機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー)   作:KUS

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猛攻

『何が起きている!』

『ミサイルです!ミサイルが古聖堂に!』

『防衛部隊は何をやっている!』

『聖堂の部隊と連絡が繋がりません!通功の古聖堂周辺に強力なジャミングが!』

『ミサイルを察知出来なかったのはそれか!?』

『不味い……』

『何がだ!』

『パクス軍です!境界線に展開していたパクスが攻撃を始めました!』

 

 

 

 

 

「抑えろ!一歩も進ませるな!」

「薄汚い侵略者共……蛮族にトリニティの地は踏ませませんわ!」

 

「敵の防衛部隊だ!」

「新型の道を開けろ!目標は市街地だ!」

 

パクス軍の大部隊が境界線に構えられた防衛線に殺到していた。

トリニティ側は多数のリーオーなどのモビルスーツ部隊。

他校の部隊は更に内側に控えさせられており、援軍として来るまで時間がかかる。

 

その防衛線を、1輌のM1エイブラムスが突破してきた。

 

「戦車!?」

『たかが戦車!』

 

リーオーがエイブラムスにマシンガンの銃口を向けるが……驚異的なスピードで銃撃を回避する。

明らかに常軌を逸したスピードだ。

 

エイブラムスの砲塔がリーオーのバーニアに向けられ、砲撃される。

あっさりと1機沈められ、動揺が広がるトリニティ部隊。

モビルスーツ相手では戦車は厳しい。

それをキヴォトスに見せつけたパクスが戦車でモビルスーツを軽々撃破していったのだ。

 

「ははは!この程度かトリニティ!不良上がりの方がいい動きをするぞ!」

 

エイブラムスを操っているのは1人の少女だった。

たった1人で戦車を動かし、攻撃も行っている。

 

勝ミハイ

親衛連隊のエース戦車兵。

1人で戦車を完璧に操る化け物だ。

 

ミハイが開けた穴を突くように、後続のモビルスーツ部隊が進撃してくる。

 

「ミハイに遅れを取るな!」

『崩せ!』

 

殺到してくるパクス軍だが、ここで増援部隊が到着した。

 

「ここは死守する!市街地には一歩も入れるな!」

 

態勢を立て直し、ここを死守する。

それが防衛部隊の勝利条件。

だが……その目論見はあっさりと崩れることになる。

 

「なんだ?」

『パクス軍が……退いていく?』

「好都合だ。突出していったエイブラムスを追──」

 

言葉は最後まで続かなかった。

彼女らがいた直線は、ビームで薙ぎ払われたからだ。

 

「防衛線が崩れたぞ!」

『ははは!見たかトリニティ!』

 

そこにいたのは巨大なモビルスーツ。

人型の下半身に、まるで甲羅が乗ったような外見のその機体は、上部にある高エネルギー砲を発射した。

先程は防衛線を狙ったものだったが、次の目標は……

 

『パクス軍が進撃してきている!住民の退避を急げ!』

「慌てないで下さい!順番にシェルターに!」

 

境界線の近場にある市街地

そこでは正義実現委員会が住民の退避を行っていた。

だが、住民達は慣れた様子だった。

なぜなら、パクス軍の攻撃は定期的にあり、その度に撃退されていたから。

彼らの中には、ほのかな余裕があった。

 

それが悲鳴に変わるのに、10秒とかからなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

トリニティ総合学園・指令本部

 

「し、市街地にビーム攻撃です!住宅街が薙ぎ払われました!」

「退避中の住民は?!」

「パニック状態です!」

 

攻撃に対して、指令本部は対応に追われていた。

防衛線は突破された。

他のエリアから増援を呼び寄せようと、通信機を取ったが……

 

『こ、こちら海上艦隊!』

「どうした?!何があった?!」

『ぱ、パクス軍だ!奴ら海から攻撃してきてる!』

『こ、こちら管制塔!空に巨大な影を目視で確認した!連邦生徒会からの情報にあった空中戦艦だ!』

「くそっ!同時攻撃だと……」

 

陸・海・空

3か所同時に攻撃を受け、指令本部は混乱の渦中に叩き落された。

 

 

 

 

 

「な、何……あれ!?」

「巨大な……モビルスーツ?」

 

先程防衛線を薙ぎ払った機体は、既に市街地に侵入していた。

被害の拡大を防ぐべく、モビルスーツ部隊は攻撃を集中させていた。

しかし……

 

「ビームが……防がれる?!」

「バリアだと……?!」

「実弾も効かない!?」

 

攻撃を加えようにも、バリア──陽電子リフレクターに防がれる。

なら白兵戦で……と行こうにも、

 

「おい!誰か近付けないのか?!」

「無理よ!どうやってあの火線を突破するのよ!」

 

夥しい数のビームが埋め尽くすように放たれており、死角がない。

更にはミサイルも飛んでくる。

これで近付くのは自殺行為に他ならない。

 

そして、ハリネズミのように四方八方に放たれるビームの雨は市街地を容赦なく破壊し、

火の海に変えていた。

攻撃を集中していたモビルスーツも、次々と撃墜される。

その圧倒的暴力は、退避中だった民間人にも襲い掛かった。

 

