オラリオに流れ着いたのは間違いでしか無いだろう   作:Astrad

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決闘

「やあ、ちょっといいかな。」

勇者が、そこに居た。槍を携えて。

「構いませんよ。そう言えば、お仲間はどうしたので?」

まあ、ここで襲われたとしても逃げ切る程度は問題ない。まあ、その後がとても面倒な事になるからしたくはないが。

「ああ。先に帰ってもらったよ。ここにいるのは私だけだ。」

「成程、して何用で?」

「君についてだ。先程は空気に流されてしまったが君の話で少し気になる所があってね。」

あー成程。つまり私の旅人の下りについてか。

「一体、どこに?」

「君について、他の店員からも聞いたが彼女達も君の経歴については私達に話した事と違う事を離してはいなかった。だが、そこがおかしい。」

「と、言うと?」

取り敢えずとぼけてみるが恐らく既にフィンは気づいているのだろう、私の嘘に。

「近年において、恩恵なしでそこまでの経験を積めるほど戦乱が激しいという知らせは聞いたことはない。教えてくれ、君は一体何者なんだい?」

 あーそっかぁ。ロキ・ファミリアの団長となればこの世界の情報が山のように入ってくるだろうしなぁ。もっと設定を練っておくべき事だったか。これはもう私の秘密を開示して巻き込むしかないかな。

 

「答えても良いですが、一つ条件があります。貴方は、秘密を墓まで持っていく覚悟はありますか?」

「その秘密が、危険なものでないのなら」

「それは勿論。どうせ、私の秘密を知ったって誰にも何も出来はしないのですから。」

そうして私は秘密を始めて開示する。私が異界より漂流してきた戦士であることを。

 

 

「成程ね。確かに君が旅をしているという言葉自体に嘘はない。君の言葉をロキが真実と見たのにも関わらず、僕の親指が反応したのはそれが原因だったのか」

 幸い、彼は私の話を信じてくれた。そして彼もなぜ気づいたのかを教えてくれた。

「そうでしょうね。神々は真実を見抜く力こそ持ってはいるが、あくまでもそれは言葉一つ一つに対してのみ。言い回しを工夫させれば誤認させる事ぐらいは簡単にできる。所で、秘密は話したのに、何故槍を構えておいでで?」

稚気たっぷりと言わんばかりに笑顔で槍を構えているフィン。何だろうか、何か嫌な予感がする。

「いやあ、君の話を聞いてますます興味がわいてしまってね。ちょっと決闘を挑まれてくれないかな?」

 いや、ちょっと唐突すぎる気もするがな。まあでも、実際にフィン・ディムナの腕前を知るのは悪くない話だ。多分、相手も私の腕前を知りたいのだろうが。

「まあ良いですが、それを引き受けるメリットがありませんね。」

言外に対価を要求すると、彼はこう返してきた。

「成程ね、じゃあ君が決闘をしてくれたら私個人が出来る範囲で1つっていうのはどうかな。」

それは良い報酬だな。フィン・ディムナに貸しを作れるのであれば、他人から見ればロキ・ファミリアに貸しを作っている様に見える。それなら他者に対して万が一の後ろ盾としても使えるし、ベルに良い待遇を用意できる手段が増える。

「そうか、それでは決闘を受け入れましょう。」

 

 

月夜の下、二人は中庭で距離を取って対面する。

「埋葬機関第七位、蒼崎紫音。参る!」

「ロキ・ファミリア団長、フィン·ディムナ参る!」

双剣を手に携えた男と長槍を手に携えた男が己の技を競い合うべく戦う。

 まずは一閃。フィンの槍が紫音を薙ぐ。だがそのような攻撃を受けるほど紫音は甘くない。ステップで加害範囲を抜け、フィンへ一閃。

 そしてそれをするりと己の体格差を活かして抜け出し、攻撃を加える。

 熟練者が槍と剣を交わすその姿はまるで剣舞の如く。

 

 その姿を納屋の扉の影から眺める者二人。

「凄い…師匠、あの勇者と互角に戦っている…!」

「おいバカ!それ以上に頭出したらバレるぞ。もうちょっと引っ込めろ!」

 いつの間にか酔いが覚め、目が覚め、和解したのかは知らないが、2人は決闘を影から眺めていた。もはや2人は目を離す事が出来ない。紫音の冴えわたる剣技、勇者の身のこなし。その戦う様はベートやベル達双剣を使う者にとっては圧倒的な血肉となる。

 

 いつしか2人の戦いは激しさを増していた。もはや手加減などはなく、フィンはその眼に紅を宿していた。そして紫音も又、地面だけでなく空を蹴る様に動き回り、四方八方から攻撃を振るっていた。もはや最初の気配りなどは考えず、ただただ熱狂的に二人は槍と剣を打ち鳴らす。火花が激しく散り、刃音が付近一帯に激しく鳴り響いていた。

 

 もはやその戦いを眺めているのは2人だけではない。中々戻ってこないフィンに業を煮やして戻って来たロキ・ファミリアの面々や、シルの護衛担当から騒ぎを聞きつけたフレイヤ·ファミリアの面々も、その戦いを屋根の上から眺めていた。そして、騒音が原因で近隣住民から通報を受けたガネーシャ·ファミリア(お巡りさん)も。しかし、彼らはそれに気づいていない。

 

 「そろそろ夜も更けてきた。ここで互いの全力を出すってのはどうだ!」

 「いいね!」

 実の所、彼らの対人戦の技量はそこまで変わらない。故に、彼らは決まり手を持ちえず、延々と戦い続けていた。しかしながら、空が白んできている以上終わらせなければならない。よって、彼らは互いの

 

 「起動、原理血戒27番、ベ・ゼ。」

紫音の切り札の1つ。嘗ての師の1人が遺した原理血戒とエクスカリバーを基に組み上げた大魔術の1つ。星の力を宿した光の剣を彼は構える。

 「今ここに、女神の一槍を!」

 対するフィンも投槍魔法を。もはやそこが中庭程度のサイズしかないことに気付かないほど2人はその戦いに熱中していた。そして、隙だらけであった。

 

 二人が大技を放とうとした瞬間、紫音とフィンの頭に衝撃が走った。紫音にはスコップ、フィンには槍の石突。両者共に大技が中断されたことによるバックファイアを喰らいあっけなく気絶するのであった。

 

 

 目が覚めた時、彼らは共に牢屋に突っ込まれていた。当然である。




 実は紫音、大技は多いけれど対人技が少ないので、スペックで勝っていてもフィンみたいな背が低い者を相手にするとかなり苦戦します。殺す気で戦うのであれば別ですが。なので、普段は遠距離から狙撃したりアサシンしたり2人か3人で囲って凹しています。

 基本的に、紫音は人間相手には全力を出す事は余りしません。必要がないというのが大半の理由ですが、殺しは余り好きではないからです。
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