「流石に、入渠棟は一杯なようですね。しばらく待っていますか。」
工廠に入り、艤装を下ろす。破壊された装備を取り外しながら、新しい装備を持ってきて、修理を始める。
「ここまで破壊されていたんですね。流石は強化型の軽巡洋艦といったところでしょうか。弾薬庫の防護装甲まで貫通されてしまいました。」
駆逐艦ですので、はっきりとバイタルパートのような重装甲を持っているわけではありませんが、弾薬庫、魚雷庫、機関部には装甲が施されているのですが、残り1枚、というところまで貫通されてしまいました。私は軽巡と同程度の装甲を持っているはずなのですが・・・。はぁ。周りがうるさくなるので、なるべく損傷はしたくはなかったのですが、どうして、こうなってしまうのでしょうね。すでに、製造ラインを止められて、装備のストックも少ないというのに。そろそろ、本格的に想定に入れておいた方がいいですね。色々と。
***
「さて、こんなもんでしょうか。」
艤装の修理が終わる。装甲の穴をふさぎ、破壊された装備を換装。これで、明日にも備えられそうですね。また、出撃になるでしょうから。さて、ここまでやって、約二時間。そろそろ空いてるでしょう。入渠棟が。工廠をでて、入渠棟に行く。
「だいぶ静かですね。」
すでに日は傾いている。戦闘の緊張や疲労で、皆さん部屋で休んでいるのでしょうね。いつもは走り回っている駆逐艦の方たちも見かけません。とても静かですね。さて、周りには誰も・・・いないですね。一応、警戒しておきます。入っている間に何かしてくる可能性もありますし。周りに誰もいないことを確認できたので、中に入りましょうか。中はジメジメしてて、冷えているため、気持ち悪い。服を脱いで、かごに入れる。治癒用の湯舟とは二枚の扉で仕切られていて、その一枚目の扉を開ける。ここは、体についた血や煤を落とす場所。高速修復材の濃度が高いお湯を体にかける。もう少し濃度が高ければ、これで治ってしまうんですがね。まあ、これだけでも、数日もすれば治りますが。それだけをして、脱衣所に引き返す。湯舟の方に誰かいたら、確実に面倒くさいことになりますからね。体をふき、持ってきた新しい服に着替えて、外に出る。風が吹いて、体が少し冷える。誰にも会うことなく工廠に・・・と思いましたが、誰かいますね。遠回りしようと、向きを変えて歩き始めたら、同じようについてきます。あの人は、水雷戦隊全体を統括する、軽巡洋艦・大柳。軽巡洋艦としては、非常に高い実力を持っています。そして、私への差別を行っている集団の筆頭ともいえる存在。そのためか、提督とも非常に仲が良い。人気がなく、視界が悪い場所まで来たら、急に距離を詰めてきて、何かを手に持った。短刀か。奇襲するのなら、もっとやり方があるでしょうに。ただ、背中を向けているうちに、とでも考えたのでしょうね。彼は、一直線に私に向かってくる。音もなく、ただ、素早く。だから・・・よけるのはたやすい。右側に飛ぶ。刃が追ってきたため、体を低くして回避。さらに後ろに飛んで距離を開ける。
「殺気が隠しきれていませんでしたよ。すぐにわかりました。入渠棟にも数人、待機させていたでしょう。これも今のも、あなたの独断ですか?それとも、提督の指示ですか?」
・・・何も答えないですね。まぁいいでしょう。どちらにせよ、私は興味はありませんからね。前者でも後者でも、私にとっては大して変わりませんし。さて、この状況、どうやって抜け出しましょうか。目の前にいる大柳さん以外にも、後4人ほど隠れていますね。
「そもそも、勝てるのですか?私に。その手に持っているものを見るに、何かしら勝負を仕掛けに来ているようですが。」
「・・・ここにいるのは俺一人じゃない。」
「ええわかっていますよ。それを加味して質問しているのです。数人がかりで戦艦一隻がやっとなあなた達で、私を殺せるとでも?」
「お前こそ、艤装の性能に頼りすぎているだろう。それは実力といえるのか?」
「あなた達の目から見ればわかりませんが、少なくとも、いくら高性能な兵器を持っていたとしても、使用者の実力がなければまともに扱うことすらできないのでは?」
「確かにそうかもしれないな。だが、お前の練度は低いままだろう?それが何を意味するか、それは、お前が未熟だってことだよ。これがお前が艤装の性能に依存しすぎていることの証明になる。」
「その練度について、分かっていることはまだまだ少ないです。全員の上限は同じなのか?練度が上がる条件は、全員同じなのか?人間に個人差、というものがあるように、艦娘にも同じようにあります。それに、その練度の数値が、その者の技量に完全に連動しているとも言い切れません。」
「言い訳は見苦しいぞ。それに個人差といっても、お前の場合はその範疇を超えているんだよ。ここは、一向に成長しない駆逐艦1隻のために、専用の製造ラインや工廠をいつまでも維持している余裕はないんだ。分かったか?お前は、ただの負担になっているんだよ。」
「・・・そうですか。」
そう言った瞬間に、周りから一斉に襲い掛かって来た。もう少し、工夫とかしないのでしょうか。相手は6人。余裕ですね。広めの隙間を見つけて走り出す。二人が、その隙間をふさぐように動くが、もう遅い。間をすり抜けると見せかけて、上に飛ぶ。人ひとり飛び越えることぐらい造作もない。着地してすぐに走り出す。そして、振り切った。
「大したことはないですね。あの方々も、まだまだ未熟でしょう。今日のところは工廠には帰らない方がよさそうですね。」
人気のない場所で腰を下ろし、座り込む。そして・・・なぜか、涙が出てきた。なんででしょうね。
「・・・なんで・・・涙が・・・。悲しい・・・ことは、何も、ないのに・・・。」
ただ、自分が嫌いだ。一向に練度が上がらない自分が。最近は、装備の消耗を恐れて、訓練もまともにできていない。はぁ、そろそろ、寝ましょうか。
皆様、こんにちは。夏月風です。私が所属している鎮守府、横須賀鎮守府の闇、とでもいうべき部分、分かりましたか?今回は、私がなぜ、これほど嫌われているのか、について、お話したいと思います。
まずは一つ目。これは単純に、私の練度が図図っと低いままだからです。この鎮守府は、提督の思想もあり、非常に厳しい練度至上主義となっていて、着任したての方々は練度が低いのは当たり前ですので、特に何もないですが、私は、建造からすでに16年が経過しながらも、練度が17しかないためです。
二つ目は、私の艤装の装備が、他とはかなり特殊で互換性がなく、専用の製造ラインを必要としていることです。これは、一つ目の話も少し関係しているのですが、いつまでも練度が低いままなのに、こんな設備を大きな負担を負って維持するのは無駄だということです。
大きな理由は、この二つですね。あとは・・・嫉妬の類でしょうね。白龍さんもうんざりしていましたよ。私を妬みすぎだ、と。