巨大モビルスーツ──デストロイの暴威は、まだ止まらない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

トリニティ自治区付近・海上

 

「ヨークが沈みました!」

「Uボートだ!対処しろ!するんだ!」

 

戦況は五分五分。

それがトリニティ側の目算だ。

モビルスーツ関連ではパクスどころか三大校で最も遅れているのがトリニティだ。

一方で、海軍に関してはオッデュセイア海洋高等学校を差し置いてキヴォトス最強の名を欲しいままにしていた。

純粋な海軍力ではパクスを上回る。

 

しかし、モビルスーツの存在が最強の名にメスを入れた。

この6年間で発生したパクス・トリニティ間の紛争では、当然海戦も起きた。

当初こそ、モビルスーツが飛べない以上、海戦では固定砲台程度の価値しかなかった。

その状況を壊したのがパクス軍が投入した水陸両用モビルスーツ──ゴッグだった。

キヴォトスに潜水艦は知識としては存在したが、実物は存在しなかった。

当然だ。潜水艦のフィールドは海中。

海上ならまだしも、海中では死亡率がグッと上がる。

死を忌避するキヴォトスで、それは重要な事象だった。

 

なので、対潜戦闘に関しては未熟もいいとこ。

そんな状況に海中から船底に穴を開ける存在が出てきたのである。

対潜ドクトリンの研究も進めた。

対抗措置としてトリニティ側でも水中戦用MSも開発した。

 

だが、MS技術ではパクスに大きく下回るトリニティが追いつけるわけもなく……

なので、パクスとの海戦ではやられる前にやれと言わんばかりに、先に艦隊を沈めるのがセオリーとなった。

 

これが五分五分と目算されていた理由。

どっちが先に沈めるかのスピード勝負となったのである。

 

「敵戦艦に命中!」

「よーし……追撃をかけろ!沈めるんだ!」

 

レナウン級巡洋戦艦の砲撃が、パクスのアイオワ級に直撃する。

司令官はすぐさま追撃を命じた。

 

 

 

『敵空母に命中』

『次に行くぞ』

 

トリニティのコロッサス級空母が爆炎を上げる。

それを見届けたディンの編隊は次なる獲物を目指して移動を開始した。

 

だが、当然それを黙ってみているトリニティではない。

 

他の空母から発艦したトリニティの編隊がパクス軍とぶつかり合う。

 

戦闘はエアリーズのチェーンライフルの銃撃から始まった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

トリニティ自治区・中央市街地

 

「慌てないで下さい!順番に!落ち着いて!」

「内陸部のシェルターに避難させて!沿岸部のシェルターはパクス軍に襲われた!」

「えええ!?」

 

古聖堂へのミサイル攻撃に加え、上空でも空戦が繰り広げられているのか戦火が見える中、正義実現委員会が民間人の避難誘導を行っていた。

他の場所でもゲヘナ風紀委員会や百花繚乱紛争調停委員会などが避難誘導に当たっている。

 

「なんで地下のシェルターが襲われるの?!」

「地下を掘ってきたらしい……だから出来るだけ内陸へ!」

 

パクス軍のジオグーンが水中から地面を掘ってシェルターの壁をぶち抜いたのである。

海水も流れ込んできてパニックになったらしい。

 

「あっ、コハル!」

「ちょっ……大丈夫なの?!」

「大丈夫じゃない、手伝って!」

「う、うん。わかった!」

 

アズサを追って外に出てきていた補習授業部も、混乱の渦中に放り込まれた。

コハルは避難誘導中の正義実現委員会に合流していった。

 

「あ、アズサちゃん……」

「……」

「待て、迂闊に動くな」

「で、でも」

「アズサ、下手人はパクス軍だ。それに、空を見ろ」

 

ソルの言葉を聞いて、アズサもヒフミもハナコも空を見上げた。

爆発と火線が入り乱れており、激しい戦闘が行われているのがわかった。

 

「アズサ、君がどれくらい強いかは知らない。だが対戦車火器もなしにモビルスーツを相手にするつもりか?」

「……」

「今は固まっていた方がいい。下手に孤立すれば……」

「ソラさんの言う通りですよアズサちゃん。それに……パクス軍はトリニティ生に対して憎しみを持っています。1人でいた方が危険です……」

 

2人の説得もあり、アズサはその場に留まることになった。

 

 

 

 

『皆さん、慌てないで下さい。順番に、列になって』

「イチカ先輩!」

「コハルじゃないっすか」

 

避難誘導中のイチカ達に、コハル達が合流した。

 

「避難誘導の方は大丈夫ですか?」

「問題ないっすよ。皆何とか落ち着いてきたみたいで」

 

シェルターへの避難は順調に進んでいた……

はずだった。

 

ドカーン!

