機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー)   作:KUS

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後始末

「で、どう責任を取るおつもりですか?天草首長?」

「……」

「……」

「あわわ……」

 

ティーパーティーのテラスにて、組織を構成する三派閥の首長が一同に会していた。

 

パテル分派首長・桐谷ユウ

フィリウス分派首長・天草カナ

サンクトゥス分派首長・末花ユリ

 

先日のトリニティとパクスの抗争。

敗北したのはトリニティ側だった。

数でも質でも劣る相手に漫画のような逆転負け。

おまけに開戦の理由はフィリウス親衛隊の独断専行。

ユウがカナを詰めるのも当然だった。

 

「勝手に軍を動かしたんですか?」

「いえ、ホストの承認は得ましたよ?」

「……」ジロッ

「いやだって……生徒を引き取りに行くだけだからって」

「はいそうです。テロリストとの戦闘は許可しましたが、向こう側との戦闘は許可していません」

「だから?」

 

ユウから敬語が外れ始めていた。

こういう時は大抵、機嫌が良いか、悪いか。

今回は後者だ。

 

「親衛隊の暴走は私の監督不行届です。しばらくは謹慎することにします」

「他の連中は?」

「軍の指揮官は謹慎処分。独断専行をした親衛隊の隊長は親衛隊並びにティーパーティーから除名しました」

「妥当だな」

 

隙が無いな。

ユウはそう感じた。

カナ自身が命じたのは自校の生徒の引き取り。

パクス系テロリストのことを考えると正規軍を動かすのも妥当。

実際にテロリスト相手への交戦は許可していた。

親衛隊はお目付け役。

というか、ティーパーティーが直接迎えに行ったという形なのだろう。

実際に文官も同行していた。

形は完全に現場の暴走だった。

 

「ま、まあユウちゃん。カナちゃんも反省してるみたいだし……」

「だろうけどなぁ……」

「……」

 

実際にカナは反省していた。

「人選ミス」に対してだが。

 

「当面の課題はパクスでしょう。私の謹慎期間は明日から。今日の内に進められるだけ進めたいのですが」

「そ、そうだね」

「ああ、そうだな」

 

ここでようやく今日の本題に入る。

パクス側の独立について。

 

「最大の論点です。独立を許すか許さないか」

「でも……決まり切ってるよね?パクスは賛成、フィリウスは反対って」

「ああ、って事はだ。どっちがサンクトゥスを納得させられるか勝負ってことだ」

 

現状のホストはユリだ。

つまり、何かの間違いでフィリウスが独立賛成になってもユリが反対と言えば反対になる。

ユリは、気弱だが争いごとを好まない。

善人だが政治には向いていないタイプだった。

だからこそ、現状が最大のチャンスだった。

 

「でもさ……戦争はダメだよね?」

「まあそうだな」

「同感です」

 

そこは三人とも方針が一致した。

もうキヴォトスで戦争が行われなくなって久しい。

トリニティによるパクス侵攻が最後だろう。

(キヴォトス基準の)平和に慣れた三人にとって、戦争をするメリットはない。

 

「パクスの独立……認めた方がトリニティにメリットがあると思うぞ」

「ほう、なぜですか?」

「パクスが独立すれば、あの自治区での中継貿易が再開する。そこに一枚噛ませてもらえば……」

「利益が増える?」

「ああ、今よりずっとな。何せ、あそこが中継地点として栄えたのもパクスへの信頼があったからじゃないのか?」

「そこは疑いようのない事実ですね」

「それに、独立させれば今の面倒なテロリストどもも大人しくなる。良いこと尽くめじゃないか」

「た、確かに」

「しかし、一つ懸念点が」

 

カナが流れを一度切る。

 

「本当に、噛ませて貰えるのですか?」

「まあ、噛ませて貰えなくても、昔みたいに産業援助があれば、利益が出る。少なくとも今よりはマシになるだろ」

「こうして考えると、当時のティーパーティーは何がしたかったのやら」

 

カナは一人愚痴った。

その言葉にユウは内心同意した。

本当に何がしたかったのか。

 

「じゃ、じゃあ独立を認める方針で……」

「まぁ待って下さい。まだ懸念点が、あの新兵器がこちらに向く可能性は?」

 

カナのその一言で、テラスが静寂に包まれた。

もし独立したら、量産されたあれが大挙して襲ってこないかということだ。

カナは内心独立だなんだは興味がない。

だが、今の地位を維持したい彼女にとっては引き摺り下ろされない為に、

形だけでも反パクスをしなきゃならなかった。

まあ懸念点自体は間違ったものではない。

 

