あと12日ログインしてたらなぁ。
ちくせう。
放課後の教室。
プロデューサーは、いつも通り書類を確認していた。
ただし、いつものような俊敏さはなく…少しだけ動きが鈍いように見えるが、
「いててて……」
右の頬を押さえる。
じつは、先日抜歯した親知らずの跡地が、彼の口腔内で地味に主張を始めていたのだ。
人体とは、時々未来のトップアイドルより目立ちたがる。
不思議なものである。
「プロデューサー、大丈夫ですか?」
手毬が心配そうに顔を覗き込んだ。
「すみません。実は昨日、親知らずを抜きまして……」
「腫れて痛そうね……薬はないの?」
「生憎、いま持ち合わせていなくて…」
「んじゃ、先生に聞いてみたらどーです?痛み止めならあるかもですよ?」
「あー…確かにそうですね。痛みがこれ以上酷くなる前に聞いてきます」
プロデューサーは教室を出ていった。
「ヌキ過ぎたのかな…プロデューサー」
「ええ、腫れるまでヌいちゃったみたいね」
「色々語弊が生まれそうじゃね?オマエら」
◇
数分後。
戻ってきたプロデューサーは、なぜか薬袋を手にしたまま、顔だけが一段階ほど暗くなっていた。
「……戻りました」
「おかえりなさいプロデューサー! 薬はあったの?」
「はい。あさり先生に確認したところ、使えそうな市販薬を融通していただけました」
「よかったじゃない!」
「ただ」
プロデューサーは、袋の中身を見た。
「坐薬でした…」
その瞬間、先ほどまで“女三人寄れば姦しい”を地で行っていた教室が、やたらめったら静かになった。
紙が一枚落ちても気まずい音がしそうな静けさだった。
何故こうも静かなのか?
それは彼女たちが、例のアレを狙っているからだ。
頭をフル回転させて…。
「………へー!気が効くわね、あさり先生も!」
そんな中、
最初に声を出したのは咲季だった。
「咲季さんは俺に近づくの禁止です」
「まだナニもしてないわよ!」
「なんなんですか、そのイントネーション…。今の咲季さんからは身の危険を感じます」
プロデューサーの処※ア※ルを狙わんとばかり。
これぞFisting My Way。
「まーまー…でも、プロデューサー?ざ、坐薬は効き目は早いって聞きますけど?どうです??」
「藤田さん、急に冷静な医療知識を足さないでください。俺の逃げ場が減ります」
「でも痛いんですよね?」
「そりゃまあ、痛いですけど…」
「じゃあもう使うしかないじゃないですか、ラクになれますよ?な、咲季」
「ええ!もちろんよ」
「正論って、時に人を追い詰めるんですね」
花の命は…なんて言って、
感情を諦めたくない。
花は花でもプロデューサーの菊の花なのだが。
正に冠菊。
そこで、手毬が静かに言った。
「どうやって使うの?」
まさかの素で知らなかった。
「…月村さん。その質問は、いま教室で投げるべきじゃありません」
「じゃあ説明書貸して」
「正直、説明書を渡すのものも憚られるんですけど……」
プロデューサーは悩んだ。
もし自分が説明したら…それはセクシャルハラスメントに該当するのでないか?だが、ことねや咲季に頼もうにも…。
ㅎvㅎ
二人してこんな顔をしている。
なんてことだ。
頼めるわけないじゃないか。
悩んだ果て…プロデューサーは説明を放り投げた。
「…なるほど、よく分かりました」
「お願いですから月村さんはおかしなこと言わないでくださいね?」
「説明書には第二関節くらいまで入れるって書いてありますね」
「お願いですから話を聞いてください」
無情にもプロデューサーの懇願は届かない。
「第二関節…」
「藤田さん?」
「だいじぶですって。ちゃんとソコまで挿れますから」
「藤田さんも接近禁止です」
咲季が、無言で袖をまくった。
「…けどココも第二関節よね?コッチの可能性もあるのかしら?」
手毬に、自身の肘を指差し…真剣な表情で問う。
「そうだね。指とは明言されていないし、肘まで挿れる可能性もあるよ」
「とんだ迷言じゃないですか、そんな可能性ありません」
「プロデューサー、この花海咲季…いや、私たちに任せなさい!」
「なにも任せられませんね…」
「フッ…仕方ないね。私も手を貸すよ」
手毬も腕を捲り上げる。
「手を貸さないでください、腕を捲らないでください」
ことねも呼応するように、さらに腕をまくった。
「だいじぶです、あたし躊躇しませんから!」
「善意で踏み込んでいい領域と、そうじゃない領域があります。躊躇してください」
プロデューサーの嘆きの声が教室に響いた。
「そもそも第二関節は指の話です!肘じゃないですからね!」
「プロデューサーは肘まで行く気だったの?」
「…拡張済みだったんだ」
「プロデューサーもやることやってるんですね…」
Re;IRISが真顔で聞いた。
「…それは酷くないですか?」
「でも、トップを目指すなら何事も全力でって言うのも大j――」
「この件にトップ精神を持ち込まないでください」
プロデューサーは薬袋を丁寧に閉じた。
「……もう一度、あさり先生に相談してきます」
「まだ聞くことあるの?」
「飲み薬はないか、と」
それは数分後のことだった。
『アッーーー!!!』
あさり先生のドリルは、プロデューサー君を突くドリルだ。
ギガ※※ルブレイク。
プロデューサーは天に召された。
なんか一言書いていってちょ。