 

「!?」

「なんだ?!」

「地面が爆発した!」

 

突如、道路で爆発が起きた。

モビルスーツが落ちてきた訳じゃない。

ではなんなのか……

 

「やっと地上に出られたー!アッグくんありがとねー!」

「せめてパイロットの方を呼べ、パイロットの方を」

「ええー、でも見てよ、手を振ってくれてるよ?」

「随分器用なことを……」

「……」シュコー

 

穴から出てきたのはパクスのアッグ。

それに乗って3人の人物が姿を現した。

 

2丁のアサルトライフルを担いだ快活そうな少女。

冷徹そうな印象を受ける短髪の少女。

ガスマスクに巨大なタンクを背負った少女。

全員共通して、黒い軍服にコートを肩掛けしている。

イチカは彼女達に見覚えがあった。

資料で散々見たのだ。

 

「親衛連隊……」

 

パクス連邦学園・高原アマネ親衛連隊

 

「(なんでいるんすか?!)」

「あ~強敵いる~?」

「有名どころはぱっと見いない」

「ええ~じゃぁ雑魚狩りかぁ」

「我々の仕事を忘れるな」

「はいは~い」

 

舐められている。

イチカはそう感じた。

だが、この場には民間人が大量にいる。

下手に親衛連隊とやり合って被害が拡大するのは避けたい。

 

「さてと……」

「何が目的っすか?」

「ん?目的ねぇ……まぁ、言っても困らないか」

 

イチカは小声で避難誘導を続けるよう後輩に指示し、リーダー格と思わしき短髪の少女と相対する。

 

「私達の作戦目標は……この場を混乱させることかな」

「は?」

「フレイ」

「……」

 

フレイと呼ばれたガスマスクの少女は、群衆に向かって瓶を投げる。

地面に落ちた瓶から液体が流れ出た。

 

それからはガソリン臭い匂いがした。

 

「! 不味い、逃げろ!」

「やれ」

 

次の瞬間、フレイが手にした銃口から、猛烈な炎が放たれた。

それはガソリンに引火し、大爆発を起こす。

 

燃え広がる炎と爆発でパニックに陥る群衆。

イチカは被害拡大を阻止すべくフレイに銃を向けた……が。

 

「させないよ」

「くっ?!」

 

短髪の少女が何かを振るい、それを咄嗟に銃を盾に防いだ。

それは、警棒だった。

 

「はは……珍しいっすね。キヴォトスで」

「そうだな。私は射撃が下手でな、だから白兵戦にシフトしたんだが……」

「ぐっ!」

「これが思いの外性に合ったんだ」

 

蹴りがイチカの腹部にクリーンヒットした。

 

「マナカ~私は~?」

「好きにしろレイナ。雑魚狩りでも強敵でもいい」

「やったー!」

 

レイナはそのままアサルトライフルを所構わず連射しながら走り去っていった。

 

「さて……」

「!?(どこに……!)」

「後ろだ」

「なっ?!」

 

イチカの背後にいつの間にか回っていたマナカは、そのまま警棒でイチカを打つ。

 

「(速すぎる……強さはツルギ委員長ほどじゃないにしても……ミネ団長レベルっすかねぇ)」

「あまり考える時間が長いと……また痛い目を見るぞ?」

「!?」

 

イチカは何とか愛銃を盾にするが、何度も高速移動をされて翻弄され始めた。




ちょこっと解説
柴田マナカ
親衛連隊所属。3年生。
得物は警棒で、高速移動をしながら殴り掛かるというキヴォトスでは異色の戦闘スタイル。
冷徹な指揮官というイメージ。
ソルや他の隊員からはフレイとレイナを含めてセット扱い。

桐橋レイナ
親衛連隊所属。3年生。
明るく快活な性格だが、戦闘狂な一面も。

焔フレイ
親衛連隊所属。3年生。
普段からガスマスクを付けている。
火炎放射器を使うから、らしい。
寡黙な性格で、珍しく喋ってもガスマスクのせいで聞き取りずらい。

勝ミハイ
親衛連隊所属。3年生。
根っからの戦車乗りで、これまで数多の戦車とモビルスーツを撃破してきた戦車エース。
今の愛車はM1エイブラムス。一人乗りに改造してある。

デストロイ
パクスが投入した巨大モビルスーツ。
ほぼ全身からハリネズミの如くビームやミサイルを発射する歩く戦略兵器。
デストロイ1機で町1つは容易に破壊できる。
陽電子リフレクターを搭載しており、実弾やビームは防がれる。
近付こうにも大量の火線が行く手を阻む。

エアリーズ
トリニティの空戦用モビルスーツ。
ディンに対抗すべく開発された。
なのか、ディン同様近接武器を装備していない。

ゴッグ
パクスが開発した最初期の水陸両用モビルスーツ。
見た目通りの装甲とパワーを誇り、機雷や魚雷では傷一つ付けられず、
戦車も軽々持ち上げるパワーがある。

ジオグーン
プラネット分校が開発した水陸両用モビルスーツ。
地中を掘り進めることができ、主に奇襲に用いられる。
正面からの陸戦は苦手。

アッグ
パクスが開発したモビルスーツ。
水陸両用モビルスーツであるアッグシリーズの1機だが、
アッグ自体は水中での活動を想定しておらず、地中を掘り進めるのが目的の機体。
ジオグーンにはアッグのデータも活用されている。
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