機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー) 作:KUS
「アキさん。今日も来ましたよ」
『アオ……アマネは?』
「忙しいみたいで……「手伝おうか?」って言っても「平気だよ」しか言わないんです」
『そうか……』
二年。
戦争が始まってからの期間だ。
そんな状況でも、アマネは対話を諦めずに呼びかけ続けた。
だが、トリニティ側は頑なに交渉を拒否し続けている。
それでも、トリニティ側も敗北続きな影響か厭戦気分が漂っているらしい。
和解の芽は、見えていた。
『取り敢えず……アマネに会ってくるか』
「まさかそのまま行く気じゃないですよね?!」
『失敬な。案はあるぞ』
俺はそう言いうと、何かがせり上がる音がした。
そして、アオの横に一つのタンクが出てくる。
「こ、これは!?」
『俺が封印される前に、アクアが培養した俺用の生体ボディ』
「生体……つまり生きてるんですか!?」
『一応、
俺が簡単に説明するが、アオの口は塞がらなかった。
その後、ボディに移った俺はアオと一緒に電車に乗っていた。
俺のボディは黒髪のイケメン……アクアめ、自分好みに作ったな……
「にしても……」
「何ですか。こっちを見て」
「丸くなったなぁって」
昔のアオは真面目な堅物っていうのが第一印象だった。
交流すれば普通に良い娘ってのがわかるが……
砕けた言葉を使っている相手もアマネくらいなイメージだ。
だが、最近は全体的に高圧的な印象が和らいでいる。
「……」
「何か心境に変化があったのか?」
「いえ……ただ……」
「?」
「アマネちゃん以外に……友達が出来なくて……」
「あぁぁ……」
「アマネちゃんに相談したら、硬すぎって言われて」
「うん……間違ってはないな」
「それで性格を丸くしようってなって」
「うんうん」
「アマネちゃんを参考にしました」
「なんかわかる」
アマネはコミュ力お化けだ。
初対面の相手とも仲良くなれる。
部下や市井との交流も頻繫にやってるらしい。
お陰で物凄い人気がある。
主に親しみやすい方面で。
「そろそろ着きます」
「見えてきたな……って、随分様変わりしたな」
見えてきたのはパクス校舎もある市街地だ。
そこには町をぐるりと囲むように壁が築かれていた。
防衛用の要塞だろう。
「アキさんは、ガンダムの姿は有名だけどその姿は初めましてだから、私に着いてきてくださいね」
「わかってるわかってる」
電車を降りてから、アマネがいるパクス連邦学園本校校舎へと向かった。
生徒会長室前。
本来俺らは部外者なのだが……アオと一緒だったからかすんなりと通れた。
俺のことは「あのガンダムのパイロット」ということで通していた。
まあ……大体合ってるからいいか。
「──」
中から僅かだが声が聞こえた。
何か話しているのだろうか。
「アマネちゃん?」
「広域即応隊の状況は?」
「問題ありません、明日一時寄港する予定です」
「なら大丈夫かな」
アマネと話しているのは……行政官か?
