善意100%の悪役成金豚野郎「ぶへへ!どぉやら、お困りのようでんなぁ〜?」   作:枕がデカすぎる下っ端モブ

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亀進行です。
プロローグ(ゲーム版ゴールトンの主な登場シーン)を書ききってから、本編の予定です。


プロローグ①:“黄金卿”ゴールトン・デン・ガーランド

 

 

***

 

 

 ─1・危うい潜入作戦─

 

捉えられた仲間の一人、古代遺跡専門の冒険家を自称する女性…「ジェーン」を救出するべく、主人公…「アッシュ」たち一行は、ガーランド伯爵領で開催される闇オークションの裏手から侵入を試みているところである。

 

 

「くっ…事前に調べていたよりも、警備の数が多いような気がする…!」

 

「…いや、おそらく気の所為じゃあない。 すでに事前の情報とは食い違うような場面に、何度もでくわしている…ということは、これは…」

 

アッシュと、その仲間の一人。同じ村で育った旧知の仲である魔法使いの男性…「キール」は、周囲に潜んでいるかもしれない敵に察知されないように小声で、しかし自分たちが感じている疑惑と違和感を言葉にして、共有し合う。

 

 

「キールさん、何か気になることが…?」

 

「…ああ、そういう可能性もあるんじゃないかと思っていたけど、おそらく僕らは一杯食わされたんじゃないか、…と思ってね」

 

「一杯、食わされた…?」

 

「ああ、つまりは、僕らはオークションの警備に関する偽の情報を掴まされたか…いや、思えば僕たちの侵入を、まるで察知していたかのような場面すらあった。 ということは…僕らの情報を、この闇オークションの主催者に売られたんじゃないか、…って」

 

「そ、そんな…!」

 

魔法使いのキールの考察に対し、もうひとりの仲間である聖職者の女性…「プルア」が、驚愕と悲壮感をにじませた、小さな悲鳴のような声を漏らす。

 

 

『ンそのとぉ~~~りぃ~っ!!』

 

「「「 !!!! 」」」

 

不意に、3人の頭上から、下卑た野太い男の声が響き渡るようにして聞こえてきた。

 

 

「どっ・せぇ~~~~いっ!!」

 

「あぶない!」

「くっ!」

「きゃあ!」

 

ズドォンッ!!という、重厚な音を響かせながら、巨大な何かが3人を押しつぶすようにして落下してきた。

 

アッシュは咄嗟にプルアを引き倒すようにして一緒に飛び退いて回避し、キールは単独で…しかし、そのせいで他の2人とは真逆の方向に飛び退いて回避する形となってしまった。

 

どうにか3人とも無事に済んだが、巨大な何かを間に挟むようにして、分断されてしまう。

 

巨大な何かが落下した衝撃で、地面から土埃が舞い、一体何が落ちてきたのか…その正体を隠し、そのシルエットだけが舞い飛ぶ土埃に影となって映し出されている。

 

 

「ぶひぃ~ん。 …おんやおやぁ~?今ので1人も仕留められへんとは。 アンタさんらは、思てたよりも随分とけったいなお人らのようでんなぁ~。 ぶっひゃひゃひゃ!」

 

落下してきた巨大な何かは、先程聞こえてきたのと同じく下卑た野太い声で、漏らしながら愉快そうに汚い声で笑う。

 

徐々に土埃が晴れていき…やがて視界が明瞭になり、その空間の中央にいた存在が視界に捉えられるようになる。

 

そこに居たのは、3人の中では最も背が高いはずのアッシュの1.5倍ほどもの背丈のある巨躯を持ち、さらには全身が異常に膨らんでいるようにぶくぶくと太って見える、超巨漢の大男であった。

 

 

「ぶひひ。 アンタさんらが、噂の侵入者さんなんやろぅ?まぁったく、不法侵入やなんて、どエラいハナシですわぁ。 …ワテが開催するオークションは、完全招待制。アンタさんらみたいに裏口から入ろうとするなんて、ご法度もご法度や!」

 

