機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー)   作:KUS

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炎の中の戦車兵

「……」チューチュー

 

戦場のど真ん中。

そこに私はエイブラムスを止めていた。

流石に堂々と止めてるわけじゃない。

シャーマンの残骸の影に隠してはいる。

こんな地獄みたいな戦場の中、残骸の裏にいる影を一々確認する余裕があるやつはいない。

そんな中で悠々と休憩を取ってる私も大概だがな。

仕方ないだろ?

一人で戦車一輌動かしてここまで休憩なしなんだぞ?

 

「さてと……」

 

手に持っていた紙パックをぶら下げてあるゴミ袋に突込み、ハンドルを握る。

視界の端に、トリニティのクルセイダーが映った。

最初の獲物は……あいつだな。

 

私はエイブラムスを少し前進させ、シャーマンの影から主砲を覗かせる。

クルセイダーはこっちに気付いていないのか、全然違う方向を向いている。

 

「休憩後、最初の花火だ!派手に行こう!」

 

私は躊躇いなく引き金を引いた。

主砲から発射された徹甲弾がクルセイダーの車体を貫徹した。

貫徹したのは弾薬庫、つまり……

 

ドガーン!

 

戦車は吹き飛ぶ。

 

「ははは、たーまやー」

 

爆発で吹き飛んだ砲塔を眺めながら私は叫んだ。

それを見届けた私は、エイブラムスを発進させる。

あっちこっちで炎が上がり、戦車やモビルスーツなどの兵器の残骸や崩れた建物が辺り一面に広がる地獄絵図。

我ながら、よくもまぁ、こんな中で吞気に休憩が出来たものだ。

 

「さーて……始めるか」

 

本格的な大暴れを……な?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『うわああ!?』

『何が起きている!』

『エイブラムスが一輌……たった一輌により我が方の戦車隊に甚大な被害が……!』

『モビルスーツは何をやっている?!エイブラムスの相手は連中だろう?!』

『向こうも手一杯みたいでってわああああ!?』

 

目の前にいたクロムウェルを撃破し、今度はセンチュリオンに砲塔を向ける。

 

『撃て!撃てえ!』

 

センチュリオンから発射された弾がエイブラムスに向かってきた。

私は冷静に車体を傾けて跳弾させる。

向こうは完全に冷静さを失っているのか、動きがかなり稚拙だ。

 

一応、至近距離ならセンチュリオンでも可能性はあるんだがなぁ。

まあそれでも、勝率はかなり低いんだが。

 

そうこう考えてると、敵の増援のお出ましだ。

IV号とKV-2、ゲヘナとレッドウィンターの混成部隊か……

ふっ、面白れぇじゃねえか……

 

ダメだ、私のキャラに合わねえ。

 

「おっと……」

 

IV号がこちらに砲塔を向けてきたのを見た私は、すぐさまエイブラムスを前進させた。

次の瞬間、IV号の主砲が発射される。

砲弾はギリギリの所でエイブラムスの真後ろを通過していった。

 

相手はそれぞれ2輌ずつ、勝てない相手じゃない。

まずは倒れているモビルスーツの残骸の影に車体を滑り込ませた。

まずは砲塔を後ろに向ける。

一人乗りとか言う、普通の戦車兵が聞けば狂気の沙汰だと口を揃えるような改造がこのエイブラムスには施されてる。

形としては、操縦席で全部の役割を熟せる。

因みに操縦席には、操縦手用と砲手用のペリスコープ──まぁ覗き窓みたいなもんが、一緒くたにせず別々に付けられてる。

まぁ、何が言いたいかと言うと……

一人でも前後の警戒は可能なんですなこれが。

 

……誰に言ってるんだ私は?

しかも自慢するようなことでもねぇし。

 

そうこうしてると、待ち構えも警戒せずにのこのこと追ってきたのか、僅かにエンジン音が聞こえた。

あれはIV号だな。

 

「まず1輌~♪」

 

主砲から発射された徹甲弾がIV号戦車を真正面からぶち抜く。

おいおい……いくら何でも無警戒すぎないか?

 

……他の3輌は追いかけてこないな。

こっちから来ないとなると……前か。

 

砲塔を前に向ける。

IV号には、エイブラムスを真正面から抜く火力はない。

ただ……KV-2は下手したらこちらを正面から撃破しうる可能性を持っている。

だから……

 

「先に潰す」

 

早速、KV-2が1輌顔を出した。

撃たれる前にやる。

すぐさま主砲を発射し、KV-2を吹き飛ばす。

 

私は、耳をすませた。

残りの2輌の居所を探すために。

燃え盛る炎と戦闘音……その中から、戦車のエンジン音を探す。

 

 

……聞こえた。

挟み撃ちでもする気か。

後ろからIV号、前からKV-2。

 

「……」

 

私は無言でエイブラムスを発進させた。

狙いは前方からくるKV-2。

徐々にスピードを上げていく。

 

そして……物陰からKV-2が出てきた。

 

『!?』

 

向こうは驚いて動きが一瞬止まったのか主砲が発射される気配がない。

戦場でそれは致命的な隙だ。

 