「……パクスとは結べたとしても経済協定。軍事同盟は無理だろうな」

「なら不可侵条約でも結ぶ?」

「連邦生徒会から睨まれなければいいんですが」

「はっ、連中に何ができるんだ?あの日和見主義者に」

 

その後もあれやこれやと議論が続き……

最終的には独立を認める方針に決まった。

その決定に対して、歯噛みする者がいた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「で、独立の方向で話は纏まったと」

「ああ……」

「不安そうですね」

「わかるか?」

「ええ、入学してからずっと貴女に着いてきたんですよ?これくらいわかります」

 

ユウが話しているのはアマネとの会談に同席した行政官とはまた別の行政官だ。

ユウとは長い付き合いになる。

 

「カナが過激な手段に走らなければ良いんだが……」

「それまた何故?」

「あいつは地位に固執している。地位さえ守れれば主義・主張はどうでもいいって奴だ。そして、フィリウス内では親衛隊の隊長を除名したカナを首長に相応しくないって空気が出てきてる」

「パクスが憎いんですかね」

「プライドだろ。見下してた連中にこれまで散々被害を負わされてきたんだから」

 

ユウは、パクス侵攻を主導したフィリウス内ではパクス生を見下している生徒が多かったと聞いたことがあった。

結果は、パクスは制圧できたものの何も得られず大失敗。

挙句、残党や分校によるテロやゲリラ抵抗。

そして今回の敗北だ。

最早、パクスを潰すのに躍起になっている人間が居てもおかしくはない。

そんな連中がカナを引き摺り下ろそうとすればどうなるか。

結論、カナは主張は180度変えるだろう。

 

そしてユリだ。

 

「サンクトゥスの動きは?」

「そちらも芳しくありませんね」

「はぁ~、どいつもこいつも……」

 

サンクトゥス分派は中立だ。

だが、それは派閥の方針であって個人個人は違う。

当時は、割合的には侵攻賛成派が多かったらしい。

そんなサンクトゥスの問題は首長のユリだ。

彼女は気弱。政治にも疎い。

殆どお飾りと言っても過言ではない。

分派からすれば何時でも首長は交代させることが出来る。

替えの効く人材でしかない。

 

「ユリが降りたら次は誰が首長になる?」

「2年の次期首長候補の行政官か3年の副首長……どちらも過激派ですね」

「はぁああ……その熱量をゲヘナに向ければいいのに。敵でもないパクスに向けた挙句しっぺ返しを食らって逆恨みかよ」

「聞かれると大目玉を食らいますよ」

 

行政官の言葉に、ユウは頷くだけだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……ということがあって」

「うわーん。ガンダムさんありがとう!」

 

時は戻って戦闘終結後。

トリニティから戻ってきたアマネはことの経緯を副会長から聞いた。

そしてすぐそばに立っていた俺(正確にはガンダム)の足に抱き着いた。

 

「なんていうか……その……」

「11歳なんだな」

「そう言えば私たち、会長の仕事モードしか見たことないわね」

 

他の生徒会メンバーはアマネの見たことのない一面を見て妙な納得をしていた。

トリニティのティーパーティーから独立の確約をもぎ取ってきた彼女だが、

まだ11歳の少女である。

 

「で、どうだったんですか?交渉は」

「ばっちし……はいこれ」

「ティーパーティーの……誓約書!?」

「パテル分派だけだけどね」

「いや充分ですよね!?」

 

しっかり交渉を成功させてきたのを物語る誓約書を渡されて、

その場の一同(俺とアオ以外)は目が飛び出しそうになった。

 

『しかし……』

「どうかしたか?」

『いや君のことなんだが』

「ん?」

 

俺が言ったのは、アマネと同じようにガンダムの傍にいた少女のことだ。

金髪で悪魔的な風貌の少女。

ゲヘナ学園の生徒だ。

 

『君誰?』

「ふむ……自己紹介がまだだったな。丹花ライだ。今回の義勇兵団を率いらせてもらった」

『へぇー……丹花!?』

「どうかしたか?」

 

丹花って……イブキと同じ苗字って……

 

『なぁ、君って妹いたりしないか?』

「ほう、よく知ってるな。イブキのことか」

 

やっぱり、イブキの姉か。

原作にはイブキに姉はいなかった訳だが……

 

「写真ならあるぞ」

「見せて見せて」

「これだ」

「わぁ、可愛い」

「仲良くなるのが早いですね」

「八つ下だ」

「へぇ」

 

八つ下なのか……待て。

今は原作の何年前だ。

俺が目覚めたのが四年前。

その時は原作の10年前。

つまり今は六年前。

原作時点でイブキは11歳。

つまり今は5歳。

そしてこの子はイブキの8歳上。

つまり13歳。

……アマネと年変わらなくない?

