機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー)   作:KUS

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エデン条約編
始まり


『今この動画をご覧の皆さん、こんにちは! “クロノス・スクール報道部”のアイドルレポーター、川流シノンです!本日は遂に締結される、ゲヘナ学園とトリニティ総合学園の“エデン条約”の調印式、その現場に来ております!』

 

エデン条約調印式の会場である通功の古聖堂。

そこで現在、クロノススクールによる生中継が行なわれていた。

中継には校旗を掲げるゲヘナ・トリニティ両校の生徒が映されている。

 

『現在、会場には連邦生徒会、ゲヘナ学園、トリニティ総合学園のみならず、

ミレニアムサイエンススクール、百鬼夜行連合学院、山海経高級中学校、レッドウィンター連邦学園の生徒達の姿も見えます。

他にも中小校の生徒会もチラホラ。

連合軍所属学園は一通り参加しているようですね!』

 

画面に、大勢の生徒達が映し出される。

制服は多種多様だ。

 

『モビルスーツも、連合軍らしく多種多様。旧式から新型まで並んでいます。

パクスに対する牽制でしょうか?来るなら来いなのか、これだけいれば仕掛けてこれまいってことなのか……あっ、見てください!主要校の主力MSが隊列を組んで大空を舞っています!地上の様子も相まってとても壮観ですね!』

 

飛んでいるモビルスーツは7機

連邦生徒会の新型MS──ジェガン

トリニティ総合学園の主力MS──リーオー

ゲヘナ学園の主力MS──ダガーL

百鬼夜行連合学院の主力MS──ムラサメ

山海経高級中学校の主力MS──ティエレン

レッドウィンター連邦学園の主力MS──ドートレス

ミレニアムサイエンススクールの支援用MS──GNキャノン

 

三者三様。

その言葉が良く合う光景だ。

 

その後も、クロノスの中継は続いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……(どこもかしこも賑わっているな。お祭り気分とは)」

 

トリニティ自治区の市街地を、ソルは歩いていた。

勿論変装はしている。

 

自治区は他校からの来訪者で賑わっており、まるで大規模な祭典だ。

各自治区から出店も出ている。

山海経の玄武商会や、百鬼夜行の百夜堂の出店も見える。

自分達は平和的アピールも兼ねているのだろうかと、ソルは邪推していた。

 

「……」

「ソル~ここにいましたか~」

「ああリナか……」

 

ソルは部下である香月リナの声を聞いて後ろを振り向いた。

そこには、手一杯に焼き鳥を持ったリナの姿があった。

 

「……」

「どうしたんですか?そんな呆れ顔で」

「……満喫しすぎだ」

「いいじゃないですか別にぃ」

「限度を弁えろ限度を。後ここでは先輩と呼べ、変装の意味がなくなる」

「あっ……すいません」

 

リナはペロッと舌を出した。

反省してるように見えなかった。

 

「はぁ……」

「幸せが逃げちゃいますよ~」

「誰のせいだと……」

「楽しんじゃダメですか?先輩も楽しみましょうよ~折角のお祭り~」

「……」

「……ここも、火の海になっちゃうんですかねぇ」

「俺達はともかく、他の連中のことを考えたら……な」

「ん~……憎悪ってわからないですね~何で仲良くしようとしないんだろ?」

「それは俺達にも刺さるぞ?」

「あっはは……そうだ!皆にも何か買って帰りましょう!可愛い鳥さんの人形が売られてたんですよ!」

「確か……ペロロだったか?俺にはお前の感性が分からん」

 

ソルの頭の中に浮かんだのは舌べらを出し、目は完全にアレ。

ぶっちゃけ可愛いと言う奴の神経を疑う。

それがソルの本音である。

リナの前では口が裂けても言わないが。

 

「ペロロ様に興味があるんですか!?」

「うぉ?!」

「あっ、ヒフミちゃん」

「あっ、お久しぶりですリナさん!」

「知り合いか?」

「はい!」

 

ソルの後ろから声をかけたのはヒフミだった。

ペロロに反応したのだろう。

後ろには補習授業部のメンバーもいる。

 

「ヒフミ、知り合いか?」

「ペロロ様愛好会の名誉副会長さんです!」

「どうも、リナで~す」

「(いつの間にそんなサークルに入っていたんだ?)」

 

しれっと暴露されるリナの他の顔に、ソルは頭を抱えた。

自由過ぎないか?と。

 

