機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー) 作:KUS
「──長……副会長!」
「……ユキノ?」
「ご無事ですか?」
「ああ……なんとか……」
俺は身体を起こして辺りを見回す。
古聖堂は既に瓦礫の山。
俺達が比較的軽傷なのは……クルミが防いでくれたのか。
空を見上げる。
そこでは、数多の火線が飛び交っていた。
「ユキノ、リン達と連絡は取れるか?」
「試しましたが……ジャミングが貼られているようでして」
「マジか……」
通信は不可能。
孤立無援の状況だ。
「一先ず、トリニティの校舎まで避難しましょう。ここは危険です」
「特に、副会長と防衛室長はね」
「副会長……モビルスーツ乗ってないと本当弱いから……」
「と・に・か・く、ここから離れよう。接敵する前に──」
「残念ながら無理そう」
オトギがそう言って見つめる先には、一つの部隊がいた。
白基調の制服にガスマスク……
アリウス分校……
「こちらC班、連邦生徒会副会長と防衛室長を発見した、排除する」
「FOX2、FOX4!副会長と室長を連れて撤退しろ!FOX3!私達で抑えるぞ!」
「了解!」
「副会長、こっちへ!」
ニコに引っ張られる形で、ユキノとクルミを残して俺達は離脱した。
生身じゃ何も出来ない自分に、歯噛みしながら。
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『……目標、沈黙』
火の海になった町の中で、デストロイは佇んでいた。
上空を飛ぶ護衛機のコックピットには、デストロイから飛んでくる無機質な報告が木霊している。
その内の1機、ギャンシュトロームのコックピットの中で、パイロットであるマユはモニターに映る惨状に、言葉を失っていた。
遠目からでも綺麗だと感じた街並みは、瓦礫の山と化し、辺り一面が火の海と化している。
火の中には、モビルスーツの残骸や倒れ伏している人々が見える。
「……」
『隊長、どうかしましたか?』
「いえ……何でもありません」
マユは部下の言葉にそう返した。
「……」
『隊長……これが……』
「……」
『これが……本当に正義なのですか?これでは……トリニティと何が違うのですか……?』
「……」
部下の呟きに、マユは何も返せなかった。
これまでも、民間への攻撃はあった。
それらは「敵の戦意を挫くため」と納得出来た。
だが、これは……ただ何もかもを蹂躙する。
ただ破壊を振りまくだけ。
「(上層部は……アマネ様は、本気でトリニティを滅ぼす気ですの?)」
『隊長、進軍を再会するそうです』
「分かりました。全機、移動を──」
その瞬間だった。
部下の駆るゲルググメナースが目の前で撃墜されたのは。
「!?」
『敵性反応多数!迎え撃て!』
敵のモビルスーツは多数。
横に広がる陣形を維持していた。
『新型モビルスーツ多数!』
『生体反応なし……無人機だと!?』
無人機──ビルゴが展開しているプラネイトディフェンサーにより、パクス側の攻撃は防がれている。
だが、デストロイの前には無意味であった。
『目標を確認、排除します』
高エネルギー砲がビルゴに向けて発射される。
プラネイトディフェンサーごとビルゴが光の奔流に消えていく。
これにトリニティ側は激しく動揺した。
虎の子の新型を……一瞬で撃破されたのだ。
だが、デストロイの前では所詮は動く的でしかないビルゴだが……
一般機からすれば依然脅威だ。
『くそっ!?攻撃が通じない!』
『陽電子リフレクターと似たようなものだ!接近戦で仕留めろ!』
プラネイトディフェンサーへの対処法は、高火力のビーム兵器で防御ごとぶち抜くか、質量を伴った近接攻撃で仕留めるかである。
