機械兵と少女たちの記録(アーカイブ)と記録(メモリー) 作:KUS
「~~♪」
ゲヘナ学園の拘置所にて、雷帝こと丹花ライは吞気に鼻歌を歌っていた。
そんな彼女の下に、2人の人物が歩いてきた。
「久しぶりだなマコト。こんな所になんのようだ?」
「ふんっ、元々来る気はなかったんだが、貴様に聞くことができたのでな」
ライの下に来たのは羽沼マコト。ライの部下だった少女だ。
もう一人は情報部の空崎ヒナ。
2人の目的は、パクスについて聞き出すことだった。
「それで、何を聞きたい?」
「一つ目、貴様はあれを知っていたのか?」
あれ……パクスによる全世界宣戦布告の件だ。
「知らない。というか予定にすらなかったことだろうな」
「本当か?」
「本当だ。私が親友に対する理解のない人間だと思っているのか?」
マコトはそれを聞いて嘘は言っていないと瞬時に理解した。
なにせ、クーデターの時にメンバーにマコトがいたのを見た瞬間、やっぱりかと言ったくらいだ。
まあ、マコトが議長にならなかったのは予想外だったみたいだが。
「あれは追い詰められた末だろうな。なにせ、トリニティは和解する気がゼロ、ゲヘナは私が追い落とされ、上に着いたのは親トリニティ。ミレニアムは個人が勝手に協力した形だが、傍から見ればトリニティ寄りにしか見えない」
「政治的孤立……」
「三大校全体で、パクスを袋叩きに出来る構図にしか見えないだろ?」
マコトは若干後悔していた。
自分が議長の座に無理矢理座れば良かったと。
ゲヘナの生徒は、無秩序な人間が大部分だ。
問題児でもない生徒でも、暴力が選択肢に平然と入ってくる。
今回のクーデターだって、それが要因だ。
そんな彼女達だが、身内にはめっぽう甘い。
同盟校であり、何度か生徒間交流もしているパクス。
クーデターの結果、生徒会がパクスを裏切ってトリニティに尻尾を振るようになったらどう行動するか……
結論、不満が出る。
実際に一般生徒も、
雷帝派が丸ごとパクスに流れたのも、見切りをつけたからだろうか……
「少なくとも……連中が上に着かなければ、アマネが方針を180度変えることもなかっただろうさ……既定路線だったとしても、ここまで酷い状況にはならなかった」
「そうか……もう一つ、遺産はパクスに幾つある?」
「言うと思うか?」
マコトが聞いた遺産……ライが作り上げた超兵器のことだ。
ゲヘナ自治区にあったものは全て処分したが、書類と数が合わない。
ダメもとで聞いてみたが、口を割る気はないらしい。
「もう得られる情報はないな。帰るぞヒナ」
「ああ、マコト。これは独り言だが」
「ああ?」
ライの言葉に立ち止まる2人。
「お前が議長になれ。そろそろ選挙の時期だ。少なくとも、トリニティに二正面作戦をする余力はないからな」
「……行くぞ」
その言葉を聞いて、2人は拘置所を出た。
「マコト、さっきの話」
拘置所を出てから、先ほどまで黙っていたヒナが口を開いた。
ライへの尋問はマコトに任せて護衛に徹するつもりだったのだ。
「受けるつもり?」
「キキキッ……当たり前だろう?」
「やっぱり……」
マコトはあっさり肯定する。
彼女の権力欲は大きい。
政治に興味がないゲヘナ生の中では異端な部類だ。
「トリニティに尻尾を振る傀儡どもにも、最大の侵略者と化したパクスにも、このマコト様の野望は邪魔させん!」
そう高らかに宣言した。
彼女の野望は、キヴォトス征服なのだから。
ヒナは呆れながら見ていたが。
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「やっほ、ゼロ」
『……』
「演説、聞いてた?」
『ああ、全てな』
「これからどうするの?」
ゼロと会話している少女……聖園ミカは分かり切った答えを聞いていた。
『契約通りだ。俺は好きにさせてもらう』
「そっか……」
分かり切ったことだ。
それでも、ミカは寂しさを感じた。
「ねえゼロ。最後にいいかな」
『なんだ』
「いつか……私とナギちゃん、ルキナちゃんの三人で、パクスと和解してみせる。
それが、ユウお姉ちゃんの願いだと思うから」
『そうか』
「その時は、また戻ってきてくれる?」
『俺の気分次第だ。では、さよならだ』
そう言ってゼロは、格納庫のハッチを開き、飛び去って行った。
「行っちゃった?」
「うん……」
「ミカちゃん?」
「ううん、何でもない」
「そう……」
「ねえルキナちゃん。ナギちゃんも入れて三人で、ユウお姉ちゃんの願い、叶えてあげよう。そして起きた時にワッと驚かせよう?」
「そうだね!」
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「やはりパクスは危険因子だったのだ!」
わあっと歓声が巻き起こる。
その中でナギサは、その歓声を冷めた目で見ていた。
フィリウス分派の全体集会。
そこで今後の事を話し合うのか……
そう思っていたら出てくるのはパクス糾弾だけ。
今後の対策すら出てこない。
(本当に……目先の事しか考えていないのですか?)