「お前が開催するオークションだと…!? お、お前が、闇オークションの主催者…!」

 

「せやでぇ~?みぃ~んな大好き、ゴールトンさんの、とぉじょぉやで~! ぶっひひひ…」

 

 

 ▶『“黄金卿” ゴールトン・デン・ガーランド』

  -ガーランド伯爵領の主。

   だが、その正体は「人の命や尊厳をも売り物にする」という闇オークションの主催者としての顔も持ち合わせた、巨漢で肥満の極悪人。

   ぶくぶくと肥え太った巨体をブルンブルンと揺らし、ぶひぶひと下品な笑い声を漏らす。

 

 

「ゴールトンだと!? ふざけるな!それはガーランド伯爵領の、領主の名前だろうが!」

 

「ぶひゃひゃ!薄汚いネズミのくせに、ワテのような高貴なもんの名前を、よぉくご存知でんなぁ~!」

 

魔法使いのキールは、その名を聞いて噂に聞いていた悪徳領主の名前と一致していることに即座に気がついた。

 

しかし、まさか悪徳領主とはいえ、自分の領内で違法なオークションを開催…それどころか領主自らが主催までしているとまでは流石に想像できず、思わず狼狽えてしまう。

 

キールの疑惑の言葉に対し、その疑惑を粉砕するように、ゴールトンと名乗った巨漢は、「自分こそがその領主・ゴールトンである」と答えた。

 

 

「ま、まさか…本当に本人だっていうのか…? 闇オークションの主催者が、伯爵領の領主だって…!?」

 

「ぶひゃ、ぶひゃ!ぶひゃひゃひゃひゃ! おにぃさん、そんなアホみたいに驚かんといて…ぶ、ぶひゃひゃ! ひぃ、ひぃ~、ワテを笑い殺す気かいなあ! ばっひゃひゃひゃひゃ!」

 

「くっ…何がおかしい! お前、自分が何をやってるのかをわかっていてその態度なのか! 少し調べただけでも酷すぎる…危険な薬物や、盗まれて紛失したと言われていたはずの盗品の数々、さらには罪のない人を誘拐までしてきて…それらを商品として売りさばいている、闇オークションなんだぞ!」

 

キールの困惑に対し、ゴールトンは大爆笑で嘲笑う。

 

そんなゴールトンの態度に怒りを覚えたアッシュは、闇オークションで何が行われているのかを糾弾するように、激昂とともに言葉をぶつけた。

 

 

「ぶひひ…。 それが、どないやっちゅうねん? そんで、なんでワテが、アンタさんみたいなコソ泥の薄汚いネズミなんぞに、怒鳴られないとあかんのや。 はあ~ぁ。アンタさんの方は、そっちのおにぃさんと違ぉて、ちぃ~っともオモロないなぁ~…ホンマ、シラけてまうわあ」

 

「な、なんだと…!」

 

アッシュは、そして同様にその発言を聞いた他の2人も、皆同様に絶句した。

 

自分が行っていることを、一切悪だと認識していない。…いや、意図してそういう態度を振る舞っているというだけなのかもしれない。

 

しかし、まったく悪びれもせずに、つまらなそうに先程の糾弾を受け流したその態度には、明らかな邪悪で醜悪な精神性が滲み出ているのを感じ取れる。

 

この発言を聞いた3人は、この人物こそが闇オークションの主催者なのだという、揺るぎない確信を抱いた。

 

 

「にしても、アンタさんらは随分とノンキなお人らみたいでんなぁ~? ここがどこだか、忘れとるんとちゃいまっかあ?」

 

「なに? …ハッ!」

「…! し、しまった…!」

「…あっ!」

 

いつの間にか、3人の周囲には、無数の武装した警備兵たち…まず間違いなく、このゴールトンの手先であろう者たちが取り囲んでいた。

 

3人は周囲に対応しようと一箇所に集まりたいところであったが、この場の中央にはとんでもない巨漢の大男が仁王立ちで控えており、魔法使いで接近戦では不利であるキールが単身で分断されてしまっている。

 

