転生お嬢様な俺は、どうやらヒロインらしい   作:緑茶わいん

80 / 80
黒幕の特定

 沙希にはいったん帰ってもらって、夜にみんなを集めることにした。

 放課後はみゆちゃんと過ごすと決めていたので、意地でもそれを貫きたかったからだ。といっても、雛瀬さんに送ってもらう間、おしゃべりするくらいしかできなかったけれど。

 彼女には幸い特に後遺症もなく元気だったのがなによりの救いだ。

 

 というわけで。

 

 一矢たちに集まってもらったのは四条の家だ。

 前にもやったように客間に案内して、お茶と簡単なお菓子を出す。

 ちなみに夜なので遥は難しいかと思ったけれど……ご家族が寝てから文字通り飛んできてくれた。

 

「お集まりいただいたのは他でもありません。わたしたちが遭遇してきたいくつもの事件、その裏に潜む黒幕についてです」

 

 単刀直入な言葉に一同は息を呑み。

 

「それはいいんだけどさ。友崎さんは本当に……なにもしないんだよな?」

「もちろん。そこはちゃんと誓ったから安心していいよ。でも……一矢が望んでくれるなら、すっごく気持ちいいこと、してあげる」

「待ってください。藤間一矢の身柄を望んでいるのはあなただけではありません。私にも彼を誘惑する権利があります」

「あはは、生身の身体もないお人形がボクに勝てるわけないじゃない」

「どうでしょうか。この身体だからこそ、生身ではできない行為もあれこれ可能になりますし、私には技術もインストールされておりますので」

 

 一矢の発言を皮切りに新入り二名が喧嘩を始めた。

 

「お二人とも、静粛にお願いします。これは、ともすればわたしたち以上に、あなたたちに関わる問題なのですから」

 

 一喝してやると黙ったのでひとまずよしとして。

 

「あの、莉緒ちゃん? 確認しておきたいんだけど、その黒幕っていうの、本当にいるの? マンガとかドラマみたいで実感がないっていうか……」

「はい。少なくとも、都築先輩を生み出した何者かが存在することは確かです。であれば、その者が他の件にも関わっている可能性は大いにあるかと」

「そうですね。創造主が存在すること自体は、否定するようにインプットされていません」

 

 あからさまに一矢を狙う二名のうち一名がそんな事情なわけなので、

 

「……ボクも『誰かに作られた生き物』かもしれないっていうのは、十分あり得るわけかぁ」

「ひどい話だな。作られた存在って言ったって、都築先輩も友崎さんも生きてるんだろ? そいつは神様にでもなったつもりなのか」

「それとも、本当に神様だったり……は、しないんですか?」

「おそらくそれはない、と、今の段階では考えています。その人物は、単に黒幕を気取って世界を動かしているだけの、ただの人間です」

 

 なんでもありな世界だけに断言できないのが困りものだ。

 

「うーん……。その黒幕が先輩たちを作ったなら、どうして自分の言うことに絶対従うようにしておかなかったのかな?」

「その方が面白いと考えたか、あるいは単にできなかったのではないでしょうか。昨今はAIの暴走などという話も耳にします。予想外の動きをしないプログラムというのはそれだけ難しいのでしょう」

 

 実際のところはポイントが足りなかった可能性もある。絶対服従にするとかなりポイントがかさむので、普通は強い忠誠心を持たせるとか使命を与えるとかで代用するはずだ。

 雛瀬さんたちだって俺が主として相応しくなくなれば普通に離反するはずだし。

 

「それで、どうやってそいつを特定するの? ボクはその人のことを知らないし、そっちの先輩は言えないんでしょ?」

「ものすごく強引な手段ですが、方法はあります。このことは完全に部外秘、家のごく限られた主要人物以外には口外しないでいただきたいのですけれど」

 

 俺はそこで一度言葉を切って、それから続けた。

 

「我らが四条家には、世界の記録に繋がる道があるのです」

 

