転生お嬢様な俺は、どうやらヒロインらしい   作:緑茶わいん

89 / 89
関係の変化

「ええと。もうお分かりかと思いますが、藤間くんとお付き合いすることになりました」

「うん。おめでとう、莉緒ちゃん! 式には私も参加させてね!」

「……遥? それは、お祝いに来てくださるっていう意味ですよね?」

「? 私も花嫁にしてくださいって意味だよ?」

 

 窓から一矢の部屋に入ってきた遥は、制服姿に戻りながらきょとんとして言う。

 少年は幼馴染の発言に「ほら、これだよ」と頭を抱えた。

 

「お前、前にも増して暴走してないか?」

「暴走じゃないよ! それは、前だったらカズくんも『一人を選ばないと』ってなったかもしれないけど、何人と結婚してもいいんだから、ぜんぜん問題ないでしょ?」

「いや、世間体とかいろいろあるだろ!」

「どうでしょう。合法化されたのですから、社会もそれを前提に構築されているかもしれません」

「四条さんはどっちの味方なんだ」

「それはもちろん、わたしとしてはわたし一人を愛して欲しいですけれど」

 

 俺が、生涯一人を愛し続けるのは俺個人の問題であって、人にも同じことを押し付けるべきだとは思わない。

 

「最終的には藤間くんの判断にお任せいたします。わたしは、あなたがきちんとわたしを愛してくだされば構いません」

「よし。ねえカズくん? 私なら莉緒ちゃんがしてくれないようなこともしてあげるよ? 莉緒ちゃんはお嬢様だから、あんまり変なことはできないもんね?」

「残念ながら、わたしは四条の後継ぎ候補ではなくなりましたので実質、一般人です」

 

 早い方がいいだろうと『藤間一矢さんとの交際を始めました。後日、あらためてご挨拶いたします』とスマホで送信しておく。

 まあ、それがなくても柊也と桜の結婚は決まっているので、後継者は向こうの夫婦だ。

 

「近々実家に帰ろうと思いますので、これからは気軽に遊びに来ていただいて構いませんよ」

「あれ? 莉緒ちゃんの実家ってあのお屋敷じゃないんだっけ?」

「前に少しだけお話ししませんでしたか? あれは母の実家であって、わたしの実家は普通のマンションです」

「そんなこと言ってオートロック付きの広いマンションなんでしょ?」

「そうですね」

「そうですね!? 莉緒ちゃんもだんだん私に対してひどくなってない!?」

「だって、遥がわたしと藤間くんの時間を邪魔するんですもの」

 

 頬を膨らませて抗議すれば、少女はうっと言葉を詰まらせた。

 

「だって。あんまり一人だけ先に進まれちゃったら、私たちが割って入る隙間がなくなっちゃうかもだし」

「なくなっていいんですよ?」

「ひどい! 法律的には問題ないのに!」

「あー。その、四条さんもなかなかいい性格してるな?」

「はい。わたし、けっこう嫉妬深い女なんですよ?」

 

 法的に問題なくなった今世ではあまりとやかくは言わないが、前世で浮気した女たちのことはひどいとも裏切り者だとも思っている。

 それにさっきも言った通り、本音を言えば自分だけを見て欲しい。

 

「ところで、藤間くん。恋人同士になったのですから、名前で呼んでいただけませんか?」

「え」

 

 硬直した一矢を見て、遥が「ずるい」と叫んだ。

 

「私も呼んでもらってないのに」

「お前はとっくに下の名前呼びだろ!」

「そうだけど、私も彼女として呼ばれたい!」

「無茶を言うな無茶を」

 

 幼馴染をなだめた一矢は俺に向き直って「その、いいのか?」と尋ねてきた。

 

「もちろんです。むしろ、呼んで欲しいです。……みなさんに、わたしがあなたのものだと伝わるように」

「っ。そんなこと言われたら、我慢できなくなりそうだ」

「ふふっ。わたしは構いませんけれど」

「さすがに人前でえっちなこと始めたら大きな声出されても仕方ないと思う」

 

 一理ある。

 

「はあ。わかった、それは我慢する。また今度、二人きりでな。……莉緒」

「はい、一矢くん」

 

 俺は別に初めてでもないので、口にするのは簡単だった。恋人同士として言っていると思うとさすがにじゃっかん恥ずかしいが。

 だいぶ胸にきたらしい少年はしばらく悶えるような仕草をした後、真面目な顔で遥に、

 

「なあ。五分くらい二人きりにしてくれないか」

「わかった。このことユズちゃんにも伝えてくるね?」

「待て。そんなことされたらあいつの食事当番の日、俺の分だけ抜きになるだろ」

 

 なお、伝えられた結弦当人は「兄さんの分だけ白米とお味噌汁だけにします」と言っていたので、一矢の予想よりだいぶ優しかった。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

「よくやった、莉緒。桜との連携も見事である。四条家の後継はそこの不肖の孫が務めるゆえ、お前は藤間一矢をこのままつなぎ止め、藤間と四条の血を引く子を儲けるがよい」

「かしこまりました、お祖父さま」

 

 祖父との約束は完遂、あるいは完勝と言っていいだろう。

 不肖の孫扱いされた柊也はややふて腐れた様子ではあるものの、特に文句を言うこともなく座っている。その隣には、正式に「次期当主の婚約者」となった桜がにこにこしながら座っている。