3人はそれぞれ、焦りに小さく顔を歪め、突然の緊張状態により額に薄っすらと汗を滲ませた。

 

 

「楽しぃ楽しぃお喋りの時間は、そろそろ終いやぁ。 アンタさんらが、この闇オークションに侵入しようと、なんやらちょこまかと嗅ぎ回っとったんは、とっくに知っとったわ。 ほんなら、そのための歓迎会の準備くらい、とぉぜん用意させてもらわんとなあ~?」

 

ゴールトンは巨漢を揺らし、楽しそうに両手を広げ、芝居がかった台詞回しで大仰に言葉を並べだす。

 

 

「こんだけの人数を揃えるのに、ぎょーさんカネはかかってもうたが…せやけど、安心してくんなはれやぁ~! ぶひゃっ!」

 

ゴールトンは凶悪な笑みを浮かべながら、芝居がかった台詞回しの最中に、我慢出来ないとばかりに下卑た笑い声を漏らし始める。

 

 

「ほぉ~うれ、コイツはワテの奢りや…たぁんと喰らいやぁ〜! ぶひゃっ、ばあっひゃひゃひゃひゃ!」

 

まるで大芝居でも演じているかのように、天に何かを掲げるように両手を上げて、大仰な仕草で爆笑するゴールトン。

 

そして、その言葉を合図に、一斉に周囲の武装集団が動き出す。

 

 

***

 

 

 ─2・VS ゴールトン&傭兵集団─

 

「くっ、卑怯な…!」

「ひぃっ…!」

 

接近戦を苦手とするキールとプルアが、あまりにも不利な状況に狼狽えながらも、手持ちの武器を構えて迎撃体制を取る。

 

それで数人ほど、数分ほどはしのげても、いずれ必ず数の暴力ですり潰されるだろう。…その想像がプルアを恐怖させ、小さな悲鳴となって漏れ出した。

 

 

「畜生…! せめて、コイツだけでも…!」

 

アッシュは、目的であった仲間の救出どころか、自分たちの生還すら危ういことを認識し、即座に覚悟を決めた。

 

そして、武器を構えながら近づいてくる武装集団ではなく、大仰な仕草で大笑いし、隙だらけの様子を見せているゴールトンに向かって、一矢報いるべく両手で剣を握り締めて突進するように駆け出す。

 

 

「喰らえ! “閃光剣”!!」

 

「ぶひゃひゃひゃ!…ぶひゃ? …ンぶぶぶぶっひぃ~っ?!」

 

閃光剣。相手の反撃と防御を許さない、凄まじい剣速で斬りかかる、必中の剣技である。

 

アッシュはゴールトンを片口から袈裟斬りにする勢いで、凄まじい速度で剣を振り下ろした。

 

 

──ガギンッ!!

 

「なっ、なにっ…!?」

 

「…ンなぁ~ん・ちゃっ・て! ぶっひーんっ!」

 

「おあっ!? ぐああーっ!!」

 

…しかし、アッシュの手に伝わってきたのは、肉を切り裂く感触ではなく、極めて硬質な…何か硬い金属に打ち付けたような、鋭い打撃感であった。

 

袈裟斬りにするつもりで動かそうとしていた腕や体幹の動作が阻まれたことで、アッシュの体は数瞬硬直してしまう。

 

それに対して、ゴールトンは怯えるように見せていた仕草を一瞬で取り払い、すぐに余裕を笑みを浮かべて、反撃とばかりにその巨漢から放たれる凄まじい膂力の拳撃を、アッシュの腹部に叩きつけ、吹き飛ばす。

 

弾け飛ぶように転がりながら、武装集団の眼の前まで無防備な姿勢で滑り出してしまうアッシュ。…その姿は、まさに絶体絶命と言える。

 

 

「ア、アッシュ!そんな…いやぁ!」

「おい!アッシュ! ぐっ、くそっ…このぉ! しっかりしろっ、アッシュぅーっ!!」

 

「ワテの名前はご存知なのに、“黄金卿”の呼び名をよう知らんかったとは、アホやなぁ~? ぶひゃ、ぶひゃひゃひゃひゃ!」

 

