本編終了後の時間軸なのでネタバレを含みます。
二次創作です。全てにおいて妄想の産物です。おかしな点は見逃して頂けると幸いです。
pixivにも同タイトルで投稿しております。
ヘイル・メアリー号での音楽鑑賞と整頓を終え、ぼくらはグレースの"家"にかえってきた。
「ぼくがきみに言えていなかったこと、それは……」
「それは、質問?」
思わず居直る。それほどまでに、彼は真剣だ。
「……それは……ぼくは、自分の意志で、宇宙に来たわけではない、ということだ」
グレースの口から語られた言葉は、衝撃的な事実だった。
「何故、質問!」
「昏睡に耐性があり、かつ微生物に詳しいのがぼくしかいなかったから。だが、ぼくは拒んだ。……臆病者だったんだ、ぼくは」
そして次の言葉は衝撃的な誤解だった。きみが、"臆病者"だって?
「きみは勇敢。きみはぼくのために2度、死ぬところだった。1度目は、ぼくをぼくの場所に移動させたとき。2度目は、ぼくを助けに帰ってきてくれたとき」
「1度目の時は記憶喪失だった」
「2度目の時は、質問?」
ぼくの問いに、グレースは口を閉ざした。都合の悪いことがあるとき、グレースはそうする場合がある。たぶん、2度目のとき、グレースは記憶を全て取り戻した状態だった。
「……地球には、友人と呼べる人はほとんどいなかった」
グレースは代わりに、他の話を始めた。
「同僚はいた。生徒にも恵まれていた。彼女がいたこともある。それでも……命を賭けても良い。そう思えるほどの友人は、きみが初めてだ」
そこまで言いきった後、グレースは「ああ」と声を漏らした。
「ぼくが勇敢に見えるのは、きっと、きみが『きみといるぼく』しか知らないからだ」
「同じ」
「なにが?」
「ぼくはぼくといるグレースしかしらない。グレースはグレースといる『ロッキー』しかしらない。同じ」
誰の音も消えた船の中で震えるぼくを。『グレースがいない』状況で試行錯誤に失敗し続けたぼくを。そして諦めそうになったぼくを。きみは、知らない。
「きみが知るぼくは、いつだって『勇敢なロッキー』だけ」
『ロッキー』ではないぼくを、きみは、知らない。ぼくが、"
「……慰めてくれるのか?」
「記憶喪失でもあきらめなかった。思い出しても頑張り続けた」
「ただの惰性だ」
「それでもやりとげた」
「だからそれは、きみがいたからであって」
「なら、きみはぼくのために勇敢になった。いまのきみは勇敢」
「……わかった。ぼくの負けだよ、ロッキー」
グレースが笑う。この"笑う"は……すくなくとも、悪い何かを隠している笑顔ではない。なら、よしとする。
「さて、これでぼくはきみに一切の隠し事がなくなった」
「良い?」
「良い」
ヘイル・メアリー号の整頓の休憩時からずっと沈んだ声をしていたグレースの声は、確かに元気になっている。良い。良い。
きみは、グレース。ぼくらの星の、救世主。