ビームサーベルなどでは厳しいが、ヒートホークなどの実体武器は非常に有効だ。
ビーム系の近接武器であっても、実体部分があれば対応出来る。
「そこですわ!」
ギャンシュトロームのビームアックスがビルゴをプラネイトディフェンサーごと切り裂く。
だが、隙を突くように1機のビルゴがギャンシュトロームにビームキャノンを向けた。
だが……
『隙だらけだ!』
その後ろからビルゴは背を撃たれ、爆散する。
下手人は1機のガンダムだった。
『幾ら硬くても、後ろががら空きじゃ意味ねえんだよ!』
カオスガンダム
オールレンジ兵装を装備したガンダムタイプのモビルスーツだ。
『敵増援を確認。ミレニアム所属のガンダムタイプが4機』
「アビドスにいたあの4機ですわね」
『関係ねぇ。やられる前にやる。そんだけだぁ!』
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トリニティ沿岸基地
そこは既に黒煙が漂っていた。
水中から肉薄した揚陸部隊の強襲を受け、甚大な被害を被ったのである。
現在も小規模ながら抵抗は続いているが、制圧も時間の問題だ。
その基地上空を、1機のモビルスーツが飛んでいた。
『上空に……モビルスーツ?』
『何?』
飛んでいるのは戦闘機のような形をした機体だ。
可変モビルスーツである。
その機体が変形を開始し、ガンダムフェイスが露になった。
『各機、上に気を付けろ!ガンダムだ!』
ガンダム──ウィングガンダムがライフルを地上に向けて放つ。
放たれたビームは、反応が遅れていたアッシュを撃ち抜き撃破する。
「まずは1機……」
コックピットに座っていたのは、ルキナだった。
ルキナは次の獲物に照準を合わせる。
狙われたのは、陸に揚がろうとしていたカプールだ。
撃ち抜かれたカプールが沈み、脱出ポットを打ち上げると同時に水柱が立つ。
それを見届けて、ルキナは機体を自由落下させた。
ライフルをマウントし、ビームサーベルを抜く。
下方からは、ルキナを仕留めるべくマラサイとゲルググMが跳び上がってきていた。
ゲルググMのビームナギナタを躱し、ビームサーベルで機体を両断。
ダメ押しと言わんばかりにマシンキャノンで機体を蜂の巣にする。
ゲルググMの爆発の衝撃を利用し、マラサイに突貫するウィングガンダム。
マラサイも負けじとビームサーベルを抜くが……突如投擲されたシールドが直撃し、バランスを崩した。
「とどめ!」
体勢を崩したマラサイを縦に一刀両断する。
爆発を背に、ウィングガンダムは問題なく着地した。
周囲にモビルスーツ部隊が集結してくる。
「……」
ルキナはビームサーベルをしまうと、すぐさまバスターライフルを抜き、ズゴックを撃墜する。
「悪いけど、ここで全員リタイアして貰うよ!」
「ほぅ……あのガンダム。中々やるな」
『大尉?』
「艦長、私も出るぞ。ハッチを開けろ」
『了解しました』
海中で待機していたユーコン級のハッチが開放され、1機のモビルスーツが射出された。
陸で戦うルキナも、その機体を確認していた。
鍔迫り合いをしていたアビスガンダムを跳ね除け、正体不明機をカメラに捉える。
黒い鎧を彷彿とさせる姿をしており、武装から見ても白兵戦用MSであることが分かった。
背部にはまるでマントのようにビームが展開されている。
『おい親衛連隊!作戦と違うじゃねえか!』
『ほう?なら貴様らが蹂躙されるのを黙ってみていろと?』
『っ……!?』
そう言う黒い機体のパイロットに、アビスのパイロットは何も言えなかった。
黒い機体が、ウィングガンダムの方を向く。
『そなた、名前は何という?』
「何、急に」
『何、あれだけの実力者だ。戦士として、記憶しておきたいと思ってな』
仰々しい口調でパイロットは話す。
ルキナは警戒しながらも、自身の名前を呟いた。