ゴールトンの肩口は、アッシュの剣閃によって衣服の一部に切れ目が入り、その下にあるものが露出していた。

 

そこには、鏡のように磨かれた輝く黄金が隠れ見えており、衣服の下に「黄金の防具」を身に纏っていたであろうことが想像できた。

 

だが、ゴールトンから強烈な一撃を腹部に受けてしまったアッシュは、体をくの字に曲げて転がることしかできず、その真実を目にすることはできない。

 

 

万事休す。

 

魔法使いであるキールが、近接戦闘を得意とするであろう武装集団に囲まれており、苦戦を強いられ…今はまだ耐えられているようだが、そう長くは持たないだろう。

 

聖職者であるプルアは、鈍器による近接戦闘を行うことができるが、そもそも荒事を苦手としている回復役であり、しかも倒れて動けないアッシュの容態が気にかかっているようで戦闘に集中できていない。

 

近接戦闘を担う戦士であるアッシュは、未だに身を起こすことができず…今まさに、武装集団の1人が振り上げた凶刃により、その生命の糸を絶たれようとしている。

 

 

──その時であった。

 

 

「ヤッ! ハアッ!」

 

「ぐあっ!」

「ぎやっ!」

「な、なんだっ…ぐああっ!」

 

「…ぶひ? いったいどうし…ぶひゃっ!?」

 

魔法使いのキールがいるであろう方向、ゴールトンからは背後で繰り広げられているであろうはずの蹂躙劇に、異変が起きた。

 

鋭い打撃音と、男たちの鈍い悲鳴、そしてドサドサとなにかが地面に倒れていくような音。

 

違和感を覚えたゴールトンが振り向いてみると、そこには優勢であったはずの武装集団…ゴールトンの雇った傭兵たちの多くが倒れ伏し、今や数人しか立っていない状況である。

 

 

相対するのは、魔法使いのキールしか居なかったはず。

 

しかし、いまやそこにはもう一人…黒い衣を身にまとい、目元以外のすべて…髪・鼻・口元などを隠す怪しい人影が、影の中に身を潜めながら次々と傭兵たちを奇襲して昏倒させていく姿があった。

 

 

「フッ! イーヤァッ!」

 

「ぐぎゃあっ!」

「がああっ!」

 

「ぶっ、ぶひひっ!?」

 

黒い衣を身にまとう謎の人物は、口から怪音を発しながら、黒いなにか…飛び道具のようなものを投擲した。

 

狙いは、ゴールトンを挟んで向こうに倒れ伏すアッシュ。…そこへ凶刃を振り下ろそうとしていた傭兵である。

 

その投擲物…黒い投げナイフのようなモノは、見事に武器を持っていた方の腕に命中、アッシュに凶刃が振り降ろされることなく武器を取り落とさせることに成功した。

 

 

「なっ、なぁにをやられたい放題にしてはるんや!あ、新手やあ! ソチラさんも囲い込んで、全員纏めてイテこましたりぃや~! んぶひぃーっ!」

 

「おうっ!」

「おらぁ!」

 

「シッ、ハアッ!」

 

謎の黒衣の人物は、素早い身のこなしで華麗に攻撃を捌きながら、反撃を繰り返し着実に傭兵の数を減らしていく。

 

そんな中でキールは、自身の周囲からの圧が減り、余裕が生まれたことで、すかさず魔法で周囲の敵を次々と攻撃し、瞬く間に態勢を立て直していった。

 

 

「誰だか知らんが、助かった!」

 

「話は後で、今は脱出と逃走を…ゴールトンには、まだ奥の手が残っております…!」

 

「なにっ…!」

 

キールは謎の黒衣の人物に感謝を告げる。

 

しかし、帰ってきた言葉は、油断ならない情報である。

 

 

「ぐ、くぅぅ…」

「アッシュ!しっかりして…“ヒーリングライト”!」

 

