機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー) 作:KUS
「あ~らら、もうドンパチやってるよ」
市街地付近の森
そこから顔を出すように停車したエイブラムスから顔を出しているのは、同車を一人で操っているミハイだ。
彼女が見ているのは戦闘が起きている市街地。
四方八方に火線を飛ばしているデストロイの巨躯も確認出来る。
そんな感じで観察を続けていると、後方からパクス軍の戦車隊が合流してきた。
新旧混合の大部隊だ。
「ミハイ!」
「ん?」
「また突出しやがって!お前は少し集団行動を……!」
「別に良いじゃん。それが私の仕事だしぃ」
「ああもう!他の連隊の連中は集団行動出来るのにぃ!」
エイブラムスから顔を出してミハイに文句を言う指揮官だが……ミハイは軽く流してしまった。
「はぁ……状況は?」
「五分五分。でも……それもデストロイのお陰かな?モビルスーツは合流してきたオーパーツどもに蹂躙されてるよ」
「どうする。我々の任務は……」
「はは……
折角
ここで狩っておけば後が大分楽になるぞ?」
「出来るかどうかは別だが……そうだな」
「そんな弱気でどうする?絶対に狩る気で行くぞ」
そう発破をかけて、ミハイは愛車の中に頭を引っ込めた。
そして、ミハイ車の移動を合図に、戦車隊が一斉に前進を開始した。
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『ここは死守する。パクス軍をここで止める!』
『敵防衛線が強固です!このままでは進軍に支障が……』
『デストロイで薙ぎ払え!各機、射線上から退避しろ!』
連合軍の防衛線を突破する為、デストロイが高エネルギー砲を向ける。
『エクシア!デカ物が動いた!』
『僕が行く!』
ヴァーチェが防衛線を守るように射線上に立ち塞がり、GNフィールドを展開する。
GNフィールドは、圧縮したGN粒子を展開して形成するバリアだ。
実弾兵器はおろか、ビーム兵器や近接武器も防御することが可能だが、
圧縮率が似ているビーム兵器やサーベル、コーティングされた実体武器で容易く突破出来る。
デストロイの高エネルギー砲「アウフプラール・ドライツェーン」のことは、防ぐことは出来る。
問題は、それが照射するタイプであること。
高威力のエネルギー砲を長時間照射する。
どれだけ硬い防御機構でも、持続的に高火力を受け続ければ、その守りは抜かれる。
『!』
だからこそ、エクシアは動いた。
デストロイも、護衛部隊もヴァーチェや防衛線に注視している。
今が最大のチャンスだった。
エクシアが、デストロイの懐に飛び込む。
『敵機だ!?敵機がデストロイの懐に!?』
『対処しろ!デストロイに近付けさせるな!』
一部の機体がエクシアの動きに気付くが、オーパーツであるエクシアに追いつける機体はそういない。
エクシアはデストロイの足元に着くと、上に向かって跳び上がる。
この距離では陽電子リフレクターを貼っても意味がない。
貼っても、エクシアのGNソードなら容易く抜けるのだが。
『悪いが……撃たせはしない』
エクシアのGNソードがデストロイの高エネルギー砲の砲身を両断した。
『……!?』
エクシアは咄嗟にデストロイから飛び退く。
デストロイは、身体を起こすように変形した。
そのフェイスは……
『ガンダム?』
デストロイのガンダムフェイスが顕わになり、連合側が一時固まってしまった。
これまで破壊を振りまいていた悪魔が、よりにもよってガンダムタイプだったのだ。
デストロイの胸元に光が灯る。
そこから複列位相エネルギー砲「スーパースキュラ」が上方のエクシア向けて放たれた。
エクシアはそれを紙一重で回避する。