「ルキナ、桐谷ルキナ」
『桐谷?……そうか、最近パテルで頭角を現している桐谷元首長の妹君とはそなたのことだったか』
「そう言うあなたは?」
『おっと、そうだったな。白倉アシュラ。パクス連邦学園生徒会長、高原アマネ会長直属の武装組織、親衛連隊の者だ』
「……」
『さて、今の私は非常に上機嫌だ。そなたが疑問を持っているようであれば、好きなだけ答えて進ぜよう』
「……1つだけ」
『?』
ルキナは一拍置いて、その疑問を口にした。
「いつまで、戦争は続くの?」
『ふむ、難しい質問だ。我々とて、好きで戦争をやっているのではないのだがな。
だが……いつの時代にも無責任に継戦を叫ぶ愚か者はいるものだ』
「そう……」
『質問は以上か?』
「うん」
『なら……始めようか』
漆黒の機体──ブラックナイトスコード シヴァが、ウィングガンダムに向けて突貫した。
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『こちら歩兵部隊。間もなく中心街に到着します。そちらの様子はどうですか?』
「ん?問題ないよ~」
『了解しました』
「オケオケ」
リナは通信をささっと切る。
だが、それがハナコには怪しく見えたらしい。
「リナさん、今のお相手は?」
「ああ、他校の友達だよ~。今日トリニティに来てたからさぁ。私のことが心配だったみたい」
リナは予め考えていた言い訳で追求を受け流した。
ペロロ様愛好会という学園の垣根を超えたグループに所属しているのである。
趣味が実務で生きた瞬間だ。
だが、ハナコはそれでも警戒を薄めない。
そもそも、ハナコからしてみればリナとソラ(ソル)は怪しい人間でしかない。
大きめの服に、帽子も深々と被っている。
特にソラは。
「考えれば考えるほど、あなた方が怪しく見えるんです。
まず装い。他校からの生徒は基本制服です。プライベートだから私服…という解釈も本来は出来ますが、生憎今日は訪問にあたって生徒は所属学園の制服の着用が義務付けられています」
「この黒づくめが制服だと言ったら?」
「その可能性もありますが……限りなく低いでしょうね。
連合軍所属学園で、そのような制服の学園はいませんから。
それから……
怪しすぎるんですよ。その耳に付けている通信機器が」
ハナコの指摘にヒフミとアズサが驚愕する。
特に、アズサは衝撃が大きそうだった。
リナとソルは、耳に手を当てると、その通信機器を取った。
「気付かなかった……」
「極小の通信機です。情報を知らないと違和感にすら気付けないほどのもの……
パクス軍が正式採用しているタイプです」
ヒフミが、そっとリナに目を向ける。
「リナさん……?」
「ごめんねぇヒフミちゃん。あっ、でもペロロ様好きなのは本当だよ?
それから~別にトリニティに対しては何か思うところがあるわけじゃないし」
「……特殊部隊でしょうか」
「残念だが……違うな」
ソルはそう言うと、変装用の服を脱ぎ捨てた。
黒い軍用コートを肩掛けしたスタイル。
あのパターンは……
「親衛連隊……」
「ご名答」
「まさか……小沢ソル?」
「正解だ」
ソルが軍帽を被る。
リナも、いつの間にか親衛連隊の制服に着替えていた。
「小沢、ソル?誰だ、ハナコ」
「パクス連邦学園、親衛隊最高司令官。会長である高原アマネの最側近」
「驚きか?俺が現場にいることが」
「ええ。正直そうです」
ソルの顔は冷たい印象を受ける。
だが、不思議と穏やかさを感じた。
「俺としては……お前達と交戦する気はないんだが……」
「この場で逃がせば、調印式の会場に行くでしょう?」
「ああ……馬鹿どもが協定を破ってくれたお陰でな。三つ巴と化しているだろうな」
その言葉は、ハナコにパクスとアリウスの繋がりを気付かせるには充分だった。