「ンぶっひゃあーっ! どないなっとんねん!アンタさんらには、ぎょぉーさんカネ払って雇っとるんやでぇ! あんじょうキバりやあ~っ!」

 

アッシュへのトドメを刺し損ねたこと、そして謎の乱入者によって場をかき乱されたことにより生まれた数刻ほどの隙を活かして、プルアが回復魔法をアッシュにかける。

 

回復魔法を受けたアッシュは、痛みが引いて体が動くようになり、すかさず武器を手に持ち立ち上がり、立ち上がりながらも近場の敵の1人を剣の一閃で沈める。

 

 

ゴールトンは、片方では魔法使いと謎の黒衣の人物による軽妙なる連携により倒れていく傭兵たちを見て、もう片方では強烈な剣閃を放つ戦士を起点として回復魔法を操る補助役がうまくサポートする形でどんどん傭兵を沈めていく姿を見る。

 

アレほど余裕があったはずなのに、一気に形勢逆転となった。

 

ともすれば、このままではそれほど時間もかからずに傭兵たちは全滅し、残るはゴールトンただ1人だけとなってしまうだろう。

 

 

ゴールトンは悔しそうに顔面の贅肉を歪め、怒りに満ちた声音で大声を張り上げた。

 

「こ、こうなったらぁ…()()()()()()()はあ~~~ん!! 出番でっせ~~~!!」

 

 

ゴールトンの呼び声に呼応し、ゴールトンが降ってきたときと同様に、天上から何かが…静かに、ストンと落ちてきた。

 

「……」

 

「…! …まずい」

 

現れたのは、まるで踊り子のように布面積の少ない紫色を基調とした衣を身に纏う、靭やかで猫科の獣のような雰囲気を放つ、鋭い目つきの女性であった。

 

謎の黒衣の人物は、その姿を視界の端に捉えたと同時に、目を細めて眉間にシワを寄せながら、小声で苦悶の言葉をこぼす。

 

 

「ぶへへへ…。 ほんじゃまあ、ヴァイオレットはん。早速やけども、せっかくのワテの奢りを無下にしはってもうたソチラさんらを、今日のオークションのオマケにでも添えよう思いますねん。 …ちゅうこって!女は生け捕り、男は三枚おろしにぃ…叩っ斬りぃやあ~!!」

 

「…御意に」

 

 

 ▶『“紫電” ヴァイオレット』

  -ゴールトンに雇われている、腕利きの用心棒。

   踊り子のような姿をしているのは、体の動きを阻害しない機能性と、人を油断させるためのもの。

   凄まじいまでの剣技の使い手であり、同業者や事情通には「紫電」という渾名で知られ、恐れられている。

 

 

「全員、逃げることに集中しろ! そいつは私が相手をする! 命が惜しいなら、ここで退け!」

 

謎の黒衣の人物は、3人に向かって叫ぶように忠告し、即座に紫の衣を身に纏う踊り子…ヴァイオレットに肉薄した。

 

ヴァイオレットは背に隠し持っていた細い曲剣を両手に1本ずつ持ち、飛びかかってきた黒衣の人物を軽々いなして動きを止めてしまう。

 

続けて、柔軟で素早い身のこなしと、そこにヘビのような軌道で急襲するかのごとく鋭い足技まで放ち、黒衣の人物は応戦するだけで手一杯という様子ですぐに苦戦しはじめた。

 

 

「早く脱出しろ!死にたいのか!」

 

「す、すごい戦いだ…でも、なら俺だって…!」

 

「よすんだ、アッシュ!」

 

アッシュの視線の先では、黒衣の人物とヴァイオレットと呼ばれた剣客は、凄まじい剣戟・攻防を繰り広げている。

 

しかし、ヴァイオレットの方には明らかに余裕があり、黒衣の人は劣勢…このままでは、いずれ敗北すると思えてしまう。

 

自分も加勢に…!そう思って踏み込もうとした刹那、仲間のキールから鋭い声音で静止されてしまう。

 

 

「僕達の潜入は最初からバレていたんだ!このまま続けていたって、ジェーンが助けられる保証もない! …悔しいが、ここは一旦撤退しよう…!」

 

