エリドの日常、あるいは非日常   作:yama娘

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基本は映画版準拠(一部小説版の設定込み)です。
本編終了後の時間軸なのでネタバレを含みます。
二次創作です。全てにおいて妄想の産物です。おかしな点は見逃して頂けると幸いです。
pixivにも同タイトルで投稿しております。


デイ・ルーティン・ビデオ

「OK、あー……聞こえてる?」

「よい」

 感度良好。ヘイル・メアリー号で使用したのはあくまで"その場で聴く"ための機器だったが、これは録音機能もついている。グレースが使っていた『ビデオカメラ』と同じようなものだ。というか、それを参考に作らせて貰った。

「OK。地球人がどんな生活をしているのかの記録の時間だ。……なぁロッキー、それ形はどうにかならなかったのか?前のあれよりも銃に近い形で落ち着かない」

「集音器だ」

「OK、OK……」

 あまり"OK"ではなさそうな声だ。形状は改良の余地があるな。次に撮影するときまでに直しておこう。

 と、そうだ。

「撮影したものは子ども達にも広く聴かせる」

「あんまり下品なところは見せられないな」

 君はそこまで下品な真似はしないので大丈夫だとは思うが。なにせ罵倒語(Fワード)すら「正しい発音」をしないらしいので。

 

 

 

「さてこれから食事なんだが……あー、ぼくは画面外で食事をするべき、質問?」

「研究目的」

「だがきみ、さっき『子ども達にも広く見せる』と言っていただろう?教育に悪くないか?」

「……必要に応じて加工」

 聴いて驚け、親愛なるカールにストラット。

 ぼくの食事シーンには『モザイク』がつけられるらしい。生まれて初めてだ、自分が食事をするシーンにモザイクをつけられるのは。

 と、その前に。

「ところでこれはロッキーが作ってくれた食料をあたためる機械だ。地球では『電子レンジ』と言う。仕組みは、ざっと説明するとマイクロ波と呼ばれる『光』で水分子を揺らして対象をあたためるというもの。……ヘイル・メアリー号の『試料燃焼炉』でミーバーガーを温めているのをみられたときにもの凄く怒られたんでね」

 ほかほかでおいしくなるんだけどな、試料燃焼炉。ブリトーだってよくあたたまるし、宇宙空間でも問題なく動く。

「目的外使用、悪い!悪い!」

 と。こんな風に怒られてしまったのでちゃんと電子レンジを作ってもらったというわけだ。……電子レンジで簡単にできる工作、なんてものを教えたら同じ様に怒られてしまいそうだな。

 

 

 

「これは何、質問?」

 ぼくはわかっているが、わざと訊く。これを聴くみんなは知らないことだからだ。

「シャワーだ。ぼくの文化圏ではあまり湯船にどっぷりつかることはしないが……まぁ今回は事情があってね」

「事情」

 確かにヘイル・メアリー号の中に"湯船"というものはなかった。ラップトップのデータにあったバスルームを参考に作ったのだが、彼はそこまで湯船は必要ではなかったのか……。

「地球人は一般的に、他人に、服を着ていない姿を見せない。というわけで今回はタオルを巻かせてもらう。そしてこの状態では十分にシャワーが浴びられないので、湯船を使う」

「ぼくらは気にしない」

「ぼくが気にする。文化の違いだ。きみたちが他人にあまり食事を見せないのと同じことだよ」

「理解」

 布を何枚巻いたところでよく聞けば身体の構造も丸わかりなのだが、『文化』と言われてしまえば仕方ない。

 

 

 

「なんか、あれだな……モーニングルーティーンとかナイトルーティン動画みたいだな……」

「了解しない言葉」

 久々に聞いたな。そりゃあ、命の危機だっていう作戦中にモーニングルーティン動画の話なんかしない。……少なくともぼくは。

 で、ええと。説明だな。

「おしゃれな地球人が地球人向けに出す動画の一種だ。『真似れば同じようにおしゃれになれるかも』みたいな、そういう」

「エリディアン、グレースの真似できない」

「だろうね。だから撮影されてるぼくの気分の問題だ」

 あくまでこれは"地球人を知ろう"の動画、兼、ぼくの生活環境を整えてくれた彼等へのお礼の動画、兼、よりよいアップデートのための研究用動画だ。YouTubeのルーティン動画ではない。

「けど、もしかすると水浴びは流行るかも」

「シャワーが?きみたちの体温で蒸発してしまわないか?湯船にしたってきみたちではあがるのにかなり苦労するだろうし」

 ぼくはロッキーが湯船からあがれずに「悪い、悪い」と言っている絵面を想像した。あり得そうだ。

 

 

 

 シャワーは確かに速やかに蒸発する。湯船も(特に真似したがるであろう年頃の子ども達にとっては)大変危険だ。だが。

「キセノサイトスーツ着用の上でグレースの海辺を借りる。浅瀬なら安全」

 必ずぼくかエイドリアンが見守ることにすれば事故も起きにくい。

「そうか。だったら少なくともやる一週間前ぐらいには教えてくれ」

 何か企んでいる声だ。こういうときのグレースには、質問をした方が楽しい。

「何故?」

「決まってるだろ、相棒。……海水浴の始まりには海開きをしなくちゃだからだ!」

「オーゥ!……海開きとは?」

「おっと、そこから説明が必要か」

 この"宇宙人"ときたら、とにかく教えたがりなのだ。確か地球式では"骨の髄から"というのだったか?つまりまぁ、彼は"骨の髄から"教師だということだ。

 よい。教えたがりの状態にあるグレースはとても元気だ。

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