 

「あなた、飛び級組ですか?」

「おっ、わかるか?」

「単純計算です」

「じゃあ、お仲間?」

「そうなるな。まあ学年は既に三年だが」

「モモトーク交換しよ!」

「いいぞ」

 

驚きの事実が発覚したのと、アマネのコミュ力の高さに驚く俺であった。

いや驚いてばっかだな。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ユリ様……よろしいですよね?」

「ま、待ってよ……引継ぎもなしにこれは……」

「引継ぎも何もないでしょう?」

「今回の件、軍を動かすのを許可したのはユリ様です。なので、責任を取っていただきます」

 

ユリは周りからの圧に屈する形で書類にサインした。

その書類は辞任届だ。

 

その様子を、カナは見ていた。

 

「これを見せて何がしたいのですか?」

「おや、わかりませんか?」

「ええ、そうですね……あなた方の憎悪に巻き込まないで頂きたいのですが」

「あなたを降ろすことだって出来るのですよ?」

「やってみなさい。サインを偽造しますか?私以外に誰があの狂犬の皮を被ったやり手(桐谷ユウ)と政治で渡り合えるのですか?」

 

カナが鋭く指摘する。

現状、部下の中にそのような人材がいないことは把握済みだ。

しかし、行政官の口は不敵に笑ったままだ。

 

「構いませんよ。サンクトゥスは首長交代。次のホストも我々フィリウスに回ってくる。いくらでも押し通せます」

「……」

 

行政官の言葉にカナは彼女たちの行動に納得が行った。

パテルがホストに回る前に……自分たちの意見を押し通す気なのだろう。

 

「(今の地位は惜しいですが……後世に"戦争を始めた愚物"として名が残るのはごめんですね)いいでしょう。サインして差し上げます」

「ふふ……最初からそうすればいいものを」

(上機嫌そうですが……あなた方ではあの学園は潰せませんよ。あの新兵器がある限り)

 

カナは心の内で、そう呟いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「今回の戦いで色々露見したね」

『だよな……まあ丁度いいテストになったんじゃないか?』

「何か欠点あるの?」

「ああ、ジェネレータ出力が低い。おまけに整備性もね。動力パイプが内蔵だから……」

(俺が知ってる通りだな)

 

ザクの原作そのままな欠点に、アキは納得していた。

 

「しばらくはこれを改修したりしてやり繰りするけど……改良型にすぐ切り替えた方がいいね」

「ザクIIだね!」

 

ニアはもう既に設計図を引いたのか、図面を見せてくれた。

デザインはアマネの絵が基。

その他、ザクIの改良や拡張性を高める設計になっている。

 

「興味深いな。ゲヘナにも欲しい」

「ザクIIはコストはそこまでな予定だから……準備出来たら同盟校に輸出するのもいいかもな」

「それで戦争しない?」

「はは……抑止力としては充分だ」

『今更だが、外部の人間を連れてきて良かったのか?』

 

アキが疑問を呈したのはライについてだ。

因みにアキはザクIのハンガーを借りている。

 

「大丈夫さ。機密を漏らす気はない。悪魔は契約は守るんだぞ」

「それにライさんは技術者志望だったらしいしぃ……気が合うんだよ」

「うんうん」

『皆が仲良くてお兄さん嬉しいよ』

 

あれだけ激しい戦いの後だから尚更だった。

その後も、皆でワイワイMSに関して談義していた。

 

平和というのはこういうのを言うんだろうな……




ちょこっと解説
末花ユリ
サンクトゥス分派の首長でティーパーティーホスト。
気弱な性格で政治にも疎い。
平和主義者で、争いごとが苦手な優しい少女。
なお、お飾り。

丹花ライ
ゲヘナの義勇兵隊を率いていた少女。
アマネと同じ飛び級組。
イブキの姉。

ザクI
パクスが開発した現代初のMS。
操縦性が良く扱いやすいが、
ジェネレータ出力が低いなどの問題点も抱えており、早々に後継機の開発が進められた。
全高は4~5m(これはガンダムが基準となっている)
動力源には水素を用いており非常にクリーン。
この二つの特徴は後に続くMSの基本となった。
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