『面倒だな』
一方の連合軍は、デストロイの標的がエクシアに移ったのを好機と捉えていた。
『皆!デカ物の意識がガンダムに向いてるうちに!』
『侵略者どもめ……あんなものに「ガンダム」を使うな!』
『敵軍、突貫してきます!』
『全機、デストロイに近付けさせるな!』
最初に衝突したのは、サーベルを抜いたリーオーとナギナタを抜いたゲルググだった。
それを皮切りに、両軍が次々と激突していく。
その中でも、最大の脅威であるデストロイを撃破するため、エクシア・デュナメス・キュリオス・ヴァーチェのガンダムチームは攻撃を続けていた。
キュリオスがサブマシンガンをデストロイに向けて放つが……
『っ……弾かれる?!』
『素でも固いのかよあいつは!?』
無慈悲にも、攻撃は弾かれた。
デストロイに採用されているのはフェイズシフト装甲、その発展形であるトランスフェイズ装甲だ。
フェイズシフト装甲は、実体武器に対して高い耐性がある。
一方で対ビームはというと、別に耐性が低いわけではない。
流石にビームライフルなどは防げないが、ビームサブマシンやビームピストルといった低出力のビーム兵器なら防ぐことが出来る。
おまけに、これは通常のモビルスーツサイズの話。
デストロイは巨大モビルスーツ、通常のサイズのモビルスーツよりもエネルギーは大きい。
つまり、装甲に回せるエネルギーも通常より高出力になる。
そのため、ビームライフルなら防ぐようになる(流石にドッズライフルレベルはキツイが)。
つまり、キュリオスでは近接戦闘以外にデストロイに決定打を与えられない。
『どうするエクシア』
『俺とヴァーチェで対処する。恐らく、あの形態でリフレクターは使えない。デュナメスとキュリオスは防衛隊の援護を頼む』
『オーライ、任せろ』
『気をつけてね』
そんな中でも、デストロイの腕部が分離して地上のモビルスーツ部隊を襲い始める。
エクシアとヴァーチェはヘイトを稼ぐべく、デストロイに突貫した。
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『うおおお!』
ティエレン高機動型が、カーボンブレイドを片手にザクIIに斬りかかる。
ザクIIもヒートホークを咄嗟に抜くが、その前に機体が斬られるのが先だった。
上空ではムラサメとエアリーズの編隊がディンやバビなどと熾烈なドッグファイトを繰り広げている。
その空戦を尻目に、ジェットストライカーを装備したダガーLは地上部隊へ近接航空支援を行っていた。
『目標を確認』
『撃てー!』
上空を飛んでいたムラサメが1機撃墜される。
下手人は、パクス軍のM247サージェント・ヨーク。
その後ろにはエイブラムスを始めとした戦車隊の姿。
『パクス軍の機甲部隊だ!』
『こっちはモビルスーツで手一杯だぞ?!』
『どいてろ!私達で相手する!』
相手をかって出たのは連合軍の機甲部隊。
トリニティを中心とした混成部隊だった。
エイブラムスの戦車砲が火を吹き、突出していたクルセイダーを粉砕する。
負けじと連合側のクロムウェル巡航戦車が放った徹甲弾がシャーマンの装甲を貫徹する。
両軍の間で戦車戦が始まる……だが、連合側の戦車隊は性能で勝るパクス戦車隊に押される形になった。
戦闘が行われる市街地の中に、一輌のセンチュリオンがいた。
正義実現委員会に、一輌だけ配備された車輌だ。
側面には正義実現委員会の組織章が刻まれている。
センチュリオンは燃え盛る市街地の中を、ゆっくりと前進していた。
味方と逸れた上、辺り一面が火の海なせいで、障害物も分かりにくい。
空は、まるで夕方と見紛うほど赤い。
「うぅ……何も見えないよぉ」