「あっ、紹介するねヒフミちゃん。この人、私の先輩」

「ソr……ゴホン、ソラだ。よろしく」

「言い直せてませんよ?」

「痰が絡まっただけだから心配はいらない」

「こちらがアズサちゃんにハナコちゃん。それからコハルちゃんです」

「よろしく……」

 

ソルは軽く手を挙げて挨拶した。

ハナコから感じる、警戒の視線を感じながら。

 

「ヒフミちゃんもペロロ様目当て?」

「はい!それから皆で試験の合格祝いもする予定なんです!」

「おお!それはめでたい。じゃあさ、私が奢ってあげよっか?」

「!?」

「えっ?い、いえ、悪いですよ?!」

「大丈夫大丈夫~」

「なぁ……俺達にも用事が……」

「先輩、偶には息抜きも必要でしょ?ほら、ドナドナの時間だ~」

「ま、待て!」

 

その後、リナに引きずられ、補習授業部と行動を共にすることになったソルだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おお~」

「あれ、トリニティの新型?」

「量産型可変MS……トリニティも等々ここまで来たんですね!」

 

調印式会場付近を、数機のモビルスーツは飛翔していた。

トリニティの新型モビルスーツ──トーラスである。

エアリーズに続く空戦用MSだ。

 

トーラスの編隊は、まるで見せつけるかの如くゲヘナのダガーLの側を飛び去った。

露骨なまでに自分達の方が上とでも言いたげだった。

だが……その横に同等のスピードのモビルスーツが現れた。

 

ゲヘナの新型モビルスーツ──ウィンダムである。

 

『あらあら?ゲヘナは優雅に飛ぶことも出来ませんの?』

『平和の式典だってのに無用な事故を起こしそうな操縦をするトリニティには言われたくないなぁ?』

 

両機のパイロットの間で険悪な雰囲気が漂う。

今にも手が出そうだが……

 

『やめろ』

『そうだよ。トリニティの品位を落とすつもり?』

 

間に入ったのは2機。

アンナのストライクEと、ヒバナのトールギスIIだ。

2人が入ったことで、一触即発の空気は薄れた。

 

『……』

『……ねえ、名前なんて言うの?私は阿慈谷ヒバナ』

『地戸アンナ。あんたがトールギスのパイロットか……今度手合わせしてくんねえか?』

『えっ?時間があれば……別に……』

『よーし!決まりだな!』

『え、あ……ちょっと……』

 

アンナのテンションに、ヒバナはついていけてなさそうだった。

 

 

 

 

「……」

「副会長、どうかしましたか?」

「ん?何でもない」

「疲労が溜まってるのでしょう……やっぱり休んだ方が良かったじゃないですか!」

「カヤ室長、少し静かにしてもらえますか?」

「ユキノ?あなた最近、私に辛辣じゃないですか?」

「あはは……」

 

調印式に向かう車内。

乗っているのは俺とカヤ、FOX小隊の4人だ。

重役出勤になっちまうが……

 

「そろそろ着きますよー」

「全く……これが終わったら副会長はベッド行きですね」

「いやまだやることが……」

「私達でやりますので!」

 

カヤの剣幕に押され、俺は大人しく頷いた。

 

 

 

会場に着いた。

いよいよ……エデン条約調印式だ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

トリニティ自治区・高度10,000m上空

そこに複数の艦影が滞空していた。

 

パクスの空中艦隊。

ゲヘナ反攻戦で投入されたプルウェア級飛行駆逐艦の姿もあった。

その数は、20隻近い。

 

その内の1隻……ユーピテル級飛行戦艦。

パクス軍の旗艦に、アイラは座乗していた。

 

「地上の様子はどうだ?」

「お祭り騒ぎですよ。まさか狙われてるとも知らずに」

「こんな上空にいる以上、早々に見つかることはないからな。そこに光学迷彩のおまけ付きだ」

「ハハハ!連合軍が可哀想に思えてきますよ!」

 

アイラがいるブリッジは、旗艦のブリッジということもあって多くのオペレーターで埋め尽くされていた。

今いるのが下層ブリッジ。

操縦士や観測手は上層ブリッジにいる。

 

「アリウスの方はどうだ?」

「少し待っててください……ミサイルの発射準備中ですね。もうそろそろかと」

「調印式開始のタイミングで発射されるな……

各艦に通達しろ。ミサイルが発射された瞬間、降下を開始、同時にモビルスーツを展開しろ。例の新型もだ!」

「出し惜しみなしですか?」

「当たり前だ!我らパクスの怒り、羽付どもに全てぶつけてやれ!」

「はっ!」

「いいか?この戦いはアマネ様に捧げる供物だ。

お高く止まっている淑女の皮を被った蛮族どもに、我々の力、存分に見せてやるぞ!