次の瞬間、私は引き金を引いた。

 

徹甲弾がKV-2の弾薬庫を貫徹し、車体を爆散させる。

後は……後ろから来るIV号だ。

 

私は先ずKV-2が出てきた曲がり角に車体を滑り込ませた。

そして旋回させる。

 

旋回を終えた頃、IV号が曲がり角から姿を現した。

もう既に砲口は向けている。

 

『ま、不味い!?』

『下がれ!急げ!』

 

向こうが慌てふためいている姿があっさり想像できる。

だが、慈悲をくれてやる義理はない。

 

「Fire」

 

装填が完了した徹甲弾をIV号戦車に向けて発射。

そのまま側面装甲を貫徹し、撃破した。

 

「ふぅー……」

 

一回一息吐く。

そして、再度エイブラムスを発進させた。

 

燃え盛る市街の中を走る。

残骸の影で修理中だったチハに徹甲弾を撃ち込む。

 

状況は芳しくない。

デストロイが釘付けにされてるせいで攻勢が止まっている。

まぁ、想定通りと言ったらそうだが……

 

「まぁ、程々に暴れますかな」

 

そう言っていると、私の耳に戦車のエンジン音が入ってきた。

この音は……レッドウィンターの戦車か?

 

「と思ったら……出てきたな」

 

IS-4及びT-54の混成……

先ずは挨拶代わりに、

 

「一発ぶち込んでやるよ!」

 

すぐさま徹甲弾を発射して先頭のIS-4の側面装甲をぶち抜く。

先頭が停止したことで、後続の戦車は団子状態。

あれじゃ前進に時間がかかる。

 

撃破したIS-4と並んでいたIS-4がこちらに砲塔を回すのが見えた。

上手いこと残骸や瓦礫を盾に射線を切る。

IS-4の残骸が障害物になっている以上、こっちに来るには時間がかかるだろうし……

今のうちに場所を……って、味方の歩兵部隊がいやがる。

 

『なんでエイブラムスがこんな所に?』

『隊長、側面のエンブレム……親衛隊の』

 

私は拡声器を使って歩兵部隊にコンタクトを取った。

 

「おーいお前ら。近くにレッドウィンターの戦車隊。随伴歩兵もいるだろうから、相手は任せた」

「はっ!行くぞ!」

 

歩兵部隊は元気よく返事をして廃墟の中に入っていった。

しばらくして、近場から激しい銃声が聞こえてきた。

接敵したらしい。

 

「じゃあ……やるか」

 

まずは……廃墟に狙いを着ける。

挟み撃ちを防ぐ方法……物理的に射線を一方方向に限定する。

崩れてきた瓦礫を背に、私はエイブラムスを転回させた。

 

「どこか通れそうな場所は……」

 

周囲を警戒しながら敵戦車がいた大通りに出られる道を探す。

そして見つけた。

戦車でも余裕通れる道を。

 

まぁそこからT-54が「ハロー」ってしてきたんだが。

撃たれる前に速攻で側面に撃ち込んで撃破した。

 

 

 

 

大通りに出た私の目に映ったのは、レッドウィンターの歩兵部隊と攻防を繰り広げる歩兵部隊。

そしてそれを援護する2輌のIS-4と2輌のT-54だ。

こちらに1輌のIS-4が気付いたのか砲塔を向ける。

すぐさま車体を下らせた。

榴弾が撃ち込まれたのか、影に隠れさせて貰った建物が激しく揺れ、崩れかける。

 

「(一か八かで……出るしかないのか)」

 

これでも、エイブラムスの弱点は理解している。

こいつは正面はともかく、側面は脆弱だ。

性能が下の連合の戦車でもぶち抜くやつはぶち抜いてくるくらいには。

IS-4なんて、抜いてくる戦車筆頭だ。

というか、現役の戦車でエイブラムスの側面装甲を抜けない戦車なんて……

 

まぁ、単機で動くことを想定していない戦車で単機突撃してる私がおかしいんだが。

 

どうしようかと考えていると、上空にモビルスーツの飛行音が聞こえた。

見えたのはバビ2機。

そいつらはかなり低空を飛行していた。

なるほど……

 

「出るか」

 

思い切って路地から車体を出す。

予想通り……IS-4はバビから攻撃を受けたらしく、

1輌は大破、もう1輌は履帯部分と砲身が撃ち抜かれていて継戦能力なし。

 

折角ならT-54もやってくれれば良かったのに……

まぁ、獲物を残しておいてくれたって言えばいいのかな?

 

T-54に向けて正面を向け、狙いを着ける。

向こうもこっちに砲塔を向けてきたが……まずは一発。

 

私は引き金を引き、T-54を1輌撃破する。

もう1輌は回り込もうと移動を開始していた。

 

一先ず、しれっとこっちに構えようとしていたRPG兵に榴弾をお見舞いしてやった。

その間もT-54は回り込もうと動いている。

エイブラムスをその場で転回させ、T-54に狙いを定める。

完全に回り込むまでグルグル動き続ける気だな?