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 

 世界の記録。つまりアカシックレコード。

 そこには世界のすべてが記されており、また、その中には「変更履歴」も含まれている。

 ある日突然生まれた存在であれば、その記録を確かめればはっきりするというわけだ。

 

 そしてそのアカシックレコードへの道が屋敷の敷地内にある。

 四条本家がここに居を構え続けているのはそれを守るためでもあるのだ。

 

 ──と、いうのはもちろん、俺が新たに作った設定である。

 

 一族の許可がなければ入れない。入っても資格のない者が触れれば即死。資格者は血族の女性のうちごく一部に限られており、資格者であっても閲覧すればするほど肉体と精神に多大な負荷がかかっていく。

 そこまでしたうえで、得られる情報はアカシックレコードの「天文学的数字」分の1程度。

 などと、あれこれ限定することで、ポイントによる世界改変を知覚可能な状態に変換したのだ。なお、それでもけっこう痛い出費となった。

 

 ちなみに今までやらなかったのは単に思いつかなかったのもあるが、都築先輩が黒幕の存在を裏付けてくれなければみんなに信じてもらえないからだ。

 俺たちへの度重なる襲撃を受け、祖父からも許可が出たので、みんなを連れてそこに向かう。

 ちなみに道中、一矢たちは目隠し、護衛についてきた雛瀬さんたちも道の途中までしか行く権利を持っていない。

 

「ゆっくり進んでくださいね。そう、子供の頃にやった電車ごっこのように」

「莉緒ちゃんも電車ごっこなんてやったことあるの?」

「わたしにも幼稚園児時代はありましたからね。そういったお遊戯もやりましたよ」

 

 案内するのが俺一人なので数珠つなぎになるしかなかった。

 

「なあ、でも、大丈夫なのか? その資格者がどうこうっていうのは」

「はい。わたしには、世界の記録に触れる『巫女』の能力がありますので」

 

 祖父が娘──つまり俺の母に反抗されたことを大いに後悔していた理由、そしてその娘である俺に過剰に執着した理由。それは、四条の血を濃く受け継ぐ女にのみ『巫女』の素質が現れるからだったのだ!

 はい、後付け設定ですね。

 

「着きました」

「な、長かったぁ……歩き始めてから一時間くらい経ってない?」

「途中、迷路のようなところも通りましたので。あ、ここではぐれたら最悪、死ぬまで迷い続けることになりますよ」

「怖すぎだろこの屋敷!?」

 

 道中は省略、ということでたどり着いたその場所には、一言で形容するのが難しい『知識の結晶』があった。

 一矢たちには負荷を軽減する専用の眼鏡をつけてもらい──そのうえで見てもらった感想は「見ているだけで頭が痛くなってくる不思議な水晶』だった。

 

「では、世界の記録から情報を取り出します。……取り出す情報は『都築先輩と友崎さんが生まれた日時』それから『生み出した人物』で良いですね?」

「はい」

「う、うん」

 

 淡々と答える都築先輩、緊張した様子の沙希。

 

「なあ、大丈夫なんだよな? 資格があっても、負担がすごいんだろ?」

「ご心配なく。こんなことで死ぬつもりはありません。まあ、わたしの能力は母ほどではありませんので、失敗するかもしれませんけれど」

 

 ぐっ、と、一矢が唇を噛み、そんな少年を見て遥と結弦がなにかを悟ったような表情をする。

 

「絶対に、無茶はしないでくれ。俺は、君をこんなところで失いたくない」

「ありがとうございます。……無茶をしなければどうにもなりませんので、はい、とは申し上げられませんけれど。絶対に、一線は越えません」

 

 そうして、俺はアカシックレコードに触れた。

 途端、脳に激痛。母ほどの能力はないとは言ったものの、転生者であることを加味すると、世界改変の事実を認識可能なぶん、負荷は極端に抑えられる。だというのに、インデックスを追っていくだけでこの負担。

 目眩、吐き気、その他さまざまな症状が襲う中、目的のデータのみにアクセス。全身に寒気が襲うのを感じながら、情報を紙の形に実体化させる。

 