この中にも現状に疑問を持つ人間はいるだろう。
実際、陰に隠れて不安を口にするメンバーを見たことがある。
だが、表立ってそれを口にしない、出来ない。
なぜなら……首長から幹部に至るまで反パクス過激派で染まっているから。
変えることなど出来ない。
口にした瞬間排斥される。
その恐怖が、フィリウス内の穏健派の口を閉ざさせていた。
(改革が必要ですね。その為にも仲間を集めなくては)
ナギサの桐藤家は、フィリウス創設以来続く由緒正しい家だ。
首長にはエスカレーター式に上り詰められるだろう。
なら、家の力も何もかもを使って現状を変える。
改革を行わなければゲヘナやパクスとの和解など夢のまた夢だから。
ナギサは心の中でそう誓った。
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「クソッ!」
ガンッ
「ひえ……」
「部長、ブチ切れてる」
ミレニアムサイエンススクールのエンジニア部部室。
そこで机に当たっているのはエンジニア部の部長だ。
なぜ彼女が切れているかと言うと……
実は、トリニティに技術協力をしたのは彼女だった。
元々、向こう側からは
「パクスと対等に政治を行うための抑止力」
と説明を受けていた。
抑止力なら……と判断し、マイスターとしての好奇心も相まって軽はずみに仕事を受けてしまった。
市販されていたザクを購入し、分解して内部構造を調べた。
あの時ほど楽しい時間はなかったと彼女は回顧する。
水素で動くクリーンさ。
4~5mという大きさに反する快適なコックピット。
足に係る負荷を分散する内部装置。
全てが彼女を魅了した。
そして出来上がったのがリーオーである。
しかし、現実はどうだ?
トリニティはリーオーを抑止力ではなく侵略に使った上、
その結果パクスは最悪の侵略者と化した。
おまけに母校まで敵認定され、リーオー自体もまともな訓練もさせずに無駄に壊す。
最後には増産を手伝え。
嘗めてんのか!と切れたくなるのも無理はない。
当然、依頼は蹴ってやった。
彼女の怒りはトリニティに対してだけでなく自分にも向いていた。
なにせ、自分の短絡的な行動の結果、矛先が自身ではなくミレニアム全体に向いてしまったのだから。
そのせいか、辺りを蹴りまくってたのが、とうとう壁に頭突きをかますようになってきた。
流石に不味いと思ったのか部員達が慌てだすと
「部長!一旦落ち着いてくれ!」
「離せウタハ!この頭が!」
止めに入ったのは一年の白石ウタハだ。
ロマンに偏り過ぎなきらいはあるが、部長が自分以上の才能とお墨付きを与えた生徒だ。
「部長、気持ちは分かる!でも今回の件に部長の責任はないだろう?!それに私だって同じ依頼を受けたら断れなかったさ!」
ウタハの懸命な説得を受け、部員達も制止に入るが、それでも止まらない。
致し方なく、ウタハはすぐそばの冷蔵庫に部長を突っ込んだ。
数分後
「はぁはぁ、落ち着いた?」
「ああ……悪いウタハ、皆も……」
部長は氷嚢を頭に当てながら謝罪した。
どうやら頭は冷えたらしい(物理的にも)。
そうこうしていると、部室に一人の人物が入ってきた。
「話は落ち着いたようね」
「ん?リオじゃないか」
彼女は調月リオ、ミレニアムの生徒会「セミナー」に所属する一年生だ。
「セミナーの……来たってことは……」
「ええ、会長からの通達よ」
「はぁ、いいぞ。処分なら甘んじて受ける」
部長は受け入れるかのように手を広げるが、通達の内容は処分ではなかった。
「まず、エンジニア部にはMSの解析を行ってもらうわ。売りに出されているザクでOKよ」
「侵略対策だね?」
「ええそうよ」
「な~んだ……処分じゃないのか」
「? 現状、あなたを切るのは合理的ではないわよ?ミレニアムでMSに最も精通しているのはあなただもの」
「ん~……安定の合理論。安心感がある」
部長は余裕が出てきたのか、いつもの調子に戻っていた。
「それから……」
「?」
「ゲヘナでMSが"発掘"された。この事から、この自治区にもMSが埋まっている可能性がある。だから調査隊が組織されたわ」
「つまり、見つかったらそいつの解析もしろと?」
「その通りよ」
「OK、任せろ」
ミレニアムでも、今後の方針が決まっていた。