 晴れて従兄との婚約は解消、祖父から柊也には、桜以外の妻や愛人を持っても良い、むしろ血族からなら好きなだけ取れとのお言葉があった。

 

「莉緒。これからはこの家に囚われず、好きに生きるがいい。むろん、どこにいてもお前は私の孫。いつでも甘えて良いからな」

「ありがとうございます、お祖父さま。……母にもそう言っていただければ、もっと仲が良いままでいられたでしょうに」

「む。それは、娘と孫ではどうしてもな」

 

 くすくすと笑っていると、従兄からなにか言いたそうな視線。

 

「莉緒。やっぱり、家に帰るのかい?」

「はい。週末には帰ると言っておきながら、結局帰れない日も多くありましたので。これからは両親にたっぷりと甘え、弟を甘やかそうかと」

「むう。あの子はなかなかこの家に来てくれぬからな。莉緒、四条の家は良いところだと言い含めてくれ」

「まあ。また母に嫌われますよ?」

 

 祖父からは、近いうちに一矢を連れてくるように言われた。やっぱり交際の段階でも挨拶はいるらしい。実家にも連れていきたいので、一矢は二度も「恋人の家に挨拶に行く」ミッションをこなすことになりそうだ。

 

「莉緒、雛瀬とひばりはどうする?」

「雛瀬はあちらの部屋もまだそのままですし、このまま世話をして欲しいです。ひばりは、本人の希望次第ですが桜様につかせたほうが良いのでは、と」

「まあ。そうしていただけるととても助かります。気心が知れておりますし、『なにかと』便利ですので」

 

 えっちなことする時に監視兼協力者にしたりとかな。

 

「この男は周りを女で固めた方が真面目に励むだろう。この際だ、後二、三人ほど見繕っておくか」

 

 うん、頑張れ、お従兄さま。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

産廃スキル『性転換』で魔法少女になったら戻れなくなった(作者:ぷに凝)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

 スキルが一人につき一つしかない世界で、小林大翔が引き当てたのは『性転換』。▼ 性別を変えるだけの戦闘向きではない産廃スキル――のはずだった。▼ だが、女性専用装備『魔法少女のドレス』との組み合わせにより、その常識は覆る。▼ ドレスの力で圧倒的な戦闘能力を手に入れた大翔は、正体を隠したまま謎の魔法少女『プリムノヴァ』として活動を開始。▼ 少女の体と魔法少女の…


総合評価:994/評価:6.86/連載:71話/更新日時:2026年08月11日(火) 18:49 小説情報

メスガキやめれないんだが(作者:かみゃきち)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

病気で死亡しファンタジーっぽい異世界に転生したとある男。生まれ変わった先の体は女の子だった。▼死に際に前世で成し遂げたことがぱっと思い浮かばない。だから好きだったメスガキに自分がなってやろうとロールプレイを続けて早16歳。若干無理しつつもメスガキロールプレイを楽しむ彼女(彼)はとあることに気づいてしまう。▼(これ、いつやめたらいいんだ……??)▼そうです。キ…


総合評価:7230/評価:8.42/連載:23話/更新日時:2026年10月17日(土) 23:20 小説情報

TSした俺と交友関係NTRアンハッピーセットを食らって女性不信拗らせた親友(作者:北京院)(オリジナル:現代/恋愛)

幼馴染の親友に彼女ができたので最近はあまり遊んでいなかった。▼久々に顔を見た親友は死にそうな顔をしていたものだから、詳しく聞くと彼女と先輩と後輩を寝取られたんだという。▼もう女なんてこりごりだぜ、と強がるけれど死にそうな顔をしているので少々優しくしてやることにした。久々に泊まり込みでゲームをするのは楽しかったし少しは元気が出たようで安心した。▼――で、翌朝起…


総合評価:3514/評価:8.62/連載:27話/更新日時:2026年10月12日(月) 20:10 小説情報

居場所をなくしたTS聖女は魔法少女と出会う(作者:綺羅星瑠奈)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

世界統治の為、象徴として利用されたTS転生聖女のルナ。▼かつての仲間だった魔法使いによって前世の現代日本に転移する。▼しかしそこは魔法少女がいる世界だった。▼前世の妹にも信じてもらえず、死んだ方が楽なのではないか思っていたところで、死にかけの魔法少女に出会う。▼異世界でも現代でも居場所をなくしたサポート特化のTS聖女と困っている人を見捨てられない近接特化魔法…


総合評価:1783/評価:8.44/連載:43話/更新日時:2026年10月20日(火) 21:30 小説情報

白い少女はただ善く生きたい ――人々の瞳に映る少女は、ひとつではない――(作者:不明さん)(オリジナル:ファンタジー/日常)

魔法の存在しない世界で生きていた男は、気がつけば、魔法の存在する世界で白髪と白い瞳を持つ少女――リヴィアとして生きていた。▼赤子の頃に教会の前へ置かれた彼女を拾ったのは、アドリアンという一人の神父。穏やかに人々へ手を差し伸べる彼に育てられながら、前世の記憶を取り戻したリヴィアは思う。▼前の人生では、悪人ではなかった。けれど、面倒や危険を避けて、手を伸ばさなか…


総合評価:670/評価:8.14/連載:39話/更新日時:2026年09月22日(火) 02:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>