「で、でも、助けてくれた人を残して逃げるだなんて…!」

 

「甘っちょろいことをっ…ぐぅっ!言ってるんじゃない! お前たちでは敵わん、さっさと逃げろ!!」

 

「くっ…くそぉ!」

 

アッシュは、自分たちの未熟さと思えるもので窮地に立たされてしまい、それを見ず知らずの人に助けられただけでなく、その人を置いて逃げなければならないという状況に、躊躇と困惑の念を抱き、立ち止まってしまう。

 

そんな様子で、なかなか逃げようとしない3人に向かって、黒衣の人物が怒気を発しながら、もう一度逃げ出すように言い放つ。

 

実力不足である。暗に、そう突きつけられたアッシュは、悔しさに歯噛みしながら、3人揃って急いで脱出するのだった。

 

 

「あっ! おい待たんかいワレこらあ!! ぶっひぃーんっ! せっかくヴァイオレットはんまで呼び出して、あのマックロ野郎を抑えてもろぅたっちゅうんに、他の傭兵共は何してまんのや!」

 

ゴールトンは、みすみす取り逃がしてしまうことになった3人の逃走していく姿を目で追いながら、激憤した。

 

実は、そのゴールトンが言う傭兵共という者たちの多くは、黒衣の人物がこの場にたどり着く間にも何人も倒していたため、逃走経路を塞ぎ切ることができなくなっていたのである。

 

 

「くっ…ぐあっ!」

 

「…シッ!」

 

黒衣の人物は、極めて劣勢に立たされているところである。

 

ヴァイオレットの剣閃と脚技の連撃は、手練れに思えた黒衣の人物ですら捌き切るのが用意ではなく、あと数分も刃を打ち合わせれれば、いよいよ敗北を喫するだろうところまで追い詰められていた。

 

 

…が、黒衣の人物は、3人が逃走するのに十分な時間稼ぎができたと判断したところで、力を溜めて大技を放とうと構え…た、ようなフリをして見せてから、奇襲気味に煙幕爆弾を起爆。辺り一面を煙に包みこんだ。

 

「はああっ…! デリャーッ!」

 

「…ムッ」

 

「ぶひ? な、なんやあっ!?」

 

ゴールトンの視界は、一瞬で灰白色の煙に包まれ、しかも少し目が染みる。

 

「ぶぇほん!ぶぃひん!」などという珍妙な咳払いをしながら目をこすり、あまりにも無防備な姿を晒す。

 

その隙を突くように、黒衣の人物は煙の中にいながらゴールトンに急襲。…するが、視界不良の中で繰り出したその一撃すら、ヴァイオレットに阻まれてしまう。

 

「キンッ…」と鋭い金属音が一撃、空間に響き、奇襲による必殺が失敗したと判断した黒衣の人物はすぐさま転身。

 

今度は自身が、脱兎のごとく逃げ出すのだった…。

 

 

「ぶひぃ、ぶひひぃ…。 と、とんでもないやっちゃ…目も鼻もムズムズしてたまらんわい。 …ぶぇっほん!ぶぃひっほん!」

 

「…ちっ。 どうやら、逃げられたようで」

 

「ぶぇほ、ぶひひほ…。 ぐ、ぐぬぬ…何やったんや、あんのマックロ野郎ぉ…! 次に会ぅたら、タダじゃすまへんでぇ~…!」

 

 

***

 

 

…こうして、アッシュたちは闇オークションの支配者である、ゴールトンとの邂逅を果たし、さらには手痛い敗北の記憶を刻まれることになった。

 

 

ジェーンの救出も叶わぬまま、一時撤退を余儀なくされた主人公一行。

 

敗北の記憶と実力不足に苦悶する3人の元へ、不意に予期せず人物が現れる。

 

 

そうして、無事に脱出した黒衣の人物と再会した3人は、黒衣の人物と協力体制を結びながら、ジェーンの救出とゴールトンへのリベンジを目指すことになり、物語は更に進展していくのであった。

 

 

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