次の日
「さて、君の艤装の損害状況を説明する。まずは機関部。ここが一番ひどい。浸水して、タービンに海水が入り込んで水蒸気爆発を起こした。4基のガスタービンはすべて破壊された。ディーゼルエンジンは生きてはいるが、それでも損傷していて半分の出力も出ないだろう。次に武装面。主砲は揚弾機や装填装置に深刻な金属疲労、そして一部の断裂を確認。そして後部の3基は弾薬庫が爆発して完全に破壊されてる。魚雷発射管は、後部の2基が破壊されて、前方の1基は生きている。その他装備に関しては、通信、電探系統、射撃方位盤、測距儀は全損。船体に関してはもう、内部からの爆発が激しすぎてわけのわからんことになっている。せめて前方の損傷は後方に比べて比較的マシだったから調べはしたが、破口が38箇所。装甲の断裂が12箇所。はっきり言って、艦首は脱落寸前だったよ。なんでギリギリまで浮いていたのか。本当に不思議でならない。まったく、無茶をしすぎだ。もっと自分を大切にしなさい。」
「あなたから言われるとは・・・私も落ちましたね。」
「おい・・・それはどういう意味だ。」
「医者の不養生という言葉はご存じで?」
「うぐっ・・・ま、まぁ、しばらくはあんまり暴れないようにな。」
「それは深海棲艦に気分次第ですね。」
***
一か月後
訓練を終え、埠頭に飛び乗り、艤装をしまう。
「いやー、一か月でここまで回復するとは・・・。以前と同じような状態になるまでに最低でも半年はかかると思ったのに。」
「そんなにのんきにしていられるような戦況でもないですから。」
渡していただいたタオルで汗を拭きながら、歩き出す。
「東京湾は狭いですね。早く外洋に出たいです。」
「そういって、すぐに戦闘するんでしょ。まったく、君は暴れるのが大好きなんだから。覚えてる?まだ君がここにいた20年前。毎日毎日、経てなくなるまで訓練ばっか。地を吐いたこともあったねぇ。」
「仕方ないでしょう。練度が全く上がらないんですから。私も好きで戦闘をしているのではありません。やらなければならないことをやっているだけです。」
「練度が上がらないのは、変わらないのか・・・。」
「何ですか。」
「いや、君も知っているだろう。同じ年に建造された、もう1隻の実証実験艦を。」
「そのような方がいる、ということだけは。どのような方かは存じ上げませんが。」
「彼も、君と同じような状況になっていると聞いてね。呉海洋研究所で建造されて、そこの研究者と意見交換を何度もしたんだが、理由は全く分かっていない。」
「実証実験艦艇といっても、中身は他と変わりませんからね。」
「一応の結論として、最大練度99の、んーなんていうか、質、が違うのではないか、という感じで。」
「質、ですか?基本的に、艤装の性能が同じならば、練度99において、実力は全く変わらないと聞いたことがありますが。」
「いや、確かにそうなんだ。それは正しい。言い方が難しいな。質でもなくて・・・えっと、君は、練度が20くらいだろう?でも、横須賀の水雷戦隊で最大練度を誇る大柳よりも強い。」
「艤装の性能が違う、というのもあるでしょう。」
「確かにそれもある。だが、君の艤装は、性能の80%を発揮することも難しい。使用者の実力がなければ、まともに使えないような代物なんだ。君がまだここにいたころは、艤装の性能に君自身の実力が追いついていないのでは?とも考えていた。艤装の性能を十分に引き出せなければ、練度も上げられないからね。だけど、今回の損傷を見て、君は艤装の限界を超える性能を出していることが分かった。」
「・・・練度、というのは、どういうものなのでしょうか。私は今まで、艤装の扱いに良し悪しにかかわると考えていたのですが、今の話を聞くと全然違うようですね。」
「いや、うん。それも正しいんだ。使用者が、艤装を正しく理解し、使いこなせるようになれば、練度はより上がる。練度は、いわば艤装の性能の何%を出せるか、なんだ。だが、君は、明らかに100%を超える性能を引き出している。」
「だとしたら、私はこれ以上練度を上げても、強くなれないのですか?」
「分からない。だが、君の体も、船としての君も、これ以上は耐えられない。だとしたら、残された道はあと一つ。魂にかかわる分野だ。この分野に関する研究は全く進んでいない。漠然としていて悪いが、何か、感じたことはあるか?」
こんにちは。夏月風です。とんでもなく微妙なところで終わってしまいました。作者にはあとでしっっっっっっっっっっっっっかりお話を聞いていただくので、許してあげて下さい。