「泣き言を言うな。それから前に集中しろ。いつ接敵するかわからないんだぞ」
味方と逸れ、地獄の様相を呈している戦場に置かれているこの状況。
操縦士が泣き言を言うのも仕方ない。
そんな操縦士に車長は発破をかけながらも、周囲を警戒していた。
そんな彼女の目に、あるものが映った。
「車長?」
「止めろ」
「え!?」
「子どもだ!子どもがいる!」
「逃げ遅れ!?」
車長がすぐにハッチから飛び出し、子どもの下に向かう。
獣人の子どもだ。
「大丈夫か?」
「うぇぇん……お母さん……」
「お母さんと離れちゃったのかな?」
「違うの……この下に……」
子どもが瓦礫を指す。
そこには、瓦礫の下敷きになって呻き声を上げている獣人の姿があった。
「おい!人が下敷きになってる!手を貸してくれ!」
「わ、わかった!」
装填手と砲手が飛び出してくると、瓦礫を持ち上げる。
どうにかして持ち上げ、車長が獣人を引っ張り出す。
「よし、2人を車内へ」
「わかりました」
親子をセンチュリオンに収容し、三人も車内に戻る。
「収容出来ました!」
「よし、後方の避難所に──」
向かうぞ、そう言おうとした車長は、車窓越しにあるものを目にした。
それは……パクス軍のパットンだった。
「っ……敵戦車確認!」
「!?」
「相手はこちらに気付いていない……側面を撃ち抜け!」
「了解!」
パットンはまだセンチュリオンに気付いていないのか、かなり無防備だ。
「照準合わせたよ!」
「撃て!」
センチュリオンの主砲から発射された徹甲弾がパットンの側面装甲を貫き、爆炎を上げさせる。
「目標を撃破……」
「今ので敵戦車が集まってくるはずだ……急いでここを離れるぞ」
センチュリオンが前進を再開する。
炎上するパットンの側を通過し、曲がり角を曲がった。
戦闘で廃墟と化してはいるが、慣れ親しんだ街だ。
迷うことはないだろう。
だが……曲がり角を曲がった先には……
「あっ……」
「エイブラムス!?」
パクス軍のM1エイブラムスがいた。
「このっ!」
操縦士が咄嗟に瓦礫の裏にセンチュリオンを滑り込ませる。
次の瞬間、エイブラムスが瓦礫を主砲で吹き飛ばした。
「くぅ……」
「側面に回れ!地の利は私達にある!」
「そこの廃墟……行こう!」
センチュリオンが廃墟に入っていく。
エイブラムスは装填が完了した主砲を廃墟目掛けて発射した。
中にまで追撃する気はないらしい。
「追って……こない?」
「連中も馬鹿じゃないか。一先ず、対処法を練るぞ」
車長は、もし相手が追撃してきたら、上に向けさせた主砲で天井を吹き飛ばすつもりでいた。
エイブラムスを瓦礫の下敷きにする算段だ。
だが、相手は入ってこなかった。
これはこれで作戦を練れる時間が出来たのでよしとするが。
「クソッ!こっちには怪我人もいるってのに……侵略者どもめ!」
「仕方ないよ。相手は私達が民間人収容してるなんて知らないだろうし。それに、先制攻撃したのはこっちだし」
悪態をつく砲手を、装填手が諌める中、車長は頭の中で策を構築していた。
単純な性能では、エイブラムスにセンチュリオンは劣る。
なので、真正面から挑むのは愚策だ。
幸い、地の利は自分達にある。
「車長……急いだ方がいいと思う。敵戦車が集まって来てる」
「……一か八かだ」
車長はそう言いながら砲手を見つめた。
それに対して、砲手も何かを察した。
一方、パクス軍戦車隊は周辺にいた車輌が集合していた。
相手は性能でエイブラムスに劣るセンチュリオン。
それに対して、エイブラムスが4輌。
明らかに過剰戦力だ。
最も、彼女達の中にあったのはトリニティを嬲りたいという怨嗟だけだったが。
「敵戦車、出てきません」
「建物を包囲出来るか?逃げ道を塞ぐ」
『了解』
2輌のエイブラムスが移動を始める。