それと同時に、同盟が破綻していることも。
「さて……どうする?」
「……行かせるつもりはない」
「アズサちゃん!?」
「どうやら、やる気充分のようですねぇ」
「ハナコちゃんまで!?」
ヒフミはオロオロとするばかりだ。
そもそも、人数では有利だが、補習授業部側はまともな戦闘員がアズサしかいない。
もう一人、戦闘を熟せるコハルも、この場にはいない。
「いたぶる趣味はないんだが……」
ソルがハンドガンを向ける。
リナも銃を構えた。
だが、ソル目掛けて一発の銃弾が放たれた。
ソルは寸前で回避する。
「「「!?」」」
「大丈夫?」
「ありゃ」
「これはこれは……」
その場にいたのは……
「初めましてかな?小沢ソル司令官」
「百花繚乱紛争調停委員会副委員長……御陵ナグサ」
銃弾を放ったのは、ナグサだった。
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パクス連邦学園・最高司令部
「揚陸部隊、ガンダムタイプと交戦開始」
「地上部隊、敵増援と交戦中」
「適宜指示を飛ばして、後は現場判断」
最高司令部で指揮を執っている少女は、麻生フカ。
親衛連隊のオペレーター的な役割を担っている。
戦況は膠着。
連合軍による必死の防衛の賜物だ。
慌ただしい司令部へ、1人の人物が側近を伴って入ってきた。
アマネだ。
「これはこれは……アマネ会長」
「フカちゃん、どう?」
「膠着してますねぇ、地上部隊にエースを割きすぎたかな?」
「増援は?」
「あとこのくらいで」
「じゃあ、増援部隊が付いたと同時に一斉攻勢。
数は上回ってるよね?なら出来るはず」
「了解、確認取って実行します」
「お願い」
アマネはそう言うと、上段の椅子に腰を下ろした。
総帥用の席だ。
「見ていかれるので?」
「うん」
アマネは映像越しに見える惨状を目に焼き付けていた。
デストロイに破壊された街
瓦礫の山と化した古聖堂
阿鼻叫喚の地獄となりかけている市街地
「……」
「アマネ様?」
「大丈夫だよ、だって……
これは私が背負うべき責任で……罪だから」
ちょこっと解説
白倉アシュラ
親衛連隊所属。3年生。
義理堅い性分。戦闘狂で心躍る戦いを望んでいる。
麻生フカ
親衛連隊所属。3年生。
ハッキングや作戦立案などサポート役を担っている。
ウィングガンダム
パテル分派がウィングガンダムゼロのデータを基に開発したモビルスーツ。
デチューン品という言葉が当てはまる機体で、多くの性能がリミッターで制限を設けられ、ゼロシステムも未搭載。
ビルゴ
トリニティが開発した無人モビルスーツ。
プラネイトディフェンサーによる高い防御力を誇る。
ギャンシュトローム
プラネット分校が開発した白兵戦用モビルスーツ。
グフイグナイテッドの後継機で、開発にはギャンのデータが流用された。
ゲルググメナース
プラネット分校が開発した新型モビルスーツ。
ザクウォーリアの後継機で、ゲルググのデータが使われている。
アッシュ
プラネット分校が開発した水陸両用モビルスーツ。
海からの上陸と強襲が主な任務。
カプール
パクス連邦学園が開発した水陸両用モビルスーツ。
ゴッグの後継機。
カオスガンダム
プラネット分校が開発したオールレンジ型モビルスーツ。
インパルスやセイバーと同時期に開発された。
開発にあたって、旧雷帝派が持ち込んだガンバレルストライカーのデータが使用されている。
アビスガンダム
プラネット分校が開発した水陸両用モビルスーツ。
水中戦ではなく、水中からの強襲を主眼に置いているため、意外と陸戦能力が高い。
ブラックナイトスコード シヴァ
パクス連邦学園が開発した試作モビルスーツ。
性能はオーパーツ級。
新型装甲「フェムテク装甲」の実験機でもある。