 

「甘いんだよ!」

 

側面に撃ち込まれる前にT-54に偏差射撃で撃ち込む。

側面装甲……しかも弾薬庫に諸に喰らったT-54は、そのまま爆散した。

 

ほっと一息……吐こうとした私の目に、側面カメラの映像が映る。

方向は右側面……その映像に僅かだが映った。

戦車の影が。

 

すぐさま車体を前進させる。

だが、放たれた砲弾は正確にエイブラムスの後部を撃ち抜いた。

 

「ちっ」

 

エンジンがやられた。

これじゃあ動けない。

まだ私にはやる事がある。

こんなとこで終わる気はないんだよ。

 

まだ砲塔は動く。

だが……電力がその内切れる。

そうなると直接砲塔を動かすしかないわけだが……

にしても……この動き、

 

「エースだな?」

 

口角が自然と上がるのを感じた。

エース戦車兵と会敵するのは久しぶりだ。

心が躍る。

まぁ、動けないわけだが。

 

僅かな電力で砲塔を弾が飛んできた方向に向ける。

相手だって、真正面からエイブラムスを相手にする気はないだろう。

それだけこいつの正面装甲は硬い。

それに、例え電力供給がなくなっても、込められている一発は確実に撃てる。

相手が私を仕留めに来る上で、一番リスクが少ないのは同じ場所から撃つこと。

真正面はさっき言ったリスクがある。

 

すると、相手が物陰から姿を現した。

その正体は……

 

「T-34……しかも85㎜砲型」

 

T-34-85

レッドウィンターのかつての主力であるT-34の派生型。

当の昔に退役した戦車だ。

そんな骨董品を引っ張り出しておまけに実戦投入とは……物好きもいたもんだ。

まぁ、旧式に乗って出てくるやつだ。

相当腕に自信があるんだろうな。

 

ただ、慢心は頂けないな。

こっちはまだ撃てる。

当たれば撃破は容易だ。

軽戦車、しかも旧式だ。

だが……心の中で負けを認めている自分がいた。

 

「やれよ。お前の勝ちだ」

 

私がそう諦めながら呟く。

 

T-34-85が主砲を向けて……

 

『諦めるのが早いわねミハイ』

 

T-34-85の砲門が抜かれる。

その瞬間、T-34は猛スピードでその場から撤退していった。

 

全く……

 

「なんだよ」

『助けてあげたのに、酷い態度ね』

「こちとら勝負に水差されたのと同じ気分じゃい」

『勝負にすらなってなかったみたいだけど?』

 

心の中で舌打ちをする。

こいつの辞書に遠慮という文字はない。

相手が言われたくないことをズカズカと言う。

対戦車ライフルを担いだ女。

私と同じ親衛連隊に所属しているスナイパー。

背中には白く、大きい翼が開かれている。

 

『お礼くらい言えるようになりなさいな』

 

パクス連邦学園生徒会長親衛連隊スナイパー・黒川レイカ

 

『にしても、敵が撤退してくれて良かったわ。あのままなら私がやられてただろうし』

「良く言うよ。じゃあ上に待機させてるモビルスーツはなんだ?」

『あらら。バレちゃってたか』

「T-34に見えてんのに私が気付かないわけあるか!」

 

上空に待機していたモビルスーツ2機が傍に降下してきた。

AMS-129 ギラ・ズール

武装親衛隊用の新型だ。

 

『油断するなんて、あなたにしては珍しい』

「なんだよ」

『ふふ、初めての本格的な市街戦で無双したせいで慢心しちゃった?』

「……ちっ」

『図星みたいね。ソルが聞いたらお説教が始まるわよ?』

「んなこと言ってる暇があるんだったら早く工兵でも読んでくれ」

『ああ、そのことなんだけど』

「?」

 

レイカの言葉に、私は首を傾げた。

 

『フカからよ。私たちに戻って来いって』

「なんでまた」

『会長が用事があるって言ったら?』

「はぁ……わかったよ」

『素直じゃないなぁ』

「ほっとけ」

 

私は悪態を吐きながら戦車を降りる。

外に出ると、レイカの憎たらしい涼しげな顔が視界に映った。

 

「さあ、行きましょ」

「エイブラムスはどうするんだ?」

「いいでしょ別に?あなた、エイブラムスのことあまり好きじゃなさそうだし、いくらでも替えの利く兵器なんt「あ?」……」

 

思わずこいつを殴ろうかと思った。

が、寸前で思いとどまった。

こいつは本当に……

 

 

そう後、私は置き去りにすることになったエイブラムスを見据えながらギラ・ズールのマニュピレーターに乗り、その場を後にした。




黒川レイカ
親衛連隊所属の3年生。スナイパー。
対戦車ライフルを担いでいる。
デリカシーのない発言が多い一方で、仲間が本当に怒るようなことは言わない。
ただ、心の機微には疎く、それが今回ミハイがキレることに繋がる。

ギラ・ズール
武装親衛隊用に開発された次世代主力機。
パクス連邦学園の新主力であるギラ・ドーガがベースになっている。
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