本編終了後の時間軸なのでネタバレを含みます。
全てにおいて妄想の産物です。おかしな点は見逃して頂けると幸いです。
pixivにも同タイトルで投稿しております。
Side:グレース
枯山水というものがある。
残念ながらぼくも実物はみたことがない。まだ地球がまともだった頃にテレビで見たぐらいだ。あとは、ヘイル・メアリーの中でも。京都の枯山水。あれだって、石を集めた庭だった。
本場の枯山水と比べると、ぼくの『枯山水』は邪道だな。そんなことを考えた。本場の枯山水はグレーの石だけで水の流れを表現していたが、ぼくは……色とりどりの石を好きに並べている。いいだろう。ここに枯山水のプロはいない。
「これは何を表している?」
ロッキーの声に、顔を上げた。キセノサイトのボール越しに、ぼくらは会う。さもなくばロッキーはたちまちに燃えてしまうので。
「こっちのスペースは太陽系。ソルを中心にした宇宙。そして、こっちはタウ・セチ系。ぼくらが出会った場所。この大きめの石が『エイドリアン』だ。それから――」
あえてもったいぶる。ちょうど今しがた出来上がった、とっておきの『新作』だ。一番初めに見せるのがきみで良かった。
「もったいぶっている」
「渾身の自信作なんだ!だってこれは――エリダニ40星系だから!」
やっと納得のいくものができた!あやうくぼくの残りの寿命を使い果たすんじゃないかと思ってしまった。それは流石に言い過ぎだが、とにかくかなりのリトライを繰り返した。
「……ぼくの故郷はどこ、質問!」
興奮を抑えるようにロッキーが言う。抑えようとするあまり口調が片言だ。
「エリドはここ」
「良い!良い!良い音!」
どうやら『エリド』はロッキーから見ても良い石だったらしい。よかった。
Side:ロッキー
グレースの作った『地球』は、これ。グレースの作った『エリド』は、これ。その二つを、他のものを壊さないように持ち上げた。
「おっと、どうしたんだロッキー。太陽系とエリダニ40の破壊者になりたくなった?」
「ちがう」
「だろうね。どうかしたのか?」
ぼく自身も無意味なのはわかっている。ただ、作り物の中だけでも……もう少し、近くにあってほしい。そんなことを思った。だから、近づけることにした。ぼくの手の中で、二つの『惑星』が隣り合った。まるで初めて会ったときのヘイル・メアリーと"ブリップA"のように。
「こうすれば、ぼくらは隣人」
「……ああ、そうだな」
ここ数年で気づいたことがある。
グレースの『笑顔』にはいくつか種類がある。新しい発見をしたとかでテンションが高いとき。宇宙船の中でたくさん見た。自覚なく"より愚か"なとき。これも、たくさん見た。悪い何かを隠したいとき。……グレースが『病気』のときは、いつもずっとそうだ。そして、今の笑顔は――。
「だが、もしそんな近くにあったらぼくの故郷はエリドの磁力でめちゃくちゃになってしまうな!はははは」
――本当に嬉しいのを、照れ隠ししているとき。
光を聴くぼくの親友は、恥ずかしがり屋のぶよぶよなのだ。心拍数で丸わかりだというのに。
「この石には地場がないから隣でも大丈夫」
「ああ、そうだ。こうしてくっつけたって天変地異も起こらない」
『エリド』をきみに手渡した。ぼくは『地球』を持っている。そして、石と石で『フィストバンプ』をした。
グレース。きみがたくさん笑ってくれるのは、とても良いこと。願わくば、きみがこれからもずっとずっと、笑ってくれますように