オール・ハイル・パクス!!」

「「「「「オール・ハイル・パクス!!」」」」」

 

 

 

 

 

トリニティ自治区沖の海上

 

「司令、空中艦隊から入電です。ミサイル発射までのカウントダウンをするので、ゼロになった瞬間……」

「強襲だな。モビルスーツを展開しろ。水中部隊もだ」

「例のモビルスーツはいるでしょうか……」

「フォビドゥンだったか……ゲヘナの戦力は調印式の護衛に当たる部隊のみだ。

あれがいなければ、幾らでもやりようはある」

「はい!」

「地上部隊にも入電は行っているな?第3、第4艦隊は対地支援、第1、第2艦隊は敵艦隊を相手にする。全て海の藻屑にしてやれ!オール・ハイル・パクス!」

「「「オール・ハイル・パクス!!」」」

 

 

 

 

 

トリニティ自治区・パクス自治区境界線

 

「遂に、この時が来た」

「「「……」」」

「100年……我々は踏み躙られてきた。だが、今は違う!」

「「「!」」」

「かつてよりも我らは力を得た!

何が平和条約だ!平和を求めた我らを踏み躙ってきた連中に平和を語る資格はない!

ここから始まる……創始者高原ワカナの……いやアマネ様の理想を叶える聖戦が!

総員!士気を上げろ!オール・ハイル・パクス!!」

「「「オール・ハイル・パクス!!!」」」

 

 

 

 

「うへ~……あっちこっちで士気が爆上がりしてるよ」

『それだけトリニティへの憎悪が深い』

「ソルとリナは?」

「さっきトリニティの子とカフェに入ってった」

「全くリナは……」

『まあいいじゃん。少しは』

「ああ見えてリナは仕事はちゃんとするからねぇ」

「そうか……よし、親衛連隊全員に通達しろ、ミサイルが着弾した瞬間飛び出すぞ。

配置は予め決めた通りだ。私達A班は防衛部隊の排除、B班は古聖堂へ向かう」

「了解~」

『了解』

「よし……かかれ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「!」

「あれ、アズサちゃん?」

「どうかしたの?」

「いや……」

「ん?もっと高いの欲しかった?」

「リナ……予算は降りんからな?」

「全部自腹だからOK!」

「そういう問題か?」

 

アズサはそのまま走って行ってしまった。

 

「アズサちゃん?!どこに行くんですか!?」

「聞かなくてもいいでしょ、トイレよ!」

「えっと、ですがトイレはあちらではなく……」

 

その時、何かが飛翔する音が響き渡った。




ちょこっと解説
香月リナ
親衛連隊所属。3年生。
軽めの性格で、一応上官のソルも呼び捨てしている(他の隊員もそうだが)。
ペロロ様ファンで、愛好会の名誉副会長をしている。
身長は低め。だが、長身のソルを引っ張れるだけのパワーがある。

ジェガン
連邦生徒会が開発した主力モビルスーツ。
大気圏内での自律飛行が可能な汎用MSとして開発。
ジム系列やネモなどのモビルスーツの技術を結集した最新鋭機。

ムラサメ
百鬼夜行が運用している可変モビルスーツ。同校の主力。
前主力のM1アストレイから軽量化し、戦闘機形態も相まって高い機動性を誇る。

ティエレン
山海経が運用する主力モビルスーツ。
見てわかる通りの重モビルスーツ。
信頼性は高く、他校が新型に主力を更新する中、唯一近代化改修という形で現役でい続けている。

ドートレス
レッドウィンターが運用する主力MS。
連邦生徒会のジムを参考に開発された機体で、頑丈さがウリ。

GNキャノン
ミレニアムがエクシア達用の支援機として開発した機体。
調印式での合同飛行で出す機体が見つからず(ガンダムを出すのも……)、ということで抜擢された。

トーラス
トリニティが開発した可変モビルスーツ。
空戦だけでなく、地上戦にも対応できる汎用性を誇る。

ウィンダム
ゲヘナの新型主力MS。
ストライクを目標に開発されたため、ダガーLを上回る性能を誇る。
ストライカーパックにも当然対応。

トールギスII
ヒバナの新しい乗機。
アビドス戦で中破したトールギスを、これを機にアップデートしようという事で、近代化改修を施したもの。

ユーピテル級飛行戦艦
パクス空中艦隊の旗艦。
ブリッジが2層構造になっており、操縦士や観測手などがいる上層と、オペレーターや司令官がいる下層に分かれている。
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