合ってみるか?
「(やる事が……やる事が多い……)」
「副会長?」
「悪い……少し風に当たってくる」
一先ず息抜きをするため、俺は外に向かった。
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「んー……スローネツヴァイ以外修復不可かぁ」
「全く、勝手に乗り回した挙句、この様って……」
「本当……これ作るのにどれだけかかったんだと思って……」
「時間も、予算もですね……」
「取り敢えず……スローネツヴァイは修復しちゃおう」
パクス自治区の技術部棟。
そこでニアはスローネの惨状に頭を抱えていた。
オーパーツ級のモビルスーツ……
1機作るだけでもかなりの予算と時間をかけたのだ。
ノウハウは手に入ったから、時間は短縮できる。
だが予算はどうにもならない。
なのに……動作テスト担当のパイロットが勝手に実戦に使った挙句、ぶっ壊した。
ソルとアイラが親衛隊からも軍からも除籍してなかったら今頃スパナを飛ばしていただろう。
「でも、ツヴァイのパイロットはどうします?」
「それについてソルに打診したんだけどさ、1人よさそうなのがいるって」
「親衛隊員ですよね?ソルさんが言うってことは」
「武装親衛隊にいる傭兵上がりだって」
「あのふるい落としを生き残った人ですかぁ……」
「まっ、新しい主人がいるこいつはさっさと修復を頼む。あたしは他の新型を見てくるから」
「分かりました」
そう言ってニアは、その場を離れた。
技術部棟地下・最上級機密エリア
「おーす」
「あっ、ニア部長」
「進捗は?」
「順調です。エデン条約の日には全機間に合います」
「よーし……じゃあ作業を……」
「部長、先程アマネ様から連絡がありました」
「視察か?」
「はい」
「私が応対しとくから、お前らは作業に集中な」
「「はい!」」
ニアはそう言ってエレベーターに向かっていった。
残った作業員達はそれぞれ仕事に戻っていく。
「にしても……壮観だな」
「ああ、こいつらが……戦争を終わらせる鍵だ」
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「よっすアマネ」
「久しぶりニアちゃん」
「ニア……一応公務中だぞ。アマネ様も」
「別にいいじゃん」
「そうだぞアイラ。お前は固すぎなんだ」
「だからって空気を緩めすぎて良いわけじゃないだろ!」
アイラが叫ぶ。
だが2人はどこ吹く風だ。
視察に来ているのはアマネとアイラ、ソル、護衛の親衛連隊数名。
それなりの大所帯だ。
全員がエレベーターに乗り、地下深くの機密エリアに降りて行った。
「大分完成してきたね」
「ああ、納期には間に合いそうだ」
「そっか」
アマネは建造中の兵器達を見ながらそう呟いた。
「……目玉はあれだろ?」
ニアは1機のモビルスーツを指してそう言った。
通常のサイズを上回る巨躯を持つ黒い機体。
建造中だが、その状態でも充分な威圧感だ。
「なぁ……本当にいいのか?あれのコンセプトは……」
「……いいの」
「お前……本当に望んでるのか?」
「望んでるよ。だって……」
アマネは、ニコリと笑った。
だが、その目からは光が消えていた。
「こうすれば、少しは痛みを知れるんじゃないかな?トリニティの子達も」
「アマネ……」
「じゃあ、お願いね。ニアちゃん」
アマネはそう言うと、踵を返していった。
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「……」
俺は今、近場の喫茶店でカフェ・オレを飲んでいた。
この店はお気に入りだ。
美食研究会のお墨付きでもある。
"あれ、アキ?"
「ん?先生、奇遇ですね」
"うん、久しぶり。何やってたの?"
「少し、仕事の合間の休憩を。先生は?」
"私も、似たようなものかな"
先生はそう言うと俺の前に座った。
コーヒーを注文して、先生は俺へ言葉を発した。
"二コラでのこと。お疲れ様"
「はい」
"……ねぇ、教えて欲しいことがあるんだ"
「? 何でしょうか?」
"アキは、パクスの出身って聞いたからさ……アマネって子について教えて欲しいな"
「……」
先生が出した話題は、アマネのことだった。
というか……俺が書類上パクス出身ってのをいつ知ったんだ……
ああ、アロナか。
「……アマネですか」
"うん……あっ、話しにくいなら……"
「大丈夫です。
……あいつは、なんていうか……理想主義者?ですかね」
"理想主義?"
「幼い頃からパクスの独立を目指して……それを実現する力も現実を見る目もあった。
そして……6年前に独立をもぎ取った」
"……"
「プライベートだと……ロボットが好きなだけな、どこにでもいる女の子って感じですかね」
"私とは気が合いそうだね"
「合うと思いますよ……」
"アキ……"
「本当に、優しいやつなんです。他人を思いやれて……」
俺の手が、自然と握り拳を作っていた。
力も段々入ってきてる。
「ぶっちゃけ……俺はトリニティが嫌いです」
"アキ……"
「何がテロの被害者だ……勝手に攻めて、それでしっぺ返しを喰らって……
本当に被害者なのは、ずっと搾取され続けてきたパクスの生徒だ。
恨みだって、憎悪だってあった筈。
アマネにはそんなのはなかったけど、他の生徒には大なり小なりあっただろうに……
それを飲み込んで、アマネの平和路線に従ってくれた……
なのにそれをぶち壊した。
の癖に……今更平和条約なんて……」
"……"
「俺は……トリニティが嫌いです。
そして……大事な時に傍にいてやれなかった……俺自身も……」
"……アキ"
「すいません先生……先生に言うことじゃなかったですよね」
"待ってアキ!"
俺は先生の制止を無視して、会計をしてから店を足早に出た。
……アマネを止める。
それが俺の……俺とアオの目的だ。
だけど……トリニティと肩を並べることを拒否する自分もいる……
俺は、どうしたらいいんだ。
ワカナ……
その後、先生はトリニティへ向かっていった。
エデン条約編の始まりだ。
それから、更にしばらく経ち、エデン条約の調印式の日を迎えた。
ミカのクーデターやアリウスの問題。
それらがどうなったかは把握出来ていない。
図書委員会ではアリウスが隠れた場所は掴めなかった。
シスターフッドは情報を提供してくれなかった。
それに……嫌な予感が何度も俺を襲っていた。
ちょこっと解説
百鬼夜行、山海経、レッドウィンター
3校とも連合軍に所属中。モビルスーツも持っている。
百鬼夜行は百花繚乱を中心とした軍が編成されている。実体としては民兵組織だが……
山海経は自治区を守るために珍しく玄龍門と玄武商会が連携している。原作より自治区内のギスギスは薄い(伝統?自治区で見つかったモビルスーツとそれを基に作ったMSなので問題なしという思考)。
レッドウィンターは毎日のように革命が起きているのは変わらないが、それはそれとして侵略者には一致団結で対抗している。
エデン条約
原作以上に調印式に参加している学園が多い。
原作同様アリウスだけだったらハードモードを超えて難易度ルナティックだった。