話しを終えたのか、アマネはこちらに気付いた。
「アオちゃんに……誰?」
「アキさんだよ」
「どうも……」
「えっ……ええええええ!?」
アマネの驚きの絶叫が部屋に響き渡った。
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「ごめんごめん、大声出しちゃって」
「大丈夫大丈夫」
「問題はないから」
アマネは微笑みながらも謝罪を口にした。
それに俺たちが反応する。
特に変わらない。6年前からずっとしてきたやり取り。
だが俺には、アマネの笑顔が無理して作られたものにしか見えなかった。
「今お茶淹れるから……」
「私が淹れるから、2人は待ってて」
「だとよアマネ」
俺はアマネを強制的に座らせる。
近場で顔を見て分かった。
化粧で誤魔化してるが隈がある。
顔も全体的に疲れている印象を受けた。
「近いよガンダムさん……」
「あっ……悪い悪い」
「……」
俺がアマネから離れると、アオがお茶をテーブルに置いた。
なんか……圧を感じた気が……
「……それで、大丈夫なのかアマネ?」
「何が?」
「休んでねえだろ」
俺の言葉に図星を突かれたのか、アマネは黙りこくってしまった。
「……大丈夫……だから」
「絞りだした言葉がそれ?」
「アマネ、少しでも良いから休め。このままじゃ体を壊すぞ」
俺たちの言葉に再度黙り込むアマネ。
数分経って、ようやく顔を上げて言葉を発した。
「あと少しだから……」
「あと少し?」
「トリニティで厭戦気分が漂ってる。今の内に交渉を進めたい。停戦出来たら休むから」
「今休まないとそれすら出来なくなるよ?」
これはもう……
「あと、あと少しだけ……」
「ていっ」
俺はアマネの首に手刀を落とした。
「アオ、仮眠室は?」
「隣の部屋にあります」
俺はアマネをおぶって仮眠室に向かった。
アマネを寝かせた後、生徒会の皆さんに事情を説明して帰宅した。
皆から泣きながらお礼を言われたが……
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それからしばらくして、卒業の時期になった。
アオもそろそろ卒業。
そのまま連邦生徒会に行くらしい。
そんな中で、俺はアマネに呼び出されていた。
「アマネ、どうしたんだ?」
「いえ……ガンダムさんに頼み事があるんです」
そう言うと、アマネは俺の方に振り向いて、微笑みながら頼み事を言った。
「アオちゃんのこと、支えて欲しいの」
「なんでまた……」
「アオちゃんは……私の夢を応援してくれた。助けてくれた」
「……」
「だから、今度は私が助ける番。
私は動けないけど、だから、ガンダムさんにお願いしてる」
「そこは自分でやれよ」
「あはは……そうだよね……でも、ガンダムさんに、私はお願いしたい」
アマネの目は真剣だった。
俺はそれを見て……最終的には折れた。
「わかった。アオのことは任せろ」
「ありがとう」
「ただ……アマネも無理するなよ?」
「うん……」
その後、アオが卒業。
俺も、パクスに学籍を貰って出向という形で連邦生徒会に入った。
あの時、無理矢理にでも断ってあいつの傍に居れば……あんな事は起きなかったのかもしれない。
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「近々、パクスとの会談があるそうですね」
「はい、パテルがセッティングしましたものですね」
「ふふ……丁度いいです。会談が行われる場所に例のアレを設置しておいてください」
「了解しました」
「所詮は、高原アマネ一人のお陰で成り立っている学園。頭を押さえれば、後は有象無象だけですわ」
「首長。ミレニアムのマイスターに払う報酬についてですが」
「想像以上の出来です。提示した額の二倍を払っておいて下さい」
「はっ」
「「これがあれば連中を潰せる」」
ゲヘナ学園
「ううむ……」
「どうしたんですかライ議長」
「いや……アマネは元気かなと思ってな」
「電話したらいいじゃないですか」
「あいつも忙しいだろ。それに、和平が結べそうなのだし」
「まあはい……」
ゲヘナの生徒会。
執務室で暇を持て余していたのはライだ。
今の彼女は、ゲヘナのトップである。
だが……
バンッ!
「議長、大変です!」
「なんだ!どうした!」
「クーデターです!生徒会の一部と風紀委員会が……」
「なっ!?」
新学期が始まって一ヶ月。
雷帝と呼ばれたゲヘナの生徒会長が失脚。
ゲヘナの政権は彼女と対立していた派閥が握る
トリニティとの融和。
新政権が掲げたものだった。
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「ゲヘナでクーデター!?」
「はい……」
「まだです……会談が成功すれば……後顧の憂いはなくなる筈」
パクス側も、混乱の渦中にいた。
同盟校での突然のクーデター。
新政権は親トリニティ。
下手をすれば2正面作戦を強いられる。