戦車である以上、コッソリ廃墟から出てくることは出来ない。
四方を囲んでおけば、いつか出てくるという判断だった。
その、瞬間だった。
廃墟の窓跡。
そこから移動を始めたエイブラムスの弾薬庫に砲撃が叩きこまれた。
「な!?」
突然のことに驚きの声をエイブラムスの車長は上げた。
「命中!」
「よし!」
廃墟の中で、センチュリオンの車長と砲手がガッツポーズを取る。
作戦はこうだった。
ギリギリ砲弾が通過するレベルの隙間を見つけた車長が、そこに砲弾を通して敵戦車を狙えという無茶苦茶もいいとこな作戦だ。
ただでさえ隙間に砲弾を通す精密射撃が必要な中で、更にエイブラムスを撃破しろということなのだから。
おまけに、エイブラムスが正面を向いていたら貫徹はほぼ不可能。
撃破には相手が側面を向けている必要がある。
砲手は文句を言いながらも、状況を打開すべく狙いを付けた。
そして、移動していたエイブラムスの側面を捉えたのだ。
「1輌撃破、残りは……」
「残り3輌です!」
「討って出るか?」
「いや……砲塔を6時の方角に、主砲を上に向けろ!」
車長の言葉に、砲手は主砲を天井に向けた。
次の瞬間、1輌のエイブラムスが壁を突き破って侵入してきた。
「撃て!」
主砲がエイブラムスの上の天井を撃ち抜き、瓦礫の下敷きにする。
「な、なんで……」
「僅かに駆動音が聞こえた」
「いや……こいつも動いてるのによく拾えたな……」
少し車長に低く砲手。
だが、うだうだしている時間はない。
「進むぞ!今のエイブラムスはまだ動く!今のうちに残りの2輌を!」
「了解!」
車長は、敵は廃墟を包囲するつもりだと予測していた。
最初に撃破したエイブラムスが移動していたのもその予測に拍車をかけている。
なら、最初に入ってきた場所に1輌いるはず。
「照準……入り口に向けろ」
「了解」
射線を遮っている障害物瓦礫を抜け……こちらに主砲を向けるエイブラムスが視界に入った。
「今だ!」
「ファイア!」
センチュリオンの主砲の発射が早かった。
発射された徹甲弾がエイブラムスの砲塔リングに直撃する。
「全速力!」
エイブラムスは車内がやられたのか動かず、センチュリオンはその脇を通り過ぎる。
更に、前から残りのエイブラムスが出てくるが……
「煙幕を焚け!」
「了解!」
センチュリオンが煙幕を展開し、視界を遮る。
エイブラムスには熱探知機を搭載してあるので、完全に目が潰れた訳ではないが……
そこにセンチュリオンはもういなかった。
「どこに……?!」
「まさか……後ろだ!」
すぐさまエイブラムスが砲塔を回転させる。
それはセンチュリオン側も認識していた。
「早い……向こうの車長は優秀だな」
「正面戦闘は……」
「近くの広場に誘き出すぞ」
センチュリオンはそれなりの広さのある広場に移動する。
遠ざかるセンチュリオンを見て、エイブラムスも熱を頼りに追撃を始めた。
広場に出たセンチュリオンとエイブラムス。
両者による睨み合いが続く。
「……」ツー
車長は冷や汗を流す。
相手の威圧感に対してだ。
中々隙が見つからない。
エイブラムス側も、隙を見つけられないでいた。
2輌は噴水を中心にグルグルと回りながら睨み合う。
次の瞬間、噴水のヒビが広がり、崩れ落ちた。
「撃て!」
車長が叫んだ瞬間、砲手は引き金を引いていた。
発射された徹甲弾が、崩れていく噴水の瓦礫を通過し、エイブラムスの弾薬庫に命中する。
車体が爆発炎上するのを見て、車長はホッと息を吐いた。
「敵戦車……撃破」
「よっしゃー!」
「やったね!」
「よ、良かった……」
「まだ終わっていないぞ。急いで避難所に向かうんだ」
喜ぶのは後にしろという車長の言葉に頷き、操縦士はセンチュリオンを走らせた。