全てにおいて妄想の産物です。おかしな点は見逃して頂けると幸いです。
pixivにも同タイトルで投稿しております。
ここは……ああ、なんてことだここは……ここは、地球だ。ぼくの故郷。ぼくが救った星。そこにぼくは、降り立っている。
「グレース先生!」
いくぶんか大人になった。それでも、わかる。だって彼等彼女等は、ぼくの大事な教え子だ!ジェフ、アビー、レジーナ、トラン……ああ、みんないる!奇跡的に、ぼくの教え子達は無事だった!
「おかえりなさい、先生!」
「ああ、ああ!ただいま、みんな!」
ぼくはみんなをハグしようと、手を伸ばす――
――そこで、目が覚めた。
夢だ。夢だった。わかっている、わかっている……。
どんなに夢見が良くても、あるいは悪くても、社会人(ないし社会宇宙人)である以上は仕事をしなければならない。エリドにも、教え子たちはいる。友人もいる。
「グレース」
「……ああ、ロッキー」
「泣いていたのか?」
バレた。ちゃんと顔を洗って、鼻もかんでから来たのだが。いやまぁ、誤魔化せるとは思っていなかったけれど。ただ、この話はきっと……ロッキーにとって、楽しい話にはならない。
「……夢を見たんだ」
「夢。ぼくらはそれを知らないが、どういうものかは教わった。確か、脳内の整頓のために地球人が睡眠中に聞く風景のことだ」
「正解。それで、その……夢の内容が……」
「悪いものだった?」
悪いものだったなら、どれほど良かっただろう。ぼくはきみに『こんなに最悪な夢を見た』と愚痴って、きみがそれに『悪い』と評価を付けてくれるだけで済んだなら、どれほどよかっただろう。
「……逆だ。ぼくは、何事もなく地球に帰還して……大人になった子ども達に迎え入れられて……そんな、夢を見た」
無音。
その後に、ゆっくりとロッキーは話し始める。
「……グレースは、帰らないと言った。だが、撤回はいつでも可能。きみがひと言『帰る』とさえ言えば、ヘイル・メアリーにアストロファージを積んで、きみを……」
それ以上は、なかった。ロッキーはぼくに帰って欲しくない。わかっている。現にいまのロッキーの声は、随分と低いものだった。
「……もしもの話をしよう。」
重い空気の中、切り出した。
「もしも、タウメーバがキセノサイトを潜る能力を持っていなかったら。もしも何事もなくきみがエリドに、ぼくが地球に帰れていたら」
「いたら?」
「地球に帰ったぼくは……まちがいなく、きみの夢を見て、泣いた」
それは、はっきりとわかる。正直な話、きみとわかれて地球に帰る途中で、きみとばったり会う夢を見て泣いて起きたことだってある。
「きみはよくばりエイリアン」
「そうだ。ぼくは欲張りな地球人だ。この幸せを手放さないまま、魔法のドアか何かで自由に地球を行き来できればなんて……まさに、夢みたいなことを思うよ」
ほんとうに、そうできればどれだけよかっただろう。中学校に授業をしに行くのと同じぐらい気軽にエリドを訪れて、「やあ、ロッキー。それからちびっ子達。出張届を出してきたから今日は一日エリドに居られるんだ」なんて言えたら、どれだけよかっただろう。
「……グレースは幸せ、質問?」
「幸せだよ、間違いなく。確かにぼくは、幸せだ。その上で……時々、地球が寂しくなって泣いてしまうことを、許して欲しい」
「当然だ。ぼくも地球に行ったら、きっとさびしくなる」
真っ直ぐぼくをみて、ぼくを聞いているロッキーが、真っ直ぐに言葉を投げてくる。ときにその真っ直ぐさは、眩しい。地球において、大の大人、それも男が泣くのはあまり歓迎されない風潮にあるが……ロッキーは、そんなことを考えずに、ぼくが泣くのを許してくれる。
「……ありがとう」
面白くない話を、それでもちゃんと聞いてくれて、ほんとうにありがとう。