「四条さん!」

 

 終了した途端に崩れ落ちた俺は一矢に抱き留められ、なんとかその紙を渡した。

 

「これを……。この状態であれば、みなさんが見ても大丈夫です」

 

 そこに記されていたのは、今からほんの数日前の日時。そして、先輩と沙希を生み出した人物の名は。

 

 ──烏丸理古。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

乙女ゲーの悪役負けヒロインにTS転生した〜死にたくないので真面目に大人しく聖女を目指します〜(作者:クソ雑魚メンタルリシテア)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

とある平民の少女"マリー"には前世の記憶が存在していた。▼それは前世では現代日本の少年で車に轢かれそうな母娘の親子を助けて代わりに轢かれて目が覚めた時には転生していた。▼今世は女の子で中世ヨーロッパな世界で少し不便を感じながらも今世は母親と楽しく過ごしていた所に母親から15歳の誕生日の前に教会にお参りに行こうと言われ教会の名前を聞いて驚愕…


総合評価:505/評価:7.38/連載:53話/更新日時:2026年10月03日(土) 12:43 小説情報

人権ヒーラー(︎︎♀)に転生おじさん(作者:春に木漏れ日)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

超絶美麗グラフィックオープンRPG『冥魂』────。▼ ▼ リリース当初はそのゲームシステムや初期ストーリーのモッサリとした展開具合にユーザー離れも酷かったが、しかしVer6.4まで経てかなり評価を覆したこの作品。▼ ……の、周年限定的なガチャでしか手に入らない人権ヒーラー(♀)に転生したおっさんプレイヤー(♂)が原作を破壊したりしなかったり、厄ネタ(主人公…


総合評価:1954/評価:7.77/連載:34話/更新日時:2026年10月02日(金) 01:12 小説情報

産廃スキル『性転換』で魔法少女になったら戻れなくなった(作者:ぷに凝)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

 スキルが一人につき一つしかない世界で、小林大翔が引き当てたのは『性転換』。▼ 性別を変えるだけの戦闘向きではない産廃スキル――のはずだった。▼ だが、女性専用装備『魔法少女のドレス』との組み合わせにより、その常識は覆る。▼ ドレスの力で圧倒的な戦闘能力を手に入れた大翔は、正体を隠したまま謎の魔法少女『プリムノヴァ』として活動を開始。▼ 少女の体と魔法少女の…


総合評価:978/評価:6.86/連載:71話/更新日時:2026年08月11日(火) 18:49 小説情報

ヒロイン矯正!【完結済】(作者:アールエー)(オリジナル:ファンタジー/コメディ)

乙女ゲームのモブ娘に転生したおっさんが、持ち前の拳法と知識を使い、平穏に生きようとしていた。しかし何の因果か同じくヒロインに転生した女の子と出会ってしまい、シナリオを知り尽くしたと思い上がったヒロインを叩き直す物語。▼ちなみに、おっさんは原作ゲームの知識ゼロ。▼性転換おっさんは作者の趣味で、必然ではない。作者の心の中では必然だが。▼精神的BLは念のため。そこ…


総合評価:1544/評価:8.79/完結:67話/更新日時:2026年08月10日(月) 12:00 小説情報

TSした俺と交友関係NTRアンハッピーセットを食らって女性不信拗らせた親友(作者:北京院)(オリジナル:現代/恋愛)

幼馴染の親友に彼女ができたので最近はあまり遊んでいなかった。▼久々に顔を見た親友は死にそうな顔をしていたものだから、詳しく聞くと彼女と先輩と後輩を寝取られたんだという。▼もう女なんてこりごりだぜ、と強がるけれど死にそうな顔をしているので少々優しくしてやることにした。久々に泊まり込みでゲームをするのは楽しかったし少しは元気が出たようで安心した。▼――で、翌朝起…


総合評価:3367/評価:8.58/連載:24話/更新日時:2026年10月01日(木) 20:10 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>