彼女たちに出来るのは、会談の成功を祈ることだけだった。
一方、パクス・トリニティ首脳会談会場。
場にはアマネとパテル首長、数名の護衛がいた。
「遅いな……何をやっているの?」
「大丈夫でしょうか」
フィリウスとサンクトゥスの両首長が、時間になっても会談に来ないのだ。
パテル首長のイラつきが伝わってくる。
アマネは純粋に心配しているだけだ。
「はぁ……待つしかありませんね。紅茶でも淹れましょう」
「ありがとうございます」
ピ、ピ、ピ
「どうでしょうか?」
「美味しいですよ」
「ありがとうございます」
「にしても……どこで道草を食っているのやら」
「首長、今連絡がありました。渋滞で遅れるとのことです」
「それなら仕方ないですね」
和やかに時間が過ぎていく。
そんな中で、アマネの護衛隊の隊員である小沢ソルは……嫌な予感を拭い切れていなかった。
(なんだこの感じは……)
ソルは辺りをより一層警戒する。
すると、彼女の耳が音を捉えた。
何かが点滅するような音を……
その音源は、会場の壁際……パテル首長の近くのテーブルの下。
そこには、怪しげな紙袋。
「!? 首長!そこから離れて──」
「えっ──」
次の瞬間、ソルは激しい衝撃に襲われた。
「何が……」
ソルが起き上がると、辺りは瓦礫の山だった。
「! アマネ会長!」
ソルは瓦礫を押しやりながらアマネを捜索する。
付近には同じように怪我人を探す護衛隊やティーパーティーが見えた。
そして……見つけた。
「アマネ会長……酷い怪我だ」
「ソル!そっちに会長がいるのか!」
「急いで救護班を!重傷です!」
その後、パテル首長は救護騎士団へ、重傷だったアマネは治療されながらパクスへと戻っていった。
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「副会長!トリニティから伝達が!」
「なにがあったの?会長は?」
「先ほど、会談会場でテロが発生!トリニティは我々がやったと……」
「なら今すぐ声明を……」
「無理です!同時に軍が動き出しました!」
ここで副会長は気付いた。
嵌められた。と……
それと同時に怒りが湧き上がってきた。
「迎撃しなさい!殲滅です!」
「了解しました!」
トリニティとの武力衝突が、始まる。
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「噓よ!?なんで!?性能はこっちが上なのに!?」
トリニティ総合学園は、今回の戦闘は勝算があって起こした。
ミレニアムからの技術協力(正確には一人のマイスター)を受けて、MSを開発したのだ。
その名もリーオー。
パクスの主力であるザクやドムを仮想敵として置いた機体。
性能は上である……はずだった。
だが、現実は甘くはない。
「ひっ」
グポーン
彼女の目の前にいたのはザクに似た青いMS、グフだ。
対MS戦闘に主眼を置いた機体で、近接戦を得意とする。
そして、近接戦を十全に行うには技量が必要だ。
リーオーを手に入れて勝てると盲目的に信じたトリニティ側は、充分な訓練時間を設けていなかった。
その結果、懐に潜られて無残にも切り裂かれていった。
更に、ザクやグフ以上にマッシブなフォルムが特徴の重MS、ドムに機動力で翻弄され、至近距離からバズーカを叩き込まれた機体もいれば、ザクに目くらましや奇襲で近付かれて、ヒートホークで真っ二つにされた機体もいた。
随伴の戦車隊も、アハトアハトやティーガーの攻撃で殲滅されていく。
これらはパクスがゲヘナから輸入していた兵器だ。
更にザクIを改修したスナイパータイプや、左肩に大砲を装備したザクII、ザクキャノンによる支援攻撃も続く。
「は、話と違う!?」
「て、撤退だ!?」
最終的に押され続け、撤退を選択するトリニティ軍。
だが、殲滅命令が下っていたパクス軍による追撃で多数の戦車や火砲を喪失。
MSに至っては、投入した15機の内、帰還したのは4機だけだった。
ちょこっと解説
小沢ソル
パクス護衛隊の隊員。一年生。
一人称は俺。なんでも舐められないようにと使ってるらしい。
後に、誰も気づいていなかった爆弾に気付いたこと。
アマネを早期に発見した功績から直属の護衛になる。
ザクI・スナイパータイプ
ハーモニー・オブ・ガンダムが初出。ザクIの狙撃仕様。
今作での設定は、旧式化したザクIをそのまま処分するのは勿体無いということで少なかった狙撃機として改修された機体。
ザクキャノン
MSVなどに登場。
ザクの支援用改修機。
今作でも原作と設定は殆ど同じ。
グフ
機動戦士ガンダムに登場した陸戦用MS。
見た目は青いザクが一番分かりやすい。
今作ではニアやアマネが対MS戦を意識して先んじて開発した機体という設定。
ドム
機動戦士ガンダムに登場した陸戦用重MS。
ホバー移動を使用する為、平地での機動力はかなり高い。
今作でも大体同じ設定。
熱核ジェットエンジンがないくらいだろうか。