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薄暗いコックピットの中。
そこに、俺とアオはいた。
「さて……始めるぞ」
そう言ってモニターを起動する。
そこに映ったのは、他のガンダムたちだ。
『あーテステス。繋がってます?ガンダムさん』
「繋がってるぞAGE-1」
『そいつは良かった』
『お~、お久しぶりです兄貴!』
「その兄貴を辞めろと何回言えばいいんだブルー!」
「え~っと……」
通信が繋がっているのはガンダムAGE-1とブルーディスティニーの2機。
他の連中はまだ繋がってない。
信号は送ってるんだがなぁ。
『先輩~お久しぶりです』
「来たかストライク」
『久しぶりに懐かしいものが開かれていると思ったら……貴様かガンダム』
「よぉ、ゼロ」
更に2機。
ゼロとストライクだ。
まだ全員じゃないが……
「他の連中は?」
『バルバトスとXは音信不通』
『ごめんなさ~い。遅れました』
『エアリアルは来たな』
『Zとアレックスにピクシーも、何やってんだ?』
『こちらエクシア。通信に参加する』
『7号機、参加します』
次々と通信に参加してくる。
全員じゃないが、この光景は懐かしいものだった。
「そろそろ時間だ。会議を始める」
『その前に……ガンダムさん。そこの女の子は?』
『あっ、本当だ~。彼女?』
『ファ!?兄貴に彼女!?』
「エアリアル、ブルー、少し黙ってろ。アオ、自己紹介」
「あっ……白鳥アオです。連邦生徒会長です」
『お~、よろしくアオちゃん』
「さて会議を始めようか」
俺は音頭を取り、会議を始める。
「まず、参加してない奴らはどうなってる?」
『こちらエクシア。デュナメス、キュリオス、ヴァーチェはまだ休眠中だ』
『4,5,6号機も同様ですね』
『俺……ブルーがうるさいから起きたんだけど、一緒のアレックスがまだ起きない』
『おかしい……ピクシーはあっさり起きたのに』
『あっと……キャリバーンもルブリスもまだ寝てます。お寝坊さんですね』
『デュエル、バスター、ブリッツ、イージス。皆出ません』
『一緒じゃないのかストライク』
『ゼロ先輩……皆雷帝派の人達とパクス行っちゃって、僕だけ置いてけぼり……』
『ドンマイ、ストライク』
「バルバトス、Z、X、エアマスター、レオパルドがいないのか」
『フリーダムとジャスティスは?あいつらなら起きて来るだろ』
『リジェネレイトとテスタメント、プロヴィデンスは兎も角ね』
『他にもいるぞ』
「繋がらない連中は今はいい。俺たちが話すのは今後のことだ」
取り敢えず話しを進める。
「まず現状からだ。パクス……ワカナが創った学園が侵略者になった」
『知っているのは俺とストライクくらいだろう』
「じゃあ一から話すか」
そして俺は事のあらましを説明した。
『なるほど、つまりガンダムさんとアオちゃんはパクスを、正確にはアマネちゃんって子を止めたいと』
「そうなるな」
「はい」
『それなら直接行けばいいんじゃないか?』
「そう事は単純じゃない。アマネを抑えても、下が止まる可能性が低い上、その隙に逆侵攻されたら……」
『今までの努力がパァだね』
AGE-1がいい感じに補足してくれる。
楽でいいな。
「そうだ。だから、準備をする」
『いつまで、計画に穴は必要ないぞ』
「そこは私から」
アオが前に出る。
ここからは彼女の説明が必要だ。
このことを聞いたときは驚いた。
「まず、私はループ能力を持っています」
『『『『『『!?』』』』』』
『じゃあ未来がわかるの?』
「はい、パクスが……アマネちゃんが本格的に大きな動きをするのは……二年後」
「それまでに、準備を重ねる必要がある」
「私は二年後、この地に"先生"を呼びます」
「彼を要として、生徒達を纏める。そして俺たちも加わって、アマネを止める」
『大体理解しました』
AGE-1の言葉に全員から肯定の意が来る。
「まず、俺は連邦生徒会でMSの戦力化を進める。じゃなきゃ土俵に立てない」
「私はエクシアさんを探させて貰います。廃墟にいると聞いたので」
『少し待て……合っている。俺がいる座標は廃墟と呼ばれているらしい』
『他の面子は?』
「ストライクはそのままゲヘナ。ゼロ、可能な限りパクスの戦闘に介入しろ。両軍とも撃滅だ。他は発掘されるまで待機」
『任務……了解』
『了解』
「じゃあ……解散」
そう言って通信を終えた。